古明地こいしとFクラス   作:こいし金二

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第二十一話「一回戦!sideA」

 

 

 

 

「さて、古明地さんや稗田さんは大会に行ったし、僕たちもそろそろ行こうよ。」

 

「ああ、そうだな。」

 

あのババァのせいで、なんかなし崩し的に出場することになったから、古明地さんや稗田さんみたいに自分で希望したわけじゃないけど、それとこれとは話が別。

設備を良くして、姫路さんの転校を阻止するために優勝目指して頑張ろう!

それに、優勝商品には商品券があるみたいだから、塩と水だけの生活を一時的でも脱却できるしね。

やる気を胸に、大会の会場まで移動する。

 

「やっと来たね、吉井君。坂本君。相手はもう待機してるからはやくステージにあがってよね。」

 

「あ、ごめんなさい、河城先生。」

 

「うっす、すぐいきます。」

 

そんな僕達に声をかけてきたのは河城にとり先生。

数学の先生なんだけど、機械いじりと発明が好きで、時々不思議なものを持って来てる。

噂によると、ババァ長に協力してこの試召システムを開発したなんて言われてたりするけど、どうなんだろ。

別の噂では、自身の発明がいくつか特許とってるとか、以前は世界的に有名な会社の技術部にいたとか、発明中は水だけで1ヶ月部屋にこもってたことがあるとか、謎が多い先生なんだよね。

まあ、それはともかく今はステージに登る。

えーと、僕達の対戦相手は・・・と。

 

「おぬし・・・確か皿の破片踏んで痛がってた奴じゃったな。名前は確か・・・吉井アホ久じゃったか?」

 

「違うよ!なんだよアホ久って!人の名前をアホ呼ばわりするなんて酷いじゃないか!」

 

僕をいきなりアホ呼ばわりしてきたのは、確かDクラス戦で戦った物部さんだったかな。

まったく、失礼なもんだよ。罵倒するならそこの赤ゴリラにしてほしいものだね。

 

「おい布都、人の名前をアホ呼ばわりするのは失礼すぎるし、アホはお前だ。」

 

「なんじゃと!!おぬしだって今は我のことをアホと行ったじゃろう!アホって言う方がアホなんじゃ、このアホめが!」

 

「吉井君、こいつがすまなかったな。こいつは見ての通りアホだから、気にしないでやってほしい。」

 

「大丈夫だ、こいつはアホと呼ばれて喜ぶようなマゾだからな。」

 

「・・・うわ、そうだったのか。」

 

「ちょっと雄二、なに事実無根なことを言ってるのさ!僕はいたってノーマルだよ!だからそんな引いた目で見ないで!」

 

「おい、我を無視するでない!」

 

「あの、君達?そろそろ召喚してもらっていいかな?」

 

「「「「あ、はい、ごめんなさい。」」」」

 

カオスになりかけていたこの場をとめたのは河城先生だった。

額に怒りマークがうっすら見える。

正直、地味に怖い。

全員で謝っちゃった。

 

「雄二、あとで白黒つけてやる、サモン!」

 

「上等だ、返り討ちにしてやらあ、サモン!」

 

「む、我がアホの子でないことを証明してやるわ、サモン!」

 

「空回りする未来しか見えないな・・・、サモン!」

 

四人が召喚獣を召喚する。

僕の召喚獣は相変わらずの改造制服に木刀。

物部さんのも前回と同じ皿スタイルだ。

雄二の武装は・・・?

 

「あれ、雄二?武器はどこやったの?」

 

雄二の召喚獣はなにも持ってなかった。

白い改造制服着ているだけのように見える。

もしかしたら、東風谷さんの召喚獣みたいに、素手でも必殺技みたいなのがあったり、なんか弾幕を撃てたりするのかな?

 

「明久、よく見ろ・・・。手元にメリケンサックをつけているだろう?」

 

「うわっ、雑魚だ!雑魚がいる!」

 

「クラス代表がメリケンサックってどうなんだよ・・・。というか、このコンビ、まるでチンピラだな。」

 

「これはもう、我らが勝ちをもらったようなものじゃな!」

 

物部さんと隣の女子生徒が呆れたりおごったりしてる。

ちなみに、その女子生徒の召喚獣は・・・幽霊のような下半身と、緑の服だね。

武器はなんかギザギザした刀みたい。

しかし、点数がバカみたいに高いならともかく、雄二の点数ごときじゃなあ・・・。

ちなみに、点数はどうなんだろ?

表示されている点数を見る。

 

『Fクラス 吉井明久 数学 63点 VS Dクラス 物部布都 数学 57点』

 

『Fクラス 坂本雄二 数学 159点 VS Cクラス 蘇我屠自子 数学 132点』

 

「ち、ちょっと雄二!なんでそんなに点数が高いんだよ!?Bクラス並みの点数じゃないか!」

 

「ああ、前回の試召戦争以来、本気で勉強しているからな・・・。」

 

「へー、それはまた珍しいね。どうして勉強を?」

 

コイツはそんな風に勉強するタイプじゃないとおもってたから意外だ。

 

「・・・・・・前に、翔子に聞かれてな。」

 

「何を?」

 

「・・・式は、和風と洋風、どちらがいいか、と。」

 

「・・・霧島さんは一途だね~。」

 

「しかも『・・・私は洋風がいい』と聞いてもないのに言い出して、本居小鈴の図書館で式場やドレスを調べた上で、東風谷早苗にドレスの製作を依頼しやがった・・・。しかもあいつも承諾して、どんどん既成事実が出来上がっていきやがる・・・!」

 

「ごめん雄二、東風谷さんがドレス作れるということが一番驚きだったよ。」

 

東風谷さんってすごいね。

古明地さんや魔理沙から聞いた話で、家事全般得意ってことは知ってたけど、ドレスまで作れるなんて。

霧島さんも、友人が作ってくれるのは嬉しいだろうし、素晴らしい計画だね。

雄二にとっては嫌みたいだけど。

 

「俺はもう負けられない!でないと、俺の人生は、俺の人生は・・・!」

 

「落ち着いて雄二!きっといい結婚生活が待ってるから!」

 

壊れた雄二が暴れださないようにはがいじめにする。

それにしても、霧島さんみたいな美少女にそこまで思われているなら、普通は喜ぶものなのに、雄二は贅沢ものだなあ。

 

「・・・あの二人、もしかして布都と同じくらい変人なんじゃないか?」

 

「おい、だから我を変人扱いするでない!」

 

向こうで蘇我さんが失礼なことを言ってる。

まったく、雄二と一緒にしないで欲しいな。

というか、そろそろ雄二を正気に戻した方が良さそうだ。

河城先生が怖い。

 

「ほら、雄二起きて。(ボコッ)」

 

「婿入りは嫌だ・・・!霧島雄二なんて死んでもごぼぁあ!はっ!?」

 

よし、雄二が正気に戻った。

古来から伝わる、壊れた機械の直しかたは雄二にも通じるんだね。

 

「じゃあ始めるよ。二組とも頑張ってね。」

 

河城先生が開始の合図をする。

なんだかんだあったけど、戦いのはじまりだ。

 

「よし屠自子よ!我は左に行くから、おぬしは右から攻めるのじゃ!」

 

「まあいいが、失敗するなよ?」

 

相手の二人が左右に散開して攻めてくる。

さて、もう勝負は始まっているし、ここは挑発でもして揺さぶろうかな。

 

「ふっ、物部さん。前回負けたのに、今回もまた負けにくるとはね。」

 

「いや、おぬしは途中で交代したじゃろ。」

 

「前回は物部さんの方が点数高かったのに負けたのを忘れたのかな?今回は、点数でも僕が勝ってるのにね。」

 

「だからおぬしは途中で交代したではないか。それに、今回はあの女子二人がいないうえにこやつがいるから、我が有利であろう?」

 

む、正邪と古明地さんは評価されているけど、僕や雄二は低く見られてるな?

 

「やれやれ、俺達も舐められたものだな、明久。」

 

「まったくだよ雄二。どうやらあの二人には、僕達の完璧なコンビネーションによる強さがわかっていないようだね。」

 

「なに!?おぬしら、まさか実は強いのか!?」

 

「布都、油断するなよ。」

 

どうやら蘇我さんには僕達の強さがわかったみたいだね。

その強さ、物部さんにも見せてあげるよ!

 

「さて、明久!」

 

「おう、雄二!」

 

僕達の間に言葉は不要。

軽く視線をかわしただけで、互いの意思を読み取ることができる。

もはや一心同体といえるこのコンビの実力、今見せてあげよう!

 

「「後は任せた!」」

 

僕と雄二は同時に左右に飛ぶ。

・・・ん?同時?

 

「ちょっと雄二!雄二が任せちゃダメじゃないか!雄二は点数は高いんだからここは雄二が行くべきでしょ!」

 

「てめえこそ働きやがれ明久!俺は試召戦争での召喚経験がねえだろうが!少しは役にたて!」

 

「その言葉、そっくりそのまま返すよバカ雄二!」

 

「野郎、表に出やがれ!」

 

「上等だ!」

 

互いの胸ぐらをつかみあう僕と雄二。

まずはこいつを葬るのが先だ!

 

「・・・・・・あやつらは、何をしておるのじゃ。」

 

「・・・見るな布都。チンピラがうつる。」

 

・・・おっと、しまった!アホ見るような目で見られてしまってる!

 

「あー・・・コホン。どうだい、僕らの凄さ、つたわったかな?」

 

咳払いをして、二人に告げる。

 

「・・・アホじゃな。」

 

「・・・アホだな。」

 

残念、二人にはこの凄さがわからなかったみたいだ。

 

「じゃあ仕方ない!実力行使だ!さあ雄二、作戦を見せてくれ!」

 

「そこは自分で考えろよ!・・・まあいい、作戦ならある。最も楽に勝てる方法がな。」

 

「お、なになに?」

 

まさかこの短時間でそんな作戦を考えるなんてね。

さすがは元神童といわれるだけはある。

 

「まず明久が物部をひきつけて・・・」

 

「ふむふむ。」

 

「・・・その間に明久が蘇我を倒すんだ。」

 

「それってただ僕が二人と戦うってだけじゃないか!」

 

楽に勝てるって、雄二が楽に勝てるって意味だったのかよ!

 

「さあ行くぞ明久!一人一殺だ!」

 

「結局作戦なんてないんじゃないか!まあいいや、行こう!」

 

僕の召喚獣を物部さんの召喚獣のほうへ向かわせる。

さあ、今回は勝つよ!

 

「む、やはりおぬしが相手か。向こうは頼んだぞ、屠自子よ!」

 

「やってやんよ!」

 

物部さんは皿を投げて攻撃してきたはずだから、距離をあけると不利なはず。

なら、いっきに近づく!

 

「そりゃっ!」

 

そのまま木刀を物部さんの召喚獣めがけて降り下ろす。

 

「そんなもの、当たらぬわ!」

 

それを横にずれて難なく回避する物部さんの召喚獣。

そのまま、お返しとばかりに手に持った皿を降り下ろしてくる。

でも、点数は僕の方が上だし、回避はできる!

 

「隙ありイィィィーッ!」

 

そして、かわされて若干体勢を崩した召喚獣の背中に、木刀による一撃を叩き込む。

 

『Fクラス 吉井明久 数学 63点 VS Dクラス 物部布都 数学 31点』

 

よし、点数を減らせた!

 

「なかなかやるではないか!前回は少し手加減したが、今回は手加減せぬぞ!痛いのを覚悟しておけ!」

 

そう言いつつ、物部さんはふたたび攻撃してくる。

でも、さっきと同じように回避して、攻撃を、撃つ!

 

「むっ・・・!」

 

だが、前回とは違い、物部さんは皿で木刀をガードしていた。

でも、あくまでそれは皿。

木刀の一撃を防ぎきれはせず、粉々に砕け散る。

割れた瞬間、後ろにバランスを崩したように動く物部さんの召喚獣。

よし、これでとどめ・・・ッ!

ぎゃあ!足の裏に陶器の欠片が大量にささったような痛みが!

その痛みで、攻撃を外してしまう。

 

「かかったな!今度はこっちの番じゃ!」

 

必殺の一撃を外したことによる大きな隙。

そこをつかれ、吹き飛ぶ僕の召喚獣。

 

『Fクラス 吉井明久 数学 14点 VS Dクラス 物部布都 数学 31点』

 

攻撃を受ける瞬間、とっさに両腕をクロスさせて勢いを殺したけど、だいぶ持ってかれてしまった。

点数も逆転されて、かなり厳しい状況。

そして、物部さんが追撃で投げてきた皿がすぐ近くまで迫ってきていて、回避ももう無理。

点数的にも、これを受けたら間違いなく僕の召喚獣は戦闘不能になる。

でも、僕は負けるわけにはいかないんだ!

 

「やられるかあああーっ!」

 

とっさの判断で、木刀を手放し、真剣白羽取りの要領で迫ってきた皿をキャッチする。

そのまま、物部さんめがけて皿をおもいっきり投げつける。

 

「二回も同じようにやられはしないわ!」

 

それを回避する物部さん。

 

「って屠自子、危ない!」

 

僕が投げ、物部さんが避けたた皿がたまたま蘇我さんの方に飛んでいく。

そっちには、拳で剣と互角にわたりあってるおかしな召喚獣がいた。

見たところ、雄二が優勢だ。

 

「え?・・・うわっ!」

 

飛来する皿に当たって体勢を崩した蘇我さんの召喚獣。

その隙を逃さず、雄二の召喚獣が拳を叩き込む。

 

『Fクラス 吉井明久 数学 132点 VS Cクラス 蘇我屠自子 数学 0点』

 

そのまま蘇我さんの召喚獣は戦闘不能に。

これで2対1。

 

「くっ、これは厳しいの・・・!」

 

雄二による拳の嵐と、僕の木刀が物部さんを襲う。

数でも点数でも劣る物部さんは防戦一方だ。

 

「・・・・・・第三者の観点からすると、吉井君、坂本君ペアは早急に負けて欲しいものだね。」

 

河城先生が呟く。

だよね。

一人の女の子を武装チンピラコンビがリンチしてるようにしか見えないもの。

当事者じゃなかったら、僕だってそう思うよ。

 

「これで・・・終いだっ!」

 

ダメージ覚悟で、僕が物部さんのガードを破り、雄二が拳をみぞおちに叩き込む。

100点を超える点数の一撃を耐えられるわけがなく、物部さんの召喚獣は戦闘不能になる。

よし、これで一回戦突破だ!

 

『Fクラス 吉井明久 数学 7点 and Fクラス 坂本雄二 数学 107点 VS Dクラス 物部布都 数学 0点 and Cクラス蘇我屠自子 数学 0点』

 

「そこまで。勝者は吉井君、坂本君ペアだね。4人とも、お疲れさま!」

 

河城先生によって勝利の軍配があげられる。

 

「まずは一勝だな。」

 

「うん、まずは一勝だね。」

 

おっと、そういえばやらなきゃいけないことがあったんだったね。

そして、僕と雄二は向き合う。

 

「それじゃ、改めて・・・」

 

「うん。」

 

二人の意見が一致したのが、言葉を交わさなくてもわかる。

友情を確かめるため、互いに手を出す。

 

「さっきの決着をつけるぞクソ野郎!」

 

「それはこっちのセリフだよバカ野郎!」

 

勝利の余韻のなか、僕らは互いに友情を確かめあった。




いかがでしたか?
アホ久は我ながら語感がよくて好き。

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