この世の全てを美少女に!   作:縛炎

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100 鉱山

 

 メンバーを集めて、机の上に地図を広げる。作戦会議だ。

 ダンッとダスト君は机を叩く。

 

「さて、エルフの村を作るためには、超技術を持った新しい仲間が必要という結論に到達した。だから今日はドワーフを探しにいくよ。」

 

 ちょっと強く叩きすぎてしまったようで痛い。痺れた手をさする。

 

「師匠、ドワーフって何ですにゃ?」

 

「良くぞ聞いてくれたピンク。ドワーフとは酒好きの超技術を持った背の低い力持ちの種族だ。主に炭鉱にいて鍛冶をしている事が多い。その超技術があればエルフの居住問題が解決すると思ってる。」

 

「ならば廃炭鉱が近くにあったはずじゃから、そこに行ってみてはどうじゃ。」

 

「イイね。採用だリリイ。それでは、廃炭鉱に着いたらソウルマーカーで探知し美少女化でドワーフを探そうか。」

 

 

 目的地があっさりと決まり順調に出発できると思われたが、フェアリーが、申し訳無さそうにもじもじする。ここに来て前提条件が崩れた。

 

「待って欲しいのだし。悪いのだけれど、赤の森からは、離れられられないのだし。」

 

 

 なん…だと。

 

 

「い、いや問題無いよ。気にしないで。別の方法を考えるから。」

 

 気遣うものの、ショックが隠せない。だってエルフ編みたいにだらたらと時間をかけて探すのは嫌だから。

 そんなダスト君に、助け舟を出したのは意外にもハクレン。

 

「御主人様、全力で行けば問題ないっす。」

「駄目なのじゃ、そんな事をすればライバルが増えて妾の希少価値が減るのじゃ。」

 

「うーん。・・・そうだね。その言葉で目が覚めたよ。覚悟が足りなかったのかも。ありがとう、ハクレン採用だ。リリイは諦めて。」

 

 嬉しそうにするハクレンと、がっかりするリリイが対照的だ。だけどダスト君はもう決めた。

 

「僕はもう、今日からは自重しない。ここからは制限するのでは無く美少女の可能性に任せると決めた。それにねリリイ、新キャラが増えても価値は下がらないよ。リリイの良さを僕は知っているし忘れない。もちろん他の皆の良さもだ。」

 

 さり気なくフォローして、新たな方向性に大胆に舵をきったダスト君は不要になった黒竜の革手を脱ぐ。

 制限の永久解除により、これからは望まない美少女化も起こり得る。

 コイシ ハクレン リリイ ピンク サラ ポニー。ぐるっと見渡す。

 

 暴発上等!

 

 この仲間たちとなら、どんな未来でも乗り越えられるはずさ。

 乙女達の楽園 全艦出撃せよ。

 

 

「皆、ドワーフを探しに行くよー!」

 

「「にゃーっ!」」

 

 

 昂ぶった気持ちが冷めやらぬまま、あっという間に廃坑へ到着。田舎のような一日に一本しか無いバスとは違うのだ。

 ハクレン達、馬娘はフットワークの軽さと異次元の速さを誇る。ハクレンの胸元には配達ギルド最速の証が誇らしげに輝いていた。

 

 廃坑の奥へとレールが続く。入口には打ち捨てられたトロッコにツルハシ。かつての栄光の残骸がそこにはあった。

 さあ、どれがドワーフなんだい?ワクワクする気持ちが抑えられず背中から飛び降り駆け出す。

 

「とりあえず片っ端から触ってみようか。ほあたたたた。お前はもう女になっている。」

 

 トロッコ ツルハシ レール スコップ 石炭 砂 雑草。決め台詞とともに外に放置された物に全て触って見たが、反応は無い。右手は光らなかった。

 

「お前様。やはり、奥へ行かんと駄目かのう。魔法を唱えてやるのじゃ。我等、全てを見渡す者。女神の契約に基づき光りと闇との区別なく現実を見せ給え、闇視。」

 

 メンバー達の目の周りが蒼白い炎で光った。でもそれ以上の変化は感じない。光ったが、それだけ。

 

「リリイ、何も変わったような感じはしないんだけど?」

「なんじゃと。洞窟の奥を見て見るのじゃ。闇視はライトなんかより有効な上級魔法なのじゃぞ。」

 

 言われて洞窟を覗くと、洞窟の奥まで違和感なく良く見えた。まるで灯りのついた部屋の中にいるような。トンネルのように暗い部分が一切無い。

 

「うん。凄いね?」

 

 凄いんだけど、便利すぎてよく分からないレベル。もう少し奥へ進んで困ってから使って欲しかったとダスト君は思う。

 

「お主、分かっておらぬじゃろー。」

「ハハハ。」

 

 てくてくと歩いたが似たような景色が続く。その辺の石ころに触ってみるものの反応はまだ無い。

 

「やはり、こうなると最奥か。ハクレン任せるよ。ゆっくりと進んで。」

「御主人様、了解っす。」

 

 ダスト君を再び背負いハクレンは廃坑の中を、ゆっくりと歩き出した。あくまでもハクレンの基準で。それを見て2人も真似をして後に続く。

 ハクレンはゆっくりと歩いている。速度は普段の10分の1も出ていない。

 だけど、それはダスト君が走るよりずっとずっと速かった。例えるならジェットコースター。びょおんびょおんと洞窟のゴツゴツした荒削りの天井が頭上を掠める。

 ちなみに遊園地と違い安全装置は無い。

 

「「ひぃぃいい。」」

 

 廃坑の中を乙女の悲鳴が木霊した。もう一度言うが安全装置は無い。この速度で削られるのは心か身体か。

 止まってくれと3人の心が一つになった。このままでは死んでしまうよ。

 

 からの急停止。

 

「「うぼぼぼ。」」

 

 ダスト君、リリイ、ピンクは、仲良くもんじゃ焼きを作った。

 ハクレン達も馴れたもので、お辞儀の姿勢で汚れを回避。困ったお客さんだと言わんばかりに。

 

「・・・ハクレン、着いたの?」

「御主人様、何かいるっす。」

 

 焦点の定まらない目で口元をハンカチで拭きながら、前方を見ると初めて会った懐かしのアイツがいた。

 

「ぐぎょ?」

 

 それは緑の魔物。ゴブリン。

 仲良く最下位決定戦を繰り広げた豚野郎の因縁のライバル。

 ダスト君は思わぬ再会にぷるぷると震える。ぎゅっとコイシちゃんを握りしめて、投擲した。

 

「こぉっの、くそゴブがあ。行っけえコイシちゃーーん。」

 

 投げられた尖った小さな石は、空中で可憐な灰色の髪をした大剣を装備した女の子になり、ゴブリンを一撃で真っ二つにする。

 ぶしゃーっ!

 緑の血が天井を汚すが彼女は汚れない。

 

 不愉快なゴブリンは何も出来ぬまま消滅し、素晴らしい初陣を飾った。

 

「やったんだよ。褒めて褒めて。」

「コイシちゃーん。」

 

 いつもと逆にダストが撫で撫でする。くすぐつたそうにコイシちゃんが身をよじった。「また出ないかな」と嬉しそうに言って小さな石に変身して戻る。

 進軍再開といこうか。

 

「ハクレン、次はもっともっとゆっくり歩いて。」

「了解っす。」

 

 褒めて貰えず、まさかの駄目出しまでされたハクレンは、しゅんとした。

 

 

 

 

 今度は、ほのぼのとペースを落とし特に何もなく、最奥に到着した。

 

「師匠、何も無いですにゃ?」

 

 しかしながら、そこにはピンクの言う通り見えるモノは何も無かった。

 

 

 行き止まり。

 枯れた鉱山の終着点。

 

 土質こそ変わったものの、期待出来るような予感は感じなかった。しかし、ダスト君は諦めない。足掻く。

 

 出来る事をするんだと。

 

 ひらりとハクレンから飛び降り決意を込めて、歩きだす。一歩一歩、行き止まりに向けて歩く。

 皆の視線を背中に一身に浴びながら、男の娘は背中で語る。

 

 諦めないと。

 

 言葉はいらない、行動で示すと。

 

「ドワーフ

 そこにいるのか?

 酒好きの土妖精

 エルフの対を成す者よ。

 

 力を貸してくれ

 世界が 僕が 必要としている

 

 顕現せよっ

 ドワーフゥゥゥ!」

 

 想いを乗せ、力の限り 行き止まりをぶっ叩く。右手よ光れ。

 

 バッチーン!

 

 

 右手の手のひらが赤くなった。

 

「いないのかよっ。」

 

 光らない。

 じんじんとした痛みだけが残る。手のひらも顔も真っ赤だ。ダスト君は涙目になった。

 

「お前様、良く頑張ったのじゃ。うんうん。諦めない心が大事なのじゃ。それに廃炭鉱は妾のミスじゃ。気にせんでええ。」

「師匠、ピンクは何も見て無いですにゃ。」

 

 

「・・・帰ろっか。」

 

 痛みを乗り越えて成長しろ。

 敗北から学べ。

 

 ドワーフ逃がさないよ。絶対に、僕が女にするんだから。

 男の娘は一つ経験を積み、決意を新たに拠点へと舞い戻る。

 

 

主人公は誰がいい?

  • 豚野郎 ダスト
  • 美少女 ダストちゃん
  • 男の娘 ダスト君
  • 美男  Dust
  • でぶ女 D

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