誰が産んでくれと願った。
「あれ?この口がふたつある女の人ってなんのお化けだっけ?」
「・・・ふたくち女。」
「じゃあ、あっちの身体が伸びてる女の人は?」
「・・・高女。」
「そっちの毛深い男の人は?」
「・・・どうでもいい。」
あっちでは平然と進んでいくムッツリーニ君と愛子ちゃん。
「うーらーめーしーやー!」
「あっそ。」
「いやちょっとは反応してやれよ霊夢。この唐笠お化け涙目になってるぞ。」
「涙目?どうでもいいわ、とにかく行くわよ。」
「確かにいちいち構ってられないのはそうかもしれないぜ。」
こっちではやっぱり平然と進んでいく霊夢さんと魔理沙。
・・・というか今カメラに出てきてたオッドアイの人、しゃべってたけどもしかして生身?
「順調だね、このままクリアしちゃうんじゃない?」
「いや、それはないだろうな。向こうもさっきのでムッツリーニの正体に気づいたはずだ。保健体育が異様に得意でスケベな2年生がいるってことくらいは把握してるだろうからな。」
「だからといって、悲鳴あげさせられるのかな?」
「大きな音を出す手段はそれだけじゃない。例えば、鼻血の噴出音とか・・・な。」
3年がそんなことまでするなんてありえない・・・とは言い切れないかも。
さっきのゲロ坊主の一件があるからね・・・。
「・・・・・・ッ!(くわっ)」
「どうしたのムッツリーニ君?・・・ってああ、なるほどね・・・。」
ムッツリーニ君の視線の先にいるのは、髪を結い上げた切れ長の目の綺麗な美人で、色っぽく着物を着崩した女の人。
「「「眼福じゃぁーっ!!」」」
教室の中からあがる歓喜の声。
確かにムッツリーニ君が反応するのも納得できるかな。
女の私でも目を奪われそうになるその人を前にして、ムッツリーニ君も必死に鼻血をこらえてる。
「ようこそいらっしゃいましたお二人方。私、三年A組所属の小暮葵と申します。」
「小暮先輩ですか、こんにちは。ボクは2ーAの工藤愛子です。その着物、似合ってますね。」
「ありがとうございます。こう見えてもわたくし、茶道部に所属しておりますので。」
「あ、そっか。その服装はユニフォームみたいなものですものね。ちょっと着方はエッチですけど。」
「はい、ユニフォームを着ているのです。」
「そうですか。それではボク達先を急ぐので。」
「そしてわたくし、実は・・・」
「なんですか?まだなにかあるのですか?」
「新体操部にも所属しておりますの。」
その言葉とともに着物は脱ぎ捨てられ、下に着ていたレオタードがあらわになる。
・・・これは無理だね。
音声ラインと画面が赤く染まり、2人は失格に。
そして着物に小銭を入れていたのか、硬貨が落下して、チャリーンと音をたてる。
「・・・お金っ!」
その音を聞きつけたのか、叫んでダッシュする霊夢さん。
その叫びと移動による音で、こっちもラインが基準を越えてしまう。
霊夢さん・・・・・・。
「チクショウ、やり方が汚ねぇっ!着物だけでもギリギリだってのにさらにレオタードなんぞ耐えられる訳がねえだろうがっ!」
「そうだよ!とりあえず雄二は作戦を練って!僕は姫路さんに土下座してさっきのハードディスクを設置しなおして貰うから!」
「ああわかった!抜かるなよ明久!」
さっきの小暮先輩のレオタード姿を記録に残そうとする2人だけど・・・美波ちゃんが吉井君に、翔子ちゃんが坂本君に華麗に目潰しして失敗に終わる。
「大変だ!土屋が危険だ!助けに行ってくる!」
「一人じゃ危険だ!俺も行く!」
「待て!俺だって土屋が心配だ!」
「俺も行くぜ!仲間を見捨てる訳にはいかないからな!」
司令塔である坂本君が機能してない間にFクラスのみんなは独断専行をはじめてた。
私達は止めようとしたけど間に合わない。
そんな状態で行ったら・・・!
「「「うぉおおおぉぉっ!新体操ーっっ!!」」」
・・・突入と同時に全員失格。
バカだよね。
興味示すのはいいんだけど、おたけびあげながら突入して失格になったら見られないのに。
次々と戦力が減ってく。
「う・・・うぅ・・・。ま、マズイな・・・。このまま放っておいたら男子は久保以外全滅しちまう・・・。」
翔子ちゃんに突かれた目を押さえながら坂本君が言う。
まあ、久保君のそういう対象は、ね・・・。
吉井君が立候補するも美波ちゃんと姫路ちゃんに圧力かけられて取り消してる。
「私が行こうか?」
私とお姉ちゃんなら色香に惑わされる心配もないからね。
「・・・こいし、あなた現代文苦手でしょ?」
「・・・あ、そうだったね。」
阿求ちゃんに教わったおかげで点数は確かに上がったけど、それでも2桁止まりだからね私の現代文・・・。
Aクラスであろうチェックポイントの相手と戦うのは分が悪そうだもん。
「ならやはり、ここは木下姉妹で行くぞ!」
確かに、それが一番良さそうだよね。
早苗ちゃんやお空は現代文私とどっこいどっこいだし・・・。
姉の木下優子さんはあまりよく知らないけど、翔子ちゃんや愛子ちゃん、霊夢さんに天子さんみたいな一部問題がある人達と違って、完璧に近い優等生って感じだし、成績もほぼ全教科で上から数えて両の指に入るくらいにはいいから期待出来そう!
突入してく2人。
・・・というか、ほんとにそっくりだね。
木下君が女子の制服着てたらすぐには見分けられないかも。
「困ったわね・・・。アタシ、こういうのあまり得意じゃないのよね・・・。」
「姉上、踏んどる。セットを踏んどるぞい。」
「あ、ごめんなさい。壊れてないわよね?」
苦手とか言ってる割には平気そうだよね。
特に悲鳴をあげる要素もなくさっきの小暮先輩のとこにたどり着く2人。
「あら?あなた方は・・・そうですか。女の子同士の組み合わせで来ましたか。それでしたら、私にできることはありませんね、どうぞお通りください。」
「だって、秀吉。お言葉に甘えて行きましょ。」
「むぅ・・・。すんなりと通れたのにこのわだかまりは何なのじゃ・・・。」
言葉通り、小暮先輩は何の抵抗もなくあっさりと横に移動して道をあけてくれる。
でも、ちょっと無抵抗過ぎない?
「来たか、木下。待っていたぞ。」
と思ったら、モヒカンが立ってる。
もしかして、木下君対策かな?
だとしたら、さっきあんなにもあっさり通してくれたことに対して説明もつくけど・・・。
「なんじゃ?ワシを待っていた?」
「よくわからないけど、早く済ませてもらいなさい秀吉。アタシらは先に進まないと。」
「ああ、大丈夫だ。時間は取らせねぇ。・・・いいか、木下秀吉。」
「なんじゃ。」
画面の中、モヒカンが真剣な顔で木下君に一歩近づく。
そして、はっきりと、聞き間違いのない口調で木下君に告げた。
「俺は・・・お前のことが好きなんだ。」
私は、はじめて木下君の本気の悲鳴を耳にした。
まあ・・・同性、しかもアレに本気の告白なんかされれば悲鳴の2つ3つあげてめおかしくはないけど。
・・・でもその作戦、お姉ちゃんにしなくてよかったね、やってたら今頃現世から旅立ってたよ?
「す、すまぬ・・・。まさかワシがあんなみっともない悲鳴をあげてしまうとは・・・。」
「気にするな秀吉。あんなムサい奴に告白されればしょうがない。」
「そうだよ。それに『アタシを差し置いてなんでアンタが・・・!』とか言いながら間接技かけられてたし、悲鳴で済ませただけ凄いと思うよ。」
「そうそう。木下君は何も悪くないというか人として当然の反応だし、元気出して。」
「姉上の間接技も痛かったのじゃが、ワシを思って書いた詩を朗読されたのが一番キツかったのじゃ・・・。」
確かにあれはキツかったね。
お前は俺を照らす太陽だとかいいフレーズが聞こえてきた瞬間、ついモニター叩き割ろうとしちゃったもん。
直接聞かされてた木下君のダメージは計り知れない。
「できれば姉上の力でせめて消耗させておきたかったのじゃが・・・。」
「それは心配するな秀吉。こっちにも秘密兵器がいるからな。アイツらなら色香に惑わされることもないだろうし、チェックポイントもクリア出来るだろ。」
「え、誰?阿求ちゃんと小鈴ちゃん?」
「いや、そうじゃない。アイツらは2つあるAクラスのチェックポイントのひとつに当てたいからな。まあ常夏コンビはもう出てこないだろ。というわけで行ってこい明久、島田。」
え?
なんで2人・・・ああ、なるほどね。
魔物を召喚するための手順ってことか。
吉井君はわかんないみたいで、坂本君に無茶だと言ってる。
美波ちゃんも怖がってるけど・・・坂本君によっていい理由付けされたことで行くことに。
まあ怖いとは言っても、合法的に吉井君に抱きつけるしね。
美波ちゃんも難儀な性格だよね。
さて、吉井君と美波ちゃんの2人・・・をおっかけて突入するであろう久保君と美春ちゃんに期待かな。
いかがでしたか?
レイマリはあっさり退場してしまいました。
秀吉には同情しかない。