今回は前回の次回予行のようにはならないと感じます。
そこをご留意してお読み下さい。
また、追加事項として今リアルの方で忙しいので投稿もそんなに早くできるとは限りません。
それではどうぞ!
目を覚ますと、既に神座無慙はいなかった。
小屋から出て空を見上げると太陽からもう昼過ぎになるかと見て取れた。
村長の屋敷へ向かうと、村長にそのまま屋敷の中まで案内された。
「ほほほ。彼なら早朝に出かけるのを見ましたよ。凄い仕事に熱心な方ですねぇ」
「…え?」
彼なら早朝に眠りに入ったはずだ。
小屋に戻った時、まだ太陽は見えていなかったが空は白み初めていた。なのに早朝から出掛けたというのは、1時間も寝ていないのでは。
そう考えていると。
「私らは朝が早いですからねぇ。太陽が昇ると同時に起きるんですよ」
考え込む姿を見て勘違いしたのか、朗らかに言ってくる。訂正するのもあれだからと胡蝶しのぶはそれに対し曖昧に微笑み返した。
さて、次は仕事だ。置いていかれた以上単独で山で探索を行うのは危険行為だ。
ならば、私は村を守るためにこの村を中心に活動しようと決めた。
「何か手伝えることはありませんか?昨日、彼着いていって分かったのですが、まだ山に入るのに慣れていなくて…」
「なんと、こんな若いのに…。彼も酷いお人ですね」
「いえ、私が慣れてないのが悪いんです。これからもっと山に入る頻度も多くなるかもしれないので…」
昨日のやり取りを思い出して俯く。
昨日は確かに私が着いていくことに容認はしていた。けれど、途中でついて行くのが無理だと分かった途端これだ。
簡単に置いていかれた。
俯いている私を見かねたのか村長は先程よりも優しく提案を出てきた。
「なら、編み物などの手伝いをして貰いましょうかね。お嬢さんも手先が器用そうだし大丈夫そうだね」
編み物は思っていた以上に手先の集中が必要な作業だった。
教えてくれる村の女性たちはこれが村の収入源のひとつに入るのだそうだと教えてくれた。
村の収入源は生きていくことで必要不可欠である以上手を抜くことは許されない。
幸い周りは優しい人達ばかりで丁寧に分からないところは教えてくれる。
休憩時間はわざわざお茶まで入れてくれて、村の女性たちと話しながらその周りではしゃぐ子供たちを眺めていた。
「や〜!しのぶちゃん本当に手先が器用ね!」
「ほんと!ほんと!」
「いや〜若いのって羨ましいわぁ」
女三人寄れば姦しいとはこのことか。
失敗は許されないと集中しているのに周りでは女性たちがこれ幸いと胡蝶しのぶのことを褒めまくる。
「い、いえ…周りの皆さんと比べると私なんて」
「いやいや!そんなことないよ!私がしのぶちゃんの頃はねー.......」
少しでも謙遜すればこうだ。
作業を初めてからしばらくは皆集中していて作業の音と息遣いしか聞こえなかったが、休憩を挟んでからはだんだんお喋りになってきた。
こうしてなかなかこうした人付き合いに慣れていない胡蝶しのぶも四苦八苦しながら2日目の夜を迎えた。
夜、胡蝶しのぶは共に作業をしていた女性のうちの1人の家で夕飯をご相伴に預かっていた。
夕飯を済ませたあと、皆から心配されながらも小屋へ戻っていった。
ここからは鬼殺隊の夜だ。
昼間の意識から切り替えて鬼を殺すように息巻く。
ただ、しばらくはここで待機であろう。
今から村を巡回しても何をしているんだと怪しまれるだけだ。せっかく村人とは交流を深めることが出来たのでここで先に悪影響を与えるような真似はしたくない。
少し空いた時間で装備の確認を行う。
鬼と対峙した時、万が一のことがあってはいけない。
一瞬の隙で鬼はそこに喰らい付いてくる。
そうならないために丹念に準備をしていく。
しばらくして村からだんだん人気が少なくなってくるのを感じた。
そろそろ頃合だろう。
刀を腰に携えて小屋から出た。
なるべく人が入ることが少なそうな場所を中心に回っていく。
極々まれに人が歩いているのが見えるが注意して隠れれば何の問題もなかった。
そうしているうちにだんだん空が明るくなり始め、2日目の夜も何も起きずに終わった。
胡蝶しのぶは小屋に戻り、寝る体勢に着くとそのまま眠らずに目だけつぶる。
全然確証はないがもしも昨日と同じだとすれば、もうそろそろ神座無慙が戻ってくるはずだ。
多分彼は今回も山に入り探索を続けているのだろう。昨日の様子では鬼は見つからなかったようだし。
そう考えているうちに小屋の戸が開かれた。
考え事をしていたせいで戸が開けるまで気が付かなかった胡蝶しのぶはビクッと身をすくませる。
神座無慙はそのまま昨日と同じような体勢で眠りについたと思われる。
今日も同じか…と思ったが、そこで昨日とは違う点に気が付いた。
それは匂いだ。血の匂い。
考えられるのは一つだけ、鬼である。
だとすれば今回の任務はこれで終わりだろうか。しかし、昨日と全く変わらない神座無慙の様子にそれは違うと自身の感覚がそう告げている。
思考に陥っていると、神座無慙が動き出す。
そのまま小屋の外へ出るとそのままどこかへ行ったようだ。気配がだんだん遠のくのが分かった。
そのまま身を起こすと、やはり荷物がまだ無造作にそこに置かれていた。間違いなく彼のものだ。
ということはまだ終わっていないということだ。
昨日とは違いそんなに体力も消耗はしていない。このまま眠りにつくよりも仮眠をとる程度で十分だろう。
そして、また村からなるべく情報を集めるようにしないと。
そう思いながら胡蝶しのぶは壁際まで寄ると神座無慙のように壁に背を預けながら休息をとり始める。
次はなにか進展があればいいと願いながら、思考が暗く染まっていく。
だが、3日目、4日目と村の方では進展はなかった。
「どうしよう…。」
このままでは非常にまずいと胡蝶しのぶは焦り始める。
鬼を退治するのにこんなに時間がかかっては他の場所で被害が出ても有り得なくない。むしろ出ない方がおかしい。
唯一の手掛かりといえば神座無慙だ。
毎回怪我をおった様子もなく消耗している素振りも見えない。
ただ日に日に血の匂いが濃くなっている事だ。
しかし、血の匂いが濃くなっているということは鬼は複数体いるということか。これだけ時間がかかるということは散り散りに逃げた鬼を確実に退治する為だとすれば辻褄は合う。
だとすれば私も手伝った方がいいのではないか?
そうすれば多少は早くは事は終わるだろう。
なら手伝いない手はないことはないだろう。
そうと決まれば善は急げだ。
4日目。夜の見回りが終わった後、胡蝶しのぶは小屋に戻った後、寝ずに彼を待っていた。
そろそろ帰ってくるころだろう。
そう思いながらも、ただ情報を聞くためだけど緊張はしていた。
1日目の昼間、山で探索していた時に意見が食い違った時に見たあの目を思い出すと少し身が竦む。
彼の目は普通ではああはならない。
そこに至るまでに凄まじい過去があったのだろう。
そうして、そうこうしているうちに小屋の戸が開かれた。彼が帰ってきたのだ。
近づいてくる彼の姿に違和感を覚えた。まだ、太陽が昇っていない薄暗い小屋の中で目を凝らすと、何となくだが分かった。
返り血を浴びているのだ。
返り血と共にいつもの血の匂いを連れてくる。
そんな彼に意を決して声をかける。
「お疲れ様です。鬼はどうでしたか?何か進展はありましたか?」
答えてくれるとはあまり思っていない。
村で最初会った時からほとんど会話を交わしていないのだ。
ただ多少なりとも情報が欲しい。この焦りを少しでも減らせれば、身体の疲れも気持ち程度だか軽くはなるだろう。
既に4日過ぎた。昼間は村の手伝い。夜は村の巡回。これではあまり休息をとる機会がとれない。
自分でも分かるくらい身体が疲弊しているのが見て取れる。
せっかくの情報源を逃しはしないと神座無慙を睨む勢いで詰め寄る。
少しの間の沈黙。
先に口を開いたのは神座無慙のほうだ。
「
驚いた。
彼が口をきいてくれるのではなく、鬼を既にそんな数を屠っていたこと。そんなにも鬼がいたことにだ。
血の匂いが濃くなるのも道理だ。
だが逆に、まだ鬼が複数体残っているということが言える。
やはり私も手伝った方がよいのでは。
そう訪ねると。
「要らん。邪魔なだけだ」
やはりか。しかし、鬼が実際にいると分かったのでは、はいそうですかと引くわけにはいかない。
「残念ですけどそうはいきません。最低でも村だけは守らせていただきます。鬼が出る以上、人がいる場所には来るので」
そう言ってニッコリと微笑む。
「なら、そこは徹底してやるがいい。今の貴様ではせいぜいそこらが精一杯だろう」
カッチーン。
笑顔に青筋が立つ。
元々胡蝶しのぶは感情を表に出しやすい性格だ。
このような言い方をされて黙っていられるわけはない。
「(落ち着いて。感情の制御ができないのは未熟者…未熟者です)」
深呼吸をひとつ。
姉からの助言を思いながら感情を抑える。
こんな所で言い争っても意味は無いのだ。
だが気付けば神座無慙は眠りについていた。
それがさらに胡蝶しのぶの怒りに油を注ぐことになった。
怒りの原因は既に寝ている以上喚き立てても意味が無い。さらに村の住人にも迷惑だ。
そのままその日は怒りで眠りにつけずに朝を迎えた。
その日も村の手伝いをし終わったあと、村人のとある一家で夕飯に誘われていた。
そこでは早朝の出来事を全部は言えないので掻い摘んでだか愚痴を零していた。
そこの一家の雰囲気が良かったのか普段よりも少し饒舌に話す胡蝶しのぶ。
「ありえないんですよ、彼。手伝える事はありませんか?と、聞いても要らん、邪魔だとしか言わないし…」
家の人もあらあら、と微笑ましく応えてくれる。
胡蝶しのぶは唯一の肉親である姉を1人残して両親を鬼に殺されている。
一家の団欒の雰囲気に呑まれたのか、疲れが表までに出てきたのか、だんだん眠気に襲われ始める。
「おや、随分眠そうだね。今夜はうちで寝なさい。大丈夫。部屋の空きならあるから。あの小屋で過ごすのも疲れるだろう?」
家主が優しく声をかけてくれるが、眠気に勝てずに徐々に意識を失っていく。
少しした懐疑心が生まれてくる。疲れているとはいえこんなにも眠気にさそわれるのだろうか?
そして、最後に意識を失う前に見たのは悪意に染った笑顔だった。
ふと、顔をあげるとそこは小屋の中だった。
こんな所で寝たかしらと思い立ち上がろうとしたが、動けない。
よく見ると小屋の柱に縛られている。
そう認識した瞬間、自分の刀を探し始めた。
ない。
腰に携えていた刀がない。
「おやおや。ようやくお目覚めかい?鬼狩りの嬢ちゃんよぉ」
声のした方へ顔を向ければ、そこに居たのは先程の家主だった。しかも私の刀を持っているではないか。
「それは!それは、私のものです。危ないので返してください」
そうは言ってみるもの家主はニヤニヤ嗤うだけ。
さらに今、なんと言った?鬼狩りの嬢ちゃん?
なぜこの人が知っている?この村に来てからは一言も鬼殺隊に所属していることは言っていない。なのになんで?
私が混乱しているのが分かったのか、機嫌が良さそうに言ってくる。
「これはな?あのお方が教えてくださったんだ。『今、この村には鬼狩りが入り込んできている。排除するのに協力すれば、上の立場を儲けよう』と仰ってくださってな!」
「あのお方?」
「そうだとも!お前らが鬼と呼んでいるものだ。お前は簡単に捕まえることが出来たからな。苦労はしたぜ?なんせ食事に薬を混ぜても効きやしない。ようやくこうして捕らえることが出来たんだ」
「…くっ!今すぐこの縄を解いてその刀を返しなさい!鬼は人を襲います!早くしないと村に被害が!」
体を揺するが縄は思いのほかしっかり結ばれているせいかビクともしない。
それを見て家主は嗤う。
「ははは!そんなことしても無駄だって!あのお方がお前を餌にあの男諸共殺してくれるさ!」
あの男…神座無慙共々?
彼の実力は分からないが私よりは確実に強いのは分かる。
しかも私を餌にする?それであの男が助けに来るとでも思っているのか?
山での出来事でもう分かっている。そんな彼が私を助けに来てくれるのか?いや有り得ない。
そう思いながら家主を見遣る。
そんな私を怪訝に思ったのか表情が曇るが直ぐにニヤニヤした顔に戻る。
「なんだ?もしかしてあの男が何とかしてくれるとでも?ははは!これは傑作だ!あのお方がっ…………ごふっ」
いきなり家主の胸から赤く染った刀の切っ先が生えてきた。
そのまま向こう側へ刀が戻っていく。
「...は?」
「え?」
両者ともに驚愕が走る。
家主は自身の胸の傷を見ながらその言葉を最後に身体が崩れ落ちる。
瞬間、その身体と頭が別れた。
落ち崩れる亡き別れた身体のその向こう側にいた。
血を前進に浴び、死の匂いを纏わり付かせた男が。
幽鬼のごとく神座無慙がそこに立っていた。
〜大正コソコソ噂話〜
しのぶ「神座無慙さんは、日中も夜中もずっと山の中で探索を続けています。凄い体力ですね」
無慙「次回『滅尽滅相』」