古明地こいしとFクラス   作:こいし金二

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第十二話「Aクラス戦前半!」

 

 

 

「さて、次の人達は前に出てきてください。」

 

高橋先生が言う。

 

「・・・(スック)」

 

予定通り、ムッツリーニ君が立ち上がる。

頑張ってね~。

 

「じゃあ、ボクが行くよ!」

 

そう言って出てきたのは緑の髪をした男の子・・・いや、女の子だね。

ボーイッシュな雰囲気で、一人称がボクだったから、一瞬勘違いしちゃったよ。

・・・でも、冷静に考えてみたら、女子の制服着てるから一発でわかるはずだったんだけどね。

木下君みたいな人もいるけど。

 

「ボクは工藤愛子だよ。一年の終わりに転入してきたんだ、よろしくね。」

 

「科目はなににしますか?」

 

「・・・保健体育で。」

 

「土屋君だっけ?ずいぶんと保健体育が得意なんだよね?でも、ボクだって得意なんだよ。キミと違って、実技でね。」

 

ブシャアアアッ!

工藤さんの言葉を聞いたムッツリーニ君の鼻から、紅い液体が大量に噴射する。

なんか、変なこと考えたのがまるわかりだな・・・。

 

「あー、なんかこの教室暑いなー。」

 

吉井君もだったみたいだね。

顔が赤くなってる。

 

「そこのキミは吉井君だっけ?勉強苦手そうだし、保健体育で良ければボクが教えてあげよっか?もちろん、実技でね。」

 

ブシャアアアッ!

吉井君とあとムッツリーニ君からふたたび紅い液体が出てくる。

絨毯、ひどいことになってそうだな・・・。

 

「ア、アキにはまだそんな実技なんて早いわよ!」

 

「そ、そうですっ!吉井君には永久に必要ありませんっ!」

 

あの、美波ちゃん、姫路ちゃん、吉井君の方をちょっと見て?

彼、ものっすごい悲しそうな顔をしてるよ?

 

「おいムッツリーニ、大丈夫か?」

 

「・・・これしき、何も感じない。(ダバダバ)」

 

鼻血出しながら言っても、全く説得力ないよね・・・。

 

「・・・大丈夫だ。問題ない。」

 

「で、では二人とも、召喚獣を出してください。」

 

「よーし、サモン!」

 

「・・・サモン。」

 

二人の召喚獣が出てくる。

工藤さんの召喚獣は・・・また強そうだね。

すっごく大きな斧持ってる。

 

「じゃあ、早速決めさせてもらうよ!」

 

さらに、工藤さんの斧にバチバチと電気が流れ出しちゃった。

なんというか、あれくらったら即死だよね・・・。

 

「それじゃ、バイバイ!」

 

工藤さんが斧を構え、突進するあたりで、ようやく点数が表示された。

 

『Aクラス 工藤愛子 保健体育 482点 VS Fクラス 土屋康太 保健体育 574点』

 

「・・・加速。」

 

「えっ?」

 

工藤さんの斧がムッツリーニ君に吸い込まれるようにヒットする直前、ムッツリーニ君の召喚獣の姿が一瞬にして消える。

 

「・・・・・・加速、終了。」

 

次にムッツリーニ君の召喚獣を視認した時は、工藤さんの召喚獣のうしろにいた。

そして、前に倒れる工藤さんの召喚獣には攻撃のあと。

 

「そ、そんな・・・。このボクが負けるなんて・・・。」

 

「・・・あまり理論派をなめるな。」

 

な、なんかかっこいいかも。

 

「これで1対1ですね。次は誰がやりますか?」

 

「よしじゃあ稗田、頼む。」

 

「え、私ですか?構いませんけど。」

 

おっ、阿求ちゃんの出番みたいだね!

学年トップの成績だし、ここは勝てるよね!

 

「じゃあ、私が出ます。よろしくね。阿求。」

 

「小鈴、自信があるの?」

 

「もちろん、やるからには全力でやるよ。科目は古文でお願いします。」

 

「小鈴、あんた・・・!」

 

「もちろん、知ってるわよ。これが阿求の得意科目なこと。でも知ってるでしょ?私も、古文は得意なこと。頑張ったんだから。サモン!」

 

それで小鈴ちゃんの召喚獣が出てくる。

点数は・・・・・・えっ?

 

『Aクラス 本居小鈴 古文 983点』

 

「「「き、きゅうひゃくはちじゅうさんてん!!?」」」

 

Fクラスだけじゃなく、Aクラスの人達も驚いてる。

そりゃ、これだけとれるなんて聞いたことないもん。

高得点の目安としての腕輪が400点だから、これが異常な点数なのはよくわかるよね。

先生でもそんなに取れないんじゃないかな?

 

「確かに、小鈴は頑張ったんだね。でもね、サモン。」

 

小鈴ちゃんの圧倒的な召喚獣に対しても一歩も怯まない阿求ちゃん。

阿求ちゃんとは仲がいいから怯まない理由は知ってるけど、みんなはざわざわしてる。

 

『Fクラス 稗田阿求 古文 

・・・・・・1147点』

 

「「「はああああっ!?四桁台だとおおぉっ!!?」」」

 

「ぐぬぬ、わかってたけどやっぱりきついな・・・。」

 

「でも、家にある古典読んで全部覚えてる私より、初見ですらすら読んでいける小鈴の方が、私は凄いと思うよ?」

 

「いや、今まで読んだ全ての文覚えてるあんたの方がすごいでしょ。」

 

(((どっちも化け物だよ・・・。)))

 

この場の人達の心の声が一致した瞬間だった。

阿求ちゃんの家は奈良時代からの歴史があって、学校で出てくるような古典は家に全部あるんだよね。

日本史も同じように、まるで見てきたように知ってるから同じくらい取れるから凄いよね。

 

「まあ、おしゃべりはこのくらいにしましょ。」

 

「確かにそうね。戦いましょ。」

 

二人の召喚獣がぶつかりあう。

二人とも恐ろしい点数だから、動きを目で追うのも大変だよ。

どうにか追っていると・・・ん?

 

「おい、私の見間違いじゃなければ、相手が増えてないか?」

 

「私も見えるよ魔理沙。なんか妖怪っぽい・・・・・・というか狸の尻尾が生えた小鈴さんの召喚君が3匹見えるね。」

 

「うーん、1対4の状況に強いのはどの武器かな・・・?」

 

「というか、あの4匹、全部あいつが操ってるのか?」

 

「さあ?でも、すごい動きだよね。」

 

阿求ちゃんが1体に攻撃をしようとすると残りの3体が攻撃をしかけ、1体に攻撃しようとする、防御しづらいタイミングで攻めるというような絶妙なコンビネーションを見せてる。

どの狸に銃を撃っても持ってる剣で銃弾をはじかれてしまってる。

だから、一見阿求ちゃんが不利。

 

「腕輪も使用できるから、ここは範囲攻撃・・・?でも範囲と威力が高かったのは・・・」

 

でも、点数で勝ってる阿求ちゃんはその攻撃をほとんどかわしてる。

狸1が頭に降り下ろした剣をバックステップでかわし、狸2が着地の瞬間を狙って放った足払いを蹴りで迎撃し、動きが止まった瞬間に狸3が投げつけてきた剣を首をずらして回避し、その剣をキャッチし、降り下ろした本体の攻撃を銃身で受け止め、狸2に当たるように反らさせる。

私だったら無理だな・・・。

 

「・・・うん、このタイミングでこれがいいね。チェンジ、霊路地空!」

 

阿求ちゃんがしばらく回避に徹したあと、突然お空の名前を言う。

すると、阿求ちゃんの召喚獣から両手銃が消滅し、かわりに右腕に、お空の召喚獣と同じような武器が装填される。

そして、caution!というメッセージ。

 

「マズイ、後退しないと!」

 

本体と尻尾つきを後ろに跳躍させ、距離をとろうとする小鈴さん。

直感で危険を悟ったみたいだ。

 

「残念、少し遅いよ!」

 

その瞬間、お空が腕輪を使ったときと同じように、阿求ちゃんの召喚獣が大爆発する。

お空のよりも大きく、速い爆風。

 

「・・・残っちゃったか。」

 

爆風がはれた時、そこには狸召喚獣が1匹、そして本体の本居さんの召喚獣がいた。

 

「なかなか痛い爆風だったわ・・・。2人犠牲にしなきゃ、4人ともやられてたわね・・・。」

 

『Aクラス 本居小鈴 古文 311点 VS Fクラス 稗田阿求 古文 477点』

 

点数が更新される。

いまので、どっちもだいぶ減ってるけどまだまだ高いね。

 

「チェンジ、虎丸星!」

 

「今度はレーザー!?」

 

距離を行かすためか、今度は虎丸さんの宝塔を手にし、軌道が読みづらいレーザーを連発して相手を近づけないようにする阿求ちゃん。

自由自在・・・とまではいかなくても、射線が読みづらいレーザーにはばまれ、本居さんは近づけない。

 

「くっ、しょうがない!だったら!」

 

でも、本居さんはかわしきれないレーザーは剣で斬りつつ、無理矢理近づいてきた。

 

「なら、これでとどめよ!」

 

「狸ちゃん、お願いっ!」

 

「えっ、自分の召喚獣を盾に!?」

 

阿求ちゃんが放った必殺のレーザーの一撃は、小鈴さんの狸にはばまれ、本人まで届かない。

狸が消滅した時、目の前には攻撃を放った本居さんの召喚獣。

 

「くっ、チェンジ、工藤愛子!」

 

でも、阿求ちゃんはさっきの工藤さんの武器に変えて、それをなんとか防いだ。

斧と剣によるつばぜり合い。

 

『Aクラス 本居小鈴 古文 175点 VS Fクラス 稗田阿求 古文 241点』

 

でも、阿求ちゃんの方がまだ点数が高いから、なんとか押し返せてる!

 

「ぐっ・・・きゃあっ!」

 

そのままなんとか押し返し、本居さんの剣を弾き返す阿求ちゃん。

でも、あまり崩れてないから、斧じゃ多分間に合わない!

 

「チェンジ、坂本雄二。」

 

でも、阿求ちゃんは坂本君のメリケンサックに切り替え、本居さんの召喚獣の胸にパンチする。

体勢をたてなおす前に決まった一撃。

その一撃で召喚獣が吹き飛び、床に叩きつけられる。

 

『Aクラス 本居小鈴 古文 0点 VS Fクラス 稗田阿求 古文 191点』

 

それで決着がついたみたいだね。

なんというか、ものすごいハイレベルな戦いだったな。

 

「これで1対2ですね。」

 

「あーあ、やっぱり負けちゃったか。頑張ったんだけどなー。」

 

「でも、点数差がなかったら、私が負けてたんじゃないかな。あの狸達、小鈴が全部操ってたの?」

 

「ううん、あの狸ちゃん達には簡単な指示しか出してないよ。あの武器コロコロ変えるのはやっぱ阿求の腕輪だよね?」

 

「うん、今まで見てきた召喚獣の武器と腕輪を使えるの。決して見たものを忘れない私にはピッタリだよね。」

 

「でも、使うの初めてだったんでしょ?」

 

「まあ、そうなんだけどね。それはお互い様、でしょ?」

 

「・・・まあね。でも楽しかったよ。」

 

握手をかわす2人。

いいね~。

 

「では、次の人達は前に出てきてください。」

 

さて、次は4戦目だね!

ここまでは2勝1敗、次でリーチかけられるといいな。

 

 

 




いかがでしたか?
あっきゅんと小鈴ちゃんのバトルはもはや異次元。
ちなみに明久のものとは違い、本当に簡単な指示しかできません。

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