この世の全てを美少女に!   作:縛炎

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77 疲労困憊の男

 

 疲労困憊の男は、水を飲み少しだけ生気を取り戻したのか薄い笑みを浮かべる。

 

「そうじゃねぇよ。いつも通り運送に来ただけだ。最近、商売敵が調子に乗ってるから実力を示した。商売敵は来たか?」

 

 アイテムバッグから荷物を渡すと、村長は有り難そうに受取り、受取りサインをする。

 

「いや、来とらんね。もう20日も待ってるんだが。」

 

「そうか、まぁ8日かかる所を、特別に5日で来たからな。昨日は全速力で一昼夜走りっ放しだぜ。」

 

「8日?、い、5日だと!?無茶しやがって、さすが運送ギルドのスレイプニルは違うねぇ。凄すぎる。こんな辺鄙な村へ、いつも悪いな。」

 

 驚きのあまり目をパチパチとさせる村長に気を良くするスレイプニル。

 

「とはいえ、こっちも限界なんで2日程、支所で休ませて貰う。あと、滞在中に、豚野郎と女達のグループがもし来たら教えてくれ。」

 

「昨晩、そんな客は来たが。」

 

「昨晩?いや、そいつら以外で。」

 

 運送ギルドのスレイプニルが豚野郎に勝負を吹っ掛けられたのは夕方前なので可能性から除外したのは実に常識的な判断である。

 

 村長家で談笑し、フラフラと歩く男の背中には自信が漲っていた。

 胸元には、飛ぶように地上を疾走するクロック鳥を模した運送ギルドバッジが輝く。鳥が掴んでいる数字は最速の者にだけ許された1だ。

 

 そんな男が目を見開く。

 野郎、口先だけじゃ無かった。

 

 ライバルが村へと到着した。

 イライラとしてケンカを買った理由が分からなかったが、実力に気付いていたからかと。

 

 怪しげな豚野郎が背中に乗ってどんな魔法を使ったのかは知らないが、俺から遅れること、たった3時間でまさか追いついてきたのかと、赤の森の入口付近の探索を済ませて帰ってきたダスト達と再会し、疲労困憊の男はそう思った。

 

「よぉ、脚自慢の兄ちゃん。なかなか速いじゃねぇか、認めてやるよ。」

 

「だ、そうだ。良かったな、ハクレン。」

「御主人様、なんの事っすか?」

 

「運送ギルドのスレイプニルと呼ばれる俺を追い詰めるとは大したものだ。だが、一足遅かったようだな。」

 

「な、何だと!?くそっ。」

 

 悔しがり走り去るダストを見て、男は評価をさらに1つあげた。

 本当はすぐにでも休みたいがダスト達に敬意を評して、ゆっくりと追いかける。

 

「あの豚野郎、向上心も有りか。ぜひ、スカウトさせて貰おう。」

 

 

 廃屋に帰ってきたダストは、料理をしてくれてる村の女性達へ、開口一番、心配を口にした。

 

「買えなかったのか?」

 

「あら、お帰りなさい。そんなに楽しみにしてくれてたんだね。買えたから安心しなよ。ほっぺた溶けるくらい美味しいよ。」

 

「そ、そうか。ビビらせやがって、あの暴走男め。」

 

「何か言われたのかい?」

 

「いや、変なのに絡まれただけだ。疑うような事を言って悪かった、楽しみにしてる。」

 

 

 少し遅れて、コンコンとノックして入ってくるスレイプニル。

 

「よぉ、勝負は俺の勝ちだな。勝者から提案がある、スカウトに来たぜ。」

 

「何の話だ?ビビらせやがって、バッチリ買えたそうだ!」

 

「は?兄ちゃん、何の話だ。」

 

 噛み合わない2人のおっさんに、橋を架けたのは村の女性。

 

「スレイプニルさん、いつも配達ありがとねぇ。こちらの調査員さんは昨晩から村へ来てくれたんだよ。」

 

 村の女性の紹介を聞いて自己紹介がきちんと出来て無かった事に気付くスレイプニル。

 

「おっと、悪い。自己紹介をちゃんとしてなかったな。俺は運送ギルドのナンバーワンの男、通称スレイプニル。この村へは良く来ている。兄ちゃん達は、昨晩からか、昨晩?」

 

 そう言った男の顔がどんどんと青ざめていく、なんかもう倒れそうな程に。

 

「おい、大丈夫か?」

 

「・・兄ちゃん。重要な質問がある。この村へ到着したのは何時だ?」

 

「え?昨晩だけど、今日は赤の森の探索に出てた。」

 

 スレイプニルは、まるで信じられない者を見るような目付きになり、村の女性に目で問いかけると、たじろぎながら女性は答える。

 

「調査員さんの言ってる事は本当だよ。どうしたんだい?」

 

「フフフハハハ。意味が分からねぇよ。こんなのにどう勝てっていうんだよ、ナンバーワンが聞いて呆れる。これを貰ってくれ。」

 

 泣きながら、ダストに誇り高きバッジを胸から剥ぎ取り押し付ける。

 

「いや、なんか分からないけど、いらない。」

 

「いいから!!貰ってくれ!」

 

 鬼気迫る顔で、バッジを無理矢理に受け取らされるダスト。

 

《運送ギルド最速の証:SSR》を獲得した。

 

「あの…これ。」

 

「無くすんじゃねぇぞ!!あと、必ず付けとけ、外してるのを見かけたら殺してやる!」

 

 何だかとても重要な物を押し付けられたらしい。効果も分からないし、外すと死ぬらしい。このアイテムは、呪われてる?

 

 困惑した顔で、村の女性を見たら、目を逸らされた。

 

 

 そういえば、最近。ハクレン頑張ってるよなぁ。労ってあげないと…プレゼントも毎回ニンジンでは、ちょっと。

 お、おやぁ?こんな所に、格好いいバッジがあるぞ。

 

 ダスト様争奪戦、『初めてアクセサリーを貰った女』ハクレン思わぬ展開で一歩リード!

 

 

主人公は誰がいい?

  • 豚野郎 ダスト
  • 美少女 ダストちゃん
  • 男の娘 ダスト君
  • 美男  Dust
  • でぶ女 D

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