この世の全てを美少女に!   作:縛炎

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80 エルフ7

 

 翌日。人って、たった1日でこんなにも変われるんだなと思ったのが素直な感想。

 

「ダスト様、お待ちしておりました。ささっ、こちらへお座りくだされ。」

「ダスト様、クリアフィッシュを仕留めておきましたので、どうぞ。」

「ダスト様、心より感謝致しますわん。」

 

 誰だ?こいつらって思うだろ、森守の親子と犬娘なんだぜ。美少女の力とは偉大としか言えない。

 

 偏屈爺さんの顔は緩みっ放しだし、息子の捻くれクソ野郎の目は輝きつつあった。

 犬娘ペスが、誇らしげな顔をしているが、この圧倒的な変化に心から称賛を贈りたい。

 

「ペス、良くやってくれた。もし2人が心変わりをしたら俺の店で雇うから遠慮なく、その時は《乙女達の楽園》を訪ねてくれ。」

 

 縮み上がった2人と、ふるふると首を横に振る盲目的な犬娘を見ると、どうやらその機会はなさそうだが。

 

「にゃふーっ。今夜の食事は、お魚ですにゃ!」

 

 ピンクは、朝から浮かれている。フィギュアがどうのこうの言っていたが、食べたかっただけなのか。

 

 そういえば、昨夜の飯は《メルカーナの卵》が出た。

 特に味もなく小さな丸いゴムボールのような代物だったが、メルカーナが何か誰も知らなかったので、蛙の卵を想像してしまった俺は、途中で食べるのを辞めてしまった。

 

「何で仕留めた。活きてる状態のは無かったのか?」

 

「誤解しないでくれ、ダスト様。クリアフィッシュは、赤の森の恵みで、なぜか死にかけの魚が地面でピチピチ跳ねてる時があるので、それを死喰鳥より先に拾ってる。だから、もともと弱って保たなかった。ただ、死んでるが、食べるのには何の問題もない。今朝は3人で手分けして幸運な事に2匹も拾えたから、勿論、全部持って行ってください。」

 

 焦ったように説明する青年。

 

「分かった。あと、赤の森の気を付けるべき危険性を教えて欲しい。」

 

 ダストの質問に、一緒に犬として森を駆け回っていた、犬娘ペスが答える。

 

「チクチクという小さい羽虫のモンスターの集合体に気を付けてください。虫除けを塗って、黒い雲のような虫溜まりを避ければ、大丈夫でございます。この攻撃的で火に耐性がある羽虫の細い針は鎧すら貫き、敵対すれば死にます。チクチクが赤の森の殺戮者として君臨してるため、他のモンスターは、死喰鳥と紅葉蟹しか居ませんわん。」

 

死喰鳥(デスバード)?」

 

「不味いためチクチクも襲わない黒く太った飛ばない鳥ですわん。死者の目玉しか食べない美食家で、バブルスライムと共生しており、あちこち啄む森の清掃人。ゲエエエと鳴くんですの。」

 

「ふむ。ペス、なかなか分かりやすかったぞ。」

 

 危険が無いなら、話は速い。

 なんたって彼女達は異世界最速っ。

 馬娘の魔導コンパスを現在地にセットして、指示を飛ばす。

 

「ハクレン、サラ、ポニー。魚を探してくれ。30分見つからなければ、タイムアップだ。ゴー!」

 

 こくりと頷き、ドヒュンッと超速度で消える3人組を見て、森守達は度肝を抜かれている。

 さて情報収集を続けようか。

 気になってる事がある。昨日食べたのが、何なのか?蛙でない事を祈るばかりだ。

 

「そう言えば、メルカーナの卵は、何の卵か知ってるか?」

 

「紅い木。メルルの木の苗ですわん。」

 

「え?木の苗なの。卵なのに?」

 

「鑑定でそう出たらしく、そこは間違いないですわん。水を入れて密閉した瓶を放置しておけば採れるらしく、昔から原理の分からないこのやり方で採ってるらしいですわん。」

 

 ふむ。採取方法は理解出来ないが、重要なのはそこでは無い。

 蛙の卵では無い!俄然、食い気が戻ってきた。リベンジに燃える。

 メルカーナの卵め、どう料理してくれよう。

 

 で、10分も経ってないのに、足音がするので見ると、頼りになる相棒が、もう帰って来たらしい。

 

 ハクレンがピチピチ跳ねる魚を捕まえて帰って来たのを見て、あまりの速い仕事ぶりに森守達も固まる。

 

「ナイスだ、ハクレン。」

 

 照れるハクレンは可愛い。

 ここから先は、俺にしか出来ない仕事だ。残りの欠片を集めて顕現させるべく、黒竜の手袋を脱ぐ。

 

「神秘の魚よ、俺の前に、その隠された姿を、晒せぇぇぇ!」

 

 右手に力を込めてクリアフィッシュを叩く。

 叩いたんだけど…

 

 

 ぺちん!

 

「あれ?光らないぞ。」

 

 何も起きないので首を傾げる?

 んんー?

 しかも、なんか微妙な雰囲気になり、少し恥ずかしい。

 

 考えていたら、リリイが顎に手を当てて推理しだす。

 今度、虫眼鏡を持たして探偵気取りに育てるのもありかもしれない。

 

「妾が思うに、魂が死んでおったら駄目なんじゃないかのう。恐らくは既に、その魚の魂は死んでおるのじゃ。」

 

「ふむ。」

 

 念の為、5分後に帰ってきたサラとポニーの魚も叩いてみたが、結果は変わらず。

 やはり魂が死んでいるのだろう、虹色の流れるラインが消えると駄目なんだろうと思う。

 活きたまま捕まえる何か別の手を考える必要があるようだ。

 

 ただ、網は、この辺りでは売ってる訳が無いし。金はあっても、アマゾンさんはいない。

 何か方法は。。

 

 そうだ!簡単な方法。

 釣りをしよう。

 

 幻想を纏っていても、こいつらはしょせん魚だ。半分、幻想を暴いた俺ならば釣り上げれる。

 

「よしっ。透明空魚(クリアフィッシュ)を釣り上げるぞ!白き湖へと案内してくれ。」

 

 しかし、頭の固い森守の老人はダストの提案に否定的だ。

 

「いや。でも、ダスト様。湖に魚の跳ねる音こそすれ、湖で釣ろうとした人間は過去に、何人もおるけど、誰も釣り上げたものはおらん。湖底にあるポムの木の根ですぐ根がかりするし、アタリすら無い。」

 

「当然だ、あの魚は大気を泳いでいるのだから。」

 

 ニヤリと笑い爆弾発言をするダストに、森守達は腰を抜かす。

 

「「大気を泳ぐ!?」」

 

「あぁ、俺達は、この目でしっかりと見た。」

「ですにゃ。」

「妾も、未だ信じられぬが透明になって大気を泳いでいるのを見た以上、否定できぬ事実なのじゃ。」

 

 リリイの追加説明で、森守達は目をパチパチさせるしかなかった。

 

「「普段は透明!?」」

 

「あぁ、そうだ。」

 

 

 森守達は、昨日の朝までなら、何を言っているのかと、馬鹿にしただろう。

 

 しかし、昨日この目で奇蹟を見て、犬娘ペスという人生を変える人に会った今、否定する言葉を持たない。

 

 透明空魚(クリアフィッシュ)という幼い頃に疑問を持った鑑定の名前も、ストンと胸に落ちる。

 

「「ダスト様は、森守の一族に渡る長年の疑問を、たった1日で解かれたのか!」」

 

「いや、まぁ偶然だ。」

 

 

「「いえ、ダスト様に偶然というお言葉など有りえません。我ら森守に、案内させてください。《ポムの樹の乳白色の池》へ。」」

 

 異様なテンションになった森守に案内され、ドン引きしたダスト様(笑)がついていく。

 

「師匠なら当然ですにゃ。」

 

 何故か自慢げなピンクを、横目にダストは薄く笑った。

 

 

主人公は誰がいい?

  • 豚野郎 ダスト
  • 美少女 ダストちゃん
  • 男の娘 ダスト君
  • 美男  Dust
  • でぶ女 D

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