「お姉様、古明地こいしと比那名居天子が来たようです。」
「ええ、見えてるわよ。」
早苗ちゃんとお姉ちゃんが失格になったすぐ後。
私達はチェックポイントに到達していた。
「しかし塞いだ通路の壁を退かして入ってくるなんてね。」
「ルールでは施設への手出しを禁止しているけど、私は壁を動かしただけで、傷は一切つけてないわ。ギリギリルール違反にはならないわよ。」
「ギリギリのラインだけど、まあいいわ別に。」
天子さんの言う通り、これはかなりギリギリのライン。
だけど、さっきまでの発言を考える限りこの2人は私達との戦いを望んでいるように感じる。
だから多分通ると予想したけど、その通りになったね。
「さて、勝負の前に改めて名乗っておくわ。私は月乃瀬幻月。」
「そして私は月乃瀬夢月。」
「「以後、お見知りおきを。」」
何故かこのタイミングで再び名乗る2人。
「・・・何故わざわざ名乗ったのかしら?」
「それは私達が古明地こいしと比那名居天子を評価しているから、よ。」
「特に古明地こいしを、ですね。」
・・・・・・私?
なんかよくわからないけど、私目をつけられてる?
「・・・あんたらさっきこいしを酷評してたわよね。」
「あんなものは古明地さとりと東風谷早苗を失格にさせるためのでまかせに過ぎないわ。」
「学期が始まってすぐのBクラス戦、召喚大会4回戦、強化合宿4日目、2年男子の停学明けの日。古明地こいしを私達が気に入る要素はいくつもありましたからね。」
「夢月の言う通り、私達は古明地こいしに興味がある。だからこそ知りたいのよ。」
ゾクッと背中に悪寒が走り抜ける。
なんだろう、氷を背中に突っ込まれたみたい。
「「そんな花を手折った時、どんな感情を抱くか、ね。」」
「「・・・・・・!!」」
ニタリと笑みを浮かべる2人。
・・・狂ってる。
「そういう訳で始めましょ。サモン。」
「はい、お姉様。サモン。」
「こいし、絶対に負けるんじゃないわよ!サモン!」
「そ、そうだね。サモン。」
ちょっと気圧されちゃってたけど、全員が召喚獣を出す。
『Aクラス 月乃瀬夢月 地学 611点 VS Aクラス 比那名居天子 地学 589点』
『Aクラス 月乃瀬幻月 地学 428点 VS Fクラス 古明地こいし 地学 433点』
相手の2人はやっぱり悪魔の姿で、私は瞳を閉じたさとり妖怪。
それで天子さんは・・・あれ、大きさ以外はいつもと同じように見えるけど・・・。
「私は天人よ。」
そう考えてたら、天子さんが心を読んだみたいなタイミングでそう言う。
天人って妖怪とは違うような・・・。
「さて、本気で行かせて貰うわ。」
そう言うと共に召喚獣を動かし、私の方に突っ込ませてくる。
私はそれを武器で受ける。
点数が同じくらいだからガードがそのまま破られることにはならず、力は拮抗する。
「見た目にはあまり関係なく、力は同じくらいなのね。」
「そう簡単に、負ける気はないよ!」
相手が3年で召喚獣の扱いに慣れていても、私だってそこそこは出来るんだから!
それに、もう1人は天子さんが相手をしてくれてる。
「なら、次はこんなのはどうかしら。」
そう言うと相手はいったん距離をとらせ、高速で突っ込ませてくる。
一撃攻撃を入れたらそのまま再び距離をとる一撃離脱型だね。
召喚獣の点数の関係でかなり動きは速いけど・・・私なら見切れる!
攻撃を防いだ直後に返す刀で攻撃を入れ、相手の点数がわずかに減少する。
やった!
『Aクラス 月乃瀬幻月 地学 403点 VS Fクラス 古明地こいし 地学 433点』
「これも対応出来るのね。なら、少し本気を出そうかしら。」
そう言うと共に、ナイフをどこかから取り出して投げてくる。
でも、軌道は直線だしかわすのは問題ない。
相手が飛び道具で来るなら近づいて・・・えっ?
「ダメじゃない。腕輪持ちを相手にするなら、常に警戒していないと。」
その言葉とともに、いつのまにか私の背後にいた相手の召喚獣に私の召喚獣が拳を叩き込まれる。
音を立てて吹っ飛ぶ私の召喚獣。
・・・いつの間に後ろに?
『Aクラス 月乃瀬幻月 地学 384点 VS Fクラス 古明地こいし 地学 319点』
点数が逆転したけど、相手の腕輪の能力がわからない・・・。
ナイフを投げられ、回避して近づこうとした瞬間、いつのまにか背後にいた相手に殴られた。
「・・・ムッツリーニ君と同じ加速?それとも瞬間移動?」
「その謎を解かなければ、勝ち目はないわよ?」
そう言いつつ、再びナイフを2本投げてくる。
さっきはナイフを回避した後近づこうとしたら背後から殴られたから、今度は回避した後動かず、移動したところにカウンターを・・・!
「悪くない判断だけど、あえて言わせて貰うわ。愚策とね。」
「・・・!」
左右を掠めていった2つのナイフをかわし、移動して来たところにカウンターしようとしたところまではよかった。
でも、私の攻撃が当たる前に再び瞬間移動し、また背後から攻撃される。
『Aクラス 月乃瀬幻月 地学 347点 VS Fクラス 古明地こいし 地学 202点』
さらに開く点差。
相手は腕輪の能力の反動か、点数は減ってきてるけど、それ以上に攻撃されてる私の減りが大きい。
・・・でも、今のでわかった気がする。
「・・・その顔は能力を見抜いたって顔ね。」
「多分だけどね。投げたナイフの場所にテレポート・・・といったとこかな?」
「正解。でも、わかったところで対処出来なければ意味がないわよ。」
そう言いつつ、5本のナイフを様々な方向に投擲する。
・・・でも、相手だって点数を消費するからそう何回もワープは出来ないはず。
だから、召喚大会決勝でやったみたいに攻撃も防御も何も考えないで、ただ無意識と反射で攻撃を回避することにする。
焦らずに、ひたすら攻撃を回避してチャンスを待つけど・・・決定的なチャンスが来ない。
相手の攻撃も焦れて大振りになることもなく、確実なチャンスも巡ってこない。
そもそも攻撃をしようとしても、ワープで逃げられちゃったら避けられちゃうしね。
・・・と、少しでも考えちゃったのがいけなかったかもしれない。
「・・・あっ!」
その時は突然やってきた。
相手のフェイントにひっかかり、私の召喚獣はバランスを崩してしまう。
そして、その先には誘い込まれたかのようにナイフが落ちている。
当然、ワープして攻撃をしてくる。
なんとか防御はしたけど、さらに点差は広がってしまう。
『Aクラス 月乃瀬幻月 地学 284点 VS Fクラス 古明地こいし 地学 139点』
「マズイね・・・。」
点数はもはやダブルスコア以上。
このままじゃ負けちゃうのは確定的。
流れを変えないといけない。
でも、今私の腕輪は点数の関係で使えないか、使っても点数がほとんど残らないから、失敗したら待つのは死のみ。
それなら・・・!
「なるほど、武器を変えることで流れを絶ちきろうとした訳ね。」
私には黒の腕輪がある!
使い慣れた触手のようなものの方がいいと思ったから使わなかったけど、これを使えばもしかしたら・・・。
「・・・・・・ッ!」
一瞬で私の手に黒電話の受話器とナイフが装備される。
それを見た相手は何かを感じ取ったのか、今までの余裕な、どこか見下すような、遊びの表情をはじめて崩した。
その真意はわからないけど、実はここに突入する前、坂本君の召喚フィールドで受話器の性能を試してある。
それに、この腕輪をつけた瞬間、頭の中に腕輪のイメージも湧いてきたんだよね。
「くっ・・・!」
焦ったように投擲してきたナイフを受話器を鳴らし、音波で弾く。
そしてその後も何回か鳴らして相手を牽制してると・・・あれ、鳴らすたびに効果範囲増えてない?
『Aクラス 月乃瀬幻月 地学 284点 VS Fクラス 古明地こいし 地学 139点』
それでいて、点数も別に減ってない。
範囲が広がっていけば当然相手に攻撃も入るわけで、相手が腕輪を使いだしてから始めて攻撃が入る。
ダメージはごくわずかだけどね。
『Aクラス 月乃瀬幻月 地学 264点 VS Fクラス 古明地こいし 地学 139点』
「やってくれるわね。でも、威力は弱いなら強引に行けばいいだけ。」
そう言いつつ、いままで距離をとっていたのが一転、一気に距離をつめてくる。
こっちの受話器の音波も強引に拳で打ち消し、突っ込んでくる。
点数は依然ダブルスコアだし、攻撃を受けたらほとんど持っていかれちゃう。
だから、ふたたび神経を集中して無意識の反射で攻撃を回避するしかない。
だから、それにいち早く気づいたのかもしれない。
相手の死角から、天子さんのと思われる大きな剣が飛んできているのに。
「・・・!?夢月は!?」
相手はギリギリでかわしたけど、かわし方が無理な姿勢だったせいで体勢が大きく崩れる。
これはチャンス!
「こいし、今よ!」
「うん、行くよ!」
このチャンスを作ってくれた天子さんの言葉に応え、腕輪の力を発動する。
受話器から放たれた攻撃が相手に当たり動きを止める。
これ自体にはほとんど威力はないけど、動きを止めたらあとはナイフで急所を貫く!
抵抗出来ずに急所を刺された相手の召喚獣は倒れ、やがて薄れて消えていった。
『Aクラス 月乃瀬幻月 地学 0点 VS Fクラス 古明地こいし 地学 8点』
「えーん、強すぎるわー。」
「まぁまぁお姉様、落ち着いてくださいな。」
さっきの腕輪の反動か、私の点数ももうほとんどないけど、私達の勝ちだよ!
「・・・こほん、見苦しいところを見せたわね。とにかくあなた達の勝ちよ。常夏コンビの方も決着がついたから、この勝負は2年生の勝ちね。」
そう言われてモニターを見てみると、確かに吉井君の召喚獣が常夏コンビを撃ち破っていた。
「吉井君達もやってくれたんだね!」
「ええ、そうみたいね。」
これで全チェックポイントがクリアされたから2年の勝ち!
・・・あれ?
「でも最後、なんで相手はワープしなかったんだろ?」
「それは私がそうさせないように投げたからよ。」
私のふと思った疑問に天子さんが答えた。
「あれ、でも天子さんなんでワープのこと知ってるの?」
「そりゃ隣で話してれば聞こえるでしょ。」
「でも、バトルしてたんじゃ?」
「まあね。でも、私ならそれくらい出来るわ!そして、ワープしたら剣が刺さるように位置を合わせて投げたのよ。ふふん、さすが私ね!」
ほへ~・・・。
「・・・なるほどね。正直、比那名居天子にも興味がわいたわ。またどこかで戦いたいものね。」
「ですねお姉様。私は古明地こいしと戦ってみたいものですわ。」
話してたら聞いていたみたいで、そんなことを言って去っていく先輩達。
・・・正直危険な気がするから、できればあまり関わりたくはないけど、なんというか結構関わることになりそうな予感がするんだよね。
いかがでしたか?
夢幻姉妹は底知れないですが、天子さんもかなりすごいですよね。
夢月と戦いながら幻月の腕輪のロジックを見破り、夢月を撃破して正確に投剣でサポートなんて、普通じゃできない。
夢月も弱くないのに。
天子さんはナルシストなだけの力があります。