第四十二話「急展開!」
「お姉ちゃん、本当にいい天気だね~!こんな天気だと、なにかいいことが起こりそうじゃない?」
今日もいい天気だね~!
青い空と白い雲、明るい太陽、見える黒い制服。
こういう日は、なにかいいことありそう!
「そういえば今日が男子の停学明けだったわね。」
強化合宿が終わって1週間後。
Fクラス男子達の停学が明けるのが今日だよ。
「確か、Fクラスはクラスの80%以上が男子よね。」
「うん、そうだよ。」
だからすごく広く感じたよ。
まあ、それも昨日までなんだけどね。
今日からは吉井君達が来るから、いつも通りに戻ると思う。
「じゃあこいし、またね。私は根本に少しばかりお灸をすえないとならないので。」
「うん、わかった!じゃーねー。」
今は根本よりお姉ちゃんの方が実質的な立場は上だからね。
お姉ちゃんと別れ、私達Fクラスの校舎に向かう。
「・・・!!」
そこで、私は驚きの光景を目にしたよ。
なんと、美波ちゃんが吉井君とキスしてる!
吉井君の方は何がなんだかわかってない様子だけど、もしかして美波ちゃん、合宿中に告白を決意するような何かがあったのかな?
改めて考えてみると、吉井君達の停学期間中、少し悩んでるような素振りが多かったかもしれないな。
「じ、冗談じゃないから・・・!」
それだけ言い、美波ちゃんは走り去る。
やるね!
これで吉井君も美波ちゃんの想いに・・・・・・気づいたら苦労してないか。
今も吉井君、何がなんだかわからないような感じで呆然として・・・あ、吉井君の顔に須川君が全力で拳叩き込んだ。
黒いローブを羽織り、悪魔降臨の儀式を行うような服装の、Fクラスの異端審問会の人達が吉井君を気絶させ、Fクラスに運び込んでる。
なんというか、いままでと比べて本気の殺意を感じるな。
「・・・なあ古明地。これ一体どういう状況だ?」
「あ、正邪ちゃん!うーん、私もよくわからないけど美波ちゃんが吉井君にキスしてたよ。」
「だからあいつらはあれだけ殺気だち、坂本も殺ろうとしてるのか。」
あ、本当だ。
あそこにいる霧島さんと、かれらのレーダーにひっかかるようなことしたのかな?
「まあ、とりあえず教室に行けばわかるかもしれない。」
正邪ちゃんといっしょに教室へ向かう。
異端審問会のみんなもFクラスに行ったしね。
扉を開くと・・・なんていえばいいのかな、生け贄の儀みたいな感じになってる。
中央に縛られた2人を取り巻くよう並ぶ会員達。
どうやら、審問会みたいだけどね。
「これより異端審問会を始める。では、始めに判決を言い渡す。判決、死刑!」
・・・ん?
もしかして2人の死刑は決定事項なの?
「ストップ!せめて吉井君と坂本君の言い分を聞こ?」
「安心しろ、今からするところだ。吉井と坂本の猿轡を外してやれ。」
「「「はっ!」」」
一応聞く気ではいたみたいで、会長である須川君の命によって数人のメンバーが外す。
それでも2人とも、みのむし状態で、動けそうにはないかな。
「では、まずは罪状の確認を行う。横溝。」
「はっ。本日午前八時頃、吉井明久が人目のある場所であるにも関わらず、島田美波に対して強制猥褻行為を働きました。これは学園上の風紀を乱すものとして我々は事実と余罪について追求を『長い。簡潔に述べよ。』キスしてたから羨ましいであります!」
わー、簡潔だー。
「うむ、簡潔でよろしい。吉井明久よ。罪を認めるか?」
「・・・ちなみに、認めたらどうなるの?」
「そうだな、ライターと灯油を使った刑を『濡れ衣です!僕はやってない!』そうか、それなら自白を強要するまでだ!」
「そうだ!自白を強要させろ!」
「議事録を改竄しろ!」
んん?
審問会でやっちゃいけないことが聞こえるよ?
まあ、もうこれは審問会って呼んじゃダメなもんになってると思うけどね。
「ええい、灯油とライターの用意はまだか!」
「拷問用もそれなの!?なら同じじゃん!」
「違うぞ吉井。罪を認めない場合は拷問用と処刑用の2回だから罪を認めた方が1回お得なんだ。」
「そんな風に言われても、僕は騙されないぞ!」
「というか灯油とライターはダメ!校舎が燃えちゃうよ!」
これで火事になったら大変だもん。
こんなぼろっちい校舎、すぐ燃えちゃいそうだし・・・。
卓袱台も畳も燃えやすいしね。
「・・・よかろう、古明地こいしに免じて『特別バンジージャンプ』に刑を変えてやろう。あまり恐怖を与える訳にもいかないからヒントくらいしか言えないが・・・『パラシュートのないスカイダイビング』といったところか。」
死刑だよね?
120%死刑だよね?
「それもう答え言ってるじゃん!死刑だよね!?僕と雄二をここから突き落とすつもりなの!?」
「テメェ・・・!やるならコイツだけをやれ!」
「雄二、ありが・・・違う!それだと被害を受けるのは僕だけじゃないか!あまりにもかっこよく言うから一瞬勘違いしちゃったよチクショウ!」
「よかろう、男らしいお前のセリフに免じ、刑は吉井だけにしてやる。」
「須川君も気づいて!コイツはただ友達を売って自分だけ助かろうとしてるだけなんだ!やるなら雄二を!」
「まあ安心しろ、明久。こんなこともあろうかと、持っていたものがある。」
そう言って、坂本君が取り出したのは・・・・・・切れた輪ゴム。
さては坂本君、遊んでるね?
「HRを始めるぞ、お前ら席に・・・・・・お前らは停学明け早々、何をやっているんだ。」
そんな風にドタバタしてると、いつのまにかHRの時間になっていたようで、鉄人先生が入ってくる。
「先生!助けてください!校内暴力です!虐められてるんです!」
「違います!これは学園の風紀を守るための戦いなんです!吉井は不純異性交遊の現行犯なんです!」
「・・・まあ、何をやってたのかはどうでもいいが、それより補充テストは受けんでいいのか?ここにいる大半は点数がゼロなはずだぞ。」
確かに、私達女子はテストを受けたけど、停学中だった男子みんなは受けられてないもんね。
最終的に、特定の教科で点数がなくなったら他のフィールドに行って召喚し戦うといった、全教科入り乱れての戦いとなっていたようだし。
もし今戦争を仕掛けられたら、7人しか戦えないよ。
「でもこんなFクラスに戦争仕掛けてくるところなんてないと思いますよ?稗田さんと姫路さんもいますし。」
「「「それより今は吉井のことだ!」」」
「・・・まあ、お前らの自由だ、好きにすればいい。それとその稗田についてだが、体調を崩したため3日程学校を休むそうだ。」
あらら、阿求ちゃん大丈夫かな?
昨日は普通に元気そうだったから深刻な病気じゃないはずだけどね。
阿求ちゃんは身体が弱いから、まれに今みたいに休むことがあるんだよ。
「最後に、試召システムのメンテナンスが遅れている。教師総動員で当たっているが、今日中に終わらないだろう。そのため、試召戦争が出来るのは明日以降になる。では、HRを終わる。あまりこんなことばかりしてないで、勉学に励むように。」
そう告げて先生は教室を出ていく。
・・・大丈夫かな?
というか、そろそろほんとに吉井君助けないと殺されそう。
「まあ落ち着けお前ら。羨ましいという気持ちはわかるが、処刑したからといって島田の気持ちがお前らに向く訳ではないんだぞ?」
あら、珍しく正邪ちゃんが制止した。
しかも普通に真面目なこと言ってる。
「「「だとしても、俺達は吉井が殺したいほど憎いんだ!!」」」
それに対しての反応がコレ。
酷いというか歪んだクラスだよね。
「・・・はぁ。とにかくキスごときでクラスメイトを殺そうとすんなって。」
「だとしても、吉井と島田の接吻は異端審問会として許されるものでなく・・・」
須川君の言葉の途中で、ガラッと扉が開けられ、当人である美波ちゃんが入ってくる。
その顔は耳まで真っ赤になってて、普段とは違う空気に誰も言葉を発せない。
授業に来た先生も、その様子に驚いてた。
「・・・ねえ、アキ。ウチの卓袱台、損傷しちゃったから、一緒に使わせて欲しいんだけど・・・いい?」
「あ、うん・・・。いいけど・・・。」
一時間目の授業が終わり、美波ちゃんが吉井君に言う。
普段とは明らかに違うのがわかるくらいぎこちないよね。
まあ、今までの友達という関係からカップルという関係になるなら、はじめてのことばっかりだと思うししょうがないよね。
「「「・・・・・・!!」」」
その様子を見てるクラスメイト達から怒りと嫉妬のオーラが立ち上ってる。
頭の上に、何故かぱるぱるという文字が見えたよ。
「お姉様!その豚野郎から離れてください!」
さらに乱入してきたのはDクラスの清水美春ちゃん。
先の強化合宿での覗きの真犯人かつ脅迫犯で、美波ちゃんが好きな女の子だよ。
まあ、脅迫についてのお仕置きは、男子の停学期間中にやったんだけどね。
爪に針とかだと目立っちゃうから、せっかくだから火傷の痕があった場所にお灸をすえてみたよ。
・・・まあ、今も事情を知って乱入してきたし、多分改心はしてないけど・・・。
でもお姉ちゃんの写真を撮らないよう釘をさしたし、お仕置きは済ませたしまあいっかなって思ってるけどね。
「み、美春!?ウチの邪魔をしにきたの!?」
「当然ですっ!そこの豚野郎とそんなに密着してるのを見逃す訳にはいきませんっ!」
豚野郎って、相変わらず毒舌だよね・・・。
「し、しょうがないじゃない!卓袱台は狭いから密着しなきゃならないでしょ!ウチのは壊れてるんだし!」
「だったら他の女子の所へ行けばいいじゃないですかっ!魔理沙さんとか正邪さんとか古明地さんとかっ!」
まあ、理にはかなってるよね。
でも、友人の恋は応援したいと思っているはずの魔理沙と正邪ちゃんと私は素早く目線を交わす。
「先に言っておくが、私はお断りだぜ。美波には悪いが、私は卓袱台を広く使いたいのぜ。」
「私も魔理沙と同じだ。古明地のとこはどうだ?」
「ごめんね、私も無理かな。」
もちろん、こういう事情がなかったら全然構わないんだけどね。
美波ちゃんは友達だし。
「そういう訳みたいよ。」
「だ、だったら稗田さんとか姫路さんとか霊路地さんとかいるじゃないですかっ!」
「阿求は今日休みだから勝手に使ったら悪いし、瑞希は勉強の邪魔になっちゃうし、お空は寝てるから頼めないし・・・。」
「あ、あの美波ちゃん、私なら大丈夫ですから・・・。色々話したいこともありますし・・・。」
おずおずと言う姫路ちゃん。
まあ、姫路ちゃんも吉井君のことが好きな訳だもんね。
「でも、そうは言っても遠慮しちゃうし・・・。」
「私は本当に構いませんから・・・。」
「そうですお姉様!席は移動して美春とお弁当を食べましょうっ!朝早起きしてお手製のタレで作った唐揚げとかっ、産地に気を遣って選んだポテトサラダとか、奮発した挽き肉を使ったハート型のハンバーグとか、デザートとしてつけたウサギリンゴとか、考えただけで美春は、美春は・・・!」
「待ちなさい!なんでアンタがそんなに知ってるのよ!?」
まあ、気持ちはわかるけどね。
私もお姉ちゃんの料理は大好きだし。
でも、美波ちゃんのその料理の想いは吉井君に向けてだけどね。
「あのね美春。いままでは我慢してたけど、もうこういうことは止めてほしいの。だって、ウチとアキは、つき合ってるんだから。」
「畳返しっ!」
シュカカカカッ!
美波ちゃんの言葉とともに、吉井君にカッターが飛ぶ。
咄嗟に盾にした畳に刺さってるカッターの本数は・・・・・・優に50を超えてる。
おかしいな、この教室、50人しかいないよね?
というか、この教室がフローリングやござだったら、吉井君死んでたよね・・・。
「そ・・・そんな・・・。嘘・・・ですよね・・・。」
「ウソじゃないわ。」
「・・・・・・だったら男を全て殲滅します!男なんかがいるから、お姉様はたぶらかされてるんです!男がいなくなれば、お姉様は目を覚ましてくれますっ!」
落ち込んだかと思ったら、吉井君の命を奪おうと襲いかかる美春ちゃん。
まあ、お姉ちゃんに手を出す男は《ピチューン》してから人柄を確かめるし、気持ちはわかるけどね。
その動きはかなり速くて、吉井君が捕まりそう。
「助けてムッツリーニ!」
「・・・今、消しカスで練り消しを作るのに忙しい。」
《練り消し作り》>《吉井君の命》
友人をあっさり見捨てつつも、視線は美春ちゃんのスカートから外さないムッツリーニ君。
「そろそろストップしとけ。これ以上続けると良くないことになるぞ。」
そんなムッツリーニ君の代わりに美春ちゃんを止めたのは正邪ちゃん。
「邪魔しないでくださいっ!美春はお姉様のために男を殲滅するという行為をやりとげなければならないのですっ!」
「・・・まあいいか。私は忠告したぞ?」
あれ、やけにあっさり引き下がった。
どうしたのかな?
「5秒あげるので、神への祈りを済ませてください。」
「ちょっと正邪!そこまでやってくれたなら、僕を助けてよ!」
追い詰められた吉井君に迫る美春ちゃん。
私が止めに入ろうかな。
「おいお前ら、授業を始めるぞ、席に・・・やれやれ、また清水か。授業が始まるから自分の教室に戻るように。」
そう思ってたら、扉が開き、鉄人先生が入ってくる。
もしかして、正邪ちゃんはこうなるとわかってたのかな?
確かに、時計を見ると休み時間がもう終わろうとしてるし、あり得る話だよね。
「見逃してくださいっ!特に重要な要件なんですっ!」
「なんだ?まさかまた、『邪魔者のいない教室でお姉様と授業を受けたい』と言い出すつもりではないだろうな?」
あー、あったねそういえば。
その時は問答無用でつまみ出されてたけど。
「いえ、今回はこのクラスの男子を殲滅するという『今後このクラスへの立ち入りを禁止する。』ああっ、お姉様!」
鉄人先生の手でつまみ出される美春ちゃん。
扉をドンドンと叩いて主張するも、鉄人先生の生活指導の脅しによって、それは静かになる。
まあ、しょっちゅう受けてるFクラスのみんなでも恐怖の対象だもんね。
「お姉様・・・!卓袱台だから豚野郎にくっつくというのなら、美春にも考えがありますからね・・・!」
不穏当な言葉を残し、それ以上は何もせずに去っていく美春ちゃん。
その後は鉄人先生によって、何事もなかったかのように、授業は始まったよ。
・・・まあ、美波ちゃんと吉井君はいつも通りじゃなかったけどね。
何が原因かは見てなかったからわからなかったけど、美波ちゃんの髪に吉井君がさわって、両方赤面してるし。
でも、その度に周囲で増幅してく殺意の波動はどうにかならないのかな・・・?
「「「もう我慢ならねえーっ!!!」」」
あ、爆発した。
みんながカッターを構えて立ち上がり、吉井君の方を憎しみと怒りが込められた顔で睨んでる。
悪政に耐えかねた市民が革命起こしたみたいになってるね。
「もう殺す、絶対殺す、苦しめて殺す。」
「徹底的に、魂まで殺す。」
「お姉様の髪を豚野郎が触るなんて、万死に値します・・・!」
あ、あれ?
いつのまにか美春ちゃんがいる。
「全員、畳返し対策として、カッターを投げつけた後、間髪入れずに卓袱台を叩きつけるのです!あの豚野郎に正義の鉄槌を下します!」
「「「おうっ!」」」
カッターだと畳返しで防がれるから、カッターで動きを止めるために使い、卓袱台の質量で止めをさすというつもりみたい。
・・・こういうことしてるから、卓袱台が壊れるんじゃないかな。
「お前ら!今は授業中だぞ!」
吉井君を殺害するために暴れだそうとしたみんなを、鉄人先生の一喝が止める。
並の先生なら止まらなさそうだし、凄いよね。
「お前ら、そういうことは休み時間にやれ。それと清水、もう一度言うがこのクラスへの立ち入りを禁ずる。わかったな?」
「・・・わかりました。」
不承不承って様子だけど、撤退してく美春ちゃん。
去り際に吉井君を一睨みしたけど、それだけ。
とりあえず、この場は鉄人先生のおかげで事なきを得た・・・・・・かな?
いかがでしたか?
美波ちゃん勇気を出しました。