でも5巻書きにくい。
第五十話「異変!」
「そういえばお姉ちゃん、もうすぐ期末テストだけど調子はどうなの?」
夏に近づき、期末テストももうすぐな日の朝。
私はいつも通りお姉ちゃんと登校しているよ。
「私は問題なさそうよ。恐らく根本よりは取れるわ。」
根本はBクラスの代表。
お姉ちゃんは組分け試験ではBクラスで2番目だったけど、本来はお姉ちゃんの方が成績がいいんだよね。
本当ならAクラスにいるべきなんだけど、私、お燐、お空に勉強を教えてくれたこともあってカバーしきれなかったみたいなの。
だから、極力お姉ちゃんの邪魔にならないようにしてるよ。
「それよりこいしはどうなの?最近私に勉強教わりに来ないけど・・・。」
「わ、私も大丈夫だよ!お姉ちゃん程じゃないけど取れるから!」
私の学力は、本来はBクラスとCクラスの間くらいなんだよね。
「・・・ところでこいし、アレは何なのかしら。見たところ、Fクラス代表のように見えるのだけど・・・。」
ん?
お姉ちゃんの指差した方を見てみると・・・あれはダッシュしてる坂本君のように見える。
でも、なんで裸Yシャツ(+トランクス)・・・?
正直朝から見たいものじゃないよ・・・。
「・・・いや、あれは知らない人じゃないかな?」
うん、私は何もミテナイ。
でもお姉ちゃんにあんな姿を見せた坂本君にはちょっとした制裁しないと。
・・・坂本君に意味深なメールを送ってみようかな?
「・・・それはやめなさい、こいし。今の状況だと下手したら彼は全てを失いかねないわよ。」
早速やろうとしたけど、確かにそれは困るかも。肌色一色の坂本君とか見たくないし・・・。
そんなものをお姉ちゃんが見たりなんかしたら、私は坂本君を最大限の苦痛とともに消さなきゃいけないもん。
「・・・まあ、さっき見たものは忘れるとして、勉強でわからないところや詰まったところがあったら、遠慮せずに言いなさい。こいしの点数が伸びるのは、姉として嬉しいことなのだから。」
やっぱり、私の考えてることはお姉ちゃんにはお見通しみたいだけどね。
お姉ちゃんはやっぱり優しい!
そのあとはとりとめもない話をしながら歩き、校舎が見えてくる。
「じゃあ、頑張りなさい。」
「うん、またね~!」
校門で、お姉ちゃんと別れて教室に向かう。
とりあえず、さっき走っていった坂本君に事情を聞きたいかな。
もう教室にはいると思うけど、まさかまだあんな姿じゃないよね・・・?
ちょっとドキドキしながら教室の扉を開ける。
「雄二の家に泊めてくれないかな。今夜はちょっと・・・帰りたくないんだ!」
・・・・・・・・・。
扉を開けるなり聞こえてきた吉井君のセリフがちょっと理解出来なくて、思考がちょっと停止したよ。
こういう時、私はどうすればいいのかな・・・?
「・・・ウチにはアキの気持ちがわからないっ!」
あ、いつの間にか後ろにいたみたいな美波ちゃんが鞄を投げすて、走り去ってった。
「え!?何!?なんで美波は登場と同時に退場したの!?それに古明地さんはなんで硬直してるの!?」
・・・いや、なんでって言われても、友人がいきなりそんな関係になってたら誰でもこういう反応になると思うけどね。
しかも、坂本君があんな格好してるのを見た後だし・・・。
「あ、明久君!そういうのはまだ早いですっ!もっと大人になってからにしてくださいっ!」
姫路ちゃんも顔を赤くして注意してる。
好きな人が同性にそんなメール送ってたことを知った姫路ちゃんの気持ちはある程度ならわかるかな。
「・・・?明久は走っていくし、島田も教室から走り出しておったし、今朝はえらく慌ただしいのう。何かあったのかの?」
そんな中、教室に入ってきた木下君が不思議そうにしてる。
「いや、特に何もないけど。」
「なんじゃ、先程のことといい、ワシに隠し事かの?ちと寂しいのじゃが・・・。」
吉井君にそう言う木下君は、なんか罪悪感抱きそうになる顔してる。
木下君ってときおり女の子より女の子してるよね。
女学院に紛れ込んでも多分バレないような気が。
「聞いてくれ秀吉。明久が朝から公序良俗に反することを言っててな。」
「ち、違うよ!ムッツリーニじゃあるまいし、そんな真似はしないよ!」
「・・・・・・失礼な。」
当のムッツリーニ君がいつの間にか来てた。
さっきまでは気づいてなかったけど、いつの間に?
というか・・・。
「あれ、ムッツリーニ君、なんか荷物多くない?」
普段使ってる鞄だけじゃなくて、両手でなんか大きな包み抱えてる。
「・・・ただの枕カバー。」
「ん?ムッツリーニ、その割には包みが大きすぎない?」
「・・・そんなことはない。」
ブンブンと首を振って否定するムッツリーニ君。
こういう時はなにかを隠してることが多いよね。
「ごめんムッツリーニ、ちょっと中身を見せてね。」
「・・・・・・あ。」
ムッツリーニ君が持ってる包みを吉井君がひとつ奪い取り、中身を見る。
私も少し気になるかな。
「さて。何が入っているのか・・・な・・・・・・ムッツリーニ、何、コレ・・・?」
中身を見た吉井君がすっごく複雑な表情しながらムッツリーニ君に聞いてる。
中身を横から覗かせてもらうと・・・中に入ってたのは等身大の吉井君がプリントされた白い布(セーラー服ver)。
「・・・ただの抱き枕カバー。」
「ただの、じゃないっ!枕カバーと抱き枕カバーには大きな隔たりがあることを覚えておくんだ!というか何で僕の写真なのさ!」
「・・・世の中には、マニアというものがいる。」
ほほう、さては姫路ちゃんや美波ちゃんだね?
「何を言ってるのさ!僕の抱き枕カバーを欲しがる人なんてどこにも・・・。」
コンコン。
吉井君が話してる途中で扉がノックとともに開けられる。
「失礼。土屋君はいるかい?前に頼んだ枕カバーを・・・」
「あれ?久保君、珍しいね。ムッツリーニに何か用なの?」
「・・・何でもない。用事を思い出したのでこれで失礼するよ。」
多分その枕カバーを受け取りに来たんだと思うけど、さすがに本人の前では受け取れないようでUターンしてった。
・・・というか、久保君はムッツリーニ君と取引してたんだね。
「とにかく、これは没収するからね・・・。僕の抱き枕カバーは全部回収して、写真を全部秀吉にして持ってきてよ・・・。」
「明久よ、どさくさに紛れてワシの抱き枕を作ろうとするでない。」
「ダメですよ明久君。人のものを勝手に取って改造するなんて、いけないことなんですよ?・・・それに1枚は私の分ですし・・・。」
やっぱり、そうだったみたい。
でも、さっき見た時、抱き枕は5つくらいあったように見えたんだけど、美波ちゃん、姫路ちゃん、久保君以外にあと2人くらい欲しがってる人がいるのかな?
「ところで、先程のお主らの話はなんだったかの?」
「ああ、俺が明久にトランクス姿での登校を強要されたという話だ。」
ふーん、そうだったんだね。
それなら・・・。
「雄二っ!わざと誤解を招くような言い方をしないように!というか古明地さんはどこに電話しようとしてるのっ!?」
「ん?警察だよ?」
「誤解だから!誤解だから通報しようとしないで!」
個人の範疇で楽しむのはいいけど、お姉ちゃんに迷惑をかけるのはダメだし、通報しようかなって思ったけど、誤解なの?
「まあそれは冗談だが・・・、要するに、明久が送ってきたメールのせいで翔子が勘ぐって、それで俺が酷い目に会わされたってことだ。」
「メール?それは今朝の明久の様子がおかしいのと関係があるのかの?」
木下君が何となく呟いたような言葉を聞いて見てみると、確かに吉井君の様子がちょっと違うかも。
寝癖がないし、顔色がいいし、制服も糊まで利いてパリッとしてる。
みんなもおかしいって思ったみたいで、それぞれが意見を述べてる。
「た、たまにはそういう気分になっただけだよ!それよりそろそろチャイムが鳴るよ!それじゃ!」
強引な話の反らしかたをしたあとで、逃げるように吉井君が自分の席に向かってく。
「「「・・・・・・怪しい。」」」
私以外もみんなそう思ったみたいで、全員が呟く。
まあ、吉井君は嘘つくのが苦手だからね。
それが彼のいいとこだとも思うけど。
とにかく、この場ではそれ以上追求は出来なさそうだし、またあとで話してみようかな。
そして昼休み。
午前中、私はとっても珍しいものを見たよ。
なんと、吉井君が真面目に授業を受けてたのだ!
これには先生達も異常だと認識したみたいで、保健室に行くよう言う先生が多数・・・というか今日の授業をした先生全員。
やっぱり、今日の吉井君はなんか変だ。
「やっぱり、今日のアキはなんか変よ。熱でもあるんじゃないの?」
美波ちゃんもやっぱそう思ったみたいで、吉井君の額に手を当てて熱をはかろうとする。
「って、これはダメだっ!」
「きゃっ!」
なんでかはわからないけど、美波ちゃんが伸ばした手を避けるように距離をとる吉井君。
いきなりだったからか、美波ちゃんが小さく悲鳴をあげる。
「こらっ!せっかく人が心配してるのに、何よその態度!」
「ご、ごめん!でもこれには事情があるんだ!」
「事情?何よそれ?」
「え、えーっと、それは・・・。そ、それよりお昼にしようよ!あまり話していると、昼休みが終わっちゃうよ!」
事情とやらを聞かれたくないのか、強引に話を反らして弁当を取りだす・・・・・・取りだす?
「え、アキ!?お弁当を持っているなんて、一体どうしたの!?」
「普段吉井君水と塩なのに珍しいよね?」
美波ちゃんもおかしいと思ったみたいで、驚いてる。
「・・・あら?吉井君は今日は弁当、しかも手作りなんですね。始めて見たような気がします・・・。これは驚きですね。」
たまたま近くを通った阿求ちゃんがそう言うってことは、すくなくとも2年になってからは初ってことだよね。
「いや、みんな、そこまで驚かなくても・・・。僕だって人間なんだから、たまには栄養をとらないと死んじゃうし・・・。」
いや、普通の人間は毎日栄養をとらないとダメなんだよ?
「・・・まさか、誰かにつくってもらったとか?」
美波ちゃんの目が、スッと細められる。
まあまあ、落ち着いてよ美波ちゃん。
「一応、自分で作ったんだけど。」
「嘘ね。」
「あの、吉井君は確か料理出来ましたよ・・・?」
即座に否定する美波ちゃんに阿求ちゃんが言う。
私の記憶でも、吉井君は料理は出来たはずだけどね。
「でも、随分と上手な弁当ですよね。栄養バランスも良さそうですし。」
「これほどの弁当を作れる人というと、坂本か土屋のどっちかね。」
「美波ちゃん、認めないのね・・・。」
先入観って怖いなぁ。
確かに初見じゃ信じられないとは思うけどね。
「・・・やれやれ、想像にお任せするよ。」
「アキ・・・。そんなに汚れちゃってたのね・・・。」
「何!?何を美波は想像したの!?」
んー、いきなり吉井君が手作り弁当作ったのはどうしてなんだろ?
もしかして、一人暮らしでキチンと出来てるか監査が入ったとかかな?
彼女・・・はちょっと考えづらいと思う。
「・・・やっぱり、雄二の浮気相手は吉井だった。」
わっ、気づかなかった。
いきなり来てそんなパワーワードを言ったのは霧島さん。
「あら、翔子さん。何か用があったのですか?」
「・・・(コクリ)雄二にズボンを返すつもりだった。」
今朝の坂本君の超クールビズ登校は霧島さんのせいだったのね。
・・・ん?だった?
「ああ、翔子か。そうかそうか、やっと制服を返す気になったんだな。」
「・・・浮気には、お仕置きが必要。」
霧島さんが放つ殺気に気づかず、少し離れたところから呑気に近づいてくる坂本君。
逃げて。
「やれやれ、これでやっとマトモな服装に・・・ん?なんでズボンを離さないんだ?」
「・・・雄二。私は、雄二に酷いことをしたくない。」
「酷いことをしたくない?よくわからんが、いい心がけだな。」
「・・・だから、先に警告する。・・・おとなしく、私にトランクスを頂戴。」
ダッ(坂本君、猛ダッシュ)
「あはは、雄二はバカだなぁ。」
「私としてはトランクスは取られないで欲しいかな・・・。」
坂本君の坂本君は見たくないもん。
「まあ、坂本のことは置いておくとして、アキはその弁当、食べるの?」
「え?まあ、そりゃあね。」
「ふーん・・・。坂本の愛妻弁当をね・・・。詳しい事情を聞かせてほしいわね。」
「・・・確かに私も非常に気になりますね。それなら、こういうのはどうでしょう?そこにいる風見先生に協力していた」
ダッ(吉井君、猛ダッシュ)
「待ちなさいアキ!殴らないから事情を教えなさいっ!」
あら、吉井君と、彼を追う美波ちゃんが走っていっちゃった。
廊下に出て様子を見に行ってみると、いつの間にか合流した坂本君と吉井君が全力で逃げてた。
・・・大丈夫かな?
とりあえず、やっぱり気になるし、私もあとで改めて聞いてみよっかな。
いかがでしたか?
ちなみに風見先生は基本的には優しく生徒からの悩み相談も受けますし、姫路さんは別に悪意はないのですよね。