蒸気機関車で女の子が異世界を旅する話   作:ちびだいず@現在新作小説執筆中

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17話

 結局、私は1週間の間大学の友達と普通に遊んでいた。

 アルバイトをしたり、友達とカラオケに行って飲みに行って、こっちの世界では1日だけれども私の感覚では1月の間の学生らしさを取り戻すために、積極的に遊んでいたと思う。

 まあ、待機している間にもたまに【シュマリッド】を呼び出して、朱莉ちゃんと一緒に新しい召喚獣との契約を結んだりもしてはいたけれど、基本的にほかの友達と遊ぶことがメインだったと思う。

 心の余裕もできて、久しぶりにイラストを描いたりもしていた。

 異世界なんて、インスピレーションの塊だしね。

 

 そして、1週間。

 私と朱莉ちゃんは合流して【シュマリッド】のカードを使って呼び出した。

 すると、例の汽笛が鳴り響き乗車口が出現する。

 気づけば、これで驚かなくなってしまったものである。

 

「じゃあ、行こうか朱莉ちゃん」

「ええ、英気は十分養ったわ」

「確か、北の砂漠で【勇気の印】を探すところからだったわよね」

「そうそう、確かそんな話だったわね」

 

 私たちが【シュマリッド】に乗車すると、扉が閉まり出発する。

 ちょくちょく来ていたので別に懐かしいとかそういうのは無いんだけれどね。

 談話室に入ると、ルーカスさんが居た。

 アイリスさんと一緒にいるけれど、私たちの姿を見ると手を振ってくれた。

 

『お、ユリにアカリじゃないか。そうか、もう3週間経ったんだな』

 

 ちなみに、ルーカスさんは暇をしていたわけではなく、他のメンバーのサポートを行っていたらしい。

 ルーカスさんは強いから仕方ないだろう。

 

「ええ、そろそろギャレンさんもアレキサンドリアに到着しているころですね」

『こっちもモニターしていましたわ。ディグラットの勇者は順調に旅を続けていたようですわね』

 

 それにしても、《白い双子》は何故自分自身で勇者を殺そうとしないのだろうか? 

 私は疑問に思った。

 

「順調に……ねぇ。ギャレンさんがルルさんを孕ませてなければいいけれど……」

 

 朱莉ちゃんはそっちの方が気になるらしい。

 異世界で……しかも、中世ヨーロッパみたいなところで避妊具が開発されているかも怪しい世界だからね。

 それに、英雄色を好むって言うし、ヤってればそれの結果が返ってきてしまうだろう。

 

『それは会いに行ってみればわかることだ』

 

 確かにそうだなと思いう。

 

『ま、まあ、お姫様は自分だけの騎士にあこがれるものですものね。特にピンチを助けられたのならば、吊り橋効果で勇者様に惚れてしまうのは仕方のないことですわ』

 

 アイリスさんの言う通り、ルルさんはギャレンさんに惚れているように見える。

 

「とりあえず、行ってみましょ。それが一番早いわ」

「契約の時に情報収集はしていたけれど、特に大きなうわさは聞いてませんからね」

 

 と、そんな感じでルーカスさんと合流して【ディグラット】に向かったのであった。

 

 ◇

 

 なんと言うか、暑かった。

 そりゃまあ、砂漠だから仕方ないんだけれど、とにかく暑かった。

 アレクサンドリアはオアシスを中心に発展した城塞都市で、王都よりも発展している感じがする。

 イメージはエジプトの大都市と言った感じだ。

 

「こりゃ、砂漠用の装備は購入した方がよさそうだな」

 

 ルーカスさんの提案に乗る私たち。

 そうじゃないととても暑くて普通に活動できそうになかった。

 私たちは砂漠用の衣装や道具を購入して早速装備する。

 影の部分が多くなり、元の私服に比べてだいぶ快適になった。

 

「それにしても、砂漠地帯は雲が覆っていないのね」

 

 朱莉ちゃんの指摘に私は空を見る。

 雲一つないカンカン照りの空模様である。

 遠くを見れば黒い雲が覆っているというにもかかわらず、ここだけ雲が覆っていないのだ。

 

「それが問題なんですよ」

 

 店主さんがそう答える。

 

「砂漠だとしても、雨が降る日もある。けれども魔王が出現してからはまるで雨が降らないんですよ。近くの河……恵みのライルもだんだん干上がって臭いにおいを放っているし、だれかどうにかしてほしいものですわ」

 

 恵みのライルとは、この都市のそばを流れている大きい河のことであろう。

 私たちが確認をしに行くと、確かにだいぶ干上がっている。

 このままでは数年以内にこの河は完全に干上がってしまうだろうことがわかる。

 

「砂漠の河ってナイル川とかもそうなんだけど生活用水で下水なんかも混ざっているから臭いのよね」

「確かに……近寄りたくないにおいをはなっているかも……」

 

 なんとなく、本来だったら【雨雲の杖】なんかでこの事態を解決するのかななんて思ったけれども、【雨雲の杖】は《白い双子》が持ち去って行方不明である。

 どちらにしても、ギャレンさんが……勇者が解決する案件なんだろうなとは思った。

 しばらく情報収集をしていると、勇者の活躍と言うのは嫌でも耳に入る。

 

 曰く、行方不明だったお姫様を見つけた(ルルさんかな?)。

 曰く、魔物に支配された街を解放した。

 曰く、魔物にさらわれていた人たちを救い出した。

 

 誇張された内容もあるかもしれないけれども、それでも人々を勇気づける内容の噂だった。

 

「噂の伝達具合から、次はこの町を勇者が救ってくれるに違いないという期待が高いことが分かったな」

「そうですね。……皆さん自分たちで解決しようとはしないんですね」

 

 私が呆れたようにそう言うと、ルーカスさんは首を横に振る。

 

「最初は自分たちで解決しようとするさ。だが、どの世界もほとんどは自分たちに太刀打ちできない魔物のボスが出てくる。だから、勇者に……最後の手段、最後の希望に託すしかないのさ」

「そんなものかしら?」

「ああ、俺が仕入れた情報だが、どうやら冒険者を雇って、恵みのライルの水源調査に向かったようだ。結果、冒険者は皆殺しにされて、都市長だけが戻ってきたらしいがな」

 

 まあ、普通に考えれば対処しようとするのは当たり前である。

 それから抜本的対策を何一つやっていないのは、都市長が魔物とすげ変わっているからだろうか? 

 私がルーカスさんを見ると、うなづいた。

 

「ああ、都市長が魔物と入れ替わっている話については調べている。十中八九間違いないだろうな」

「やっぱり……普通に考えたらそうなりますよね」

「ああ。都市長を調べていたら、魔物に襲われたから間違いないだろう」

 

 なかなかアレクサンドリアも大変なことになっているようであった。

 

「で、肝心のギャレンさんは?」

 

 朱莉ちゃんが尋ねると、ルーカスさんは小型のレーダーを取り出した。

 どうやら、勇者の位置がわかるらしい。

 

「……今日中には到着するだろう。何なら入り口に迎えに行くかい? 今頃魔物と操られた兵士が勇者をお出迎えする準備をしているはずだ」

「え、それって止めないと!」

 

 私たちは急いで街の入り口に走り出す。

 

「まあ、そう言うだろうなとは思っていたさ」

 

 ルーカスさんはうれしそうな表情をしながら、私たちの後をついてきた。

 

 ◇

 

 私たちが入り口にたどり着くと、丁度ギャレンさんが魔物と戦っている最中であった。

 そばにルルさんが居ない。

 

「せいやあああああああ!」

 

 ギャレンさんが剣で魔物を切り伏せる。

 砂漠用マントの隙間からギャレンさんの装備している鎧が見えるが、まさに勇者然とした鎧を装備しているように見えた。

 

「加勢するわよ!」

「うん!」

「俺も加勢しよう」

 

 朱莉ちゃんとルーカスさんが剣を構える。

 私はすぐに支援魔法を使って朱莉ちゃんとルーカスさんの強化を行う。

 朱莉ちゃんは魔物を、ルーカスさんは人間を倒していく。

 

「お前ら!」

「助けに来た」

「そうか、助かる!」

 

 私たちが魔物を討伐し、人間を気絶させ終えると、入口にギャラリーが集まっていた。

 

「ゆ……勇者様でしょうか……?」

「ああ、そう言われてはいるがどうしたんだ?」

 

 代表のような雰囲気をした男性がギャレンさんに話しかける。

 

「どうか、街をお救いください!」

 

 男性が懇願するようにそういうと、ギャレンさんは真剣な顔をしてこう答えた。

 

「詳しく話を聞こうか。ここじゃ目立つから酒場にでも行こうか」

「では、お連れの方も! ご一緒に!」

 

 私たちも同行することになったのは言うまでもなかった。

 

 ◇

 

 私たちが案内されたのは、【シュマリッド】の乗車口が出現しそうな建物と建物の間である街の裏側であった。

 その奥の、詳しい人でないと迷ってたどり着けないような場所にレジスタンスの秘密基地の入り口があった。

 ギャレンさんに理由を説明する街の人たち。

 まあ、簡単に言えば、私たちが集めた情報とそんなに差異はなかった感じであった。

 旅人であった私たちにも協力させるつもりだったのだろうか? 

 

「……なるほどな。それで、俺たちにその都市長が魔物にすり替わっていないかの確認と、すり替わっている場合の討伐・そうでない場合は問い詰めてほしいということだな」

「はい。ご理解いただけて幸いです」

「だが、それをどうやって確かめるんだ? 都市長に直接面会はできなさそうに感じるが……」

 

 ギャレンさんの言葉に、全員が困った表情をする。

 

「都市長の家や議会場は現在、誰も入ることができないのです。警備が厳重で、警備員が交代で見張っており、それはもうアリの子一匹すら通す気はないという感じなのです」

「……それほど厳重ならば、先に川の上流に向かった方が良いかもしれないな」

「は、はあ……」

 

 街人達は、それがどうつながるのかが今ひとつわかっていない感じだ。

 

「とにかく、この町は河の流れが止まるのが一番困っていることだろう? 先にそちらを解決できれば、解決することが困る連中を引き釣り出せるかもしれないからな。そっちの方を優先しよう」

「え、わ、わかりました。勇者様のおっしゃるとおりにしましょう」

 

 ギャレンさんはそう言うと、ルーカスさんを見る。

 

「ルーカス、大丈夫だとは思うが念のために、この町の連中を守ってくれないか?」

「それは構わない」

「あと、ユリとアカリを連れていく。大丈夫だろう?」

「わかったわ」

「わかりました」

 

 私たちはうなづいた。

 ぶっちゃけ、どっちが残っても問題ないだろう。

《白い双子》が出てくる恐れはあるけれども、出てきた場合は逃げればいいだけである。

 ただ、私の直感ではあるがこの件に【破滅の案内人】は絡んでいない気がしていた。

 

「それじゃあ、出発しよう」

 

 私たちはそれぞれ分かれて行動を開始した。

 

 ◇

 

 砂漠は暑かったが、ちゃんと準備をして横断したので、そこまで苦労することはなかった。

 初めての砂漠の横断だったけれども、水と日差し対策さえ万全ならば、ガイドをしてくれる人たちもいたので安全に横断できたのだ。

 もちろん、道中の魔物はギャレンさんと私たちで対処する。

 しばらく進んでいくと、川の源流につながる洞窟まで到着したのだった。

 

「ここが、恵みのライルの源流につながる洞窟です」

 

 洞窟からの河の水は、あまり流れ出ていない。

 跡を見ればかなりの水量があったことがわかるけれども、今はその半分も流れていなかった。

 ここから流れ出ている川の水は綺麗で澄んでいるように見える。

 

「雨量が減ったから流れてないようにも見えるけど……」

「実際どうなっているかはわかりません。我々はこの先に進んだことがありませんので……」

「なら、それの調査も込みでやろう。行くぞ!」

 

 私たちは洞窟の中に入る。

 しばらく進んでいくと、強そうな魔物が出現した。

 翼の生えた悪魔みたいな見た目の魔物で、こちらの言葉を理解しているようであった。

 

「勇者ガ来タゾ!」

「愚カナ勇者ガ来タゾ!」

 

 ギャレンさんは剣を抜く。

 

「やはり魔王の手先か。ならば押し通る!」

 

 ギャレンさんは手慣れたように戦闘に入る。

 

「ギャレンさん、話が通じるなら……」

「聞いても無駄だ! こいつらは操り人形みたいなものだからな!」

 

 魔物を切り伏せながら、ギャレンさんは答える。

 それならばと、私もカードをドローして、魔法の攻撃を放つ。

 朱莉ちゃんも、剣を抜いて戦いに参加する。

 戦闘はあっけなく終了する。

 ギャレンさんは剣を収めながらこちらに向き直る。

 

「この水不足は意図がわからないが魔王の指示のようだな。この事態を操っている魔物は強いから、心しておけよ」

「そうなんだ」

「ああ、こういう事態にはここに向かう道中で何度も経験したからな。あいつら……俺はスモールデーモンと呼んでいるんだが、出てくるならば間違いないだろう」

「ひぇぇぇぇ」

 

 ついてきている人たちが恐怖で震える。

 

「お前らもついて来いよ。待機しても魔物に殺されるだけだからな」

「は、はいぃぃぃ」

「アカリ、連中をしっかり守ってくれよ」

「任せてもらっていいわ」

 

 そんな感じで私たちは洞窟を攻略していく。

 いわゆる、ゲーム的なぞ解きは存在するのだけれど、ギャレンさんが容易く攻略していくので、私たちの出番は手数が足りないときのお手伝い程度だった。

 肉体労働がほとんどなので、なぞ解きはそこまで楽しいとは思わない。

 道中で出てくる魔物とも戦わないといけないので、めんどう臭い手間が増えるだけであった。

 そして、一番奥の水源まで到着した。

 道中で森の中に突入し、いくつか水源が分岐していて、何本も水流がなくなっていたので、封印されてしまっていると思われるが、ギャレンさん曰く、

 

「先に大物……一番主流の水源の封印を解いてしまうのが一番だろう。そこに大物もいるだろうしな」

 

 と言うことであった。

 そして、ギャレンさんの推測通り奥には強そうな魔物と、頭のキレそうな魔物が待ち構えていたのだった。




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