二人三脚ってやったことないなぁ。
「頼む・・・!なんとか最高のパートナーを・・・!」
「いいから早く引けよ。後がつかえてるんだから。」
「わかってるから急かすなよ!・・・よし、これだ・・・チクショォーッ!!」
「「「っしゃぁああーっ!ざまぁ見やがれぇーっ!!」」」
「・・・えっと、あれは何やってるのかな?」
補充試験を終えて中央グラウンドに戻ってきた吉井君が、あの騒ぎを見て坂本君に聞いてる。
「ん?あれか?あれはただのくじ引きだが。」
「いやそれはわかるよ。そうじゃなくて、なんであんな騒いでるのかってことだよ。」
「あれが二人三脚のくじだからな。」
ちなみに、男女混合だよ。
私は魔理沙と、正邪ちゃんはお空とペアになったけど、美波ちゃん、木下君、姫路ちゃんのペアはまだ未定。
だからこそ騒いでるんだけどね。
・・・ちなみに、Bクラスの方まで行って確かめてきたけど、お姉ちゃんは虎丸さんとペアになったらしい。
よかったよ、お姉ちゃんとペアが男だったら死人が出てたもん。
「なんじゃ明久。ずいぶんと落ち着いておるではないか。」
「うん、僕は別にペアが誰でもいいからね。どうせ男女別だろうし『今回は男女別だぞ。』全然問題ないサモン。」
モノにさわれる自身の召喚獣で皆殺しにしようとする吉井君だけど、召喚フィールドないよ?
「ちなみに私は魔理沙と、正邪ちゃんはお空とペアになったけど、美波ちゃん、姫路ちゃん、木下君はまだ決まってないよ。」
「あ、なんだ。それは良かった・・・。」
「まあ、私達にとってはこんな競技より野球が大事なんだけどね。」
「古明地の言う通りだな。」
「・・・同意。」
あっちはお姉ちゃんの写真という実利があるからね。
優勝という名誉より、お姉ちゃんの写真310枚という実利の方が何倍も重要だもん。
ちなみに、2回戦の相手は今延長戦中。
7回裏が終わって決着がつかなかったら引き分けに。
そう言うと聞こえはいいけど、実際は両者敗退と同じ。
そうなると私達は自動的に不戦勝だからありがたいんだけどね。
「とにかく、2回戦があると考え、作戦や打順をたてておくか。」
坂本君がプログラムを取り出して確認する。
次の科目はごく普通のもの。
現代文があるのが良くないけど、他は問題なさそう。
「・・・保健体育がない。」
悲しそうに呟くムッツリーニ君。
坂本君が持っているプログラムを覗きこむと、確かにこの先には保健体育がなかった。
ムッツリーニ君は保健体育がないなら吉井君とどっこいどっこいの点数だからね。
だから二回戦はムッツリーニ君はクラス競技に参加することに。
「打順と守備位置も弄る必要があるな。最初が数学だから島田を1番に置いて、霧雨を2番にするか。」
「僕はどうなるの?数学は苦手なんだけど。」
「数学も、だろ。どうせ物理の点数だって壊滅的なんだから、3番のままでバントさせた方が良さそうだな。」
「ん、了解。」
坂本君が打順と守備位置を次々に決めていく。
そう話してると姫路ちゃんと美波ちゃんがやってきて、吉井君に二人三脚のペアを聞きにくる。
それで思い出したように二人三脚くじを引きにいく吉井君。
ちなみに、美波ちゃんが6、姫路ちゃんが7だから、その2つが当たりだね。
神妙な面持ちの須川君に促され、くじを引く吉井君。
「あ、6ば」
「殺れ。」
「「「イエス、ハイエロファント。」」」
「バカな!?もう囲まれた!?」
うっかり番号を読み上げてしまったばっかりに、一瞬で覆面集団に囲まれ、腕間接を極められ、くじを奪われる吉井君。
「さて、この6番のくじだが、オークションを」
「わかりました、美春が言い値で買い取りましょう。」
「「「なんで清水がここにいるっ!?」」」
「残念だがこれはクラス内のもので・・・ん?これ・・・6じゃなくて9だな。9番の見間違いだ。」
あ、そうなの?
異端審問会メンバーが愚痴をこぼしながら三々五々に散らばっていく。
肘間接をさすりながら戻ってきた吉井君に美波ちゃんが駆け寄るけど、9番だと知って残念そうに去っていく。
私もくじを見せてもらったけど、確かに9の下にアンダーバーがひかれてた。
「そういえばだけど、坂本君達はまだ引いてないんじゃない?」
「ん?そういやまだだな。アイツらが落ち着くのを待っていたらすっかり忘れてた。」
「ワシもじゃ。」
「・・・行ってくる。」
くじびきに向かう3人。
引いてないのは3人だけだし、吉井君の9番はまだ出てない。
どうなるかな?
男子の誰もが固唾を呑んで見守るなか、最初に木下君が引く。
「む。9ば・・・」
「っしゃぁ全員かかってこいっ!僕は死んでもこのくじを守りきってみせる!」
「「「生きて帰れると思うなよボケがぁっ!!」」」
一瞬で膨れ上がる殺気に負けないように声を張り上げる吉井君。
競技開始まで逃げ切れれば勝ちだよ吉井君。
「・・・ではないの。6番じゃ。」
「「「・・・・・・」」」
空気の抜けた風船のように一瞬で萎む殺気。
となると、木下君は美波ちゃんとペアみたいだね。
となると、残りは吉井君か姫路ちゃん。
次にムッツリーニ君がくじを引く。
「・・・9ば」
「さらばだっ!」
「「「逃がすなっ!坂本を捕らえて血祭りにあげろっ!!」」」
この間、1秒未満。
ムッツリーニ君が吉井君とペアになるから、残った坂本君が姫路ちゃんとペアになると確定。
それを悟り即座に逃げに入る坂本君と、それを殺らんと追いかけるみんな。
体育祭という行事にふさわしい速度で走ってるけど・・・。
「・・・雄二。浮気は許さない。」
「ぐわぁぁああっ!翔子、お前どっからわいたんだ!?」
そうしてもラスボスからは逃げられない。
翔子ちゃんの指が坂本君の顔に食い込んでいく。
・・・うわぁ、あれは痛いよね。
「・・・ところで雄二。」
「おい待て。普通は話すなら指を緩めるだろ。」
「・・・お義母さんから、なにか預かってない?」
「ん?ああ、あれか?」
待てと言いつつ結局そのまま話し始める坂本君。
よくアイアンクローかけられながら会話出来るね。
「それならあの持ち物検査の日に、催眠術の本が入った袋に入れといたぞ。」
「・・・本当に?」
「ああ。」
「・・・なんてことを、してくれたの・・・!」
「ぎゃぁぁああっ!死ぬほど痛えぇぇっ!」
「・・・あの袋、中身ごと全部没収されたのに・・・!」
「ぐぎゃぁああ・・・ぁぁ・・・」
パキュッと乾いた音とともに、地面に倒れる坂本君。
「・・・雄二のバカっ・・・!」
そう言い捨てて去っていく翔子ちゃん。
「・・・大丈夫?何したの?」
さすがに放置は可哀想なので、吉井君と助け起こす。
すると坂本君は頭をふりつつ立ち上がったけど、あの攻撃受けてすぐ立ち上がるって丈夫だね。
「ああ・・・。俺のせいで、預けてたものを雑誌類と一緒に没収されたらしくてな・・・。」
あの様子だと、よっぽど大事なものだよね。
「お袋に預けた、となると・・・まさか、婚姻届の同意書かっ!」
ああ、確かにそうかも。
2人とも未成年だから、保護者の同意が必要だしね。
「危なかった、それならあの持ち物検査に感謝してもふぐぅっ!」
バチッという音とともに、ふたたび倒れる坂本君。
後ろには、異端審問会の人達が大勢立っていた。
「連れていけ。」
「「「ハッ!」」」
ぐったりとした坂本君がかつぎあげられ、そのまま校舎裏に運ばれてく。
間違いなくひどい目にあうと思うけど、さすがに私じゃどうしようもできないかな。
とりあえず、二人三脚の練習をした方がいいかも。
「おっすこいし!二人三脚の練習しようぜ!」
そう思ってたら、魔理沙の方からそんなことを。
私もそのつもりだったから了解して、少し練習をしてから本番に。
他の人は誰なのかな?
「・・・あら、こいしじゃない。」
「あ、お姉ちゃん!わーい!」
やった!
私の横にはお姉ちゃんと虎丸さんのペアがいたよ!
「ところで魔理沙さん、いい加減貸していた本を返してくれませんか?」
「まあ、また今度返すぜ。」
「さとりさん、本を貸してるんですか?」
「ええ。1年以上前に貸して、催促してるのにいまだに返ってきていませんが。」
「えぇ・・・。」
虎丸さんがドン引きしてる。
「じゃあ、こういうのはどうだ?この二人三脚で私達が勝ったら本の貸出期間は延長。逆にさとり達が勝ったら本は明日返すという感じで勝負しようぜ。」
「・・・本当ですね?」
「本当だぜ。」
「・・・わかりました、いいでしょう。」
魔理沙がそんな賭けを提案し、お姉ちゃんがそれを受け入れる。
こうなったら私のやることは1つだよね。
スタートの合図が出て、全員が出発する。
そして結局、お姉ちゃんと虎丸さんが1位に、私と魔理沙が2位に。
少し手を抜いて、お姉ちゃんが勝つようにしたからね。
とりあえず、これで本を返して貰えることになったけど・・・一応明日魔理沙の家に行こうかな?
いかがでしたか?
こいしちゃんがペアな時点で魔理沙に勝ち目はありませんでした。