この世の全てを美少女に!   作:縛炎

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85 エルフ11

 

 どうしよう?と聞かれても解決策なんて持ち合わせていない。

 それどころか、大魚が暴れるので、足場の枝が揺れてバランスを崩さないのが、せいいっぱいの有り様だ。

 岩場での釣りなら、根に入らないように移動したりするが。そうだ!コイシちゃんは、足場の弱い枝の先端近くにいる。だから、余計に揺れやすいのかもしれない。

 

「コイシちゃん、こっちへ来るんだ。」

 

「無理。」

 

 悲しそうな顔をする顔に失言した事に気付いたダスト君は唇を噛む。

 

「済まないッ。移動は出来なかったな、すぐに迎えに行くから。」

 

 おっかなびっくり落ちないように近付こうとしたが、目の前を高速移動する人影がすり抜ける。

 

 

「師匠、ここは任せるですにゃ。」

 

「助かる、ピンク頼む。」

 

 猫娘の運動神経は凄かった。

 不安定な場所にも関わらず、ジリジリと、ピンクがコイシちゃんを回収し枝が太くなる幹まで近付くと、ようやく揺れが収まった。

 

 ダスト君がやった事は、移動の邪魔にならないようリリイと別の枝に移ったぐらいだ。リリイは常識人なので常識を超えたことの対応は苦手なのかフリーズしている。

 

 しかし、依然として状況は変わらない。

 揺れなくはなったが、決定打がない。

 

 詰んでいるかのような状況。

 そんな中、決定打を考えついたのは、意外にもコイシちゃんだった。

 

「これだよ!ピンク、お願いがあるの。反対側に私を突き落として。」

 

「にゃんですと!?」

 

「ヤケになっては駄目だ、コイシちゃん!?」

 

 コイシちゃんは、ぐっと強烈な魚の引きに耐えながら、楽しそうに言う。

 

「冷静だよ ダスト君。私は落ちても怪我しない。それに木の幹に糸を通すように落下すれば木の高さの分だけ、体重で引っ張れるの。」

 

「確かに理論上はそうだけど、でも…危険には晒せない。」

 

 献身を断るダスト君。

 しかしコイシちゃんはフッと微笑む。

 

「ねぇ…私を信じて。」

 

 その言葉は、ダスト君のハートをぎゅっと捕まえた。

 

「分かった。そうだな 僕の間違いだった。コイシちゃん、ぶちかましてくれ。」

 

 

 この時、張り詰めていた釣り糸が、ゆるりと緩んだ。

 

 ライバルである大魚もなんと、魚の癖に頭を使ってきたのだ。生存競争に勝ち抜き、長生きした巨体だけはある。

 

 糸が張ってないと引っ張られない事に気付いた大魚が、糸が弛みながらも絶妙に遠い位置で、ゆらゆらと泳ぐ。

 口元をモゴモゴさせて原始的な針を外そうとしていた。

 

「クリアフィッシュよ、悪くない手だ。しかしコイシちゃんの方が少し早かったようだな

。ピンク頼むっ!」

 

「了解、行くですにゃ!」

 

 コイシちゃんを抱えてピンクも10メートル以上はある木の幹から飛び降りた。

 

 ぴょょおん。ひゅゅう。

 

「私が釣るンだからぁー。」

「間違ったですにゃああーん。」

 

 勢いで自分も飛び降りてしまったピンクの悲鳴がどんどん小さくなる。

 

 

「猫娘ピンクよ、その犠牲を忘れない。」

 

 ダストは気持ちを切り替えた。

 シューーッという音がして、滑る糸が幹を摩擦熱で焼いていく。

 下方向へと距離を稼いだ事により弛んでいた糸が再び、ピィィン!と張られて、クリアフィッシュの余裕な顔が唇を引っ張られて歪む。

 

 

 勢いがついた。

 

 大魚の力を2人の落下衝撃が完全に上回る。つまりは、圧勝。

 その勢いで魚をドビュンと引き寄せる事が出来たのだ。

 

 釣れた!

 

 凄い迫力で体長2メートルの塊がぐおおっと迫ってくる。ちびるぐらい怖いが、僕は男の娘だ!

 

 まるで生きているかのような小さな人形へ、劇的な変化を与えるべく最後の巨大な塊を受け入れる。

 

「来いよ

 

 幻想の魚、透明空魚(クリアフィッシュ)

 

 秘密のベールを脱ぎさり

 

 俺とともに歩め!」

 

 右手が強烈な光りを放つ。

 

 

 

 異能発動ーーーー

 

 『|絶対美少女化(ハーレム)!!』

 

 

進化前:|透明空魚(クリアフィッシュ)

成功

種族:???→フェアリー(美少女)

装備:羽衣の服[SR]→裸

異能:重力無効

身長:20cm

残り:奇蹟1回

 

 異世界に美少女が生まれた。

 

 小さな美少女の|偶然(フィギュア)は、その欠片を全て集めて、劇的な変化を遂げる。

 

 手の平サイズの身体を丸めると、背中から綺麗なクリアで銀光を帯びた羽が生えてきた。

 

 ダストの言葉のミスにより衣服が剥ぎ取られるが大きさが違いすぎて、さすがに性欲は湧かない。

 

 それは、幻想的な美少女。

 

 

 ダスト君は叫ぶ。

 

「えええ、エルフだろ。今、完全にエルフの流れだっただよね?」

 

「え?私はフェアリーですけど?」

 

 七色の燐光をまき散らしながら、裸の乙女は、ダスト君の周りをふわふわと飛ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

主人公は誰がいい?

  • 豚野郎 ダスト
  • 美少女 ダストちゃん
  • 男の娘 ダスト君
  • 美男  Dust
  • でぶ女 D

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