蒸気機関車で女の子が異世界を旅する話   作:ちびだいず@現在新作小説執筆中

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結構話が飛ぶのはご愛嬌です
大嵐の塔攻略は次で完結かな?
基本的に10万字以内で最初の世界は完結させるイメージです。


11話

《Angriffraize!》

《Titan Faust!》

「いっけええええええ!」

 

 召喚した大地の守護神タイタンを召喚した私は、かなり力をつけてきた勇者ギャレンと協力して《白い双子》が召喚した魔獣を倒していた。

 これで、襲撃は5度目である。

 5度目ともなると、私も朱莉ちゃんも力をつけてきていたし、ギャレンさんも勇者として順調に成長をしており、《白い双子》の襲撃に対してうまく立ち回ることができるようになっていた。

 朱莉ちゃんは前線に出て私が思っていたよりも上手く戦えるようになっていたし、ギャレンさんも幾度もの死線を潜り抜けて勇者といっても過言ではないほど力をつけていた。

 さすがに、ルーカスさんみたいに次元を超えたような強さはないけれどもね。

 ちなみに、武器や防具はその街で一番のものを買いそろえているそうだ。

 

『面白くない面白くない! 何度邪魔すれば気が済むの?』

『私たちの邪魔をしないでよね!』

『黙れ! 《白い双子》! ここでおとなしく退場しやがれ!』

 

 目を追うだけでも精いっぱいの速度で戦うルーカスさんと《白い双子》は、私たちにしてみればいわゆる《ヤムチャ視点》という奴だろう。

 

『一度帰ろう。つまんない』

『【楔】の当て馬にされて嫌な感じ。帰って別の方法を考えよう』

『ちっ! 逃がすかっ!』

 

 ルーカスさんが追いかけるが、《白い双子》は虚空に消えてしまう。

 

『ちぃ!』

 

 ルーカスさんは舌打ちをすると、地面に着地してこの世界の姿に戻る。

 

「タイタン、ありがとう」

《契約に従ったまで。良い采配であった、契約者よ》

 

 タイタンはそういって、地面に溶けて消える。

 何度かの襲撃で私はタイタンとも契約を果たしていた。

 カードリーダーからタイタンのカードが飛び出す。本契約を結んだ召喚獣のカードは再度使用可能になるまでの間だけ色が白黒になるが、絵柄は消えないようであった。

 ちなみに、タイタンの試練は《正しい采配》だった。

 

「……しかし、お前らも成長したな」

 

 ギャレンさんは驚いた表情でそう言った。

 

「そうかしら?」

「ああ、ついこの間まではただの商人の娘かと思っていたが、今では前線で剣を持って戦うだなんて驚きだよ」

「まあ、剣はルーカスさんに教えてもらっているし、何より強敵と戦う機会が多いからね」

 

 得意げに話す朱莉ちゃん。

 私は完全に後衛なんだけどなぁ……。まあ、前線で戦うのは怖いけれども。

 朱莉ちゃんの動きは実戦で鍛えてきたおかげか、ちゃんと魔物と戦えるレベルである。

 魔獣も前回の奴よりも強い魔獣だったけれども、特に苦も無く倒せるのはこちらの成長速度が上回っているからだろう。

 

「そうか、まあ、確かにルーカスから習えばそれなりに成長しそうだよな」

 

 ギャレンさんは苦笑しながらそう言った。

 

「アカリは才能があるからな。教えているこっちとしても楽しいさ」

「そうなのか。まあ確かに短期間でド素人から戦えるまでに成長したのは驚くべきことだけれども……」

 

 朱莉ちゃんのステータスはすでに私の倍はある。魔法関連では私の方が突出しているんだけれど、戦闘系のステータスの伸びは朱莉ちゃんが突出していた。

 

「それより、ギャレンさんの次の目的地は決まっているの?」

 

 朱莉ちゃんの話に、ギャレンさんはうなづいた。

 

「ああ、レコンの村を魔物たちから救った時に聞いた話なんだが、どうやら魔王の住む島に行くために必要な3つの道具があるらしい」

 

 それは先代の勇者が魔王を討伐するために使ったアイテムらしい。

 アイテムの名前はそれぞれ「雨雲の杖」「太陽の石」「勇気の証」というらしい。

 

「……まんまね。まんま過ぎてびっくりしちゃうわ」

 

 朱莉ちゃんが呆れたようにそう言った。

 

「あと、必要なのは、魔王を倒すための武具だな。昔、伝説の勇者が装備していた武具がどこかで保管されているらしいとも聞いた」

「ロ〇の装備ね」

「伝説の勇者の名前はブレイドと言うらしいから、ブレイドの装備だな」

 

 ブレイドの剣……日本語に訳すと大変なことになりそうだなと思った。

 

「まあ、原作通りなら雨雲の杖は祠に、太陽の石は王城の地下に、ロ〇のしるしはメ〇キド南方の毒沼の中に落ちてるはずね」

「ん? そうなのか? 俺のきいた情報とは違うな」

「朱莉ちゃんは私の世界にあるゲームの話をしているから気にしないで! で、それぞれどこにあるんですか?」

 

 私が聞くと、ギャレンさんは答えてくれた。

 

「ああ、どうやら【大嵐の塔】の頂上に封印されているという伝承があるそうだ。俺はこれからそこを攻略しに向かうところだったんだよ」

「なるほどな。そこをあいつらに邪魔されたのか」

 

 ギャレンさんはうなづいた。

 

「だったら、急いだほうがいいかもしれないな。何か不穏なことを連中が言っていたし、重要な道具の回収は優先すべきだろう」

 

 ルーカスさんの指摘に、ギャレンさんは少し考えた後、こう提案してきた。

 

「お前ら、この世界を救うのが目的だよな?」

「ああ、基本的には現地勇者の──この世界で言ったらお前が無事に魔王を討伐できるように支援をするのが目的だな」

「……なら、棟の攻略を手伝ってもらえないか?」

 

 ギャレンさんの提案に驚く私たち。

 

「えっ?!」

「いやまあ、俺単独で攻略しても構わないんだがな。俺ではあの化け物の双子は太刀打ちできないし、棟を上っている最中に襲われれば、俺もあんたらも困るだろう? だったら、同行した方が話が早いだろう?」

「……」

 

 ルーカスさんがギャレンさんの提案にむつかしい顔をする。

 支援するのが仕事ならば、それもありだと思うんだけど……。

 私たちがルーカスさんを見ると、ギャレンさんの提案に答える。

 

「……そうだな、同行はしてもいい」

「え……」

 

 つまりは、私たちも一緒に棟を上るということになる。

 それはちょっと嫌かなぁ……。

 本当は魔物と戦うのも嫌だけれど。

 

「ただ、あくまで攻略するのはギャレン、お前だ。戦闘の支援については俺は手を出さない。それで大丈夫ならば同行しよう」

「ああ、それで構わないさ」

 

 私たちが置いてけぼりだけれど、断れそうな感じではない。

 

「ユリ、アカリ、丁度いい機会だ。協力して戦って経験を積んでおくといいだろう。それに、屋内の戦闘は屋外とはまた違った要素があるしな」

「は、はぁ……」

 

 これは【シュマリット】に乗って省略はできないのだろうか? 

 

「ルーカスさん、【シュマリット】で移動はできないの?」

「少なくともギャレンは載せられないな。塔を上ること自体が試練の可能性が高い。攻略できなければ《雨雲の杖》を入手できない可能性がある。それは俺たちにとっても困るだろう?」

 

 それはそうだった。ゲームとかでは試練の攻略自体がフラグになっている場合もある。

 たいていは塔の屋上にいるボスを倒せば大丈夫だけれどね。

 

「それに、得てして試練の場は外からの介入を拒む傾向にある。【シュマリット】での移動を弾かれる可能性もあるからな。おとなしくついていくのが得策だろう」

「うーん、まあ、そこまでいうなら……」

 

 おそらく、ここまで言うということはルーカスさんはそういうのを経験しているということだろう。

 そうであるならば私たちはおとなしく従う以外になかった。

 

「それじゃあ、ユリたちには準備も必要だろうし、塔の前で落ち合うことにしようぜ。塔の場所は……わかってるか?」

「ああ、それは問題ない」

「なら、そういうことで。よろしくな」

 

 そんなわけで私たちはギャレンさんと一緒に【大嵐の塔】を攻略することになってしまったのだった。

 

 ◇

 

 私たちは【シュマリット】で塔の前まで移動していた。

 リュックサックに食料なんかの道具を揃えて、キャンプをするための格好で臨む。

 何気に、購買部では日本で売っているような機材も売っていたため、そこで道具一式を購入していた。

 持ち込んだ際に現地仕様に変換されてしまうんだけれどね。

 結果、フライパン、包丁、おたまなんかは例えばテフロンなんかの技術はその世界では再現できないためそのまま付与されていたりするけれども、取っては木材に置き換わったり、カセットコンロは火おこし部分がガスから魔法石に置き換わっていたりする。機能としては変わってないので問題はないんだけれどね。

 リュックサックはプラスチックからこの世界における耐久性の高い素材に置き換わっていたりするけど、食材なんかはそのままであった。

 

「……準備万端だな」

 

 ルーカスさんにおどろかれるけれども、正直食材なんかは足りないなと思っていた。

 

「まあ、足りない分は現地調達できればいいんだけれどね。持ってきているのはこれでも二日分の食料程度だし」

「これは水か? ペットボトルはそのままみたいだが」

「ペットボトルを知っているんですか?」

「ああ、お前たちの世界にもある程度の知見は持っているさ」

 

 ちなみに、朱莉ちゃんも持っては来ているけれども、だいぶ軽装である。

 自分用の寝袋だったりするらしい。

 まあ、朱莉ちゃんは前衛だしそこまで荷物を持てないだろうということは想定できる。

 

「私はポッキーとかお菓子を中心に持ってきたわよ。そっちの方はあまりかさばらないしね」

「そういえば売店に売ってあったよね」

「そうそう。こっちじゃなかなか食べられないからそのまま持ち込めて助かるわ」

 

 朱莉ちゃんは腰に剣を、体に鎧を装備しているけれど、下に来ているのはキャンプ用品のアウターだった。

 靴もスニーカーでギャップがすごい。

 まあ、私もおしゃれ度外視でキャンプの格好をしてるしお互い様である。

 

「そういえば、ギャレンさんは……?」

「そろそろ到着するはずだが……」

 

 ギャレンさんの話題を切り出すとほぼ同時に、ちょうどギャレンさんが森の中から現れた。

 

「おぉ、お前ら久しぶりだな。先に到着していたのか」

 

 ギャレンさんが気づいたのか手を振って近づいてくる。

 久しぶり、というのは【シュマリット】の移動は実質タイムマシーンみたいに時間を調整して移動できるためだ。

 過去には飛べないらしいけれど……。

 ウーヴェさんに理由を聞いたら、【過去に観測された時間には干渉ができない】ということらしい。

 よくわからないけれど、タイムパラドックスとかそういうのだろうか? 

 

「ギャレンさんこそ無事到着したようで」

「まあな。さすがにこの近くまでくれば、大嵐の塔は一目瞭然だからな……」

 

 私はギャレンさんの目線を追って大嵐の塔を見上げる。

 塔の6階以上は黒い雨雲に取り囲まれており見えない。

 雨雲なのに周辺に雨が降っていないのは、魔力的な何かが雨雲を留めているからだろうか? 

 

「それにしても大きい塔ね……。一体何階あるのかしら?」

「さあな。王城でも4階建てだから、よくわからん」

「あの取り囲んでいる雨雲は、大丈夫なんですかね?」

「それもわからんな。ルーカス、何かわかるか?」

 

 ギャレンさんの質問に、ルーカスさんは首を横に振る。

 

「さあな。こういう系統の塔は何度か攻略したことはあるが、詳しい理屈なんかは結局わからずじまいだったからな」

「そうなのか……。そいつは残念だな」

 

 ギャレンさんは好奇心を満たせず少し残念そうであった。

 

 ◇

 

 塔の1階部分は、エントランスって感じのする広間だった。中央の柱には文字が書かれているように見える。

 

「あれは……?」

 

 ギャレンさんが疑問に思って文字に近づいた。

 

「……読めないな。古代語で書かれているみたいだ」

 

 私は……いや、私たちはばっちり読める。

 世界に役割を与えられる際に言葉に関して読書会話ができるようになっているらしい。

 私が読もうとすると、ルーカスさんに制されたので、NG行為なんだと呆れる。

 ちなみに、書いてある内容はこうだ。

 

【私の末裔よ。

 ここを訪れるということは、私が封印した魔王が再び出現したということだろう。

 私は魔王を倒すことは残念ながらできなかった。

 この大嵐の塔には雨雲の杖を封印してある。

 私の仲間の協力によって成し得た。

 魔のものにはとけない封印をしている。

 私の血を引くものだけが解くことができる封印だ。

 これと太陽の石、私の紋章を用いることにより、魔の島へ虹の橋を架けることができるようになる。

 世界をくれぐれもよろしく頼む。

 ──ブレイド】

 

 そんな重要なことは書いてはない……というか、ギャレンさんが集めた情報そのままであった。

 答え合わせみたいなものだろう。

 

「行こう。どっちみち答えはこの塔を上り切った先にある」

 

 私たちはギャレンさんの言葉に従い、後に続く。

 それにしても、この何階あるかわからない塔を足で登っていくのか……。

 そう思うと気が滅入ってしまう。

 エレベーターとかあればいいんだけれどね。

 

 道中、魔物が襲い掛かってきたりしたけれども、苦労することなく討伐できるので基本的にはギャレンさんがなぞ解きをするのを待っている感じになった。

 

「……なんていうか、RPGのなぞ解きの塔ってものすごく面倒くさいわね。作った人の気が知れないわ」

「一階一階上っていかないといけないもんね……」

「それに、私から見たらすぐに溶けそうな謎ばかりだしね。待っているのも退屈というか……」

 

 私たちは雑談していた。

 4階は大きな石を押して並び替えるなぞ解きだ。

 地面に色のついた魔法陣が配置されていて、そこに大きい石を押して並び替えるものらしい。

 ちなみに、私たちはルーカスさんから口出しNGをもらっているので、待っているという感じだった。

 

「……? こうじゃないのか……?」

 

 ギャレンさんはIQは110ぐらいな感じであると私は思った。

 私にすら答えは曜日に関係することを見抜いたというのに、いまだに悩んでいる感じだったからだ。

 7個の特徴的な形をした大きな石と色のついた魔法陣。

 曜日っていうのは私の世界だと太陽系の星々に関連付けられているけれども、この世界ではどうなんだろうね? 

 石の模様を見る感じだと星座に紐づけられているように見えるけれど……ギャレンさんはいつそれに気づくのだろうか? 

 

「……ルーカスさん、ヒントもダメなのかしら?」

 

 退屈すぎたのか、朱莉ちゃんがルーカスさんに尋ねる。

 

「ギャレンが聞いてきたならともかく、聞いてきていないならばヒントを与えるのはダメだろうな」

「そうなんだ……うーん、退屈ね」

 

 ギャレンさんは石を一生懸命押して移動させている。

 待っているだけってやっぱり退屈だよね。

 

「ん? アカリ、剣を構えろ。魔物のお出ましだ」

「え、どこ?」

「そこだ」

 

 いつの間にかリポップした魔物が、私たちに牙をむいていた。

 ……なんで人工物に魔物が出現するんだろうね、不思議である。

 

「知能の低い魔物だし、まあ、私たちには余裕ね。由利ちゃん、支援お願いね」

「任せて!」

 

 私は魔法カードをかざしてカードリーダーを出現させる。

 朱莉ちゃんは剣を抜いて構える。最初のころに比べれば、かなり様になっている。

 

「さあ、退屈しのぎになってもらうわよ!」

 

 私はすぐに朱莉ちゃんに攻撃補助魔法をかけると、朱莉ちゃんは飛び出して魔物と戦い始めた。

 魔物との戦いは割とすぐに決着がつく。

 描写をするまでもなく、朱莉ちゃんの剣と私の魔法で退治してしまった。

 

「わかった! 曜日だ!」

 

 ギャレンさんの声が響いたのは、私たちが魔物を討伐しきった直後であった。

 まだ4階なのに、結構時間を食ってしまったのは痛いだろう。

 2日分で足りなさそうだなーなんてことを私は考えていたのだった。


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