古明地こいしとFクラス   作:こいし金二

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第十四話「大化の改新!」

 

 

「さて、最後は俺だな。」

 

「・・・私。」

 

こちらもむこうも代表だね。

この勝負がすべてを決めるから、勝ってきてよ?

 

「科目はなににしますか?」

 

「日本史だ。ただし小学生レベルで100点満点の上限あり、そして召喚獣勝負ではなく純粋な点数勝負でたのむ。」

 

ざわ・・・・・・・ざわ・・・・・・とAクラスの人達がざわざわする。

まあ、そうだよね。

Aクラスの人達は誰だって100点取れるだろうし、坂本君の作戦を理解できるAクラスの人がいたなら、それは事前に知ってたとしか思えないくらいだし。

お姉ちゃんなら多分見透かしたと思うけどね。

 

「・・・わかりました。では、問題を用意するので、少々待機していてください。」

 

急な注文でもあっさり答えるなんてすごいな~。

 

「雄二、あとは任せたよ。」

 

「おう、任された。」

 

あつい握手をかわす吉井君と坂本君。

ここだけ見れば、普通の友達だよね。

 

「革命の成功は、坂本にかかってるんだからな。絶対、勝ってきてくれよ。」

 

「ああ、勝ってくる。」

 

「ここで負けたら全部パーになるんだから、勝たないと許さないんだぜ。」

 

「わかってる。任せとけ。」

 

「・・・(ビッ)」

 

「お前にはずいぶん助けられたな。感謝してる。」

 

「・・・(グッ)」

 

「頑張ってきてねー!」

 

「で、でも無理はしないでくださいね?」

 

「ああ、ありがとな。」

 

「坂本君、勝ってきてね?」

 

「おう、信じててくれ。」

 

吉井君につづき、Fクラスのみんなが坂本君に声をかけていく。

その言葉のひとつひとつに嬉しそうに返していく坂本君。

でも、どうなるんだろ?

なんか、嫌な予感がするんだよね。

というか正邪ちゃん、いつのまにか戻ってたんだ。

木下君はまだいないみたいだけど。

 

「では、準備が出来ましたので、二人は視聴覚室に移動してください。」

 

戻ってきた高橋先生がふたりに誘導をかける。

あとは、坂本君の勝ちを祈るだけだね!

 

「こいしちゃーん、テストが終わるまでちょっとお話ししませんかー?」

 

と、待とうとしてたら、早苗ちゃんに声をかけられたね。

 

「私は構わないよ~。」

 

「どうせなら私の席に座ってくださいね。お菓子でも食べながらお話しましょう。」

 

「え?いいの?」

 

「ええ、構いませんよ。この椅子でまったりしてみてくださいね。」

 

「じゃ、遠慮なく~!ありがとね~!」

 

勧められたから座ってみる。

はふぅ・・・・・・。

なんだか、座り心地がものすごく良くて、下手をしたら二度と立ち上がれなくなっちゃいそうだよぉ・・・。

まったり~。

 

「そういえば、どうしてFクラスはあんな限定的なテストにしたんですか?」

 

「ああ、あれ?あれはねー、大化の改新の年号を問う問題が出ると、霧島さんが間違えるから、Fクラスが勝てるってことらしいよー。」

 

いま言っても対策は不可能だし、本人達もいないから言ってもいいよね。

 

「・・・へえ、あんた達、なかなか面白い作戦をたてるじゃないの。」

 

あ、霊夢さんだ。

さっき寝てたけど、いつ起きたのかな?

 

「あ、お姉ちゃん!寝てたんじゃないの?」

 

「夢のなかで出てきたもの全部食べ尽くしたから起きたわ。」

 

「あはは、そうなんだ・・・・・・どうせだったら私の活躍、見てほしかったな。」

 

「あー、見てたわよ見てたわよ。確かあんたの召喚獣、巨大化して相手の召喚獣踏み潰してたわね。」

 

「夢の中の話じゃない!私の召喚獣、巨大化なんてしてないよ!」

 

「・・・・・・ま、それはそれとして、Fクラスがたてた作戦、それほんとに上手くいくの?」

 

「・・・まあ、私もうまくいくとはあんまり思ってないけどね。」

 

「まず、その作戦、あんた達の代表が満点取るのが条件だけど、あのゴリラみたいな見た目したのが取れんの?」

 

ゴ、ゴリラ・・・。

まあ、気持ちがわかるからなんともいいがたいな・・・。

 

「お姉ちゃん、そんなこと言ったら失礼だよ。」

 

「あんたも思ったでしょ?」

 

「・・・・・・お、思ってないよ・・・。」

 

早苗ちゃん、それは苦しいんじゃないかな・・・。

ほら、霊夢さんがニヤニヤしてるよ。

 

「で、こいしはどう思うの?」

 

「・・・・・・正直、厳しいんじゃないかなって思ってるよ。」

 

坂本君、小学生の時は神童とか言われてたみたいだけど、中学の時は悪鬼羅刹だったみたいだし、いまも成績もそんな良くないからね・・・。

昨日復習してたならいいんだけど・・・。

 

「・・・あ、こいしちゃん、問題出ましたよ!」

 

早苗ちゃんの指差す方には、確かに問題が出てるね。

せっかくだから、私も解いてみようかな。

 

(  )年 十七条憲法制定

 

(  )年 壇ノ浦の戦い

 

(  )年 遣唐使廃止

 

えーと、上から確か604年、1185年、894年だったよね。

 

「そういえばお姉ちゃん、今は鎌倉幕府設立が1192年という説以外にもあるの、知ってる?」

 

「もちろん知ってるわよ。1180、1183、1184、1185とか色々な説があったわよね。」

 

「うん、お姉ちゃんさすがだね!」

 

「んで、こいし。大化の改新はあったの?」

 

えーと・・・

 

(  )年 大化の改新

 

「うん、あったよ。」

 

「・・・ま、これで代表の満点はなくなったわけね。向こうでFクラスの人達が歓喜の声あげてるのもそれが原因よね。」

 

「うん、多分そうだと思うよ。」

 

「・・・・・・うっとうしいから黙らせてきていいかしら。(スッ)」

 

「ちょっと、お姉ちゃん、ストップストップ!」

 

どっかから木の棒を取り出してFクラスの人達のほうに向かおうとする霊夢さんを必死に早苗ちゃんがとめる。

霊夢さん、うるさいの嫌いだしね~。

 

「よう霊夢、早苗!さっきぶりだな!何やってんだ?こいし、あの問題はしっかり出てたぜ!」

 

あ、そんなことしてたら魔理沙が来た。

 

「魔理沙さん、お姉ちゃんを押さえるのを手伝ってください!放置してたら、お姉ちゃんFクラスの人達みんな気絶させようとしちゃいます!」

 

「おいおい霊夢・・・。何してんだよ・・・。」

 

「あんた達がうるさいから、叩きのめすだけよ・・・。」

 

怖いなー。

さすがに幽香先生には負けるけど、すごいオーラ放ってる。

 

「まあ落ち着けって。FクラスがAクラスに勝つんだから、それくらいいいじゃないか。とりあえず、霊夢と早苗は御愁傷様だな。」

 

「普段ならあんたをボコるところだけど、今ボコったら食事がなくなるからあとでボコるわ。」

 

そうこうしてる間に、テストと採点が終わったみたい。

えーと、結果は・・・・・・・

 

「あ、あの、魔理沙さん・・・。」

 

うん、早苗ちゃんの言いたいことは私にもわかるよ・・・。

私も見たもん・・・。

 

「ん?どうしたんだぜ?」

 

「後ろの画面、見てください・・・。」

 

「ああ、私達が勝ったことを示すスクリーンか?どれどれ・・・」

 

《日本史 限定テスト 100点満点》

 

《Aクラス 霧島翔子 97点》

 

「ほらな?霧島が97点で、坂本がひゃ・・・」

 

《Fクラス 坂本雄二 53点》

 

「100点取れよおおおぉぉーッ!!!」

 

「「「何じゃこりゃあああっ!?」」」

 

「雄二ィィィィーッ!!?」

 

・・・なんというか、これはひどいよね。

今までのことが全部パーだよ。

 

「4対3でAクラスの勝利です。」

 

そして、とどめをさすかのような高橋先生の言葉。

・・・うん、わかってるよ。

坂本君、最後の最後で致命的なミスやらかしたものだよね・・・。

あはは、笑えない。

 

「魔理沙。御愁傷様。」

 

「いい笑顔で言ってくるんじゃねえっ!今はとにかく坂本だッ!」

 

「私も、ちょっとこれは言いたいことがあるからね・・・。」

 

Fクラスみんなで視聴覚室になだれこむ。

中には・・・膝をつく坂本君と、歩み寄る霧島さんがいるね。

 

「・・・私の勝ち。」

 

「・・・殺せ。」

 

「いい度胸だ!殺してやるッ!歯を食い縛れ!」

 

「これはちょっと私も納得いかないぜ!」

 

「最後の最後で台無しにするなんて、なにやってるんだよ!」

 

「アキ、魔理沙、正邪!ちょっとは落ち着きなさい!」

 

「ちょっと正邪ちゃん!?その手にある鉛筆はさすがにストップだよ!」

 

「ま、魔理沙ちゃん、ストップです!とりあえず落ち着いてください!」

 

気持ちはわかるけどね?

でもこのまま放置しとくとほんとに坂本君の命がなくなりそうだから、自業自得なとこもあるけど今回はとめないとまずいかなってね。

 

「雄二!53点ってなんだよ!0点とかなら名前の書き忘れの線もありえるのに、この点数ってことは・・・」

 

「いかにも俺の全力だ。」

 

「「「この阿呆がーっ!!」」」

 

「落ち着きなさいアキ!あんたなら30点も取れないでしょうが!」

 

「それについては否定しない!でもコイツには喉笛を引き裂くっていう体罰が必要なんだ!」

 

「吉井君、それは体罰じゃなくて処刑です!」

 

「魔理沙、乱暴はダメだよ!」

 

「正邪、ストップだってば!」

 

「魔理沙さん、ダメですよ!落ち着いてください!」

 

「「「放せええぇーっ!」」」

 

 

~しばらくお待ちください~

 

 

「・・・なんとか落ち着いたぜ。」

 

「もう大丈夫だ。だが、これでも坂本のこと信じてたんだけどな。」

 

「坂本って、バカだったの?」

 

「・・・でも、危なかった。雄二が所詮小学生レベルだと油断してなかったら負けてた。」

 

「この最後の最後での失敗、私の頭のなかに残り続けるでしょうね。」

 

「・・・マジすんませんでした。」

 

坂本君、土下座でもしかねない勢いだ。

まあ、正邪ちゃんと阿求ちゃんの目がかなり冷たいし、お空の無邪気な一言はグサリと来るからね。

 

「・・・それで雄二、約束。」

 

「・・・・・・!(カチャカチャ)」

 

ムッツリーニ君、何をうつそうとしてるのかな?

 

「ムッツリーニ、なにか僕に手伝えることはある!?」

 

「・・・そこのケーブルをコンセントに繋げ。」

 

「了解!」

 

吉井君ものらないの。

でも、もし私達女子がそういう目にあう可能性があるとしたら、坂本君受けてもいいと言ったかな?

 

「・・・わかってる。なんでも言え。」

 

代表としてのせめてもの意地なのか、潔く返事した坂本君。

 

「・・・それじゃあ、雄二。私とつきあって。」

 

・・・え?

これって告白?

 

「・・・やっぱりか。まだ諦めてなかったんだな。」

 

「・・・私は諦めない。ずっとずっと、雄二のことが好き。」

 

「その話は何度も断っただろ?他の男と付き合う気はないのか?」

 

「・・・私の中には雄二しかいない。他の男なんて、興味ない。」

 

わぁ・・・!

なんというか、聞いてるこっちがドキドキしてくるよ・・・!

 

「拒否権は?」

 

「・・・ない。だから、今からデートに行く。」

 

「ぐあっ!放せ!やっぱりこの約束はなかったことに・・・」

 

ぐいっ、つかつかつか・・・

 

霧島さんが坂本君の首もとをつかんでひっぱっていった。

霧島さん意外と力あるね・・・じゃなかった、うまくいくといいねー!

私は霧島さんを応援するよ~!

 

「・・・さて、我がFクラスの生徒達よ、お遊びは終わりだ。」

 

みんなが無言になってるなか、やってきた鉄人先生がそんなことを・・・ん?我が?

 

「おめでとう。お前達は戦争に負けたおかげで担任が福原先生から俺に変わることになった。これから一年、死に物狂いで勉強できるぞ。よかったな。」

 

「「「ウソオォォ!?」」」

 

「いいか、確かにお前らはよくやった。Fクラスがここまで来るとは正直思わなかった。でもな、いくら『学力が全てではない』と言っても、人生を渡っていく上では強力な武器の一つなんだ。全てではないからといって、ないがしろにしていいものではない。」

 

あ、教育者っぽい言葉だ。

生活指導と補習室担当の姿しか普段見ないから若干新鮮だね。

 

「とりあえず、お前らのその好ましくない言動と態度、それと成績をこの一年かけて俺がみっちりと直してやろう。特に吉井と坂本だな。なんせ、お前らは開校以来初の《観察処分者》と《A級戦犯》だからな。」

 

「て、鉄人先生!?そういうのは雄二だけにしてください!僕はこれほど真面目で優秀なのに、どうしてそんなことを言うんですか!」

 

「どの口がそんな虚言を言ってるんだ。あと西村先生と呼べ。」

 

「そ、それは今どうでもいいんです!」

 

いや、それ吉井君が言うことじゃないけどね。

 

「とにかく先生!例えどんなに監視されても、僕は何とか監視の目をかいくぐって、今まで通りの楽しい学園生活を過ごしてみせます!」

 

「吉井、どうしてお前にはそこで反省するという選択肢が出てこないんだ・・・。」

 

鉄人が呆れてるけど、ほんとうにそうだよね。

別に吉井君そんなにものわかり悪いわけじゃないのに。

反抗期って奴かな?

 

「とりあえず、明日から補習の時間を2時間増やしてやろう。」

 

うげ。

それは私も嫌だな・・・。

お姉ちゃんといられる時間が減っちゃうなんてやだ!

 

「んじゃ、アキ。補習は明日からみたいだし今日はどっか遊びにいこ?」

 

「へ?今から?」

 

おー、デートのお誘いとはやるね~!

ひゅーひゅー!

 

「今からよ。ほら、アキ。どうせ暇でしょ?時間がもったいないし、はやく行くわよ!」

 

「えっ、僕にだってやることがあるし、お金だってほとんどないし・・・」

 

「ダメです!吉井君は私と映画を観に行くんです!」

 

「ええっ!?姫路さんまで!?しかもそんな話初耳だよ!?・・・先生、補習は明日からといわず今日からやりましょう!思い立ったら仏滅です!」

 

「『吉日』だ、バカ。まあ、うーん、お前がやる気になったのはいいが・・・ま、無理をすることはない。今日だけは存分に遊ぶといい。」

 

「お、おのれ鉄人!僕が苦境にいると知った上での狼藉だな!こうなったら卒業式には伝説の木の下で釘バットを持って貴様を待つ!」

 

「斬新な告白だな、オイ。」

 

間違いなくふられるんじゃないかな・・・。

第一、伝説の樹ってうちにはないような・・・。

てか、吉井君じゃ鉄人先生には勝てないと思う。

パーフェクト負けして倒れた吉井君を見下ろす鉄人先生が容易に想像できるな。

 

「ほら、早く行くわよアキ!」

 

「行きましょう、吉井君!」

 

「い、嫌あああっ!僕の食費が!僕の栄養があああっ!」

 

吉井君、二人にひっぱられていったけど、楽しんできてね~!

 

「さて、それじゃ私達も帰るとするぜ。じゃあこいし、一緒にかえ『昼飯奢りの約束、破るの?』ろうと思った私が悪かったからとりあえずその棒をおいてくれ!」

 

「じゃ、行くわよ~!魔理沙のおごり、魔理沙のおっごり~♪」

 

あら、霊夢さんに魔理沙連れていかれちゃった。

 

「お姉ちゃん、ほどほどにね?」

 

「わかってるわよ。天丼カツ丼うな丼いくら丼親子丼大盛り3つづつくらいしか頼まないつもりよ。」

 

「あの、お姉ちゃん?普通はその中のどれかひとつだからね?」

 

ほんと、霊夢さんは常識にとらわれてないよね。

冬眠前の熊みたいに、霊夢さんは食べられるときにたくさん食べて蓄えるから・・・。

太らないのかと言われそうだけど、普段の主食は雑草や公園の水だから、平均摂取カロリーは一般人以下だからね。

 

「それならこいし、私とお空と帰らないか?」

 

「うん、いいよ、正邪ちゃん、お空!」

 

「いっしょに帰ろ~!」

 

結局、私は正邪ちゃんとお空と帰った。

 

 

 

 

 

「そういえば木下君知らない?さっきから全然見かけなくて。」

 

「うにゅ?知らないよ?」

 

「木下か・・・・・・あいつはいい奴だったよ。」

 

「正邪ちゃん知ってるの?」

 

「直接見た訳じゃないんだが、トイレの帰りに返り血がついたAクラスの木下姉に出会ってな、何してたか聞いてみたら『秀吉は急用ができたから先に帰ったわよ』って笑顔で言われたんだよな・・・。」

 

「「・・・・・・。」」

 




いかがでしたか?
霊夢さんはものすごい食べます。
そして第一部終了です。

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