この世の全てを美少女に!   作:縛炎

85 / 106
86 エルフ12

 

 フェアリーは、ダスト君の周りを余裕たっぷりに飛び回る。

 

 苦労して擬人化したクリアフィッシュが、エルフではなかった事に、失望が隠せないダスト君はその余裕にイラッとして噛み付く。

 

 

「はぁ…エルフは何処にいるんだよ。ところで、何で裸なの、変態?」

 

「はぁ?何を言ってるの」

 

 

 馬鹿にしたようにフェアリーは笑うが、ダスト君がノーリアクションな事に疑問を持ち自分の服装をチェックすると、激しく焦りだす。

 

 

「え?え?なんで?裸だし。羽衣の服がない。」

 

「いや、僕が聞いてるんだけど。恥ずかしくないのかな。」

 

 

「でもでも同性に見られても何の問題も無いし。それより、同じ同性のよしみとして、服を貸してくれない。ね?」

 

「僕は男だけど?」

 

 

 フェアリーは動揺しながら精神の安定を取り戻すため魔法を使う。

 

 

「ど、どう見ても女の子だし、嘘言っても分かるのだし。嘘発見(サーチライ)!」

 

 

 爽やかに微笑むダスト君。

 魔法は彼の言葉が真実である事を告げた!全裸を男に見られたフェアリーは、ふるふると震えだし、大音量の叫びを上げた。

 

 

「男だし いっ、やぁああ!」

 

 

 美少女とは奇蹟の存在、ゆえに秘められた奇蹟を開放する。

 身体から七色の光の球があちこちに放出されて飛んでいく。彼女の起こした奇蹟はソウルマーカー。しばしの間、魂の強さを光りで教えてくれる。

 

 異能の力により、範囲内の魂を内包する美少女になれる可能性を秘めた存在達は、見えないはずの魂が光りだし、その存在を主張しだす。

 

 日が沈みかけた赤の森。

 分厚い雲で夕陽は隠され、やや薄暗い、そんな世界の中で、池の上を飛んでいる透明な魚群の魂が光り出す。

 

 まるでホタルのような。

 水面に浮かぶ光りが幻想的だ。

 

 森全体が、ぼんやりと光る。

 まだ美少女化すべき相手が残っているとソウルマーカーが教えてくれていた。

 

 

 耳を押さえていたダスト君がハンカチを取り出して、泣きそうなフェアリーに渡す。

 

 

「ほら、これをあげるよ。お嬢さん。」

 

「え、いいの?」

 

「遠慮しないで。」

 

 

 貰ったハンカチをくるりと、身体に巻きつけるとお風呂あがりのようなスタイルに。背中には羽が生えているので、後ろ姿はセクシーで実に色っぽい。

 

 

「雄のくせに、裸の女に発情しないなんて何なのだし。」

 

「僕は、紳士だからね。」

 

 

 屈託なく、少女のような男の娘は爽やかに笑う。発情しなかったのは、体格差が違い過ぎる事、それに僕は女もイケるけど男性の方が好きだから。

 うっ…精神汚染が辛い。

 

 汚染された精神を浄化するべく、微かに光る景色を見つめる。

 

 

「綺麗だな。ここは、いつもこんな幻想の光りに満ちてるの?」

 

「これは、異能ソウルマーカーの力。って、変な異能を獲得してるし。使うと魂が光るみたい、あの池の上をふわふわと浮いてるのが、擬人化前の私。」

 

 

 どうも池の上を飛んでいる光りはクリアフィッシュのようだ。

 

 

「そうか、蛍みたい。」

 

「ほたる?」

 

 

「ふふ秘密。さて、今日は暗くなってきたし日の落ちないうちに帰ろうか。来るかい?お嬢さん。」

 

「付いていってあげてもいいし。」

 

 

 木から降りるべく幹の方へ振り返ると、ぼんやりと光る木の中で、木の虚と言えば分かるだろうか、樹皮が剥がれてむき出しになった部分が強めに発光していた。

 

 

「あれ?何か光って無いか。樹液に集まる虫だろうか?」

 

「分からない、でも魂が近くにあるみたいだし。」

 

 

 近寄って観察してみたが、ノーマルポムの樹からは樹液は出ないらしく虫は見えない。樹皮を剥かれた木肌が、光ってるように見える?

 

 そっと、手を伸ばして木肌に触る。

 

 

「うわっ、右手が光りだした。」

 

 

 この兆候は…

 

 樹皮がバラバラと剥がれ落ちて、すべすべとした木肌が露わになる。樹全体がギラギラと光り出す。

 

 ガッチリと右手で掴む。

 

 

 異能発動ーーーー

 

 『|絶対美少女化(ハーレム)!!』

 

 

進化前:ポムの樹

成功

名前:ポー

種族:樹人『木偶人形』美少女

装備:森人の服[N]

特記:木のような肌

残り:奇蹟1回

 

 異世界に美少女が生まれた。

 

 ヘンテコな樹から、生まれたのは、ぼんやりした美少女。木偶人形のような木肌の女の子は、のほほんと自己紹介する。

 

 

「ポーだよ。」

 

「は?」

 

 

 そして美少女化したという事実は、足場にしていたポムの樹の消失を意味する。

 

 つまり、ダスト君とリリイは、上空10メートルから投げ出された。

 墜落した先にあるのは、固い地面。

 

 

「うわぁぁ!」

 

「落ちるのじゃーー。フロート!」

 

 

 ふわりふわりと、落下速度が緩やかになったリリイは激突を、一人だけ免れる。

 

 ダスト君の心に、ふつふつと怒りが湧いてきた。

 

 

 落下しながら怒っていた。

 これは始まりの日に似ているが、許せないと。

 

 このまま墜落すると死ぬ確率すらある。

 

 そんな何も出来ない状況だが、ダスト君はチャンスを掴む男。その右手は、始まりの日と同じように、しっかりと掴んでいた。

 

 ポーのおっぱいを!

 

 Cカップか?

 しかしながら、やはり許せない。

 

 これは、おっぱいに対する冒涜だ。

 

 

「何で固いんだよ。カチカチじゃないか、これは、おっぱいに非ず。」

 

 

 墜落とか、リリイの裏切りとか、死ぬかもしれないとか、そんなのはどうでも宜しいと。この女は、もっと刹那的に生きている。怒りをぶつけろ!

 

 

「おっぱいとは、柔らかいものなんだ!夢が詰まってるものなんだ。それを、こんな木型のようなカチカチでぇカチカチで良いのかよぉ。柔らかくなりやがれぇぇえ!」

 

 

 セクハラにより、奇蹟のトリガーを引き美少女の力を解放する。

 木偶人形ポーの奇蹟が発動。

 

 ぽよよおん。

 

 と、墜落したダストが弾むように空に飛び上がる。

 

 柔らかくなったのは、地面。

 危機を脱した。

 

主人公は誰がいい?

  • 豚野郎 ダスト
  • 美少女 ダストちゃん
  • 男の娘 ダスト君
  • 美男  Dust
  • でぶ女 D

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。