第三十六話「脅迫状!」
「お姉ちゃん、本当にいい天気だね~!こんな天気だと、なにかいいことが起こりそうじゃない?」
今日もいい天気だね~!
青く晴れ渡る空、ちょうどいい日差し、葉が青々としげる桜。
こういう日は、なにかいいことありそう!
「いつにも増してテンション高いわねこいし・・・。今日は強化合宿前日だし、あまりはしゃぎすぎるとバテるわよ・・・。」
そう!
お姉ちゃんの言う通り、明日は強化合宿!
勉強浸けの生活だけど、みんなとお泊まりというのはワクワクするよね!
そんな話をしながら歩いていたら学校に着いたから、お姉ちゃんと別れて自分の教室に向かう。
お姉ちゃんは新校舎、私は旧校舎だから、場所が違うんだよね。
「・・・ん?なんだろこれ?」
教室に行こうと下駄箱から上履きを取り出そうとすると、中になにか入ってる。
取り出してみると、白くて四角い手紙が出てきた。
『古明地こいし様へ』って書かれてるし、私宛なのは間違いなさそう。
・・・あ、もしかしてラブレターかな?
他人に見られるのも良くないし、お断りを前提にトイレでこっそり見てみる。
今はお姉ちゃんがいるからね。
『あなたの姉の秘密を握っています。公開されたくなければ、胸の小さい同性にこれ以上近づかないように。』
「・・・・・・脅迫状?」
それは予想してなかったな。
しかも、脅迫材料が、私のことじゃなくてお姉ちゃんのことだ。
私が嫌なことを的確についてる。
むー。
「というより、胸の小さい同性って誰のことなんだろ?」
うちのクラスだと、正邪ちゃんに美波ちゃん、あと魔理沙位かな?
阿求ちゃんはこの前の喫茶店で見たけど、平均的な大きさだったし、お空と姫路ちゃんは平均以上だしね。
木下君は胸小さいけど男の子だし。
あと私が関わりがある中で条件に合うのは天子さん位かな?
霊夢さんや早苗ちゃん、あとお燐はわりとあるし。
お姉ちゃんも胸小さいけど、多分違うと思う。
「・・・とりあえず、ムッツリーニ君にでも協力を頼んでみようかな?」
お姉ちゃんの秘密を握っているなんて許せないもんね。
みつけたら《ズゴゴゴゴ》して《ガラガラガラ》して《ピッチューン》しないと。
教室に行き、さっそくムッツリーニ君に協力を頼もうとしたら、そこには吉井君、坂本君、あと魔理沙がいた。
3人とも相談しようとしてるみたい。
「実は、僕のメイド服パンチラ写真が、全世界にweb配信されそうなんだ。」
「・・・何があった?」
吉井君、何があったんだろう?
さすがに色々飛ばしすぎたと思ったようで、説明する吉井君。
どうやら、吉井君と魔理沙も私と同じように脅迫状が来てたみたい。
それで、無視した場合、同封されていた吉井君のメイド服写真をばらまくってことらしい。
でも吉井君、なんでメイド服着てるの?
ちなみに、坂本君は婚姻の証拠としてプロポーズ音声を親に聞かせようとしてる霧島さんに、その音声ファイルが渡らないようにしたいらしい。
もう坂本君、結婚しちゃえばいいのに。
「・・・恐らく、4人のそれは全て同一人物。」
ムッツリーニ君がそう予想する。
坂本君以外の3人の脅迫状は似ているしね。
筆跡に関しては、どれもデジタルで打ち込まれたものだからわかんないけど。
「遅くなってすまないな。HRを始めるから席についてくれ。」
4人で脅迫状について話していると、鉄人先生が入ってきた。
手に大きな箱を抱えてる。
「・・・とにかく、調べておく。」
ムッツリーニ君がそう言ってくる。
私達は鉄人先生にどやされないうちに席に戻っていく。
特に吉井君と坂本君は目をつけられてるからね。
「さて、明日からの強化合宿だが、だいたいはしおりに書いてある通りだ。まあ、勉強合宿だから着替えと勉強道具さえあれば特に問題はないはずだが。携帯ゲーム機等は没収するから持ってこないように。」
前から渡されたしおりを1冊とって後ろに回す。
「集合の時間と場所だけはくれぐれも間違えないようにな。特に他のクラスの場所と間違えるなよ。クラスごとでそれぞれ違うからな。」
パラパラとめくって集合場所を探す。
今回行くのは、電車やバスで行くとだいたい5時間くらいかかる場所だね。
Aクラスはやっぱり豪華なリムジンバスなのかな?
そうなると、Fクラスはどうなるのかな?
やっぱり補助席とかつり革とか・・・?
いや、もしかしたら引率だけな可能性も・・・。
「いいか、Fクラスは他のクラスと違って・・・現地集合だからな。」
「「「案内すらないのかよっ!!」」」
扱い・・・。
あまりの扱いに、全員が涙した。
翌日。
集合場所の関係で私はFクラスのみんなとともに電車に乗っていた。
電車で1時間くらい乗ってるだけでも景色はだいぶ違ってくる。
窓の外には緑が豊かな光景が見えるしね。
「あと2時間はこのままですね。」
姫路ちゃんが操作していた携帯をしまう。
多分乗り換えを見てたのんだと思うよ。
でも、意外にやることないよね。
「ねえ雄二、なにか面白いもんない?」
吉井君もやっぱりヒマみたいで、坂本君に尋ねてる。
「鏡がトイレにあったぞ。存分に見てくるといい。」
「それは僕の顔が面白いって言いたいのかな?」
「いや、お前の顔は・・・・・・笑えない。」
「笑えないほど何!?そんな酷いの!?」
「面白いと言ったのはお前の守護霊だ。血みどろで黒髪を振り乱してる珍しい守護霊がな。」
「そいつはどう考えても僕を守ってないよね。」
「安心しろ。半分冗談だ。」
「あ、なんだ。びっくりした。」
「本当は茶髪だ。」
「そこは一番どうでもいいよね!?」
二人は楽しそうに話してる。
まあ吉井君をからかってる坂本君が、だけど。
「そういえば美波ちゃんは何読んでるの?」
ふと横を見たら、美波ちゃんがなんかの本を読んでいた。
珍しいな。
「ん、これ?これは心理テストよ。意外と面白いの。」
「へえ~、面白そうだね。ねえ美波、よかったら僕にもなんか問題出してよ。」
吉井君も興味を示したみたい。
「じゃあ私も、それやってみたいな。」
「いいわよ。じゃあ・・・『次の色でイメージする異性をあげてください。①緑 ②オレンジ ③青』似合うと思う人の名前をあげてね。」
ぱらぱらとページをめくった美波ちゃんが問題を出す。
えーっと・・・。
「えーっと、私は①木下君②坂本君③吉井君かな?」
「僕は・・・①古明地さん②秀吉③姫路さんかな?」
ビリィッ!!
美波ちゃんの手元からすごい音がした。
「「あ、あの美波さん?何故本を引き裂いているのですか・・・?」」
私と吉井君はついつい敬語になっちゃう。
「こいしちゃんはどうして青がアキなのか、アキはウチが入ってなくて瑞季が青なのか、説明してくれる?」
「「ど、どうしてと言われましても・・・。」」
私はなんとなくなんだけどな・・・。
「なんとなくなんだけど・・・。」
吉井君もそうみたい。
でも、どうして美波ちゃんは本を裂いたんだろう。
気になったから、本を見てみる。
・・・あー、そういうことねー。
緑は友達、オレンジは元気の源、青は・・・
「ちょっ、返しなさいよ!」
「ごめんごめん、ちょっと気になっちゃってね。」
これは吉井君には言わないでおこうかな。
「お?なかなか面白そうなことやってるな、私も参加していいんだぜ?」
「別にいいわよ。」
そうこうしていると、あっちで話してた魔理沙達も興味を示したようで、やってくる。
「じゃあ・・・『1から10の数字で、今あなたが思い浮かべた数字を順番に2つあげてください。』だって。どう?」
「私は5、8だぜ。」
「俺は5、6だな。」
「ワシは2、7じゃな。」
「私は8、10かな?」
「私は10、6だ。」
「僕は1、4かな。」
「私は3、8です。」
ちなみに、順番に魔理沙、坂本君、木下君、私、正邪ちゃん、吉井君、姫路ちゃんだよ。
「『最初の数字は、普段あなたが見せている顔です。』魔理沙と坂本が・・・『クールでシニカル』、木下は『落ち着いた常識人』、こいしちゃんは『素直で思いやりがある人』、正邪は『冷静で思慮深い』、アキは・・・死になさい、瑞季は『温厚で慎重』ね。」
「私と坂本はクールでシニカルなんだな。」
「常識人とは嬉しいのう。」
「素直で思いやりがあるのね~。」
「冷静で思慮深いはわかるな。」
「ねえ、僕だけ罵倒されてなかった?」
「温厚で慎重ですか~。」
口々に感想を述べている私達。
「それで『次に思い浮かべた数字はあなたがあまり見せない本当の顔』だって。魔理沙と瑞季が『意志の強い人』、坂本と正邪が『公平で優しい人』、木下は『色香の強い人』、アキは・・・むごたらしく死になさい、こいしちゃんは『冷静で思慮深い人』ね。」
「坂本や正邪は公平で優しいんだな。」
「秀吉は色気があるのか。」
「霧雨と姫路は意志が強いようじゃの。」
「古明地は冷静みたいだな。」
「ねえ、僕の罵倒エスカレートしてなかった?」
感想を口々に言い合う私達。
こういうのも、旅の醍醐味だよね。
そんな話をしながら昼ごはんを食べたりみんなで遊んだりしたら、いつのまにか時間も経って、強化合宿の場所に到着したよ。
個人的には、阿求ちゃんが教えてくれた人狼ってゲームが面白かったな。
強化合宿の会場は、潰れた旅館を文月学園が買取り、合宿専用の施設に改修させたんだって。
召喚獣も教師の立ち会いのもとなら出せるようになってるみたいだけど、お金あるよね~。
いかがでしたか?
脅迫された人が多いです。
明久は死ななかった。