古明地こいしとFクラス   作:こいし金二

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今年中にこっちは投稿できました。
正真正銘これで最後です。
来年もどうぞよろしくお願いします。



第七十五話「教師戦3回!」

 

 

 

 

 

「さて、私は敬遠されるとは思いますが・・・打てるなら打ちたいところですね。」

 

4番バッターの阿求ちゃんが打席に入る。

阿求ちゃんはFクラスどころか学年全体で唯一勝てるからね。

 

『Fクラス 稗田阿求 日本史 1027点 VS 日本史教師 豊郷耳神子 日本史 914点』

 

鉄人先生の点数も充分高いからか、今回のピッチャーは豊郷耳先生で、キャッチャーが鉄人先生。

改めて考えると、阿求ちゃんも豊郷耳先生もヤバすぎだよね。

 

『ボール。フォアボール。』

 

考えてたら、阿求ちゃんはやっぱり敬遠。

鉄人先生はさっき言った通り、ボールが絶対に届かないように立ち上がってる。

というか、球見えなかったんだけど・・・。

とにかく、これで阿求ちゃんは一塁に。

この試合ではじめて塁に出たね。

とはいっても、次のバッターである須川君、姫路ちゃん、吉井君は多分撃てないと思う。

姫路ちゃんは野球経験がアレだし(今までの試合は全部敬遠だったしね)、吉井君と須川君は野球経験はあるけど根本的に点数不足。

となると、やっぱり阿求ちゃんは盗塁するしかないと思うんだけど・・・。

 

「セーフ!」

 

やっぱり相手も警戒してるのか、牽制球を投げてきた。

阿求ちゃんは特にリードを取ってなかったからアウトにはならなかったけどね。

ボールは豊郷耳先生に戻され、今度こそキャッチャーに投げられる。

 

「盗塁だっ!」

 

その瞬間に二塁へと走り出す阿求ちゃんの召喚獣。

さすが4ケタなだけあって、豊郷耳先生が投げに入ってからボールを鉄人先生がキャッチするまでの約3秒の間に、7割ほどの距離を進んでる。

二塁へと送球する鉄人先生。

 

「チェンジ、土屋康太。」

 

その瞬間、阿求ちゃんの召喚獣はムッツリーニ君の腕輪を使い、さらに加速する。

もはや残像しか見えなくなった阿求ちゃんの召喚獣は土埃をあげつつ二塁に到達し、そのまま三塁へ向かう。

やっぱり7割程進んだところで、捕球するセカンドの風見先生。

確か点数は300点くらいだし、これなら間に合うはず・・・!

 

「「「・・・・・・えっ?」」」

 

しかし、風見先生が受けとり投げたボールはものすごい速さで飛んでいき、加速がついてる阿求ちゃんを追い抜く。

 

「・・・防御。」

 

そんな勢いで飛んでいったら、サードを守ってる易者先生の召喚獣なんて頭から割られるはずだけど、青色の光とともにボールを受け取った易者先生は無傷。

そして、足は三塁をしっかりと踏んでいる。

阿求ちゃんはまだ三塁に到達していない。

 

「アウト!」

 

「そんな・・・!」

 

阿求ちゃんでも間に合わないなんて・・・!

そしてそのまま三振×2でスリーアウト。

 

「さあ皆、今度はこっちの守備だよ、頑張ろう。」

 

「「「おー・・・。」」」

 

阿求ちゃんがいたから少しは戦えたけど、教師チームのと比べてとても攻撃が短い・・・。

次は地学だから私が活躍出来るはずなんだけど、さっきの阿求ちゃん見てると自信がなくなりそう・・・。

しかも、私キャッチャーで坂本君がピッチャーになったにも関わらず、1番の風見先生に普通にヒットを打たれ、2番の寺井先生にセーフティバントを決められてあっという間にノーアウト一塁二塁。

そして、この状況で迎えるのは高橋先生。

 

(坂本君、もちろん勝負だよね?)

 

(当たり前だ。)

 

アイコンタクトで坂本君と意思疏通。

確かに高橋先生の点数は怖いけど、高橋先生を敬遠したらノーアウト満塁で鉄人先生を迎えることに。

さすがにあの日本史は得意科目だったとは思うけど、鉄人先生の運動神経で腕輪レベルとかなら勝ち目はないもん。

普通ならキャッチャーがピッチャーにサインを出すけど、坂本君の方が詳しいし、私は投げられたボールを取るだけ。

高橋先生はスイングとバントの中間のような、完全に当てることに特化した構えをとってる。

そして、坂本君がボールを投げる。

アウトコース高めで、初心者には打ちにくい軌道。

 

「・・・まあ、予想通りですね。」

 

あっ!

さっきのミスの印象が強かったから忘れてたけど、この人頭の良さは随一なんだよね。

コースを読まれ、腕を伸ばしあっさり打たれる投球。

 

「い、嫌だぁっ!こっちに飛んでこなぶるわっ!」

 

打たれた球は再び福村君の召喚獣を吹っ飛ばし、センター前に転がる。

今度こそ確実に抜かれた・・・!

 

「高橋先生!今度はちゃんと一塁から順番に回ってください!」

 

教師チームから指示が飛ぶ。

 

「わかっています。同じミスは二度としません。」

 

それに対して冷静に答えた高橋先生は、召喚獣を走らせる。

さっきの阿求ちゃん(加速なし)に負けずとも劣らないスピードで一塁を踏み、二塁を踏み、三塁を踏む。

速い、速すぎる。

速すぎて・・・。

 

「高橋先生・・・。アウトです・・・。」

 

前の走者を追い抜かした。

えー・・・。

見てる全員が言葉を失う。

野球のルールに、前の走者を追い抜かしてはいけないというルールがあるんだよね。

まあさっきのに比べたらマイナーかもしれないけど・・・。

 

「なぜですか。」

 

「とにかく高橋先生。アウトなので戻って下さい・・・。」

 

「納得できません。」

 

「そういうものなので・・・。」

 

不満そうな目をしつつベンチに戻っていく高橋先生。

そして、またもや茫然とするランナーに対して三塁と二塁に送球し、アウトを取る。

これで、一応3アウト。

 

「・・・・・・3アウト、チェンジ。」

 

さっきの焼き直しのような光景に審判が力なく、呟くように宣言する。

・・・まあ、さっきのもそうだけどこんなトリプルプレイなんて見たことも聞いたこともないからね。

パワ○ロとかでもこんなことないし・・・。

 

「さっきのもだけど、高橋先生があんな行動を取るとは驚いたわ・・・。」

 

「僕、密かに高橋先生に憧れていたんですけどね・・・。」

 

風見先生と寺井先生がトボトボとベンチに戻っていく。

ま、まあこれでピンチは凌いだよね!

 

「と、とにかくこれでピンチは凌いだ!稗田さん以外にもそろそろ一本出そう!こっちの最初のバッターは」

 

「お主じゃな、明久。」

 

うん、吉井君だよ。

 

「・・・期待してるぞ、坂本、古明地さん。」

 

「坂本、こいしちゃん!2人だけが頼りだ!」

 

「頼む。ホームランをかっ飛ばしてくれ。」

 

「えっと、私と坂本君だけじゃなくて、吉井君にも期待してあげよ?」

 

吉井君悲しそうにしてるよ?

 

「「「あー・・・、まあ、そうだな・・・。一応吉井も・・・。」」」

 

「もういいよ!形だけの声援なんていらないよ!」

 

あまりの扱いにへこんだ顔する吉井君。

わ、私は吉井君応援してるよ?

 

「あの、明久君。頑張ってくださいね。」

 

「そうだぜ!私は期待してるぜ、吉井!」

 

「姫路さん、魔理沙・・・!ありがとう!頑張ってくる!」

 

「はい。応援してますっ。」

 

「おうっ!頑張ってくるんだぜ!」

 

「よしっ!この打席を、2人に捧げるよ!」

 

へこんだ吉井君に訪れる、天使と魔理沙の癒し。

応援で気合いが入った様子の吉井君が、意気揚々とバッターボックスに入り、バットを構える。

 

「デッドボール。」

 

「ぎにゃぁぁああっ!手が!左の手首から先の感覚がぁぁああっ!」

 

「ご、ごめんね吉井君・・・。力加減失敗しちゃって・・・。」

 

よりによってフィードバックがある吉井君の召喚獣に、河城先生の失投が当たる。

痛みでのたうち回ってる吉井君。

 

「うぅ・・・。活躍どころかカッコ悪い姿を見せちゃったよ・・・。」

 

起き上がり、一塁に。

とはいっても、一塁に進めたのは大きいよね。

 

「さて、俺の番だな。」

 

坂本君が進む。

今回地学の先生は立会人の1人しか空いてなかったみたいで、今のピッチャーは河城先生。

 

『数学教師 河城にとり 地学 275点 VS Fクラス 坂本雄二 地学 189点』

 

点数では負けてるけど、運動神経や反射神経を加味すると、わりといい勝負になるんじゃないかな?

河城先生がボールを投げる。

コースはど真ん中で、球速も普通。

さっき吉井君にデッドボール出しちゃったのが心理的なストッパーになってるみたい。

これはチャンス!

 

「・・・っ(ピクッ)」

 

その球を見て、ピクッと反応し、そのまま見送る坂本君。

結果、ストライクカウントが1つ増加。

今のを打たないのは、なにか考えがあったのかな?

考えてる間に、河城先生が2球目を投げる。

今回はアウトコース低め。

ギリギリストライクゾーンに入ってるけど・・・。

 

「こ・・・の・・・っ!」

 

さっきと同じように身体を震わせて、バットを動かした。

カッと半端な音をたて、ピッチャー前に転がるボール。

坂本君、判断に迷ってバットを振り切らなかったね!

 

「アウト!」

 

ピッチャーが拾ったボールを二塁に送球し、そのまま一塁に送球。

これで一気に2アウト。

チャンスは残念ながらものに出来なかったみたい。

 

「くそぉっ!」

 

ベンチに戻る途中、悔しそうに吠える坂本君。

やっぱり、さっきのをまだひきずってるのかな・・・。

っと、次は私だった。

 

『数学教師 河城にとり 地学 275点 VS Fクラス 古明地こいし 地学 461点』

 

この点数なら、きっと・・・!

バッターボックスに立ち、落ち着いてピッチャーを見据える。

そして、投げられる。

1球目はストライクゾーンに入ってなかったから見送り。

 

「ボール!」

 

とはいっても、キャッチャーの鉄人先生は立ってないし、別に敬遠ではないよね。

そして2球目を投げてくる。

球速は速いけど、コースはいい!

これなら!

 

「えいっ!」

 

カァンと音をたて、ボールは高く飛んでいく。

ホームランこそ出せなかったものの、一塁に出られた!

でも、そのあとの魔理沙が普通に三振でアウトになり、得点には繋がらず。

・・・残念。

そのままベンチに戻ると・・・。

 

「・・・・・・っ!」

 

今までにみたことがないくらい真剣な顔で、坂本君が考えていた。

 

「えっと、何があったの?」

 

「それが・・・。さっき雄二と霧島さんの件あるでしょ?その時の没収品って、婚姻届の同意書じゃなくて、如月ハイランドで貰ったヴェールだったみたいで・・・。」

 

吉井君の説明に、一瞬言葉を失う。

如月ハイランドで貰ったヴェールって、坂本君との結婚式体験のアレだよね・・・?

坂本君のお嫁さんになるっていう夢を大勢の目の前で笑われたあと、『俺はお前の夢を笑わない』と言われてプレゼントされたって翔子ちゃんがお泊まり会の時に話してたアレだよね・・・?

そうだったんだ・・・。

坂本君は知らなかったみたいだけど、確かにそれは翔子ちゃんに同情かな。

それで、そのヴェールを取り戻すために今、坂本君は全力で考えてるって訳なのね。

実際、次は4番の鉄人先生からだし、無策で挑んだらさっきの二の舞になること間違いナシだし。

 

「雄二、ピッチャーとキャッチャー交代。」

 

「「「は?」」」

 

そんな坂本君に、吉井君が声をかける。

えっと・・・?

 

「稗田さん、ピッチャーをお願い出来るかな?」

 

「え?は、はい、だいぶ慣れてきたので出来るとは思いますけど・・・。」

 

何を思ったか、阿求ちゃんにピッチャーを頼む吉井君。

でも、阿求ちゃんの点数は相当高いし、受けきれる人がいないんじゃ・・・?

 

「明久、確かに稗田なら行けるかもしれないが、キャッチャー出来る奴がいないだろ。俺の点数は250程度だし、稗田はいくつだ?」

 

「えっと・・・今回は500点くらいですね。」

 

「だそうだ。受け損なったら誰であろうと即死は免れないはずだぞ。」

 

「うん、そうだね。受け損なったら死ぬよ。だったら、受け損なわなければいい。僕が全部完璧に受けきってみせる!」

 

そう言い切る吉井君。

おおっ、かっこいい!

 

「・・・わかった。なら、失敗するなよ!」

 

言い切った吉井君に対して、信頼して任せる坂本君。

坂本君も復活したみたいだし、これなら行けるかも!




いかがでしたか?
雄二復活。
あ、ちなみに如月ハイランドのエピソードはこいしちゃん視点だとスッカスカにしかならないので原作読んでください。

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