古明地こいしとFクラス   作:こいし金二

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四十七話「意外!」

 

 

 

 

吉井君に外に出てほしいと頼まれ、外に出たけど・・・どうしよ。

そう考えてたら、私の携帯が鳴る。

ん、誰だろ?って思って携帯を開くと、メールが届いてた。

差出人は・・・『秦こころさん』ってなってるね。

秦こころさんって確か・・・清涼祭の日に会った美術部の先輩だったよね。

メールを開くと、『時間が空いてたらモデルになってほしい。今日はあの子もいなくて私1人だから、気兼ねする必要はないし、お茶とお菓子も用意しておく。』って感じの内容がかかれてる。

うーん、今のクラスの現状を考えたら断った方がいいのかもしれないけど、正直今私がやれることは何もないんだよね。

少しばかり迷った後、OKの返事を出して美術部に向かう。

メールにはこころさん一人って書いてあったけど、やっぱりお姉ちゃんは色々忙しいのかな?

 

「・・・いらっしゃい。」

 

美術部の扉を開くと、メールで言ってた通りこころさんが1人で座ってた。

というかメールの通りに紅茶とクッキーが用意されてたけど、このお茶はどこから出したのか気になるな。

放○後ティータイムみたいに部に持ってきたティーセットを常備してる・・・わけないか。

 

「・・・じゃあ、早速お願いしてもいい?」

 

「うん、いいよ!」

 

「・・・ありがとう。ところで、あの子が今日来ない理由、何か知ってる?」

 

「まあ、一応?」

 

「・・・良かったら、教えて欲しい。」

 

隠すようなことでもないから、今日のいきさつを大体話す。

 

「・・・そう。そういう事情があったのね。少し、元気がないように見えたのも、わかったわ。」

 

まあ、今日は色々あったから、少し疲れた気がするしね。

置かれてた椅子に座って20分程待つ。

今回はクッキーとお茶をいただきつつだけどね。

 

「・・・できた。どう?」

 

こころさんが完成させた絵を見る。

うーん、僅かだけど、絵の中の私から、美味しいっていう感情が伝わってきてるかな?

実際、紅茶もクッキーも美味しかったしね。

 

「・・・そうだ。もし良かったらだけど、あの子の絵、見てみる?」

 

「うん、見たい見たい!」

 

お姉ちゃんの絵、普段はあまり見れないからね!

 

「・・・これが、あの子がこの前書いたもの。」

 

こころさんが持ってる絵を覗きこむ。

うわぁ、綺麗なお屋敷だ!

特に中央の上部のステンドグラスと、床の夕日を反射して優しい光出してるガラスがいい雰囲気!

所々に見えるネコとかカラスとかハシビゴロウとかの動物もいいね。

もしかして、将来はお姉ちゃんこんな屋敷に住みたいのかな?

 

「・・・私も、あの子の絵は好き。」

 

「私も!やっぱりお姉ちゃんはすごいな!」

 

その後もお姉ちゃんの絵とかの話題で30分くらい話してたけど・・・さすがにそろそろ帰らないといけないかも。

 

「・・・そろそろ、部活の終了時間になる。」

 

どのタイミングで切り出すか迷ってたけど、ちょうどこころさんがそう言う。

お姉ちゃんはともかく私は部活に入ってないから知らなかったけど、そうなんだ~。

 

「・・・今日はありがとう。・・・それと、良かったらまた今度、さっきの話の結末、聞かせて欲しい。」

 

さっきの話っていうのは、今B、D、Fクラスの間で起きてる戦争のことだと思う。

興味を持ったみたい。

 

「うん、またね~!紅茶とクッキー、美味しかったよ~!」

 

こころさんが部室の鍵を閉めるのに合わせて、私も出る。

最後に手を振って別れたよ。

・・・ところで、吉井君は何を話したんだろ?

あの時点で交渉は失敗してたし、どうでもいいっちゃどうでもいいんだけどね。

あーあ、明後日からござになっちゃうのかな・・・。

病気が治って登校してきた阿求ちゃんや、身体が弱い姫路ちゃんが体調を崩さないといいんだけど・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でも翌日。

 

「我々Dクラスは、Fクラスに対して宣戦布告を行う!」

 

朝一番に、何故かDクラスの男子が教室に来て、そのまま宣戦布告。

・・・あれ?

 

「?なんじゃと?」

 

「どういうことだ?昨日聞いた話と違うが・・・。」

 

昨日のいきさつを知ってる木下君と、それを木下君から聞いていたみたいな坂本君は怪訝な顔してる。

そういう私にも全くわからないけどね。

 

「ムッツリーニ、原因はわかるか?」

 

「・・・わからない。ただ、今朝は清水がやけに興奮していた。」

 

「今朝興奮していたなら、挑発は成功してたということか?」

 

「いや、昨日の挑発は、明らかに失敗じゃったはずじゃ・・・。明久と古明地よ、ワシが島田を追った後に何か話していたのかの?」

 

「ううん、私は吉井君に美春ちゃんと話すことがあるって言われて出て『い、いや何もなかったよ。それより今は戦争の準備をしないと!』・・・ま、いっか!」

 

私の言葉を遮るようにして話を反らす吉井君。

昨日は興味なかったけど、こうなると気になるかも。

でも確かに今は戦争が重要だよね。

 

「確かに明久の言うことは正しいな。ここで戦争に負けたら元も子もない。よし、まずは戦力確認と行くか。全員聞け!聞こえていた通り、FクラスはDクラスとの戦争に突入する!まずは戦力確認のために持ち点を紙に書いて俺のところに持ってきてくれ!」

 

坂本君がクラス全員に聞こえるような声で点数を持ってくるよう言う。

さて、私も書かないとね。

続々と集まってくる点数を、坂本君はノートに書いて整理してく。

フルに戦える人は少ないけど、男子も全員が戦死した訳じゃないからね。

戦力になるかは置いとかなきゃいけないけど、1点でも残ってたら召喚獣は出せるし。

まずは戦死して0点になってる人から補充だよね。

 

「全員よく聞け!まずは下位10位の人から補充試験を行ってもらう!その際、数学が7名、古典と日本史と保健体育を1名づつとする!各自の配置場所は、点数確認が終わり次第発表とさせてもらう!」

 

坂本君が前で呼び掛け、卓袱台に戻って人員配置を考え始める。

Eクラス以外は新校舎だから、やっぱり新校舎と旧校舎をつなぐ渡り廊下と、旧校舎側の階段が防衛ポイントになるはず。

 

「ねえ雄二、どうしてあんなに補充を細かく分けるの?僕らは点数がないんだから、まずは数学に統一して少しでも蓄えを増やすべきじゃないの?」

 

「今回の目的は時間稼ぎだ。だから心理戦による騙しあいが必要になる。そんな中で、採点が速い数学の先生だけ呼び込んだら、蓄えがありませんよと言ってるようなもんだからな。」

 

卓袱台に近づいて質問した吉井君に対して、そう答える坂本君。

確かにそうかも。

数学の河城先生は採点が厳しめだけど速いのに対して、日本史の豊郷耳先生は採点が甘いかわりにゆっくりなのは有名な話だもんね。

ところで、私はどこになるのかな~?

ちょっと覗いてみよっと!

吉井君と覗きこむ。

 

「・・・あれ?僕は補充じゃないの?」

 

「ほんとだ、吉井君が日本史かなって思ってたけど違うんだね。」

 

「明久はまだ点数が残っていたからな。それに、お前は特別な存在だ。今回の作戦でも、重要な役割を担当してもらうことになる。キツいだろうが、頑張ってくれ。」

 

「了解、そこまで言われたら頑張るしかないね。」

 

坂本君がそう言う。

信頼してるって感じがするね。

監察処分者ならではの役割があったりするのかな?

 

「それで、私はどこの防衛になる感じ?」

 

「いや、お前と姫路、あと霧雨は教室にいてもらう。正邪には渡り廊下、霊路地と島田には階段付近の防衛をさせるつもりだがな。・・・よし、こんなもんだな。」

 

えっ?

私と魔理沙、あと姫路ちゃんは教室待機なの?

・・・あ、そっか、坂本君の親衛隊か。

もし前線が崩壊して、坂本君がいるFクラスに敵が来ちゃった時、点数がある女子生徒がいないと困っちゃうもんね。

でも、阿求ちゃんがいない今、最大戦力である姫路ちゃんはなんでなんだろ?

自分で言うのもなんだけど、私も美波ちゃんやお空より総合科目とか高いよ?

 

「いいか、よく聞け!前回勝ったとはいえ、相手は2つも上のクラスだ!下手に突撃すると一瞬で蹴散らされるぞ!どんなに有利な状況でも決して深追いはせず、決められた場所の防衛に徹しろ!」

 

確かに、さっきの点数調査では、Fクラス全男子の合計は1万点にすら満たなかったからね。

今いない阿求ちゃんを除いた私達女子の点数を足してもだいたい2万ちょいだし。

Dクラス女子平均が1500点って仮定すると、これだけで4万点くらいになるし、さらに男子がいるから戦力差は歴然としてる。

 

「向こうは圧倒的に有利な女子の総合科目、それと腕輪持ちがいる日本史と生物をメインに攻めてくる!霊路地と正邪、それと島田と秀吉を主軸にうまく立ち回れ!限界まで粘ったら状況によっては教室まで退いてもいい!以上だ!健闘を祈る!」

 

「「「ぃよっしゃぁああーっ!」」」

 

坂本君の説明が終わるとともに時計の長針がカチッと音をたてて動き、9時ちょうどを示す。

開戦と同時に、まずは先見隊が教室を出て、ダッシュで渡り廊下を目指す。

やる気はみんな充分みたい。

・・・まあ、まだ怒ってる感じの美波ちゃんに対して吉井君が話しかけて無視されるなんてことはあったけどね。

 

「・・・で、そろそろ何故私とこいしと瑞希を教室に置いたか説明が欲しいんだぜ。」

 

防衛部隊と補充組が教室を出て、教室にいる人は少なくなる。

間違いなく作戦はあると思うけど、それを知りたいんだよね。

 

「なら説明するか。俺達Fクラスは渡り廊下に大多数の戦力を投入した。そうなれば、相手は必然的にこう考える。『Fクラスは渡り廊下を制圧したいはずなのに何故姫路や古明地、霧雨を出さないんだ?何か別なことを企んでいるのか?』とな。」

 

「あ、つまり姿の見えない私達を警戒して、戦力を小出しにさせるということですね!」

 

「そういうことだ。特に前回の戦いで、平賀は姫路に不意打ちされて負けてるからな。きっと面白いように引っ掛かってくれるはずさ。」

 

ほえ~。

そういう考えがあったのね・・・。

さすが坂本君。

 

「だが、それだけじゃ不充分だ。だから、ムッツリーニに情報操作をさせてある。『FクラスがDクラスとの開戦を望んでいた』とな。」

 

なるほど、昨日の目的不明の交渉とか、Dクラスあたりを吉井君と坂本君がふらついてたアレとかを始め、思い当たるような節がいくつかあるから、確かに簡単に信じちゃいそう。

実際事実だしね。

 

「それで、Dクラスはありもしない企みを警戒するあまり、動けなくなるということか。こういうのを見ると、坂本はやっぱり敵に回したくないって感じるぜ。」

 

「向こうは今ごろ開戦を後悔している頃だろうな。なにせ、勝っても得られるものはないうえに、負けたら最低ランクの設備に。しかもFクラスには勝利の秘策があるのではないかと疑ってる。ハイリスクローリターンな戦いなわけだ。何かきっかけがあればすぐにでも休戦交渉に応じるだろ。」

 

「そうなると、平賀君と交渉でもするの?」

 

「平賀は無理だ。こちらを警戒してるから、間違いなく前に出てくることはない。だが、今回に限ってはDクラスの頭は1人じゃない。」

 

「あ、美春ちゃんを引っ張り出すの?」

 

「ご名答。清水を封じれば、この戦争は終わらせることが出来るだろう。そのために使う奴が・・・お、ちょうど戻って来たな。」

 

坂本君が扉の方へ視線を向けたから、私達もつられて見ると、そこにいたのは吉井君。

 

「指示通りにしてきたけど・・・あれに何の意味があったの?」

 

「ん?吉井君はどんな指示を受けてたの?」

 

「えっとね、最前線に顔を出して、余裕があることをアピールしてから教室に戻ってこいって言われたんだけど・・・敵がやけに少なかったことも含め、説明をしてよ雄二。」

 

「もう1回説明をするのはめんどくさいから、姫路に聞いてくれ。」

 

坂本君に丸投げされた姫路ちゃんが、吉井君に説明をする。

 

 

~少女説明中~

 

 

「・・・ということみたいです。それで、清水さんを出すために明久君を使うというのはどういうことなのですか?」

 

「明久と清水に一騎討ちをさせるということだ。明久、例えばここに須川がいたとしたら、お前がDクラスの立場ならどう思う?」

 

坂本君が指差したのは、Fクラスの隣の空き教室。

階段から向かったらFクラスに向かう際に前を通るけど、当然戦略的には関係ない場所。

しかも須川君は首を獲る必要はないからね。

私だったらスルーだね。

 

「え?どう思うもなにも・・・意味ないものにしか見えないけど。」

 

「まあ、そうだろうな。それなら、更に条件を付け加えよう。そのタイミングで、お前と須川が姫路を巡って争ってたとしよう。そしたらどうなる?」

 

確かに、その条件なら、召喚獣バトルで白黒はっきりつけようとしてるように見えるかも。

 

「それなら、須川君が僕を待ってるように見えるかな。その話に決着をつけるために。」

 

「その通りだ。」

 

よくできましたという感じで頷く坂本君。

 

「つまり、だ。他の連中には首を獲る必要もない明久が意味もなく空き教室にいるようにしか見えないが、清水にとってはそうじゃない。明久が決着をつけるために清水を待ってるように見えるってことだ。その為に明久の存在をアピールさせたんだからな。」

 

「もしかして、さっきの教室前まで退いてもいいというのはそういうことですか?」

 

「ああ。そうしないと明久に気づいて貰えないからな。休戦交渉に足るだけの点数補充を終えたら、廊下か階段を開放して空き教室の様子を教えてやる必要がある。もっとも、こちらが劣勢と思われるわけにもいかないから、さじ加減が難しいんだがな。」

 

「そんなにうまく行くのかな・・・?」

 

疑問そうに呟く吉井君。

でも、私はうまくいくんじゃないかなって思ってるよ。

Aクラス戦の大化の改新の時みたいな大きな穴は見当たらないしね。

一騎討ちに吉井君が勝てばDクラスの女子達も大人しくなりそうだし、負けても誘き出せたならそのまま交渉に入ることはできそう。

 

「まあ、結果は見てのお楽しみだ。いつ戦線が後退するかはわからんから、明久は今から空き教室に向かってくれ。」

 

「うん、わかった。今すぐ行くよ。」

 

「ああ、頼むぞ。」

 

教室のドアを開けて出ていく吉井君を私達は見送る。

 

「・・・さて、補充組が終わるまではまだ時間があるな。明久と清水が交戦を始めたら交渉のために向かうが、それまでは教室から出ずに適当に待機しててくれ。」

 

「あ、はい、わかりました。」

 

「うん、わかったよ~。」

 

「了解だぜ。」

 

さて、坂本君の作戦はどうなるのかな?

・・・あ、ちなみに、前回私達を苦しめた物部さんとリリーさん、あと紅さんは代表の護衛に回ってるみたいだよ。




いかがでしたか?
こころさんのところは完全オリジナル。

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