此処は火山。マグマが煮えたぎるこの土地に1匹の飛竜がいた。竜の名はティガレックス亜種、またの名を黒轟竜という。絶対強者として知られている轟竜ティガレックスの亜種で、火山のマグマの影響により体表が黒くなっている事からそう呼ばれている。通常種でも強靱な鱗がマグマによりさらに強固な物になっており、通常種よりもさらに強力な咆吼が特徴となっている。さらにはかなり好戦的で食欲も旺盛であることからハンターズギルドでも黒轟竜は一級の危険生物として取り扱われ、黒轟竜の狩猟に挑戦できるハンターも限られている。
そんなティガレックス亜種は、今
「ああ~~だりぃ~~暇だ~」
完全にだらけきっていた。
何故火山の食物連鎖の頂点にいるこの竜がこんなにも堕落しているのかというと、実はこのティガレックス亜種、かなりの面倒くさがりなのである。アプトノスを追いかけて無駄な体力を使うくらいであれば、フロギィ達の残した獲物をもらうほど面倒くさがりである。また、短絡的な性格をしているが、知能は意外と高く薬草の効能や木の実の使い方も知っている。
しかしながら強さは本物で、たまたま見つかった3人組のハンターに対して僅か10分で全員を気絶させてしまうほどの強さを持っている。(余談だが、その時ハンター達を回収しに来た猫タクアイルー達に手を振って見送るという余裕も見せた)
まさに絶対強者。しかし暴君ではないことから、火山に住む生物たちは恐れながらも彼と交流する者も少なくなかった。
そんな彼は今火山の麓で散歩をしていた。暇をもてあましすぎた結果、外に何か面白い物があるかもしれないという考えで火山の麓まで来ているのである
「あ~なんか面白いこと起きねえかな・・・ってなんだありゃ?」
彼の目線の先、そこには所々焦げ付いた毛玉が落ちていた。それは生きているらしく時折もぞもぞ動いていた。
「生き物か?つーか小っせ!俺の爪の半分くらいの大きさしかねえじゃねえか!」
慎重に爪を使いながら毛玉をひっくり返してみると、それは子供のアイルーであった。しかもそれよりもさらに小さい生まれて間もないアイルーまで背負っている。
「ニャ・・・」ハアハア
「ミュー・・ミュー・・・」
2匹はかなり弱っていた。大きい方のアイルーは火傷も負っており息もかなり苦しげであった。それは見たティガレックス亜種は。
「なんかかわいそうだから持って帰ろう!」ウン
持ち前の短絡的な思考であっさりと2人を巣へ連れ帰ることを決め、2人を口の中に入れると巣へと帰っていった。
巣へ戻ったティガレックス亜種は2匹のアイルーをはき出し、地震の寝わらに2匹を寝せた。
「とりあえず、大きい方の火傷には薬草塗ってっと」
的確な応急処置を施すティガレックス亜種。ハンターズギルドの人間が見たら間違いなく卒倒するだろう。
「ちっさい方は・・・怪我なさそうだしとりあえず寝かせとこう。あ!水持ってこねえと!」
ティガレックス亜種がてきぱきと2人を看護しているところへ大きな緑色の竜がやってきた。
竜の名は恐暴竜イビルジョー。ハンター達の間では貧食の恐王と呼ばれ恐れられており、生態系を破壊するほどの食欲を持ち、凶暴性も高いことからティガレックス亜種と同じく一級の危険生物としてハンターズギルドでは知れ渡っている。
「よう!黒ティガ!元気にしてたか?」
「おうイビル!久しぶりだな!」
しかしこのイビルジョーはティガレックス亜種と長いつきあいとなる知り合いであった。同じ強者として通じるものがあるのだろう。
「悪いなイビル、来てもらって早々悪いんだが今怪我人いるから手伝って欲しいんだけど」
「おう!何すれば良い?」
「とりあえず水と薬草、それからアプトノスの母親生きたまま連れてきてくれ」
「あいよー」
ズシン、ズシンと重量感のある足音を鳴り響かせながらイビルジョーは巣穴から出ていった。
その足音で気がついたのか、アイルー達が目を覚ました。
「にゃ・・・ここは・・・」
「ミュー・・・」
「俺の巣だ」
目の前にいきなり絶対強者の顔があるものだから
「ニャヒイイィィィィ!!!ティガレックス!食べないで欲しいニャ!」
「食わねえよ。腹減ってねえし」
大きな方のアイルーがびっくり仰天しているところへイビルジョーが帰ってきた
「おーい持ってきたぞ」
「ギニャーー!イビルジョー!!!」
「おおーサンキュー」
イビルジョーが手に薬草と水を入れた大きな木の実、そして
「食べないでください食べないでください食べないでください・・・」カタカタカタ
小刻みに震えるアプトノスの母親を口に咥えながら連れて帰ってきた。
「イビル、お前咥えてきてんじゃねーよ!怯えてるじゃねえか!」
「あれま」
「あれま。じゃねえボケ!あ、悪い奥さん。ちょっと頼み事があってだな」
「ヒィ!」
「コイツにミルクを分けてくれねえか?それおわったら帰してやるから」
「そ、そういうことなら」
「サンキュー!」
アプトノスの母親は怯えながらも小さなアイルーにミルクを与え始めた。小さなアイルーはよほどおなかが空いていたのか勢いよくミルクを飲み始めた。
「そういやお前、何であんなところで倒れてたんだ?」
「そ、それは・・おいら達の村が燃えて無くなってしまったからですニャ・・・」
「村?確か火山から比較的離れたところにあるはずだよな?」
「そうですニャ。火山から離れているから火山災害もほぼ皆無だったニャ。」
「じゃあなんで」
「それが・・・おいらにも分からないんですニャ。いきなり火山弾が大量に降ってきてあっという間に村は炎に包まれたニャ。」
「なるほどな。お前とお前の妹だけはなんとか逃げられたって事か」
「・・・あの子はおいらの妹じゃないないニャ。」
「どういうことだ?」
「あの子はおいらが逃げている最中に偶然出会った・・・と言うよりも託されたんだニャ。あの子の両親は炎に包まれながらあの子を守り抜き、そしておいらにこの子を託すと目の前で息を引き取ったニャ。」
「・・・なるほどな。そんで、お前これからどうするんだ?」
「火山じゃもう暮らしていけないのは明白ニャ。だから渓流にあるアイルー村で暮らしていこうと考えてるニャ!」
「それが良いだろうな。渓流だったら荒くれ者はあまりいないって聞くし」
アイルー達の今後の方針が決まったところで、小さなアイルーの食事が終わったのかアプトノスの母親は2匹に声をかけた。
「あ、あの、私はこれで・・」
「おう!っととそうだ礼をしてなかったな。おいイビル、お前の鱗2,3枚よこせ」
「いいよー」ベリベリ
「よいしょっと」ビリビリ
イビルジョーとティガレックスは自身の鱗を少しはぎ取るとアプトノスの母親へと渡した。
「ほらよ俺らの鱗だ。俺らの臭いが染みついているから雑魚共には襲われにくくなるはずだ。身につけとけ」
「あ、ありがとうございます」
「こちらこそありがとうだニャ!」
ぺこりと頭を下げるとアプトノスの母親は帰っていた。
「ということで、おいら達を渓流まで連れて行って欲しいニャ!」
「え~遠いな~」
「お礼ならいくらでもするニャ!」
「でもな~」
「あ、渓流のガーグァはポポにも劣らない絶品の肉だと聞いているニャ」
「いくぞおらぁ!さっさと準備しやがれぇ!!」
「ありがとうだニャ!」
「ミュー!」
「俺もいくー!」
こうして、ティガレックス亜種、イビルジョー、そしてアイルー2匹の奇妙な組み合わせは渓流へと向かった。
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