現在、僕は悪魔に追われています。
「いたぞ!吉井だ!引っ捕らえて処刑しろ!」
「B隊は回り込み、C隊はこのまま追いかけて挟み撃ちにするんだぜ!」
「「「了解っ!」」」
「サーチアンド・・・」
「「「デス!」」」
後ろから聞こえてくる、全てを奪おうとする悪魔達の声。
悪魔理沙が部隊を編成して、僕を追い詰めようとしている。
まったく、僕がイケメンでラブレターをもらったからといって、そんなに嫉妬しないで欲しいよね。
これから貰えるかわからないんだから、一人でゆっくり読ませて欲しいものだよ。
・・・やだな、泣いてなんかいないよ?
「・・・吉井、見つけたぞ。」
「うわっ、正邪!?」
目から出た塩水を拭いながら走っていたら、目の前に正邪が出てきた。
いきなりだから結構びっくりしたよ。
「まあ落ち着け。私はお前に協力しようと思ってな。」
「・・・協力?」
さっき、僕のこと脅迫していたような気がするんだけどな・・・。
「少し考え直してな。お前もこのまま全員に捕まって手紙を取られるのは嫌だろ?」
確かにそうだね。
理由はわからないけど、味方がいた方が安心だ。
「うん、わかったよ。ありがとね。」
「気にすんな。・・・これも、手紙を平和的に見るためだからな。」
「ん?正邪、なんか言った?」
「いや、何も言ってないぞ?それより、逃げなくていいのか?」
正邪の言葉で振り返ると、確かに悪魔達が迫っていた。
「いたぞ!吉井だ!正邪も一緒にいるぞ!」
「・・・げっ。行こう、正邪!」
「おう、そうだな!」
僕と正邪は走り出す。
悪魔達から逃げ切り、幸せをつかむために。
「・・・その言い方だと、私とお前がそういう感じだと聞こえるからやめてくれ。」
「あ、ごめん。」
「吉井!観念して手紙を出しやがれ!」
「げ、前からも来た。」
このままだとはさまれちゃうから、やむなく近くの空き教室に逃げ込む。
なにか、なにかこの状況を打開できるものは・・・あった!
「正邪!これを入り口の上にひっかけるんだ!」
「おう、任せとけ。」
あとはタイミングを待つだけ・・・
「観念しやが『今だ、正邪!引っ張って!』うおっ!?」
全員が入った瞬間、僕と正邪で、さっきかけたゴールネットをひっぱる。
狙い通り、ネットにつつまれる五人。
「端の奴から出て吉井を引っ捕らえろ!」
「ああ、だがこのネット、濡れているから体に張り付いて・・・。」
それでもすぐに脱出しようとする悪魔達。
でも、僕がこれだけで終わるなんて思わないでほしいね!
「正邪は離れて!」
「おう!」
正邪が離れたことを確認し、僕は秘密兵器を取り出す。
「お、お前まさか!やめろ!」
「さらばだ!来世では悔い改めるんだよ!」
僕が取り出したのは、ムッツリーニから借りていたスタンガン。
これを、濡れたネットにつつまれたクラスメイトに、スイッチをONにして投げつける!
「「「ぎゃあああああっ!」」」
バチバチバチッ!と激しい音に焦げ臭い臭い。
そして、気絶するクラスメイト達。
よし、まずは5人だ!
「うわぁ、お前、容赦ないな。」
正邪がちょっとひいてるけど、こうでもしないとこの悪魔達は抑えられないしね。
「よし、今のうちに行こう!」
僕達はこのまま出る。
絶対に、この聖書を悪魔に奪わせはしないよ!
「やあお前ら、調子はどうだ?」
「!?・・・ああ、正邪か。吉井を殺る気は充分だ。吉井を見なかったか?」
「ああ、見たぞ。場所を教えてやろうか?」
「頼む。」
「・・・お前らの、後ろだ。」
「だらっしゃあああぁっ!」
「「「うわああああっ!」」」
正邪がクラスメイトの注意をひきつけている間に、僕は本棚を倒す。
ずしいいいんと大きな音をたてて倒れる本棚と、その下敷きになるクラスメイト達。
よし、これでまた無力化できたね!
「人の恋路を邪魔するからそうなるんだよ!さらばだ!」
「おのれ吉井!裏切り者め!」
「絶対に許早苗!」
「正邪さん、もっとやってください!」
「覚えていろ!お前の幸せは絶対にぶち壊す!」
「・・・本当に、歪んだクラスメイト達だなあ・・・。」
なんかMな人いたし。
「吉井、そこのモップで出入り口封鎖した方がいいぞ。」
「確かにそうだね。ありがと、正邪。助かるよおおおーっ!?」
危なっ!
いきなり飛んできた文房具。
なんとか回避したけど、あともう少し遅かったらと思うとぞっとする。
壁に刺さってるし。
「・・・動かなければ、楽にしてやれたのに。」
「さらっと何言ってるんだよムッツリーニ!」
「おいおい、私まで巻き込むとはどういうつもりだ?」
「・・・必要な、犠牲だ。」
僕にカッターを投げてきたのはやっぱり、元友人で、現在は敵のムッツリーニだった。
しょうがない、ラブレターのためにも眠ってもらうよ!
「とりあえず覚悟、ムッツリー『・・・次はカッター』やっぱり話し合おう。」
やっぱり友達に暴力なんてダメだよね。
「ムッツリーニ、そっちの欲求は?」
「やはり、吉井の手紙を奪うことなのか?」
「・・・そんなんじゃない。こちらの要求は・・・。」
あれ?
手紙を奪う気ないのかな?もしかしてムッツリーニも『・・・グロテスク。』悪魔だったよ畜生!
僕はこれほどどうにもならない交渉をしたことがない。
でもなんとかし『・・・交渉決裂。』ようとする前にダメじゃん!
しょうがない、殺るしかない!
「・・・動くな。」
「イヤだよ!」
飛んでくる文房具を必死に回避する。
「うわ、しまった!」
だけど、正邪が回避の際にバランスを崩してこけてしまう。
「・・・・・・青!(ブシャアアア)」
「おい、見るんじゃない!」
正邪がこけた時、パンツが見えたのか、鼻血を盛大に吹いて倒れるムッツリーニ。
倒れてもなお、僕を殺ろうとしたのかピクピク動いていたけど、やがて動かなくなった。
・・・勝った、第三部完。
「と、とにかく行こう!」
「私にとっては不本意だがな・・・。」
血まみれのムッツリーニを背に、僕と正邪はむかう。
「ところで、吉井はどこで手紙を見るつもりなんだ?」
「んー、特に決めてないかな。」
「屋上とかどうだ?」
「いいねそれ!」
確かに屋上なら良さそうだ!
いいアイデアだよ正邪!
早速、屋上へ行こう!
・・・と、その前にムッツリーニの死体から武器をとっておこうっと!
「おっと、ここを通りたいなら手紙を置いていくんだぜ。」
「魔理沙、そこをどいてくれない?」
屋上へ向かう道の途中。
僕の前に立ち塞がったのは魔理沙だった。
「それは無理な相談なんだぜ。通りたいなら力づくでどかすんだな。」
「でも、2対1で、魔理沙が勝てると思うの?」
「いいや、2対2だぜ。サモン、須川!」
「いや、俺は召喚獣じゃないんだけどな。」
魔理沙の声であらわれたのは異端審問会会長の須川君だった。
手には木刀を持っている。
「吉井、俺はお前の幸せを許さない。この木刀は剣道部から借りてきた。さあ、覚悟しろ。」
「くっ・・・!卑怯な・・・!」
「いや吉井、お前死体から武器を取ってなかったか?」
・・・あ、そうだった!
「なら正邪は魔理沙をお願い!僕は須川君を殺る!さあ、この武器の山葵にしてあげるよ!」
そういいつつ、僕はムッツリーニから取った武器を取り出す。
どうだ須川君!僕だって爪切り装備しているから丸腰じゃないよ!
・・・ん?
「「「吉井・・・・・・。」」」
みんなのバカを見るような目が物凄く辛いです。
「くっ、いいさ!これでやってやる!覚悟!」
「いや爪切り使わない方が強いだろ!」
「吉井、お前こそ覚悟しろ!」
それぞれの考えを持つ四人が、今ぶつかりあった。
「・・・まさか、本当に爪切りで勝てるとはね・・・。」
勝てちゃった。
深爪になって地面に倒れ伏す須川君。
その横に転がっている木刀。
「く、くそ・・・!吉井、お前の幸せだけは許さねえ・・・!」
「こっちも魔理沙は終わったぞ。」
「正邪!無事だったんだね!」
「まあな。」
よし、これで邪魔する人達もいなくなったはずだし、屋上に向かおう!
「正邪、あとは頼むぞ・・・。吉井の手紙を見届け、私に教えてくれ・・・ガクッ。」
いかがでしたか?
正邪と魔理沙は策士であった。
次からは文化祭編です。