古明地こいしとFクラス   作:こいし金二

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他のでもそうなんですが、うちは展開が速めだなぁ。


第四十話「三日目!」

 

 

その日の夜、EクラスとDクラスの協力を得られることになった私達は、吉井君達の部屋で待機してた。

結局CとBクラスには協力を得られなかったみたいなんだよね。

Cクラスは小山さんがリーダーだからか尻込みしてる感じらしいし、Bクラスも同様に今のクラスの中心は根本じゃなくてお姉ちゃんな関係で尻込みしてたみたい。

まあ、根本は今立場無いだろうからね~。

 

「まあ、得られなかった戦力のことを嘆いても仕方がない。DとEには既に集合場所と時間は知らせてある。とにかく時間まで待機だ。」

 

それもそうだね。

坂本君の言う通りだ。

 

「そういえば魔理沙、霊夢さんは引き受けてくれたの?」

 

「ああ、バッチリだぜ!最初は渋ってたけど、食べ放題のチケットを見せたら0.1秒で承認してくれたんだぜ。」

 

あはは、霊夢さんらしい。

まああの身体にどうやって入るのかなっていうくらい食べるもんね。

 

「やられたっ!女子が食堂で待ち伏せしてやがった!」

 

それを聞きながら待機していたところ、須川君が駆け込んできて報告する。

・・・えっ?

 

「なんだと!?・・・クソッ!翔子か!」

 

坂本君が驚いた後、悔しそうにする。

そっか、幼馴染みだから考えてることが読めたんだね。

試召戦争では有利にはたらいたけど、今はつらいね。

とにかく食堂に向かうと、そこでは戦争がはじまっていた。

まだ入浴時間になってないためか、女子は全クラス見受けられる。

D、E、Fの下3クラスなこちらは圧倒的に不利だ。

・・・どうするの?

 

「生き残った奴は陣形を立て直し、俺に続け!どうにか持ちこたえるんだ!」

 

坂本君の指示が飛ぶ。

どうにかFクラスのみんなと合流はできたけど、このあとどうするの?

そう思っていたら、坂本君は迷いなく進み始める。

向かってるのは・・・敵が多い方?

 

「坂本君、なんでわざわざ多いほう行くの?」

 

「敵が少ない方は罠の可能性が高い。だからあえて多い方に行った方がいいという考えだ。」

 

なるほどね。

でもなんだろう、なんか不自然な気が・・・。

多数の女子達と接敵してるけど、むこうが召喚獣を出さないどころか、なんか道をあけてる気がするし・・・。

 

「・・・やっぱり、雄二ならそうすると思った。」

 

「翔子!?クッ!」

 

私の予感は間違ってなかったようで、目の前には霧島さんや姫路ちゃんをはじめとしたメンバーが勢揃いしてた。

しかも、さっき私達を避けた女子達が通せんぼするかのように後ろを塞いでる。

坂本君の気持ちはわかるよ。

とっさの判断でとった行動が完全に相手の思い通りだった訳だもんね。

 

「・・・雄二。浮気は許さない。」

 

坂本君の行動パターンを予測して待ち伏せるなんて、霧島さんはよっぽど坂本君の覗きが許せないみたい。

 

「落ち着け!女子の召喚獣は触れない!間を無理矢理にでも抜けるんだ!」

 

須川君による指示。

昨日みたいに鉄人先生はいない(鉄人先生は最後の砦として女子風呂の前に陣取ってるからね)から大丈夫かと思ったのかもしれないけど・・・。

 

「まったく、あなた達には社会のルールについてたっぷりと指導する必要がありそうですね。」

 

注意がいるのは鉄人先生だけじゃない。

教師全員だからね。

しかも、よりによって学年主任の高橋先生がいる。

普通に考えれば、今合宿所にいる先生のなかでもトップだよね。

 

「くっ!こうなったらとことんまでやってやる!サモン!」

 

吉井君が召喚獣を呼び出し、単身相対する。

 

「先生!アキの召喚獣は見た目よりずっと強いですから気を付けてください!」

 

「大丈夫です。心配には及びません。吉井君。あなたには失望しました。少しは見所のある子だと思っていたのですが。」

 

美波ちゃんの言葉に返事を返し、武器であるムチを構えさせる高橋先生の召喚獣。

対する吉井君も木刀を上段にかまえさせ、間合いを計るかのようにして備えている。

さて、高橋先生はきっとものすごく強いけど吉井君も召喚獣の扱いは多分誰よりも上手い。

どうなるかな?

・・・と、少し期待しながら見ていたんだけどね。

吉井君の召喚獣がいきなり倒れる。

そして一瞬後に本人も痛みで倒れ、のたうち回ってる。

はっきりと見えたわけじゃないけど、まるで剣術の居合のように素早くムチをふるい吉井君を倒したあと、もとに戻してた。

あれ多分、ムッツリーニ君が腕輪を使った時よりも速いんじゃないかな?

落ちた小銭や食べられる獲物を発見する能力に長けているため反射神経がものすごい高い霊夢さんならともかく、常人ならたとえ点数が5ケタとかあっても回避出来ないと思うよ。

・・・改めて思うけど、霊夢さんの人外っぷりが凄い。

 

『学年主任 高橋洋子 総合科目 7791点 VS Fクラス 吉井明久 総合科目 0点』

 

点数も恐ろしいよね。

瞬間記憶能力持っていて、日本史と古典が4ケタな阿求ちゃんですら5000点ちょいなのに、なにしたらあれだけいくのかな・・・?

 

「仕方ない!ここからは各自の判断で行動しろ!」

 

「「「おうっ!」」」

 

坂本君による、事実上の撤退宣言が出される。

ここまでに召喚獣を出してない私は罠だとわかった瞬間、そっと女子達の間にまぎれて共犯認識されないようにしたけど、みんなはどうするのかな?

 

「「・・・・・・(土下座)」」

 

全員土下座か。

・・・ムリじゃないかな?

 

「・・・ほう?あなた達は土下座をしないのですね。指揮官としてのプライドですか?」

 

ほとんどが土下座をするなか、吉井君と坂本君だけが微動だにせず立っているのを見て、高橋先生が感心したかのように目を細めてる。

でも私は2人と長くいるからわかるよ。

多分あれは・・・

 

「いいや、違うな。アンタはなにもわかっちゃいない。」

 

「まさか、援軍が来るとでも?」

 

「助け?俺達が言っているのはそういうことじゃない。」

 

「・・・雄二。浮気は許さない。」

 

「坂本君、明久君。覗きは立派な犯罪なんですよ?」

 

「そういえばアキには昼間のこともお礼しなきゃね?」

 

・・・あれは、「土下座をしても許してもらえそうにないからだ」と思ってるよねきっと。

まあ実際土下座組も全員許されなかったわけだけどね。

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・で、なんでわざわざここに呼び出したのよ。」

 

「私とコイツら以外にはこのことを聞かれたくなかったからなんだぜ。」

 

「・・・ふぅん。まあ、いいけどね。」

 

吉井君達へのお仕置きと私達女子のお風呂が終わった後。

私達だけでなく、霊夢さんも吉井君達の部屋に来ていた。

魔理沙がここに来るよう言ってあったみたい。

 

「で、どうだったんだ?」

 

「言われた通り、尻に火傷の跡がある生徒がいないか見てきたわよ。結果から言うと、Aクラスにはいなかったわね。」

 

霊夢さんが言う。

Aクラスにいないってことは・・・

 

「工藤は風呂にいたか?」

 

「なに、アンタ愛子に気があんの?代表いんのに浮気?」

 

「ちっがう!」

 

坂本君の質問に対して勘違いした様子の霊夢さん。

まあ、そう思ってもおかしくはないかな?

 

「まあいいわ。とにかく愛子もいたわよ。」

 

そうなると、工藤さんは犯人ではないみたいだね。

 

「で、焼肉食べ放題のチケットは渡すんでしょうね?『いつ渡すか指定してないから、その気になれば10年、20年先にすることも可能だ』みたいなこと言ったら鉄骨で殴ってビルから叩き落とすわよ。」

 

「んなことは言わないぜ。ほれ。」

 

魔理沙が約束の品を渡す。

まあ、霊夢さんなら本当にやりかねないからね。

鉄骨渡りとかも即答でやって成功しそうだし。

 

「確かに受け取ったわ~♪夢が膨らむわね~!」

 

「ちなみにそれ、有効期限があるから注意するんだぜ。1月くらい先だけどな。」

 

「問題ないわ。合宿終わったらすぐ行く予定だったから。」

 

「それと、せっかく2枚あるんだから、早苗の奴を連れていってやったらどうだ?絶対に喜ぶと思うんだぜ。たまには姉として、な。」

 

「・・・まあ、考えておくわ。」

 

確かに、早苗ちゃんは霊夢さんのこと大好きだもんね。

早苗ちゃんが特別お肉が好きっていうわけじゃないけど、多分霊夢さんが誘えば喜んで行くんじゃないかな。

 

「・・・あ、そうそう。この部屋の前で西村先生が見張ってるから、吉井、坂本、木下、えーとあとカメラは外に出ない方がいいわよ。んじゃね。」

 

出ていこうとした霊夢さんが振り返ってそんなことを言う。

カメラって。

ムッツリーニ君だけ名前覚えられてないみたいだね・・・。

 

「・・・俺の名前は土屋康太。カメラじゃない。」

 

「まあまあムッツリーニ君、そう気を落とさないの。吉井君と坂本君は召喚大会で戦ってるし、木下君は同じクラスにお姉さんがいるから覚えてただけだと思うよ。」

 

でも監視されてたのか~。

私はうまくまぎれられたおかげで罰を受けないで済んだし、魔理沙は今日参加してないから罰を受ける理由がないし、監視がつく前に部屋に入ってたから知らなかったや。

 

「まあ、霊夢はあまり積極的に人の名前を覚えようとしないからな。気にすんなって。それで、Fクラスのは私が見てきたぜ。こっちも火傷の痕はなし、だ。」

 

魔理沙が報告する。

まあ、同じFクラスにこんなことをする人がいるとは思ってなかったけどね。

 

「ふむ。まあそうだろうな。」

 

「・・・同じクラスでやっていたのなら、5秒で察知していた。」

 

「そうなると、やはり覗くしかないみたいだぜ。坂本、作戦はあるのぜ?」

 

「正面突破だ。」

 

えー。

 

「そんな絶望的な顔をしないで話を聞け。相手はあれ以上戦力は増やせない。今日は負けたが、相手の戦力を知ることができた。これは大きいぞ。」

 

「・・・他のクラスの情報も把握済み。」

 

多分D、Eクラスだね。

 

「向こうの布陣は教師を中心とした防衛布陣だが、色々と弱点がある。明久、わかるか?」

 

「微塵もわからないね。」

 

「チョキの正しい使い方を教えてやる。」

 

「ふぎゃあっ!目がっ!目があぁっ!」

 

吉井君の眼に坂本君のチョキが刺さったよ。

痛そ~。

 

「それは干渉だ。向こうにとって、一番避けなければいけないのは召喚獣を出せなくなることだからな。」

 

確かに、召喚獣の力なしで男子高校生の群れを止めるのは難しいもんね。

鉄人先生ならともかく。

 

「それと、やはり最大の関門は鉄人だ。覗きを成功させるには、ある奴を無傷で送り届けなければならない。」

 

「ある奴って?」

 

「お前だよ明久。鉄人と張り合えるのは、監察処分者であるお前の召喚獣だけだ。」

 

確かにそうだよね。

人間が熊などの獣に勝つには武器が必要だし。

 

「それで、今日の目撃情報から敵戦力を推察すると、こうなる。というか、俺ならこうする。」

 

話しつつ、この会場の地図に予想布陣を書き込む坂本君。

 

「なるほどね。絶対に通らなければいけない場所には、最強の先生である高橋先生を置いてくると。」

 

「まあな。だから、さっき言ったことを実現させるには、高橋先生のエリアを明久が無傷で突破する必要がある。とはいっても、現状の戦力では突破どころかたどり着くことすら厳しいだろうな。」

 

実際、AやBクラスの人もチラホラいたもんね。

 

「だからやはり、A、B、Cクラスの協力が必要ってことだ。」

 

「なるほどね。でも、どうやって?」

 

「これを使う。」

 

そう言って取り出したのは、部屋に備え付けられている浴衣。

一応使っちゃいけないことになってるけどまあ、坂本君だもんね。

 

「これを着せた写真を撮って劣情を煽るつもりだ。うまくやればA、B、Cクラスの協力もとりつけられるだろう。」

 

「またワシが着るんかの・・・。」

 

木下君がしょんぼりしてる。

まあ、こういうのをやるの、木下君が多いもんね。

 

「いや、今回は秀吉だけではない。古明地と霧雨、あと島田と姫路にも協力を頼む。」

 

あ、私も?

・・・って考えてみたらそりゃそうか。

 

「ぜぜ!?私!?」

 

対照的に、魔理沙は驚いてる。

結局はなんかしらの交渉をした末に了承してたけど、何を話してたかは聞こえなかったな。

ちなみに、私はOKしたよ。

 

「ということで、明久は島田と姫路に連絡をとってくれ。古明地と霧雨、あと秀吉は準備を頼む。」

 

「「「はーい。」」」

 

返事をして、見えない位置に移動する。

着替えている途中、吉井君の変な声と何かが倒れるような音が聞こえてきたし、着替え終わって戻ったら、なんか元携帯っぽい電子パーツが複数とお茶漬けの携帯、あと坂本君の死体があったんだけど・・・。

いや、何かがあったの?

部屋はなんかひどいことになってるし・・・。

ある程度の耐水機能がある携帯なら電源を切ってパーツごとに分解して数日放置すれば大抵は生き返るけど、あれは大丈夫なのかな・・・?

 

「あ、古明地さんと魔理沙!悪いんだけど携帯を少し貸してほしいんだ!美波にメールを送らなければいけなくて!」

 

「うーん、私は携帯部屋にあるんだよね・・・。」

 

「私は持って・・・そういえばパチュリーの図書館に本を借りに行って逃げ帰った時に落としたからもってないなぜ、すまん。」

 

「・・・ねえ魔理沙、確かそこ出禁喰らってなかった?あと本といえばいい加減お姉ちゃんに返してほしいんだけど・・・。」

 

「今は合宿で無理だしそのうちな。」

 

パチュリーさんは、魔理沙の家の近くにある私立図書館の館長なんだけど、魔理沙は借りた本返さないから出禁喰らってるんだよね。

魔梨沙という偽名と赤いウィッグで変装したりこっそり忍び込んだりで本を借りてるけど、いつか窃盗罪で法的手段に訴えられないか心配だよ。

それに、『送信先を間違えて美波ちゃんに告白ともとれるメールを送ってしまい、訂正メールを送ろうとしたところ坂本君に携帯を壊されてどうしようもなくなり、報復に同じことをやってやった』みたいな顔してる吉井君もね。

そんなことをやっていたら時間が過ぎ、コンコンと控えめなノックの音が聞こえてくる。

 

「失礼します・・・。」

 

この声は姫路ちゃんかな?

吉井君がドアを開けると、やっぱり姫路ちゃんが立ってた。

 

「よく来たね。鉄人に絡まれなかった?」

 

「あ、はい。お菓子をあげたら通してくれました。みなさんもどうぞ。」

 

そう言って、市販品と思わしきお菓子を出す姫路ちゃん。

まあ、姫路ちゃんは成績優秀で(基本)品行方正な生徒だし、大丈夫って判断されたんだと思う。

 

「よく来たな姫路。早速だがプレゼントだ。」

 

「浴衣・・・ですか?」

 

「そうだ。それを着た写真を撮らせてほしい・・・と、明久が言っている。もちろんタダとは言わない。・・・ゴニョゴニョ・・・。」

 

坂本君が姫路ちゃんに小声で交渉してる。

ほとんど聞こえなかったけど、寝顔写真って単語が聞こえたな。

 

「わかりました!少しくらいなら浴衣のすそをはだけさせても大丈夫ですっ!」

 

すごいやる気だね。

だいたい何を提示されたかわかっちゃったよ。

私だってお姉ちゃんの寝顔は何時間見てても飽きないもん!

 

「あ、そうそう。撮った写真を他の人に見せても構わないかな?」

 

吉井君が許可をとる。

まあ、さすがに無断で見せるのは友達としてどうかなと思うもんね。

 

「他の人、ですか・・・。少し恥ずかしいですけど・・・頑張ります。」

 

姫路ちゃんのなかで天秤にかけた結果、寝顔写真に傾いたみたい。

 

「そんなに恥ずかしがらなくても大丈夫だよ姫路さん。僕と秀吉、それに古明地さんと魔理沙も映るからさ。」

 

「・・・そうですか。」

 

ちょっと不満そうな姫路ちゃん。

やっぱり吉井君とのツーショットが良かったのかな?

まあ、結局撮影は5人でやったけどね。

多分ムッツリーニ君の腕なら、絶妙に吉井君だけをフレームアウトさせつつ、良いアングルで取ってくれてると思うよ。

せっかくだし、可愛く写ってると嬉しいな~。

・・・あ、そうだ。

 

「・・・あのさムッツリーニ君。」

 

「・・・どうした?」

 

「こっそり、姫路ちゃんと吉井君の2人の写真を撮って、姫路ちゃんに渡してあげてよ。吉井君には秘密でね。」

 

私のお節介かもしれないけど、多分姫路ちゃんにはいい思い出になるはずだからね。

 

「・・・いいだろう。」

 

ちなみに、吉井君も姫路ちゃんとのツーショット写真をお願いしていたみたいだけど、これを知ったのは相当後なんだよね。

 

 




いかがでしたか?
金で雇った霊夢のおかげで愛子が犯人ではないと判明しました。
霊夢さんなら本当にブレイブメン・ロードを渡りきり、風圧も根性で耐えそうです。

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