この世の全てを美少女に!   作:縛炎

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67 フロート

 

「そうじゃ、絨毯ごと、浮かべておる。妾ともなれば、このくらい容易じゃ。」

 

 なんと、絨毯ごと、その上に乗ったテーブルとソファ2脚と2人の大人を、《フロート》で浮かべた規格外の魔女リリイ。 

 

 胸を張って自慢するが、悲しい事にこの幼女は、つるぺたである。

 

 つまり、ダストは、孫悟空のように、リリイの手の平の上に乗っていたのだ。

 

 

 これならば、揺れない。

 まるで、リニアモーターカーのような。

 異世界は、魔法で、こういう事が出来るので、科学技術が発達しないのかも、しれない。

 

「いらないじゃん!こんな事が出来るなら、サスもタイヤもいらない。」

 

 ダストは、むせび泣くが、リリイの反応は違った。

 

「いまいち伝わらなかったようじゃが、妾だから可能なだけで、普通は、1人ぐらいしか浮かないからの。それに、この魔法は、集中しておかんと、効果が切れる。ほれ、この通り。仮に、ダストの知識を使うと、集中しなくていいと言う事は移動中に休めるのじゃぞ!」

 

 慌てるリリイの集中が切れたのか、フロートの魔法が解けて、ふわりと着地し、地面がせり上がったかのような錯覚をうけた。

 

「魔法が解けたのか?」

 

「そう。だから、ダストの発想は、革命的に凄いんじゃ。ほれ、ご褒美に、妾の手作りクッキーを食べると良い。」

 

 ロリババアから渡された手作りクッキーを、ぽりぽりと食べて、心を落ち着ける。

 

「美味い。これが、お婆ちゃんの味。」

 

「失礼な、妾は美少女じゃぞ。とにかく、これで、事情聴取は終わりじゃが。どうして、妾の元に舞い戻った。後で追いかけると言ったのに、待ちきれんかったかの?」

 

 ニヤニヤとリリイは笑う。

 

「そういや、事情聴取されて、忘れそうになっていたが、リリイに、用事があったんだ。」

 

「全く、分かっておるわ、お小遣いが足りなくなったのじゃろう。ほれ。」

 

 明後日の勘違いをして、ガチャっと金貨の詰まった袋を投げつけてくるが、当然、そんな魅惑的な施しは、もう受け取らない。

 

 むしろ、アイテムバックから、金貨の詰まった重いアタッシュケースを取り出し、ドンッ!と置く。

 男は、今や人気酒場のオーナーであり、旅立ちの日に貰った大金の3倍を、机に積み上げて返すまでに、成長していた。

 

「いや、金はあるんだ。リリイには、感謝してる。」

 

「はて?ならば、いったい何の用なのじゃ。」

 

「(お婆ちゃんの知恵袋的な意味で)リリイにしか、聞けない事が出来たから、会いに来たんだ。」

 

「は、はーん。良い心掛けじゃ。妾の好きな物を聞きに来るとは、しかし、そういうのは、本人に直接聞くよりも、なんとなく察した方がポイントが高いのじゃぞ。」

 

 幸せな勘違いをしたリリイを手で制し、言いたい事をいう男、ダスト。その瞳は、珍しく真剣だった。

 

「俺は、エルフを探している。」

 

「エルフ?何じゃそれは、魔道具か何かなのか?」

 

「エルフとは、あの耳長で、絶世の美男美女の森を愛する長寿の種族なんだが。」

 

「聞いた事が、無いの。」

 

「そうか・・リリイも知らないか。」

 

 かなり期待していただけに、返って来た否定に、ショックを隠せない。しかし、ここで終わらないのが、リリイ・アーハイム。

 

「ダストよ、もう少し情報は無いのか?どんな生態をしておるとか?」

 

「エルフは、深い森の奥に住んでいる事が多い。人払いの魔法に長けており、何処かの隠れ里にでも潜んでいる事もある。魔族と繋がりがあり、魔界にいる可能性もある。」

 

「ふむ。それで。」

 

「基本、肉は食わない。肌は白く、銀髪が多いが、褐色のダークエルフも存在する。身体の線は細く、魔法と弓の扱いに長けている。」

 

「ふむ、ふむ。」

 

「性格は高慢で、世界樹を信仰している。1番の特徴として、美男美女しかいないため、有名な種族のはずなんだが。」

 

「馬車の解決手段の件といい、随分と妾達と常識が異なるようじゃの。ところで、そのエルフとやらには、いつ、どこで、会ったのじゃ?」

 

「いや、会った事は無い。」

 

 

「は?何じゃって。」

 

 リリイの顔が、固まる。

 

「だから、会った事は無い。」

 

 リリイは、こめかみを抑えながら、ため息をついた。

 

「妾の耳は、衰えておらんから、2度も言わんでええ。なぜ、会った事もない種族に、詳しいのじゃ?」

 

「それは、お約束だからだ。」

 

 力強く答えるダストに、リリイは、爽やかに微笑み、結論を下す。

 

「よしっ、分かったのじゃ。」

 

「そうか!分かってくれたか。」

 

 

「ダストよ、お主は疲れておる。協力はするが、馬車の精神汚染を受けとる可能性があるから一度、眠るのじゃ。」

 

「いや、全然、伝わってねえ!いいか、エルフは。」

 

「《スリープ》。明日になれば、人は賢くなる。」

 

「だから、本当にいるん。。くそっ」

 

 

 意識は暗転し、闇へと沈む。

 

 寝させてくれなかったり、眠らされたり、随分と、振り回される。

 やれやれ。だが、ワガママな女も、嫌いじゃないぜ。

 

 

主人公は誰がいい?

  • 豚野郎 ダスト
  • 美少女 ダストちゃん
  • 男の娘 ダスト君
  • 美男  Dust
  • でぶ女 D

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