コハルは退屈していた。最近シンバルもティガレックス亜種もイビルジョーもミラボレアスまで仕事が忙しいと、あまり構ってもらえていないからである。キリンは久々に帰ってきたラージャンにべったりで、コハルは子供ながら気を遣い、1人で渓流を散歩していたのである。
「はあ・・・」
思わず出るため息、とぼとぼと渓流を歩いているとコハルの目にある物が飛び込んできた。飛竜種などとは異なる形状の銀色の翼。銀色の鱗に覆われた4本の脚。そう、天彗龍バルファルクである。大きさはかなり小さく、ドスジャギィ並ではあるが・・・
気になったコハルは声をかけてみることにした。
「こんにちは!私はコハル!あなたは誰?」
「ん?おいらはバルファルク。世界中を旅してる風来坊サ」
「そうなんだ!ねえ、今まで見た中で綺麗な所ってどこ?」
「んー・・・龍結晶の地カナ?」
「どんなところ?」
「すごくきらきらしてて・・・うーん口で説明するより見てもらった方が良いカナ」
そういってバルファルクは自らの背中に乗るようコハルを促す。コハルは嬉々として乗り込む。
「おいら飛ぶスピードめちゃくちゃ早いから、しっかり掴まってるんだヨ」
「わかった!」
バルファルクは翼を広げ、翼の噴出口から龍気エネルギーを放出しコハルと共に渓流から飛び立った。
・・・・・・・・・・・
・・・・・・
1時間ほどして、コハルとバルファルクは龍結晶の地へと降り立った。
「うわーきれい・・・」
古龍エネルギーが結晶化した龍結晶がいたる所にある光景に、コハルは思わず息をのむ。
「ここよりさらに奥に行くとさらに綺麗な龍結晶が見られるヨ」
「ほんと?いく!」
こうしてバルファルクとコハルは龍結晶の地のさらに奥地へと足を踏み入れた。
「すごい!さっきの所もきれいだったけど、ここはもっときれい!」
「だろう?ここは僕のお気に入りの場所なのサ!」
非日常的な空間にはしゃぐコハルと、どや顔で答えるバルファルク。しばらく歩いていたところコハルが何かを見つける。
「ねえ、あそこにで何か光ってるよ?」
「おろ、ホントだ。」
「いってみよう!」
「あ!チョットまって!」
それは他の龍結晶とは異なり発光している大きな光の塊だった。
「うーん・・・なんだろうこれ・・・」
考え込むコハルとバルファルク。
「すごいエネルギーだネ・・・まさか・・・!コハルちゃん離れて!」
バルファルクが叫んだ瞬間、光の塊から巨大なナニカが出てくる。ラオシャンロンにも劣らぬ体躯、青く発光し、エネルギーに満ちる身体。最近になって新大陸の調査団によって発見された冥灯龍ゼノジーヴァである。
「・・・・」
辺りを見渡すゼノジーヴァ。バルファルクは警戒を最大限にまで引き上げ、どうやったらこの場からコハルを逃がしてやれるのかを考えていた。するとゼノジーヴァは何を思ったのかコハルの方へとゆっくりと歩いて行く。
やがてゼノジーヴァはコハルの目の前まで来ると歩みを止めた。コハルはそんなゼノジーヴァをきょとんとしながら見つめる。バルファルクはいつ何が起きても良いように全身に龍気を巡らせ、臨戦状態へと移り変わる。
沈黙が場を支配する。そして数分後、先に沈黙を破ったのはゼノジーヴァだった。
「・・・ママ?」
「は?」
ゼノジーヴァの予想外な一言にバルファルクは間抜けな声を上げた。そんなバルファルクを無視して、ゼノジーヴァはコハルにすり寄る。コハルはそんなゼノジーヴァに多少驚きつつも頭に乗って撫でたりしている。
「ままーあそんであそんでー」
「うーん・・・もう遅いから帰らないと・・・」
「ままのおうちどこー?ぼくもいく!」
「うん、おいで!」
ゼノジーヴァは喜びながら巨大な翼を広げる。
「ちょちょちょコハルちゃん、連れて帰って大丈夫ナノ?」
バルファルクが慌ててコハルにそんな安請け合いをして良いのかと聞く。
「たぶん大丈夫!それにこの子一人じゃ可哀想でしょ」
コハルは自信満々に答える。バルファルクは本当に大丈夫かと思ったが、これ以上考えても仕方が無いと考えることを放棄した。
「じゃあ、おいらが先頭で飛ぶからついてきナ」
「わかった!」
自信満々に頷くゼノジーヴァ。それを見たバルファルクは上空へと飛び立つ。コハルを乗せたゼノジーヴァも少々もたつきながらも飛び立った。
・・・・・・
・・・・
一方その頃渓流では
「うーむ・・・コハルはどこ行ったかニャ?」
夕飯の時間となり、シンバルは食事を作っていた。いつもならコハルが帰ってくる頃だが帰ってきてない。
「只今戻りました。あれ?シンバルさん、コハルさんはまだ帰ってないのですか?」
「そうなんだニャ。もうそろそろ帰ってきてもおかしくないはずニャんだが・・・」
「そうですか・・・ちょっと心配ですね・・・」
「ササッサッササササ」(昼頃散歩に行くと言って出て行ったのは見たが・・・)
「コハルちゃん、どこに行ったんだろう・・・」
心配するキリンにイビルジョーがある提案をする。
「じゃあみんなで探しに行こうかーほら、黒ティガも行くよー」
「面倒くせえ・・・」
「コハル見つけるまで晩ご飯はナシだニャ」
「行くぞオラァ!秒速で見つけ出したらぁ!!」
シンバルの一言に俄然やる気を出したティガレックス亜種を筆頭に、何でも屋はコハルの捜索を始めた。
・・・・・・・・・
・・・・・
捜索を初めて数分経った頃、シンバルが何かを見つける。
「く、黒ティガさん・・・あっちから何か来るニャ・・・」
「ああ?」
シンバルの指さす方を見ると赤い光とそれよりも大きな青い光がこちらへ向かって飛んでくるのが見えた。
「あれは・・・赤い光はバルファルク君の物ですね・・・」
ミラボレアスが赤い光の正体を一瞬にして突き止める。
「バルファルク?あの猛スピードで飛ぶ古龍かニャ?」
「はい、間違いないでしょう。でもあの青い光は・・・あ!コハルさんいました!」
「ど、どこかニャ?」
「あの青い光、古龍です!コハルさん、あの古龍の頭に乗ってます!」
「「「何いいいいい!!!」」」
・・・・・・・・
・・・・・
数分後、2体の古龍とコハルは渓流の地に降り立った。
「ただいま!」
「お、おかえりだニャ。それで、そちらは・・・」
シンバルがバルファルクとゼノジーヴァを見る。
「おいらはバルファルク。世界を飛び回っている古龍サ」
シンバルの視線に気がつき、挨拶をするバルファルク。一方ゼノジーヴァは渓流の景色が珍しいのか、辺りをきょろきょろ見渡している。
「久しぶりですね。バルファルク君」
「あ、どうもミラ姉。お久しぶりっす。」
「単刀直入に聞きますが、一体あの古龍は誰なのですか?」
「ああ・・エエと・・・」
バルファルクはコハルと共に龍結晶の地へ行ったこと、そこでこのゼノジーヴァと会ったことを簡潔に説明した。
「なるほど・・龍結晶の地ですか」
「ソウソウ。その奥地で生まれたのがコイツ」
「どことなくムフェト君に似てますが・・・」
考え込むミラボレアス。するとゼノジーヴァはシンバルやティガレックス亜種達にようやく気がついたようで、コハルに聞く。
「ねえママ、この人達だれ?」
「私の家族だよ!」
ゼノジーヴァの質問にニコニコしながら答えるコハル。それに対して、何でも屋一同はゼノジーヴァから出たある単語を信じることが出来なかった。ティガレックス亜種が慌ててもう一度聞き返す。
「ちょ、ちょっとまてゼノジーヴァ。今コハルの事なんて?」
「コハルって、ママのこと?」
(あ、言うの忘れてたヨ)
きょとんとしながら答えるゼノジーヴァ。
「「「「「ママァァァァァァァァ?!?!?!」」」」」
その答えに対し、何でも屋一同の絶叫が渓流に響き渡った。
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