ティガレックス亜種たちが渓流に住み始めてから1っか月ほどたったころ、アイルー村に住んでいる板前アイルーからシンバルとコハルにユクモ村で買い出しをするからそれの手伝いをしてほしいという依頼があった。シンバルとコハルは二つ返事で了承し、ティガレックス亜種も行ってこーいとめんどくさげに返事をした。しかし、イビルジョーは
「コハルちゃん!絶対に変な人について行っちゃだめだよ!困ったら僕をこの笛を吹いて呼んで!一瞬で駆けつけるから!!!いや、これだけだと心配だからー・・・音爆弾と選考玉、そしてしびれ罠に落とし穴・・あとは・・・」
「うんありがとーイビルお兄ちゃん!」
「イビルさん・・・そんなに持って行けないニャ・・・」
コハルが心配なのかイビルジョーはあれやこれやをコハルに渡そうとするが、シンバルが全てをビシバシと断っている。唯一イビルジョーの鱗で作られた笛だけは小春が離そうとしなかった上、そこまでかさばるものでもない物だったため持って行くことになった。
「それじゃ行ってくるにゃ。報酬はこんがり肉を10個持ってくるから楽しみにしているにゃ」
板前アイルーがティガレックス亜種とイビルジョーにそう言うと、ガーグァの引く荷馬車シンバルとコハルを乗せ、ユクモ村へと出発した。
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シンバルとコハルはユクモ村に着くとすぐに、板前アイルーにつれられ、ユクモ村の食堂でご飯を食べさせてもらっていた。
「おいしいかにゃ?」
「美味しいですニャ!
「おいちー!おにーたんの料理と同じくらいおいちー!」
三者三様に食事を楽しむ中、食堂の外から喧噪が聞こえてきた。人と人が言い争う声だがどうやら様子がおかしい。凶は早くユクモ村から出た方が良さそうだと板前アイルーが考えていたところ、柄の悪そうな男達が食堂へと入るなり
「動くな!」
そう言って背中に背負っている達を抜刀し、切っ先をシンバル達の方へと向けた。
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シンバルとコハルは居り月の黒い荷車に放り込まれた。板前アイルーは盗賊の腕にかみつき、シンバル達を逃がそうとしたが、筋骨隆々とした男に森の方へと投げ飛ばされてしまった。
シンバルとコハルが乗せられた荷車にはユクモ村の子供達も乗せられていた。おそらく奴隷目的で売買される子供達だろう。皆途方に暮れ泣いている子供までいる。シンバルがコハルの方を見ると一心不乱にイビルジョーからもらった笛をならそうとしている。が、うまくならせないのか、掠れた音しか出ていなかった。
シンバルがなんとか荷車から脱出する方法を探そうと荷車の中を物色していると、奥の方で何かが光っているのを見つけた。
「何かニャ・・・?!」
シンバルが恐る恐る近づくと光の塊はピクリと動き、こちらへと向かってきた。こちらに近づくにつれ、その全貌がはっきりするとシンバルは驚愕のあまり言葉を失った。
蒼と白の体色。そして小さいながらも額から映える角。体格的にまだ幼体だろうが間違いなく幻獣キリンである。
「こんにちは。貴方も捕まったの?」
シンバルが固まっているとキリンの方から話しかけてきた。
「そ、そうだニャ。ユクモ村にお使いの手伝いをしていたところで捕まったニャ。君はどうして・・?」
「私はラーのおじさんと旅をしていたときに捕まったの。逃げようと思ったけど私子供だからこの鎖がちぎれなくて・・・」
シンバルがよく見ると、キリンの足には頑丈そうな鎖が何重にもつけられていた。
「おいらにまかせるニャ!」
シンバルは自身の爪を駆使して器用に錠前を外し、ものの数分でキリンにつながれていた鎖を外した。
「ありがとう!これで逃げられるわ!」
「それじゃあ早くここら出る方法を・・・って何かニャ!」
突然、地面を揺らす衝撃に荷車の内外は騒然となる。続いて、モンスターの咆吼が2つ。
「な、なんでやつがここにっ・・ひぃ!!」
「良いから早く武器を構えろ!」
盗賊達が慌ただしく武器を構える音が聞こえる。何が起きているのか分からないシンバルが荷車の隙間から外を見ると、そこにあったのは粉々にへし折られた盗賊達の武具。そして怒りに滾るイビルジョーと、黒と金色の体毛。大きく発達した腕部は赤色に染まっており、頭部からは大きな二本の角が生えている。シンバルが恐る恐るキリンに尋ねる。
「も、もしかしてラーのおじさんって・・・?」
「ラージャンだよ!」
元気よく答えるキリンにめまいがするシンバルだった。
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シンバル達が盗賊にさらわれる少し前、ティガレックス亜種とイビルジョーの元にかなりヤバい奴がきていた。大きく発達した腕の筋肉、黒色の体毛、そして顔から生える大きな2本の角。そう、金獅子ラージャンである。超攻撃的な性格と高い戦闘能力を併せ持つ大型の牙獣種で、古龍種でさえもラージャンとの戦闘は骨を折るとされている。
「んで、依頼はなんだ?」
「サッササッササササ」(訳:人捜しをして欲しい)
ティガレックス亜種が質問するとラージャンは身振り手振りで説明を始めた。このラージャン、過去に喉をつぶしてしまい声が出せなくなっているのだという。
「誰を探して欲しいのー?」
イビルジョーの質問に対し、ラージャンはジェスチャーで先程と同じように返答する。しかしその答えは
「サササッサササ」(訳:キリンの幼体だ)
「「は?」」
2人の目が点になる物だった。
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「一つ聞きたいんだが。お前とそのキリンの幼体との関係はどういう物なんだ?」
ラージャンはキリンの蒼角を好むことは人間達の間だけではなく、モンスター達の間でもよく知られている。だからこそティガレックス亜種とイビルジョーは絶句したのだ。
「ササササッササ」(訳:一緒に旅をしていた。家族のような物だ)
「どうしてはぐれちゃったのー?」
「サササササッササッサッサ」(訳:道中で人間に襲われた。なんとか追い払ったがキリンの子はいなくなっていた。)
「もしかしたらその人間達に攫われたかもしれねえな・・特徴とか覚えてるか?」
「ササササッササササッッサ」(訳:大きな剣の描かれた黒い荷馬車を引いていた。人数は10人以上はいた。)
「妙だな・・・ハンターなら普通4人でしか俺たちに挑んでこねえのに」
珍しく真面目な顔で思案するティガレックス亜種。考え込んでいるとイビルジョーがピクリと何かに反応し、巣から出てどこかへと行ってしまった。あっけにとられるティガレックス亜種とラージャン。するとそこへ板前アイルーが飛び込んできた
「大変だにゃ!!コハルちゃんとシンバルが攫われたにゃ!!!」
「あ」
そういえばイビルの奴コハルに自分の鱗で作った笛渡してたな・・・つーことはあいつら攫われたのか・・ティガレックス亜種は少し思案すると板前アイルーにこう質問した。
「奴らの特徴覚えてるか?」
「黒い荷馬車に金色の大剣のエンブレムがあったにゃ!」
「おい!どうやら利害が一致したようだから・・・ってあれ?なあ、さっきまでここにいたラージャン知らねえか?」
「さっき天井突き破って出て行ったにゃ」
板前アイルーが指さした天井には大きな穴が開いており、ティガレックス亜種は頭を抱えつつもその穴から外に飛び出していった。
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