教室で待機してると、坂本君と吉井君、それとムッツリーニ君と魔理沙が戻ってくる。
魔理沙は毒ゼリーが入った容器を3つ持ってるね。
「ところで坂本、頼まれてたものは作ったが、誰を暗殺するつもりなんだぜ?やっぱ根本か?」
「いや、そうじゃない。古明地姉が非開戦派だから根本を殺れば止まる可能性は少しはあるかもしれないが、それでは多分止まらないだろう。狙うのはBクラスの使者だ。」
「Bクラスの使者?」
「ああ、DクラスがBクラスに敵意があると聞けば、真偽を確かめたうえで同盟なり不可侵条約なりを結びに来る。その使者がやられれば、Bクラスは間違いなくDクラスに敵意を感じるだろう。そうなれば同盟は成立しないし、奴等の疑念は深まるはずだ。」
うわー、なんかすっごい嫌だな。
影から干渉して戦わせ、利益を得るみたいな感じで。
「でも、スタンガンとかでもいいんじゃないの?わざわざ魔理沙の料理を使わなくても・・・。」
「スタンガンだと悲鳴をあげられるからな。誰にも気づかれるわけにはいかん。」
「なら、口を塞げば・・・。」
「アホか。そんなことしたら、自分も感電するだろうが。それに、霧雨の料理を使ったのは俺の趣味だ。」
「お?坂本、毒とわかってて私の料理を食べたいのぜ?予備はあるから、遠慮しないでグイっと行ってもいいぜ!」
墓穴掘ったね坂本君。
「い、いや・・・。俺は遠慮しておく・・・。それよりそろそろBクラスの使者が発つ頃だろう。行くぞ。」
坂本君に連れられて、私達はまた新校舎へ向かう。
ムッツリーニ君のお手並み拝見だね。
「やはり、出てき・・・なっ!?2人だと!?」
私達が着いて少ししたら、使者が出てくる。
その数は2人。
でも坂本君は1人と予想していたらしく、驚いてる。
「補充試験で人手は足りないし、立場がない男子生徒1人で来ると予想してたんだが奴等め、2人で来やがったか・・・!古明地、ムッツリーニと同時にもう1人を殺ってくれ!」
あらら、いきなり私も暗殺することになっちゃった。
まあ、私も気配を殺して動くのが得意だし、お姉ちゃんに近づく不届きな男に対して暗殺的な行為をした経験は何度もあるし、多分行けるよ。
坂本君から予備のゼリーが入った容器を受け取り、ムッツリーニ君が仕掛けるタイミングを待つ。
確実に忍び寄るため、ムッツリーニ君は注意をひきつけるようななにかをしてくるはずだし。
でも、使者とDクラスの距離があと3メートル、2メートルと詰められていってもムッツリーニ君は動かない。
そして、あと1メートルとなった時。
私達の目の前を何かが横切り、それはカッという音をたてて壁に刺さる。
刺さったのはカッターナイフで、そこに写真が刺してある、ちょっと変わった矢文みたいなもんだね。
廊下にいる人は全員、写真を見ようとしてる。
さて、今だね。
呑気に最後尾で背伸びして写真を見ようとしてる使者の2人に近づき、ムッツリーニ君と私でそれぞれの口を塞ぎ、動きを封じる。
「「・・・・・・!」」
2人は驚いてるけど、私達は容赦はしないよ。
さっきのパックの先を指の隙間から押し込み、中身を押し込む。
相手も防ごうと・・・あれ、あんましてこない。
思ったよりすんなりとパックの中身を使者の喉に押し込むことが出来た。
「あり・・・が・・・とう・・・ござ・・・か・・・は・・・っ。」
「・・・・・・(ググッ)。」
何故かお礼を言われたけど気にせず、残りのチューブの中身を全て押し込む。
それで相手はビクンと痙攣したあと、動かなくなった。
ムッツリーニ君の方も上手く終えたみたい。
この暗殺に気づいた人はゼロ。
「・・・さすがだな、ムッツリーニ、古明地。惚れ惚れするような手際だった。」
「・・・この程度、自慢にもならない。」
「ムッツリーニ君が注意をひきつける手を打ってくれたからね~。」
そんなに難しくない任務だったし。
ムッツリーニ君も坂本君の賛辞に対して眉一つ動かしてない。
とにかくこの後は、今の2つの死体をBクラスからは見えてDクラスからは見えない位置に押し込むだけ。
そうすれば、最初に発見するのはBクラスになるはずだからね。
この仕事は3人がやってくれた。
私は力あんまりないもん。
さて、あとは様子を見るだけだね。
教室に戻って、6時間目。
やっぱり自習だからBクラスの様子を教室で見ていると、坂本君の狙い通り疑心暗鬼になってるみたい。
とはいっても、使者も明日には目覚めてバレちゃうし、そうなったらBクラスも何があったかDクラスに聞きに行くだと思う。
今度は暗殺が通じないように大人数でね。
まあ、お姉ちゃんがいたら暗殺は出来ないんだけど。
「ところで、放課後の会談はどうなったの?」
「うむ、清水を引っ張り出すことには成功したぞい。放課後旧校舎2階の空き教室で会う手筈じゃ。」
木下君の方も、無事に交渉に成功したみたい。
「でも雄二、そううまく怒らせるような策があるの?」
「ああ。とびっきりの奴がな。」
さすがは坂本君。
何をするかは聞いてないけど、この状況で怒らす策があるとは。
「ただ、明久は余計な口を挟むなよ。島田と明久がいなければ挑発にならないから一応連れてくが、下手なことを言うと作戦がおじゃんになるからな。」
「うん、その辺は雄二に任せるよ。」
実際、ここで失敗したらチャンスはないよね。
「・・・一つ、気になることがある。根本がAクラスに何かの情報を流していた。」
・・・Aクラス?
今、用があるとは思えないんだけど、どういうことなのかな?
「・・・妙だな。Dクラスが気になっているはずのこの状況で、さらにAクラスを巻き込んでどうしようってんだ?巻き込むクラスを増やしても膠着状態になるだけでBクラスに得は・・・」
その情報に眉をひそめる坂本君。
すると、バンッ!と大きな音をたてて、扉が開け放たれる。
・・・ん?
「・・・雄二・・・っ!」
入ってきたのは霧島さん。
普段はクールだけど・・・今日はなんだか慌ててる様子だね。
「翔子?そんなに慌ててどうした?」
「・・・どうした、じゃない・・・!お義母さんが倒れたというのに、どうして様子を見に行かないの・・・!」
「は?あのお袋がか?風邪もひかない健康体だぞ?」
「・・・いいから、早く・・・!」
坂本君のお母さん、倒れちゃったの?
・・・いや、でも坂本君は知らなかったみたい。
知ってたらさすがに様子を見に行ったはずだし・・・。
「待て、俺は今から大事な作戦が・・・」
「そんなこと言ってる場合じゃない!」
わっ、普段の様子からは考えられない大声にびっくりしちゃった。
それだけ坂本君のお母さんのことが心配なのか、グイグイと手を引っ張って連れていこうとする霧島さん。
「だから待て翔子!何かがおかしい!どうして俺よりお前が『いいからっ!』だから落ち着・・・」
ガチャッ、バタン。
抵抗空しく、興奮した様子の霧島さんに連れていかれる坂本君。
・・・でも、やっぱりおかしいよね。
普通、こういうのは血が繋がってる坂本君に来るのが自然だし、なんで・・・まさか!
「まさか、さっきのAクラスへの情報はこれだったの?」
「・・・その可能性が高い。」
「なんじゃと!?」
ムッツリーニ君も同じことに気づいたみたい。
・・・やってくれたね根本。
恐らく、本人はDクラスの動向を探るまでの時間稼ぎのつもりで打った何気ない手だと思うけど、今の私達にとってはそれが相当痛い。
作戦の要というか知ってる人物は坂本君だし、もともとこの状況で怒らせるのは難しい訳だしね。
「・・・誰か、雄二から作戦は聞いてる?」
「・・・いや、俺は聞いてない。」
「恐らく盗聴防止の為、雄二は誰にも話していないじゃろうな。」
「私もそう思って聞かなかったんだよね・・・。」
こうなるなら、聞いておけばよかったかも。
「明久、古明地、雄二に携帯電話で連絡を取れぬか?」
「無理だと思う。僕のもそうだけど、雄二のも修理中なんだ。」
「私の携帯電話には坂本君の番号はあるけど・・・。坂本君の携帯が壊れてるならどうしようもないね・・・。」
試しに電話をかけてみても、電波の届かないところにいるか・・・というメッセージが聞こえるだけ。
・・・どうしよ。
「・・・そろそろ時間。」
考えてもなにも浮かばないまま時間だけが過ぎ、気がつけば会談の時間はもうすぐそこまで迫ってた。
「とりあえず、参加メンバーは僕ら4人と美波くらいかな。」
「いや、ムッツリーニは待機しておいた方がいいかもしれん。『先日の覗きについて謝罪をしたい』と言っておるから、むこうは恐らくDクラス代表の平賀と清水じゃろう。なら、こちらも人数を絞るべきじゃ。」
確かにそうかも。
それで、謝罪をそっちのけで挑発するのが目的なんだけど・・・出来るのかな?
でもやらなきゃいけない。
こうして私達は、クラスの命運を左右する戦いに坂本君抜きで挑むことになった。
・・・不安しか残らないや。
「待たせたね。」
会談の場所の空き教室に入ると、既にDクラスの2人は待機してた。
若干遅刻したのもあって、吉井君が口先だけの謝罪を述べる。
「お姉様!お会いしたかったですっ!」
「きゃっ!ちょっと、くっつかないでよっ!」
・・・でも、ガン無視。
というか美波ちゃん以外、眼中にない感じがする。
「お姉様・・・邪魔物のいない空き教室で2人きりなんて、やっぱり美春のことが・・・!美春はお姉様を心よりお慕いしております・・・。」
「や、やめてよっ!ウチにはそっちの趣味はないんだからっ!それよりアンタ、まわりの連中が見えないの!?とにかく離れなさい!」
美波ちゃんが力づくでひっぺがす。
いきなりペースを持ってかれたような気がするね。
「清水よ、そこまでにしておくのじゃな。島田は明久の恋人じゃ。むやみやたらと手を出すでない。」
木下君が切り込む。
こちらの目的は謝罪じゃないし、そっちの方に話を持っていくのは自然だよね。
「何バカなことを言っているのです?お姉様とそこの豚野郎に何の関係もないことくらい、お姉様の顔を見れば一目瞭然です。」
いかにも全部知ってますって感じの態度。
まあ実際、盗聴や盗撮で情報は得てるとは思うけど。
「そもそも、そこの豚野郎が、お姉様にふさわしいとは思いません。」
「そりゃ、僕は勉強も出来ないし部活もやってないけど、でも」
「勉強?部活?違いますね、それ以前の問題です。」
吉井君の口上を遮り、見下すような目をしながら言う美春ちゃん。
それ以前の問題っていうと・・・やっぱ接する態度かな?
「前々から見ていましたが、そこの豚野郎の態度は最低です。同じクラスの姫路さん・・・いえ、お姉様以外の異性に接する態度とお姉様への態度は、あまりに違いすぎます。」
その考えは間違っていなかったみたい。
美春ちゃんが言った瞬間、美波ちゃんがビクンと反応してる。
「他の異性には優しく気を遣い、まるでお姫様を相手にする、そこまではいかなくとも普通に親切な態度。それに対してお姉様への態度はどうです?全く気遣いが見られないどころか、異性に対する最低限の優しさすら見られないじゃないですか。」
あのー、美春ちゃん?
言いたい気持ちはわかるけど、美波ちゃんの表情見よ?
吉井君を糾弾してるその言葉、美波ちゃんにも同じくらい刺さってるからね?
「はっきり言えば、そこの豚野郎はお姉様の魅力に気づいていないどころか、異性への最低限の気遣いすらせず、男友達のような態度で接している大馬鹿野郎です。容姿や学力以前に、そんなのがお姉様とつりあう訳がありません。それに・・・」
トドメとばかりに言葉を紡ぐ美春ちゃん。
「それに、演技とはいえ好きとまで言ってくれたお姉様を無視して、姫路さんのところに行くなんて、普通では考えられません。もしかして、お姉様のことを男とでも思っているんじゃないですか?」
「・・・っ!」
その言葉が放たれた瞬間、耐えかねたような感じで教室を出て走ってく美波ちゃん。
その軌道にはキラキラ光るものが見えて・・・これ、私どうするのがいいんだろう。
「美波!?」
「追ってどうするのですか?また男友達に接するような乱暴な言葉をかけるのですか?そうやってまたお姉様を傷つけるのですか?」
反射的に追おうとした吉井君だけど、美春ちゃんの言葉で足が止まる。
・・・そうは言うけど、直接の原因は美春ちゃんだって気づいてる?
「ここはワシが追おう。今お主が行っても逆効果じゃし、古明地よりはワシがいいはずじゃ。」
そう言って、木下君が追いかける。
確かにそれは正しい判断かも。
「・・・よくわからないけど、もう俺は行ってもいいよな?こんなんじゃ、謝罪どころじゃなさそうだしな・・・。」
続いて、Dクラス代表の平賀君が席を立つ。
多分、この気まずい空気が耐えられなかったんだと思う。
「・・・この話し合いに何の意味があったのかは知りませんが、もう美春は貴方を恋敵として認めることはありません。お姉様を男として扱う豚野郎に嫉妬するのは、時間の無駄ですから。・・・お姉様の魅力がわかるのは、美春だけです。」
美春ちゃんが席を立つ。
この話し合いは失敗。
DクラスはFクラスに宣戦布告してくることは多分ない。
私はどうしようかな。
「・・・ちょっと待って、清水さん。」
「・・・なんです?美春に何か言いたいことがあるんです?」
「うん。一つだけ。その前に、悪いんだけど古明地さんは席を外してもらってもいいかな?」
「ま、まあいいけど・・・。」
吉井君が真剣な表情をしてたから、私は席を外しす。
・・・私、これからどうしようかな。
いかがでしたか?
この作品、モブにちょくちょくドMが出てきてますね。
あ、作者はSでもMでもないですよ?