古明地こいしとFクラス   作:こいし金二

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67話というと、うちの書いていたScarlet Ammo Onlineで、GGO編が終わった話数なのですよね。
現在OS編は公開していないので、追いつきました。
なお、ストックが切れた模様。
つぎの投稿は少しあとになります。
今回字数多いので許して。


第六十七話「Eクラス戦!」

 

 

 

そして召喚野球大会当日。

あの後、吉井君から『野球大会で優勝すれば、没収品を返してもらえる』ということを聞かされ、私達のやる気は急上昇。

逆に言うと、これで負けたらもう帰ってこないってことだからね。

私達は退屈な開会式を終え、グラウンドの一部を仕切って作られたクラス席を離れ、野球大会の会場に向かっていた。

 

「そういえば、最初の対戦相手は誰なの?」

 

「最初は同学年の隣のクラスだから、Eクラスだな。」

 

Eクラスか・・・。

隣のクラスではあるけど、私達との接点はほぼないんだよね。

学園最初の戦争ラッシュでも、Eクラスだけ動きがなかったからね。

私もこの前授業をEクラスで受けたくらいだもん。

クラスとしては・・・野球のバットやバスケのユニフォーム、面や籠手みたいな運動部のものが多かったし、部活頑張ってるって感じなのかな?

 

「Eクラスって野球で勝負しても大丈夫?問題はない?」

 

「ん~・・・まあ、大丈夫だろ。さっきEクラスの代表と話した限りでは、対応も可愛いもんだったしな。」

 

「え?本当?どんな感じだったの?」

 

「えーとだな、『押忍!自分はEクラス代表の中林であります!本日は絶対に勝たせていただきます!』って感じだ。」

 

「全く可愛くないよね!?ソイツ絶対全身筋肉質だよね!?」

 

「冗談だ。本当は『今日はよろしくねっ。絶対に負けないんだからっ☆』みたいな感じの喋り方をしてた。」

 

「なんだ、冗談かぁ。よーし、負けないぞ!」

 

「ただしラグビー部所属。」

 

「やっぱり全身筋肉質だろソイツ!」

 

実は私もEクラス代表は知らないんだよね。

普通の授業1つの間に代表が前に立つなんてないし・・・。

というかうちにラグビー部ってあったっけ?

 

「なんてな。それも嘘だ。Eクラスの代表は女子テニス部のエースをやってる中林ってヤツだ。性格は島田に近い感じじゃないか?」

 

「外見は?」

 

「鉄人に近・・・冗談だ明久。ダッシュで逃げるな。」

 

「雄二の冗談は心臓に悪いんだよ!」

 

まあ、美波ちゃんは吉井君殴るけど、鉄人先生並のパワーだと勝ち目はないもんね。

 

「それで、Eクラスはどういった連中なのじゃ?」

 

「一言で言うと、『体育会系クラス』だな。部活を中心に学園生活を送ってるヤツがほとんどだ。成績は良くないが、その分体力や運動神経はかなりのもんだ。」

 

「なるほど、部活バカってわけだね。」

 

いや、バカって吉井君には言われたくないんじゃないかな・・・。

そう思ってると、ズンズンとこちらに近づいてくる人影。

 

「アンタにバカって言われたくないわよバカ!」

 

「えっと・・・。」

 

「私達がバカなら、その下のクラスのアンタ達は大バカじゃない!この大バカ!」

 

やっぱり怒るよね吉井君にバカって言われたら。

クエスチョンマークを浮かべてる吉井君に、坂本君がEクラスの代表と教える。

ヘアバンドが特徴的な女子だけど・・・記憶にないや。

 

「この人が例の全身筋肉質って話の・・・。」

 

「全身筋肉質!?私一体どういう紹介をされてたの!?」

 

中林さんが目を丸くしてる。

てか吉井君混ざってる混ざってる。

気を取り直したように改めて彼女を観察してる吉井君。

その視線をいやらしいものだととらえたのか、自分の身体を抱くようにして距離をとる中林さん。

 

「な、何よその視線は。これだからFクラスのバカは嫌なのよ。人の身体をジロジロ見て、嫌らしい。」

 

「違うよっ!僕はただ単に中林さんはラグビー部で鉄人に似てる人だと・・・」

 

「アンタ私に喧嘩売ってるんでしょ!?そうよね!そうに決まってるわよね!?」

 

そりゃ怒るよね・・・。

吉井君を見る目が更に険しくなってく。

 

「まあまあパツキン姉ちゃん。明久も悪気があって言った訳じゃない。」

 

そこに珍しく助け船を出す坂本君。

でも、パツキンってどういうことなんだろ?

 

「はぁ?パツキンって金髪のこと?どうしたらこれが金髪に見えるのよ?病院に行ってきたら?」

 

だよね。

彼女は茶髪で、間違っても金には見えないもん。

 

「違う違う。そっちの意味じゃない。漢字では『髪筋』って書く。文字通り、髪まで筋肉で出来てるんじゃねえかってことだ。」

 

「言ってくれるじゃないの・・・っ!」

 

「・・・と、明久が言っていた。」

 

「なんですってぇぇーっ!!」

 

「酷い誤解でげふぅっ!」

 

なんという擦り付け。

怒った中林さんに吉井君が殴られた。

 

「ところで中林。さっきは聞き忘れたが、先攻後攻はどうする?」

 

「知らないわよ!好きにしたらいいじゃない!」

 

「そうか。それならこちらは後攻にさせてもらう。」

 

「いいわよ。そんなことより覚えてなさい!絶対にアンタには負けないんだから!」

 

そう言い、Eクラスのベンチにズンズンと戻る中林さん。

多分、挑発だったんだろうけど・・・吉井君の印象が最悪レベルになったよね。

先攻後攻も決まったところで、いよいよ試合開始だ。

易者先生がいるってことは・・・古文だね。

早速阿求ちゃんが活躍・・・は敬遠されて出来ないような気はするけど、頑張らないと!

通常の野球だと9回まであるけど、今回は短縮されて5回で決着がつくし、1回ごとに科目も変更になってる。

 

「んじゃ、そろそろ打順と守備の配置を発表するか。」

 

坂本君によって組まれた打順発表を聞く。

それによると、キャッチャーは坂本君、ピッチャーは吉井君みたい。

 

「あれ?僕がピッチャーでいいの?点数が高い稗田さんがやるのがいいんじゃないの?」

 

それを聞いて不思議そうにする吉井君だけど・・・。

 

「出来るのならそうしたいがな。稗田が投げて、取れる人がいると思うか?」

 

無理。

阿求ちゃんの次に点数が高い姫路ちゃんでも400点前後だからね。

投げるたびに1人の召喚獣が跡形もなく吹き飛ぶ未来しか見えないよ。

 

「なるほど、納得したよ。」

 

「それなら、姫路が投げて稗田が捕るのではダメなんじゃろうか。」

 

木下君がそう言うけど、坂本君が答えるより先に姫路ちゃんと阿求ちゃんが答えた。

 

「あ、あの、私野球をしたことがなくて・・・。ルールも全然わからないですし・・・。」

 

「私もルールはわかりますが、実際にやったことはなく・・・。」

 

「だそうだ。姫路はルールの把握も兼ねてライトに配置している。状況によって変えるけどな。」

 

確かにライトなら、球はあまり飛んでこないよね。

慣れるにはもってこいかも。

 

「以上だ。他になにか質問は?」

 

坂本君が全員を見回す。

他には質問は出なかった。

そして流れで、男子達が円陣を組む。

 

「よし。それじゃ・・・いくぞテメェら、覚悟はいいか!」

 

「「「おうっ!」」」

 

「Eクラスなんざ、俺達にとっちゃただの通過点だ!こっちの負けはありえねぇ!」

 

「「「おうっ!」」」

 

「目指すは決勝、仇敵教師チーム!ヤツらを蹴散らし、その首を散っていった戦友の墓前に捧げてやるのが目的だ!」

 

「「「おうっ!」」」

 

「やるぞテメェら!俺の・・・俺達のかけがえのない仲間の弔い合戦だ!」

 

「「「おっしゃぁーっ!!」」」

 

それを私達女子は冷めた目で見ていた。

・・・だって、私達はそういう本を没収された訳じゃないもん。

 

 

 

 

 

 

 

 

「プレイボール!」

 

主審をつとめる先生の声が響き渡り、ゲームが始まる。

ちなみに、私達は別にどこに立ってもいいんだけど、やりやすさを考えると必然的に召喚獣の後ろに立つことに。

気分はまるで本当に野球してるみたい。

 

「しゃーっす!サモン!」

 

Eクラスのトップバッターが挨拶し、打席に入る。

サインを見られないように、バッターはボックスの真後ろあたりに立たされる。

点数はたいして変わんないから、どうなるかな・・・?

 

キンッ

 

「ホームラーン!」

 

「ちゃんと投げろボケがぁーっ!」

 

「ちゃんと指示しろクズがぁーっ!」

 

甲高い音をたてて、ボールは青空に吸い込まれていった。

・・・そりゃ、いくら召喚獣慣れしてなくても、運動部相手にど真ん中スローボールはダメでしょ。

最初の投球でホームラン。

これで0対1。

 

「おねっしゃっす!サモン!」

 

ノーアウトランナーなしで2番バッターの登場。

今回は・・・

 

キンッ

 

「ホームラーン。」

 

「「バットをよこせぇーっ!」」

 

またしてもかっとんでくボール。

吉井君と坂本君が同時にベンチにバットを渡すよう言う。

どう考えても、互いを撲殺しようとしてるようにしか見えないよね。

その後、ピッチャーとキャッチャーが他のクラスメイトに変わり、さらにまた1点。

開幕で0対3になっちゃった。

 

「どうしよう、いきなり大ピンチだよ・・・。」

 

「というかもう点取られた後だけどな。」

 

こんだけ点数を取られていながらも、まだ相手はノーアウト。

さらに次は4番バッターだもん。

 

「とにかくピッチャーキャッチャーは俺と明久に戻して、こっからは真剣に行くぞ。」

 

「うん、わかったよ。」

 

配置について、バッターが構えるのを待つ吉井君。

 

「吉井明久・・・!さっきはよくも人を筋肉質呼ばわりしてくれたわね・・・!絶対に許さない・・・!」

 

やはりというか、相手は代表の中林さん。

吉井君への殺意で燃えてる。

さすがにここで手を抜くわけにはいかないと思ったようで、吉井君も真剣な表情で投げ・・・

 

ゴスッ

 

「デッドボール。一塁へ。」

 

「殴らせて!あの男を一度でいいから殴らせてよ!」

 

「落ち着け中林!せっかく勝ってるんだ!乱闘でノーゲームにするのは勿体ない!」

 

力が入りすぎてすっぽぬけたみたいで、ボールは中林さんの召喚獣にヒット。

そりゃ怒るよね。

クラスメイトに宥められ、一塁に歩く中林さんの召喚獣。

続く5番バッターは、前のバッターが軒並みホームランを撃った焦りとプレッシャーからか、撃ちにくい球に手を出してセカンドフライに。

そして慣れてきたのか、6番、7番と連続でアウトを奪う吉井君。

これで3アウトで攻守交代。

 

「よし、さっきはちょっとしたハプニングがあったが、だいたい計算通りだ!さっさと点数を取ってブッ倒すぞ!」

 

「「「おおーっ!」」」

 

坂本君の言葉に全員で拳をかかげて応える。

そもそも、異端審問会なりで日常的に攻撃してるような感じだからね。

トップバッターは木下君。

 

「木下。まずはアンタを打ち取って波に乗らせてもらうわよ!」

 

マウンド上ではピッチャーの中林さんが闘志を燃やしている。

木下君がバッターボックスに入ったのを確認して、中林さんが投擲する。

木下君は球筋をじっくりと見極めて、黙ってボールを見送った。

 

「ボール。」

 

審判がボールを宣告する。

キャッチャーが球をピッチャーに返すと、第二球を投げてくる。

 

「ボール。」

 

二球目もストライクゾーンには入らない。

コースがうまく定まらないようで、ピッチャーの中林さんは悔しそうにしていた。

 

「ストライク!」

 

三球目はストライクゾーンに。

そのまま投球が続き、2ストライク・2ボールとなる。

さらにもう1球投げられたところで、はじめて木下君が動きを見せた。

 

「ファール。」

 

あまり飛ばす気のないようなスイング。

多分これはフォアボール狙いだね。

4回ボールでバッターは塁に出ることが出来る。

だからヒット狙いで3ストライクになるよりは確実なんだよね。

 

「ファール。」

 

その次のボールもカット。

ただでさえ慣れてない召喚獣での投球で、最初のバッターにやられると、やりづらいことこのうえないはず。

 

「ボール。」

 

さらにひとつボールのカウントが増える。

 

「ぐ・・・。嫌らしいやり方をしてくるじゃない・・・!」

 

別に反則ではないけど、中林さんはそれが許せないみたいで、歯噛みしてる。

 

「思いっきり振ってきなさいよ木下!勝負よ!」

 

「すまぬが、それはできん。5回までしかない以上、確実に点を返さねばならぬからの。」

 

「何よ!私が怖いの!?フォアボールなんかじゃなくて、ちゃんとヒットで塁に出なさいよ!」

 

「なんと言われようと無駄じゃ。ワシはワシの仕事をこなすだけじゃからの。」

 

「くっ・・・!とにかく勝負しなさいよ!男らしく!」

 

「・・・男らしく、じゃと?」

 

「ストライク!バッターアウト!」

 

男らしくという言葉が琴線に触れたのか、最後のみ大振りになる木下君。

三振で1アウト。

次のバッターはムッツリーニ君。

ムッツリーニ君は運動神経も悪くないし、召喚獣の扱いだって慣れてるから、多分いい勝負をしてくれそう。

 

『Eクラス 中林弘美 古文 107点 VS Fクラス 土屋康太 古文 17点』

 

・・・前言撤回。

無理だねこれ。

下手したらバットに当てても押し戻される可能性あるかも・・・。

予想通り、ムッツリーニ君はサード前にゴロを転がしてアウト。

2アウトだから厳しいけど、次は吉井君。

点数はともかく、操作技術はダントツだし運動神経もいい方だから、多分やってくれると信じてるよ。

 

「デッドボール。一塁へ。」

 

「痛みがぁっ!顔面が陥没するような痛みがぁっ!」

 

初球から顔面デッドボール。

吉井君の召喚獣は痛みがフィードバックするから、実際に顔面に当てられたのとほぼ変わらない。

しかも相手は人間の数倍の力を持つ召喚獣だし、球も通常の野球ボールより格段に重い。

しかも吉井君に同情しかないよ。

点数も減ってるしね。

 

「この先、アンタの打席は全てデッドボールよ。」

 

そして、さっきまでフォアボール狙いがどうこう言ってた彼女とは思えないような発言。

吉井君はフィードバックの痛みをこらえながら一塁へ向かう。

 

「さて、ここで真打ち登場だな。」

 

そして4番バッターは坂本君。

 

『Eクラス 中林宏美 古文 107点 VS Fクラス 坂本雄二 古文 196点』

 

点数だって差があるし、操作技術や本人の運動神経も悪くない。

 

「うっ・・・。コイツも怖いけど、この次はあの稗田だし、ここは勝負で・・・!」

 

坂本君の後ろが大したことない人なら、多分彼女は敬遠を選んだと思う。

でも、その次は阿求ちゃん、さらにその次は姫路ちゃん。

点数が高いだけで実際にやったことはない姫路ちゃんはともかく、阿求ちゃんは勝負してきたら勝てるはず。

それに坂本君と阿求ちゃんを敬遠したなら、相手は満塁で姫路ちゃんと戦うことに。

だから相手は勝負を選ぶ。

そして投げられた一球目。

 

「あらよぉっと!」

 

カキンといい音をたてて、空に飛んでいくボール。

軌道を見るまでもなくホームラン。

吉井君と坂本君がホームベースに戻り、2点となる。

 

「くっ、次からは坂本にもぶつけるしかないっていうの・・・?」

 

「「「普通に敬遠しろ(しようよ)!」」」

 

つい突っ込んじゃった。

確かにデッドボールの方が点数減らせるという意味ではいいのかもしれないけど、あんまやってると危険球として反則取られるよ?

とにかく、次は5番バッターの阿求ちゃん。

ここと次は間違いなく敬遠だよね。

 

「本当はここでホームラン打って追いつければいいんだけどね。」

 

「満塁ならともかく、さすがにあの点数相手に勝負をしてくるほど甘くはないと思うぜ。」

 

「まあ、坂本もそれはわかってるだろうしな。」

 

ベンチで魔理沙と正邪ちゃんと会話する。

ちなみに、私は9番で、魔理沙は8番、正邪ちゃんはベンチとなってる。

ちなみに、もう1人のベンチは須川君。

お空はあんまり運動神経よくないからね。

私もいい方じゃないけど、点数はまあそこそこあるから・・・。

 

「ボール。フォアボール。一塁へ。」

 

話してるうちに阿求ちゃんが一塁に移動してる。

 

「さすがに敬遠してきますよね。デッドボール狙いなら多分打てたのですけど・・・。」

 

そんなことを呟きながら移動する阿求ちゃん。

続いて姫路ちゃんもフォアボール。

これで2アウト、ランナー一塁二塁。

次のバッターは・・・。

 

「うぅ、ウチの番ね・・・。」

 

随分と自信がない様子の美波ちゃん。

運動神経はいい感じなはずなんだけど・・・あ。

 

『Eクラス 中林宏美 古文 105点 VS Fクラス 島田美波 古文 6点』

 

「さあ守備だ!きっちり守るぞ!」

 

「「「おうっ!」」」

 

「ウチまだ打ってないんだけど!?」

 

そんな叫びも空しく、ピッチャー前にゴロを転がしてアウト。

まあ美波ちゃんは古文苦手だしね。

次頑張ろ!




いかがでしたか?
こいしちゃんをはじめとした東方キャラの出番はわりと少ないです。
Eクラスには東方キャラいないので。

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