錬鉄の英雄 カルデアを行くwith騎士娘   作:亀さん

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錬鉄の英霊 新たな仕事はじめました

 

「うぉ、今日はいつもより強く吹雪いてないか?」

「あぁ、そうかい。俺にはいつも吹雪いているから全然違いわかんねぇよ」

青年がとても巨大な窓ガラス越しに外を眺めてそう言うが、横で缶コーヒーに口をつけていた青年は興味なさげに答える。

 

「ちっ・・・・・。もう飲んじまった・・・・」

最後の一口まで飲み切ってしまい青年はゴミ箱へ空き缶を投げ捨てる。

「ったく・・・・。せっかく訓練合間の休養日だってのに、ここじゃ遊ぶなんてできやしねぇからなぁ」

「かわいい子でもいればまた違うんだが」

 

青年たちがいるのは人理継続保証機関フィニス・カルデアの建物の中。

簡単に言ってしまえば過去・現在・未来を通して人類の歴史が将来的に存続していることを確認することで、人類がこの惑星で生存していくことが可能であるという保証をするという計画を遂行中の機関である。

基本的には研究施設であり、娯楽はあるものの数が限られているためほかの職員が使っていることが多い。

使うために待つのもめんどくさい彼らは自然と廊下にやってきて中身のない話を繰り返しているのだった。

 

「あ、そういえば・・・・・。今日補欠組がやって来たんだってよ」

「あれ、今日だったっけ。ブリーフィングルームの掲示板見てなかったから知らなかったわ」

「前から思っていたんだけどよ。補欠組が来る意味あるか?」

「まぁ俺たちの中から離脱者や殉職者が出た時の保険で集めているんだろうけどな」

このフィニス・カルデアには歴史を正常に継続させ、人類の絶滅を防ぐという大命が課せられているために、時計塔という魔術師たちの総本山の中でも強力な勢力を誇るアニムスフィア家の当主を中心に、魔術師、技術士の中でも選りすぐりの専門家を集めている。

当然計画の中心になる実働部隊であるマスターたちも実力と人類の歴史、人理の継続に力を貸してくれる古今東西の英霊をサーヴァントという使い魔として召喚し従えるためのマスター適正、そして突如として現れる人類史を大きく変えかねない歪み、所謂特異点に直接介入するための現在ただ一つの方法であるレイシフトへの適正が軒並み高い者が選ばれている。

すでにカルデアにやって来て訓練を受けている彼らはその選抜に最初から選ばれた者たちであり、補欠組は言葉の通り、万が一欠員が出た時の穴埋め要因である。

そのため、特に任務に参加する上で最低条件である、レイシフトと呼ばれる、魂を霊子データへ変換して特異点へ送り込み実質的なタイムトラベルを可能とする技術への適性が高い者を最重要視して集められたために、魔術師、民間人関係なく集められている。

そのほかの部分はおざなりで、戦力になればいいというくらいの意味で集められているために魔術師としてあまり実力が高くないか、ひどい場合ここに連れてこられるまで魔術のまの字すら知らないという者も混ざっているという。

 

「まぁ調査はAチーム主体だしな。出番が有るって言っても俺らBチームまでだろ」

「じゃあこれから来る奴ら出番があるかどうかもわからないのにこんなところに閉じ込められるのか?」

「まぁ魔術師じゃないやつも混ざっているって話だしな。むしろ出番があったらかわいそうだろ?」

「それもそうか。って、噂をすればあいつらじゃねぇか?」

話していた青年たちが騒がしいほうに目を向けると、青年たちと同じデザインの、真新しい白を基調とした制服をどこか着慣れない様子で身にまとっている男女30名ほどが職員に先導されて廊下を歩んでいた。

 

「なんだあいつら。まるで観光客のようじゃないか」

周りへキョロキョロと目を向けている彼らを見て、青年たちはすこし馬鹿にしたように笑う。

魔術師ではない人々と過ごすことにある程度慣れてきたとは言え、青年たちのように元々魔術師の家系出身である魔術師たちは魔術師であることに誇りを持っており、逆に魔術師として出来損ないである者や魔術が使えない者を見下す傾向がある。

だからこそ、青年たちの価値観でいえば目の前を通り過ぎようとする30人程度の男女は自身よりも下等な生物であり、実家の教育方針でそのように育てられた彼らからしたら同僚というよりも下僕や召使に近い存在であった。

 

目の前を通る男女を品定めするような目で見ていた青年たちは、集団の最後方をついていく二人組に目を付けた。

一人はかなり小柄でふとするとまだ10代前半にも見える金髪碧眼の美少女。

もう一人は赤銅色の髪が特徴の東洋人の少女である。

「お、あいつなんかいいんじゃないか?」

「どれどれ・・・・・・。体形は残念だけど、顔は抜群だな」

「その横にいる女も東洋人だけど胸はめっちゃでかいな。今日あいつら呼び出して俺らの身の回りの世話をやらせるか」

「そりゃいいな。じゃあ今から声かけておくか」

下卑た笑みを浮かべた彼らは持たれていた壁から離れ、その華奢な肩に手をかけようとするが、その手は後ろから延びてきた褐色のガッチリとした手に掴まれて届かない。

 

「・・・・・何をするんですか、ミスタ・ペンドラゴン」

妨げられたことに苛立ちを隠そうとせず振り返った青年は力任せにその手を振り払うと、後ろに立っていた長身の男をにらみつける。

その長身の男、今はシロウ・ナイツ・ペンドラゴンと名乗っているエミヤシロウは青年の態度に困ったように肩をすくめる。

 

「面識もない女性に後ろから突然触れるというのは紳士にあるまじき行為だと思ってね」

「別にいいでしょう?魔術もろくに使えないというのに僕らのような高貴な者から声を掛けられるなんて、むしろ光栄に思うべきことでしょう」

さも当然といったように答える青年に、エミヤは内心ため息をつく。

 

青年がこれまで過ごしていた時計塔とは違い、ここカルデアには魔術師以外の人員も多数在籍している。

かなり巨大な規模の研究機関であるカルデアを運営するためには彼らの働きが不可欠であり、青年が文化的な生活を送れているのも彼らの協力があってこそであることを理解していない様子にエミヤはどうしたものかと頭を悩ませる。

 

「それに、いくらペンドラゴン家に連なる者といえど、マスターに選ばれることすらなかった貴方が僕に指図するなんておこがましいんじゃないですか?」

 

多数の協力が必要であるとはいえ、実際に特異点が発生した時命を懸けるのは実働部隊のマスターたちである。

彼らの働きがなければ、ほかのメンバーがどれだけ必死に働こうとも、人理を継続することは不可能なのである。

 

そのため、マスターたちにはいくつかの暗黙の特権が付与されている。

この機関内での階級や家柄はエミヤのほうが上であるために青年は最低限の敬語で話しているものの、その内容は完全にエミヤを下に見ている。

「・・・・・・少しばかり私も出すぎた真似をしたかもしれんな。あまり考えずとっさに行動してしまったことを許してほしい」

「ふん・・・・。医療担当班ごときがマスターの行動を妨げるなんてあってはならないことだと理解してください。次は容赦しませんから」

「承知した」

 

エミヤは先ほどの集団が講習室に入り自身の目的が達成にできたことを確認したこともあり、攻撃的になっている青年をある程度受け流しながら話を終えると、去っていく青年の後姿を見送ってから今の職場へと向かった。

 

 

 

 

 

 




シロウ・ナイツ・ペンドラゴン

錬鉄の英霊、エミヤシロウが、マスターであるアルトリア・ナイツ・ペンドラゴンの聖杯への願望により受肉し第二の人生を得た姿。
生身の肉体を得たことにより霊体になることは不可能になったものの、睡眠や食事は魔力の供給が安定していれば他のサーヴァントと同様に必要がない。
サーヴァントとなってから直情型のアルトリアに振り回され、引きずり回される苦労人。
しかし、マスターとしても、女の子としてもアルトリアを大事にしており、それに気が付いていないのはアルトリアだけ。

彼女の家族からはアルトリアにとって最高の護衛であると同時に、最悪の虫と扱われている。
聖杯戦争後アルトリアの帰省に付いて実家を訪れた時エミヤを排除するためにペンドラゴン宗家以下一門総出で襲い掛かってきたが、マスターを狙った攻撃であると勘違いしたエミヤによって返り討ちにあった。
そのため、苦渋の条件として彼女に近づくすべての脅威を排除するために存在することが許されている。

アルトリアがカルデアにスカウトされ、ホイホイとついて行ってしまったためにアルトリアが着任する直前に彼女の実家から無理矢理に職員としてねじ込まれた。

趣味は料理などの家事全般と珍しい刀剣の鑑賞。

その不器用ではあるが実直で優しい性格と長身のイケメンであることがカルデア内部でひそかに人気を集めており、男女問わず彼を慕う者も多い。
着任間もないがファンクラブも裏で創設されており、オペレーターの女性などが会員として加入しているらしい。
天然のドンファンであり、女性を勘違いさせることも度々。
第二夫人の座を狙った女性に言い寄られることも多く、大体が後でやきもちを焼いたアルトリアにお仕置きされる。

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