「そうじゃ、絨毯ごと、浮かべておる。妾ともなれば、このくらい容易じゃ。」
なんと、絨毯ごと、その上に乗ったテーブルとソファ2脚と2人の大人を、《フロート》で浮かべた規格外の魔女リリイ。
胸を張って自慢するが、悲しい事にこの幼女は、つるぺたである。
つまり、ダストは、孫悟空のように、リリイの手の平の上に乗っていたのだ。
これならば、揺れない。
まるで、リニアモーターカーのような。
異世界は、魔法で、こういう事が出来るので、科学技術が発達しないのかも、しれない。
「いらないじゃん!こんな事が出来るなら、サスもタイヤもいらない。」
ダストは、むせび泣くが、リリイの反応は違った。
「いまいち伝わらなかったようじゃが、妾だから可能なだけで、普通は、1人ぐらいしか浮かないからの。それに、この魔法は、集中しておかんと、効果が切れる。ほれ、この通り。仮に、ダストの知識を使うと、集中しなくていいと言う事は移動中に休めるのじゃぞ!」
慌てるリリイの集中が切れたのか、フロートの魔法が解けて、ふわりと着地し、地面がせり上がったかのような錯覚をうけた。
「魔法が解けたのか?」
「そう。だから、ダストの発想は、革命的に凄いんじゃ。ほれ、ご褒美に、妾の手作りクッキーを食べると良い。」
ロリババアから渡された手作りクッキーを、ぽりぽりと食べて、心を落ち着ける。
「美味い。これが、お婆ちゃんの味。」
「失礼な、妾は美少女じゃぞ。とにかく、これで、事情聴取は終わりじゃが。どうして、妾の元に舞い戻った。後で追いかけると言ったのに、待ちきれんかったかの?」
ニヤニヤとリリイは笑う。
「そういや、事情聴取されて、忘れそうになっていたが、リリイに、用事があったんだ。」
「全く、分かっておるわ、お小遣いが足りなくなったのじゃろう。ほれ。」
明後日の勘違いをして、ガチャっと金貨の詰まった袋を投げつけてくるが、当然、そんな魅惑的な施しは、もう受け取らない。
むしろ、アイテムバックから、金貨の詰まった重いアタッシュケースを取り出し、ドンッ!と置く。
男は、今や人気酒場のオーナーであり、旅立ちの日に貰った大金の3倍を、机に積み上げて返すまでに、成長していた。
「いや、金はあるんだ。リリイには、感謝してる。」
「はて?ならば、いったい何の用なのじゃ。」
「(お婆ちゃんの知恵袋的な意味で)リリイにしか、聞けない事が出来たから、会いに来たんだ。」
「は、はーん。良い心掛けじゃ。妾の好きな物を聞きに来るとは、しかし、そういうのは、本人に直接聞くよりも、なんとなく察した方がポイントが高いのじゃぞ。」
幸せな勘違いをしたリリイを手で制し、言いたい事をいう男、ダスト。その瞳は、珍しく真剣だった。
「俺は、エルフを探している。」
「エルフ?何じゃそれは、魔道具か何かなのか?」
「エルフとは、あの耳長で、絶世の美男美女の森を愛する長寿の種族なんだが。」
「聞いた事が、無いの。」
「そうか・・リリイも知らないか。」
かなり期待していただけに、返って来た否定に、ショックを隠せない。しかし、ここで終わらないのが、リリイ・アーハイム。
「ダストよ、もう少し情報は無いのか?どんな生態をしておるとか?」
「エルフは、深い森の奥に住んでいる事が多い。人払いの魔法に長けており、何処かの隠れ里にでも潜んでいる事もある。魔族と繋がりがあり、魔界にいる可能性もある。」
「ふむ。それで。」
「基本、肉は食わない。肌は白く、銀髪が多いが、褐色のダークエルフも存在する。身体の線は細く、魔法と弓の扱いに長けている。」
「ふむ、ふむ。」
「性格は高慢で、世界樹を信仰している。1番の特徴として、美男美女しかいないため、有名な種族のはずなんだが。」
「馬車の解決手段の件といい、随分と妾達と常識が異なるようじゃの。ところで、そのエルフとやらには、いつ、どこで、会ったのじゃ?」
「いや、会った事は無い。」
「は?何じゃって。」
リリイの顔が、固まる。
「だから、会った事は無い。」
リリイは、こめかみを抑えながら、ため息をついた。
「妾の耳は、衰えておらんから、2度も言わんでええ。なぜ、会った事もない種族に、詳しいのじゃ?」
「それは、お約束だからだ。」
力強く答えるダストに、リリイは、爽やかに微笑み、結論を下す。
「よしっ、分かったのじゃ。」
「そうか!分かってくれたか。」
「ダストよ、お主は疲れておる。協力はするが、馬車の精神汚染を受けとる可能性があるから一度、眠るのじゃ。」
「いや、全然、伝わってねえ!いいか、エルフは。」
「《スリープ》。明日になれば、人は賢くなる。」
「だから、本当にいるん。。くそっ」
意識は暗転し、闇へと沈む。
寝させてくれなかったり、眠らされたり、随分と、振り回される。
やれやれ。だが、ワガママな女も、嫌いじゃないぜ。
主人公は誰がいい?
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豚野郎 ダスト
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美少女 ダストちゃん
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男の娘 ダスト君
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美男 Dust
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でぶ女 D