蒸気機関車で女の子が異世界を旅する話   作:ちびだいず@現在新作小説執筆中

13 / 17
13話

 ギャリンっと剣と剣がぶつかる音が響く。

 ギャレンさんがこの世界の伝説の勇者であるブレイドと戦っているのだ。

 剣の技量はあきらかにブレイドの影が上回っているけれども、ギャレンさんは意地で喰らい付いていた。

 ──正直、私には剣筋が早すぎて見えない。

 ある程度慣れてきたとは言っても、こんな超人的な動きを見る事は出来てなかった。

 

「す、すごいですね……」

 

 私がそういうと、ルーカスさんが同意する。

 

「ああ、短期間だがここまで成長したのは、さすがは勇者ってところだな」

 

 ああ、そう言えばルーカスさんも勇者だったね。

 

「だが、やはり押されているな。勇者ブレイドはさすがとしか言いようがないほど強い。《白い闇》に善戦するほどには技量があるんじゃないか?」

「基準が分かりにくいんだけど……」

「ああ、俺より数段は劣るが、世界によっては【剣聖】レベルと言われて称えられる程度には凄まじい技量だ」

 

 言われてもやっぱりよくわからない。

 いや、【剣聖】なんて言われても私には判断つかない。

 それは、朱莉ちゃんも同様だったようだ。

 

「……つまり、ルーカスさんよりは弱いけれど、この世界で最強って認識でいいのかしら?」

「剣の腕だけ見たらな」

 

 いまいちよくわからないけれど、勇者ブレイドはそれほど強いという事なのだろう。

 ギャレンさんが防戦一方なほどだと考えれば、勇者というのは人外なんだなと思う。

 

「ヤムチャ視点ってこう言うのを言うのかしらね?」

「そうかも」

 

 朱莉ちゃんに言われて、私は同意する。

 剣で戦う朱莉ちゃんがそう言う認識ならば、私にわからなくても仕方ないのだろう。

 ギャレンさんは剣を受け流しつつ、間合いをとると魔法を詠唱する。

 

「《ギガントフレイム》!」

 

 ドゴォと大きな音がして、爆発が起こる。

 その爆発を意にも解せず、影が突撃してくる。

 

「ちっ!」

 

 ギャレンさんは素早く対応する。

 だがやはり、対応が若干遅れるのか肌には何本ももの切り傷がついていた。

 

《そうらそうら! どうした!》

「ぐっ!」

 

 剣戟はしばらく続いた。

 明かにブレイドが勝っているのに、勝負がつかないのはブレイドが手を抜いているからだろう。

 剣とか腕とかが私には見えないので、見た感じの判断だけれどね。

 まるで、ブレイドがギャレンさんを訓練しているようにも見て取れるのは気のせいではないだろう。

 とは言っても、完全に私にはついていけない状態なんだけれどね。

 ……

 しばらく私たちが壮絶な剣戟を鑑賞していると、ブレイドがこう切り出した。

 

《さあ、決着をつけようか! 待たせているギャラリーにも悪いからね》

「くっ!」

 

 ブレイドはそう言うと、剣を構えた。

 

《さあ、我が奥義で華々しく散るがいい! 次の勇者に期待するとしよう!》

「うおおおおおおおおお!!」

《紅蓮鳳凰剣!》

 

 ブレイドの影の剣から炎が吹き出る。

 そのまま一気に間合いを詰めると、ギャレンさんを切り刻んだ! 

 

「「ギャレンさん!」」

 

 私達が悲鳴を上げる。

 炎に紛れて何が起こったかわからないが、あの攻撃がやばい事は直感で分かった。

 炎が晴れた時に、ギャレンさんとブレイドの影は二人とも剣を構えたまま立っていた。

 そして、ガラガラとギャレンさんの鎧が解体されて地面に落ちる。

 しかし、実際に倒れたのは、ブレイドの影であった。

 

「か、間一髪だった……!」

 

 ギャレンさんはそういうと、地面に膝をついた。

 

《よくぞ我が奥義を攻略した! 新しい勇者ギャレンよ!》

「はぁ……はぁ……」

 

 ギャレンさんはそれどころでないほどには怪我をしている。

 

《Magieraize》

《Anfänger Recovery-Magie──Ferse》

 

 私はヒールのカードをスキャンして、ギャレンさんにかける。

 既に試練は乗り越えたのだ、大丈夫だろう。

 私がギャレンさんを回復するのと同時にブレイドの声が聞こえた。

 

《では、君達を雨雲の杖の封印場所へと転送しよう》

 

 こうして私たちは光に包まれて、この闘技場を後にしたのだった。

 

 ◇

 

『あれあれ、もう来ちゃったの?』

『面倒くさいなぁ、もう来ちゃったの?』

 

 転送先で待っていたのは、《白い双子》であった。

 その手には杖が握られている。

 

「《白い双子》!」

『ざーんねん。この杖は僕たちが先に手に入れちゃった』

『ざーんねん。これは私たちのものだよ』

 

 ルーカスさんは戦闘モードになり、剣を構える。

 私はカードを構えて、朱莉ちゃんは疲弊したギャレンさんを守るような位置に立つ。

 

『横から掠め取るとはいい度胸だな、《白い双子》!』

 

 ドンっと音がすると同時に、ルーカスさんは飛び出した。

 

『残念無念また今度♪』

『いちいち【楔】に経験を積ませるわけにもいかないからね』

 

《白い双子》はルーカスさんの攻撃をぬるりぬるりと回避すると、すぐに撤退しようとする。

 私はバインドのカードを使う。

 

《Magieraize》

《Anfänger Zurückhaltung-Magie── Binden》

 

 発動した瞬間に、魔法陣が出現して拘束具が《白い双子》の片方を拘束しようとする。

 しかし、拘束をする事はできなかった。

 

『そんな弱い魔法に捕まるわけないよ』

『練習不足だね。出直してこーい』

 

 やっぱり、初めて使った魔法だからだろうか? 

 

『それじゃあね、ばいばーい』

『ふふふ、ばいばーい』

 

 まるで遊んでいるかのように全て回避した《白い双子》は虚空に消えてしまった。

 

『……チクショウ!』

 

 重要なアイテム雨雲の杖が奪われてしまった。

 彼らは最初からそのつもりだったのだろうか? 

 ルーカスさんは悔しそうに地面を殴りつけた。

 

 ◇

 

「さすがに、逃げに徹されるとどうしようも無いね」

「そうだな。しかしまさかあいつらがキーアイテムを狙うなんてな……」

 

 ガッカリしているルーカスさんに、私は疑問をぶつけてみることにした。

 

「ルーカスさん、あの双子って、どうやって移動しているんですか? 虚空に消えたりするって、【シュマリット】の移動と似ているような気がします」

「……ふむ、そうだな。フィリップに聞けば分かるかもしれないが、【シュマリット】と似たような理屈の何かを使っているのは間違い無いだろうな」

 

 ルーカスさんは難しい顔をする。

 

「そもそも、【破滅の案内人】の目的もわからないんですよね。世界を破壊する目的がわからないんですよ。《白い闇》は何か明確な目的があって行動しているように見えるんですけれど、《白い双子》の方は愉快犯? みたいな感じがしますし……」

「……言われてみるとそうだな。昔奴……《白い闇》に聞いたが、『自分たちの目的はこの世界の破壊だ』なんて気取った感じで言っていたが……」

 

 それは、おそらく小目標であって、本当の目的を達成するための必要なタスク……個人に与えられたノルマだと私は思った。

 つまり、【破滅の案内人】と言う組織の目的を達成するために、構成員に与えられたノルマが各世界の破壊なんだと思う。

 

「それは、《白い闇》に与えられたノルマなんじゃ無いかな?」

「ノルマ……ねぇ……。そう聞くと、あいつらが強大な悪の組織に聞こえるわけだが」

「その例えなら、【シュマリット】はさながらレジスタンスですね」

「間違いでは無いな」

 

 私たちが談笑していると、最上階を漁っていた朱莉ちゃんとギャレンさんが戻ってきた。

 

「雨雲の杖は取られてしまったが、防具や武器は無事だったぞ」

「結構いっぱいお宝が残っていたみたいね!」

 

 ギャレンさんはその新しい防具を装備していた。

 

「これはドラゴンスケイルメイル。武器の方はドラゴンバスター、それに、クリスタルソードだな。盾もこのドラゴンスケイルシールドだ。なかなか強そうだろう?」

 

 ぱっと見、小型の竜に見えるような装備である。

 ただ、RPG的に考えると次の敵がどんなモンスターなのかわかってしまう。

 

「次はドラゴンとでも戦うんじゃ無いのかしら?」

「私も思った!」

 

 朱莉ちゃんも同じことを考えていたらしい。

 

「そうか? まあ、わからないがこれでしばらくは戦えるな。他にもアクセサリーなんかもあったが……ユリ、これはお前にあげるよ」

 

 ギャレンさんはそう言うと、私にアクセサリーを手渡してくれた。

 ネックレスのように見える。

 

「魔導士のネックレスと言うらしい。俺よりも魔法の得意なユリが持っていたほうが良いだろうからな」

「あ、ありがとうございます」

 

 デザインとしては、ゴテゴテ感がある。

 私の手持ちの服では合わない感じがするので、そこまで嬉しくはなかったけれども、感謝はする。

 それにしても、ギャレンさんはどうしてアイテム名がわかるのだろうか? 

 

「なんでこのネックレスがそんな効果を持つと?」

「ん? ああ、手にした瞬間にわかるんだよ。そう言うものだろ?」

「……」

 

 この世界の住人は常時発動型の鑑定スキルでも持っているのだろうか? 

 勇者特有なのかはわからないけれど、まあ、そう言うものならば黙っておいた方がいいだろう。

 

「ありがとう、ギャレンさん」

「どういたしまして」

 

 今のキャンプ姿ならばデザインとかは気にならないので、首に下げてステータスカードを使うと、確かに魔法攻撃力と魔法防御力の値が上がっていた。

 基礎ステータスの後ろに《(+2)》みたいな感じで書かれている。

 

「私は戦士の指輪を貰ったわ」

 

 朱莉ちゃんは右手の中指に赤い宝石がハマった指輪を見せてくれた。

 

「ドライバーがあれば、遊べそうだけれどね」

 

 お腹に手を当てる朱莉ちゃん。

 あの掌が造形されたあのうるさい変身ベルトのことを指しているんだろうか。

 

「とりあえず、出口の魔法陣を見つけたから、外に出ようぜ」

 

 ギャレンさんの提案に、私たちは同意した。

 ……

 魔法陣に乗ると、一瞬で塔の1階の古代文字が書かれた掲示板前に飛ばされた。

 

「まあ、雨雲の杖は残念だったが、気にするなよ。な?」

 

 ギャレンさんはルーカスさんの肩を叩いて励ます。

 

「いや、こちらこそすまない。重要なアイテムを奪われてしまうなんて、俺の失態だ」

「だから気にするなって。それに、取り返すのは手伝ってくれるんだろう?」

「もちろんだ」

 

 ギャレンさんはニッと笑うと、握手を求めるように手を出した。

 

「この塔の攻略に付き合ってくれてありがとうな。俺だけだったら、最上階についた瞬間に殺されていたからな」

「いや、問題ないさ。お前が世界を救うのを助けるのが仕事だしな」

「まあ、何にしても助かったぜ。ありがとうな」

 

 ギャレンさんとルーカスさんは握手をする。

 

「ギャレンさんはどうするんですか?」

 

 私が聞くと、答えてくれた。

 

「そうだな、これから南に進む予定だ。そこに次のアイテムである【太陽の石】があるらしい。それを回収する」

「頑張ってくださいね!」

「ああ、必要ならばまた手伝ってもらうさ」

 

 ギャレンさんはそう言うと、真剣な顔に切り替わる。

 

「おそらく、あの邪悪な双子が出てくるのも、【太陽の石】を手に入れる瞬間だろうからな」

 

 私たちはうなづいた。

 

「それじゃあな!」

 

 ギャレンさんはそう言うと再び一人で旅立つ。

 雨雲の杖は奪われるのはあっという間だったので、私は《白い双子》が逃げられないような魔法を使えるようにならなきゃなと思ったのだった。

 カードセットの中身を確認すると、上級魔法にそう言う結界を張る魔法が存在する。

 だけれども、このカードはまだ私には扱うことができなさそうな感じがするのだ。

 使えばきっとうまく制御できない挙句に、カードは消滅してしまうだろう。

 私自身を鍛える必要があるなと改めて感じたのだった。




遅れて申し訳ないです!

こっちは小説大賞応募用で書いているので、第一部が完結したら(10万字超えたら)【波の尖兵】と【村娘勇者】の更新を再開しますので、もう少々お付き合いいただければなと思います。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。