錬鉄の英雄 カルデアを行くwith騎士娘   作:亀さん

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錬鉄の英霊 炎の中で

衝撃とともに爆炎が立ち上り、瞬く間にAチーム、Bチーム、そして万が一のために準備していたマスターたちが入ったレイシフト用のコフィンを飲み込んでいく。

 

中のマスターたちはレイシフトに備え冷凍睡眠に入っているために炎が迫っていても逃げ出せない。

マスターたちの冷凍睡眠を解除するためには所長であるオルガマリー・アニムスフィアの判断の下、管制室から解除コードを送らなければならないが、爆発は管制室で、もっと正確に言えばオルガマリーの足元から広がったため、そこにいたスタッフは全滅、良くても大怪我ですぐには動けないだろう。

 

しかし、カルデアのシステムはマニュアル通りに発生した火災を抑え込むため大勢のマスターと管制室のメンバーを内部に取り残したまま、無情にも隔壁を閉鎖するまでのカウントダウンを始めていた。

そこに遅刻した立香と立香を探しに行ったアルトリアが異変を感知し慌ててやってきて、目の前の惨状に絶句する。

「助けなきゃっ!!」

「誰かいませんか!」

2人は生存者を探し回るがあたりは爆発で崩れた瓦礫ばかりで、生存者の姿は見えない。

「そうだ、コフィンの中にはマスターたちがっ。シロウ、このコフィンたちをっ!!」

 

 

 

「マスターッ!!」

 

 

 

「っ・・・・」

普段はアルトリアと彼女を呼ぶエミヤがその呼び方をした時。

それは、彼がサーヴァントとして彼女を守るために動く時。

そしてその時の決め事として、この時は必ずエミヤに従う。

 

 

それが、アルトリアの願いで、聖杯戦争後に座へと帰ろうとしたエミヤが受肉してまで現世に残ることを受け入れさせるための条件だった。

 

 

エミヤの猛禽類を思わせる鋭く険しい眼が、すぐにこの場を脱出しろと物語ってる。

しかし、彼女の直感が生存者がまだいると囁いている以上、彼女は引けない。

引けるわけがない。

彼女はあの少年(衛宮士郎)と同じで、苦しむ人を放ってはおけない。

 

 

だからこそ、彼女は滅びの道と知りながら、平穏に生きる道があることを知りながら、選定の剣を手にとって王となったのだから。

 

 

「マシュっ!!」

瓦礫の向こう側で、立香の悲鳴にも似た叫びが聞こえる。

アルトリアはエミヤの静止を振り切って、立香の元へと向かう。

そこには瓦礫の下敷きになって動けなくなっているマシュと呼ばれた少女と、その瓦礫を何とか退けようと足掻いている立香の姿があった。

「アルトリア、エミヤさん瓦礫退かすの手伝ってっ!!」

「わかりましたっ!!」

しかし、悪い事態は連鎖するものである。

アルトリアが瓦礫に駆け寄ったとき、再度爆発が起こり、衝撃と熱風が襲い来る。

 

「ロー・アイアスッ!!」

向かってくる爆風に立ち塞がったエミヤが片手を前に突き出すと7枚の花弁を模した盾を作り出し、即死の風を受け止める。

「早くしろ2人ともっ!!隔壁が閉まるぞっ!!」

一瞬で3人を消し炭に変える熱風を防ぐために動けないエミヤがタイムリミットが迫る焦りから2人を急かすが、瓦礫はビクとも動かず、下半身を瓦礫に圧し潰されているマシュが這い出ることも叶わない。

 

「先輩、アルトリアさん。エミヤさんの言う通りです。隔壁が閉まる前に、私を置いていってください」

それはまるで哀願だった。

英霊をその身に降臨させるためのデザインベビーとして生を受け、カルデアで一生を過ごしてきたマシュにとって、外から来て自分の知らない外の世界を体感して来た2人は憧れの存在であり、絶対に失えない宝物であった。

だからこそ彼女は2人に逃げて欲しかった。

 

 

「「絶対に嫌(です)っ」」

 

 

しかし、当の2人は全く動こうとしない。

それどころか、手から血を流すほど力を入れてマシュを助けようとしている。

 

『隔壁を封鎖完了。館内の生存者はマニュアル通りに避難してください』

 

そんな努力は無駄だと言うように、隔壁は重く閉ざされ、誰も逃げることができなくなってしまった。

「あははは・・・。逃げられなくなっちゃった・・・」

「まったく、リツカが考え無しに動くからです」

「そんなこと言ってるアルトリアだって館内放送聞いた時すぐに駆け出してたじゃん」

 

「なんで・・・。なんで逃げてくれなかったんですか・・・」

 

周りを炎に囲まれながら、子供のように口喧嘩している2人にマシュがポタポタと涙を流しながら問いかける。

 

 

「だってマシュがいたでしょ?」

 

 

あっけらかんとそう言い張った立香に、マシュは信じられないというように目を丸くする。

「たった、そんな理由で?」

「たった、なんかじゃないよ。私はマシュみたいないい子が死ぬのを見過ごせなかっただけ」

「でも現に閉じ込められて、先輩が助からなきゃ意味がないじゃないですかっ!!」

「仕方ないのですマシュ。リツカはお馬鹿さんなんですから」

「あまり変わらないくせにバカって言うなー」

アルトリアにバカと言われたのが悔しかったのか地団駄を踏む立香に、もう逃げられない絶体絶命のはずなのに何故かマシュは笑いが止まらない。

 

 

 

「本当に先輩は大馬鹿ですね」「マシュまで言ったーっ!?」

 

 

 

流石にマシュにも言われて凹んだ立香は膝を抱えていじけ始める。そんな立香に、マシュは下半身を瓦礫に潰されながらも、できる限界までなんとか手を伸ばす。「?」「こんな状況ですし、もう逃げられません。だからせめて私のお願いを聞いてもらえますか?」「いいよっ。なんでも言って!!」

 

 

「私が死ぬまで手を握っていてもらえますか?」

「じゃあ、あと80年以上繋ぎっぱなしだね」

「約束ですよ?」

「オッケー!!」

 

 

立香がそう答えた直後、一瞬で燃え広がった灼熱の炎が2人を飲み込んだ。

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