夢は見なかった。
夢こそ見なかったが、美少女達と同じ布団で目覚める二日目の朝が始まった。
それはまるで夢のような環境?
ただ現状は僕にとっては、あまり幸福とはいえない。くっそ、重いぞ誰だ僕に抱きついている奴らは。どけろー。
僕は美少女よりも、おじさまやショタに抱かれたいんだーと、どうしようもない事を考えながら手足をじたばたさせようとしたが、いかんせん無力だ。
ぴくりとも動かない。彼女達の愛が文字通り重いのだ。
女性が羨む程に細い僕のすべすべとした手足は、筋肉がまるで無いため出来る事など何もなかった。なんというかガリバーのように動けない状況といえば分かるかな。
愛されすぎるのも大変だ。
仕方無く意識を手放した。
二度寝しよう。
朝チュンで目覚める。
雀のチュンチュンという鳴き声の代わりにポゥポゥという鳴き声が聴こえる。
それにパチパチという料理のための火が爆ぜる音。美味そうな朝食の匂い。
「んああ。」
むくりと起きて背伸びをした。
周囲には服装の乱れた美少女たちが死屍累々としている。いや、手は出してないよ?部屋には女の香りが満ちている。
「にゃふーっ。」
「危ねえ。」
寝ぼけて抱きつこうてしてきたピンクをひょいと避ける。ぐへへ仕方無いのう、これは事故だからと受け入れてデレる豚野郎と僕は違うのだ。
視線でピンクを追うと間違ってコイシちゃんに抱きついていた。
「おはようだよ、ダスト君。私は動けないけど。石にして持っていってくれてもいいんだよ?」
「おはよう、コイシちゃん。猫のお守りヨロシクね。」
「それは無いよ。」
しおしおとしたコイシちゃんを放置して顔を洗いに、とてとてと歩く。
僕はこういう女だ。いや男だったか、でも見た目が美少女ならそれはもう女でいいんじゃないのかな。よく分からない。
「お前様、おはようなのじゃ。」
「おはよう、リリイ。」
すまし顔のリリイと挨拶する。
しっかりしているな、でも多分だけど昨夜は右足か左足かを独占していた犯人だ。
まぁいいか。
じゃぶじゃぶと顔を洗う。
ふぅー、気持ちいい。
リリイに渡されたタオルで顔を拭き、さっぱりして台所に向かうと村のおばちゃんが料理を作ってくれていた。
「おはようございます。」
「あら、妹さんかい。調査員さんと違って早起きだねぇ。それに本当に綺麗な子、都会でもこんな綺麗な子なんて見た事ないわ。」
「そんな。あっ、昨日の料理は美味しかったです。」
「ありがとうね。でも調査員さんの食べっぷりが見れないのは残念なのよ。また歓迎するから村に寄ってくれるように伝えておいてね。」
「はい。兄も喜ぶかと。」
ふむ。豚野郎も意外と人気なのだな。
罪な男だぜ。
少し早いけど朝食を頂くとしようか、待ちきれない。といっても、あまり量は食べられないんだけど。
お粥みたいな料理だった。
異世界だけど、普通に米のようなものがあるんだね。それにフルーツとか肉の塊とか野菜とか好きな物を入れて食べるスタイル。
フルーツをたっぷりと入れた。甘い朝食は賛否が分かれる所だけど、僕は割と好きだ。それでも豚野郎モードの時と比べて1割も食べれないんだけど。
「お前様、考えてみたのじゃが森の入口にエルフの村を作るのはどうじゃ?改良した悪魔馬車があれば必要な量の材木を運べるじゃろう。」
「いや、エルフの村は森の中に作るよ。それは変更無しだ。ここの大工に無理でも、もっと優秀な技術者を呼べばいいと思うんだけど。」
リリイは既に朝食をすませたらしく紅茶を飲んでいる。ロリババアの朝は早い。
なんかムッとした顔で見られた。なかなか鋭いな。
「ふむ。ならば妾の伝手で大工を探してみるとするかのう。しかし困ったのじゃ。」
「ありがとう、なにか懸念でも?」
美味しい。
小さな皿に綺麗に盛られた料理をちまちまと食べる。
「おそらくじゃが。どんな大工を呼んでも無理な気がするのじゃ。超技術を持った職人が必要なのじゃ。」
「やはり超技術か。」
超技術が必要だ。
だけど日本の知識だけでは足りない気がする。技術大国の日本ならば可能な気もするのだけど、ここは科学レベルが低いので、簡単にアイデアを再現出来ないのだ。
もっとこう魔法的なアプローチがいる。
魔法なんて分からないよ。
「どうしたのじゃ。」
「良いアイデアが出なくてね。何というかあと一歩、魔法的なファンタジーらしいアプローチがいる。これは僕だけでは不可能だ。だけど、日本では親に頼り異世界では皆に頼ってる。こんなに頼ってばかりでいいのかなと。」
リリイは笑う。
ちっぽけな悩みを吹き飛ばす。
「良いのじゃ。むしろ、妾はお主の特別な存在に成れる事を嬉しく思うのじゃ。」
「ありがとう。特別な存在・・・そうか!」
そうだ僕には異能がある。
というか異能しか無い。これを使わなくして道は無い。
超技術をアウトソーシングだ。
「ど、どうしたのじゃ。」
「超技術の解決策が思いついた。」
凄いよリリイ。
やはり人と話すのはいい。ご褒美に後でたっぷりと頭を撫でてあげよう。
「なんじゃと!その解決策とは。」
「この僕だけの異能の右手で超技術の職人、ドワーフを顕現させる。」
手袋を脱ぐと、右手を青い光りが纏った。キラキラと燐光が纏う。
どうやらこれが正解らしい。
わくわくとやる気に燃える僕と反比例し、リリイはやる気を無くして机に突っ伏した。どうしたのだろう。
「また・・ライバルが増えるのじゃ。」
ロリは、小声で何か言っているがよく聞こえない。主人公スキルの難聴が発動した!まぁ、いいか。
次はドワーフ狩りやでぇ。
主人公は誰がいい?
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豚野郎 ダスト
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美少女 ダストちゃん
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男の娘 ダスト君
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美男 Dust
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でぶ女 D