古明地こいしとFクラス   作:こいし金二

68 / 76
野球だとこいしちゃんが活躍できない。



第六十八話「Eクラス戦後半!」

 

 

 

 

「じゃこいし、守ろうぜ。」

 

「うん。」

 

2回表。

守備の位置につくため、私と魔理沙は向かおうとする。

それを坂本君が呼び止めた。

 

「待て、この回は霧雨、キャッチャーを頼む。」

 

「・・・あ、確かに数学だしな。わかったのぜ。」

 

魔理沙は数学は腕輪レベルだからね。

そしてピッチャーは美波ちゃん。

この回限定なら、Bクラスレベルのバッテリーだよね。

 

『Eクラス 大村新太郎 数学 65点 VS Fクラス 島田美波 数学 193点』

 

予想通りの得点差。

さっき7番バッターまで打ったから、次は8番からだし問題は多分ないはず。

1、2球目と心配なく見守る。

すると、3球目で魔理沙がボールを取り損ね、胸に当たった。

じっさいかなりの速さだもんね。

魔理沙の点数が10点ほど減ってる。

点数が2倍くらい差がある魔理沙でもこれなら、他の人ならかなりのダメージになってたはず。

その後も投球が続き、この回は問題なく凌ぎきる。

 

「お疲れ、美波。ナイピッチ。」

 

「ありがと、アキ。」

 

「凄い球だったね。さすがだよ。」

 

「ふふっ。さっき打つ方で活躍出来なかった分、せめて守備では活躍しないとね。」

 

片目をつぶってそう言う美波ちゃん。

かっこいい。

 

「お姉様!最高です!かっこよすぎです!そんなお姉様を見ているだけで、美波は、美波はもう・・・っ!」

 

・・・だから、女子にモテるんじゃないかな?

 

「さて、次は私からだな。・・・まあ、敬遠されそうだけどな。」

 

次のバッターの魔理沙の数学は腕輪レベル。

魔理沙が言った通り、敬遠で塁に。

さて、次は私だね。

 

『Eクラス 中林宏美 数学 108点 VS Fクラス 古明地こいし 数学 127点』

 

点数は同じくらいだし、ヒットを狙っていきたいな。

構えさせる。

そして、1球目が投げられる。

 

「ストライク!」

 

最初は空振り。

うーん、けっこう難しいね。

でも、今のでタイミングとかはわかったかも。

次で行くよ!

 

「アウト!」

 

・・・と思ったんだけど、レフトにフライを打ち上げてアウトに。

やっちゃった。

魔理沙はなんとか二塁にたどりついたものの、次の木下君とムッツリーニ君も凡退でチェンジ。

その後も3、4回と互いに無得点で終わる。

そして、最後の5回表。

こちらは依然1点差がついてるから、ここは取らせないようにしたいところ。

そこで科目は保健体育。

 

「じゃあムッツリーニ、ピッチャーは任せたよ。」

 

「・・・了解。」

 

いやいや、ムッツリーニ君が投げたらキャッチャー吹っ飛ぶよ?

坂本君もそう言って、ピッチャーは坂本君がやることに。

坂本君だって100後半くらいの点数あるし、結構な速さになる。

おかげで無事に点を取られず守りきることに成功。

途中、2回ほどボールを受け損なって身体に当たってたけど、さすが得意科目。

ほとんど点数を減らすことなく耐えていた。

 

「さあ、ここで逆転するぞ!次の打順は誰からだ!」

 

「ワシからじゃの。」

 

打順は2周して、次はトップバッターである木下君。

 

「秀吉、絶対に打ってね。」

 

「・・・期待している。」

 

「そうだ、頼むぞ木下!」

 

「頑張ってね木下君!」

 

「ファイトだぜ木下!」

 

口々に寄せられる期待と応援の声。

私は9番バッターだからもう絶対に回ってこない。

だから応援だけでもね。

 

「う、うむ。努力はするが・・・。」

 

「「「俺達の、エロ本の為に!」」」

 

うーん、そのエールは・・・。

 

「ストライク、バッターアウト!」

 

「どうしたの秀吉?スイングに力が入ってなかったけど。」

 

「あの激励で力が抜けてしまっての・・・。」

 

そりゃそうだよね。

疲れきった顔してる。

でもまあ、次はムッツリーニ君。

保健体育はムッツリーニ君の得意科目だし、期待してるよ。

 

「・・・まあ、間違いなく敬遠されるだろうがな。」

 

「だよね。」

 

点数が高すぎるとフォアボールで歩かされちゃうからね。

そして予想通り、ムッツリーニ君はフォアボール。

これじゃ点数にはならない。

だから次のバッターである吉井君次第。

 

「次は吉井君だけど、点数いくつくらいなの?」

 

「えーと・・・。確か30点くらいかな?」

 

「酷いもんじゃな。」

 

「だ、だって・・・。参考書を取られちゃったから・・・。」

 

「アンタは何使って勉強しようとしてんのよバカ。」

 

でもこれ大丈夫かな?

相手は100点ちょいくらいあるし、吉井君の撃った球によってはムッツリーニ君もアウトをとられてゲームセットの危険さえある。

 

「ま、気楽に行ってこい。なんとかなる。」

 

そんな状況にも関わらず、何故か坂本君はお気楽だった。

不思議そうにしてる吉井君だけど、審判の先生に注意を受け、小走りで向かってく。

・・・???

 

「で、坂本君。作戦があるの?」

 

「ない・・・が、今は5回裏の1点差、科目は保健体育。」

 

「そんなのはわかってるわよ。」

 

「それで、ランナーはあのムッツリーニだ。」

 

「盗塁だっ!」

 

坂本君が言った直後、グラウンドの方から声が聞こえてくる。

・・・そっか、そういうことね。

牽制球が来ないのを確認したムッツリーニ君は二塁に向かって走らせる。

それを見た吉井君はあえて大きく空振り。

あれはバットでキャッチャーの視界を遮り、盗塁の成功率を少しでも上げるためのもの。

キャッチャーがボールを受けて、二塁に送球しようとする。

このタイミングだと、アウトかセーフかギリギリ・・・ん?

ムッツリーニ君って700点くらいあるのに、100点くらいの相手にギリギリ?

そう思いながら見ていると、送球の瞬間、ムッツリーニ君の目がぎらりと光ったような気がした。

 

「・・・かかった。」

 

そう呟くと、召喚獣の動きが一気に速くなる。

やっぱり手を抜いてたのか!

 

「「「なっ!?」」」

 

ムッツリーニ君が通りすぎた後、ボールを受け取った二塁の守備は三塁に送球。

これもまたギリギリなタイミングだね。

 

「・・・加速。」

 

そこに、ムッツリーニ君が腕輪の力を発動させてさらに加速。

 

「「「んだとぉっ!?」」」

 

Eクラスから悲鳴のような声が聞こえてくる。

余裕で三塁を通過したムッツリーニ君の召喚獣は、ホームベースに走り出す。

 

「くそったれ!」

 

三塁の守備がホームベースに送球する。

でも、それより先にムッツリーニ君の召喚獣はホームベースを駆け抜けて生還していた。

 

「「「おっしゃあーっ!」」」

 

Fクラスから歓声が沸き上がる。

これで同点!

あと1点取れば、私達の勝ちだよ!

吉井君も投球に備え、召喚獣にバットを構えさせる。

相手ピッチャーも動揺してるはずだし、吉井君も行けるかも!

 

ゴスッ

 

「デッドボール。一塁へ。」

 

「だから・・・っ!なんで僕はデッドボールばっかり・・・っ!」

 

『Eクラス 古河あゆみ 保健体育 102点 VS Fクラス 吉井明久 保健体育 0点』

 

「吉井明久、戦死!」

 

・・・今のデッドボールで0点になったよ吉井君。

 

「ちょっと待って!まだ試合が残ってるのに0点になったんだけど!?」

 

「野球の方は代走で鬼人が入る。補充試験を受けてこい。なに、ここまでやったんだから勝っておくさ。」

 

「戦死者は補習!」

 

「あんまりだーッ!!」

 

戦死した吉井君を、鉄人先生が連れていく。

・・・体育祭の最中に補充テストなんて、ドンマイだね。

まあ、こうなったら勝って、勝利を戦死した吉井君に捧げないとね。

・・・私出来ることないけど。

 

「さて、次は俺だな。死んだ明久の為にも、撃ってくるとするか。」

 

吉井君は戦死したけど、デッドボールで塁には出てるから、現在は1アウト一塁。

相手は1点でも取られると敗けが確定するから、坂本君、阿求ちゃん、姫路ちゃんの誰かで勝負に出ないといけない。

さっきのムッツリーニ君の盗塁の印象が強かったのか、相手ピッチャーは牽制球を投げてからキャッチャーに投げてくる。

そして坂本君はフォアボール。

さっきホームラン打たれたからかな?

 

「次は私ですね。」

 

阿求ちゃんがバッターボックスに立つ。

阿求ちゃんは身体が弱いせいで、体育の授業は常に見学してる。

だから、多分ここで勝負に出ると思うな。

予想通り、迷いつつもストライクゾーンにボールを投げてくる相手ピッチャー。

 

「私も練習したんです、よっ!」

 

それに対し、カキンといい音をたててバットをボールに当てる阿求ちゃん。

ボールはぐんぐんと上昇し、ホームランに。

やった!

サヨナラ勝ちだよ!

 

「「「よっしゃぁーっ!!」」」

 

Fクラスから歓声が沸き上がる。

一時はどうなるかと思ったけど、勝ててよかった!

次は3ーEか3ーFかわかんないけど、勝つよ!




いかがでしたか?
あっきゅんによろサヨナラホームランで無事に勝利できました。
しかし中林さんのデッドボール宣言、実際なら危険球扱いで退場になりそうですよね。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。