Bloodborne The Demon Hunters   作:カンタレラ

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申し訳ありません、本当に遅れました。
言い訳させていただくとリアルで用事が重なって普通に忙しかった(建前)というのと、あとテラリアとか風花雪月とかリングフィットとかやっていた(本音)せいで遅れました。
本当にごめんなさいでした。


人目を気にせぬ異常者

「はぁ……」

 

 現在彼は陰鬱である。

 理由は二つある。一つ目は家族との思い出がある家を離れてしまったこと。だが鬼殺隊が定期的に来るとなると、流石に毎回毎回生かして返すのが面倒である。細心の注意を払ってはいるが、いつ手が滑って、あるいは激情に駆られて殺してしまわないか気が気でない。そういった事故が起こらないよう定期的に拠点を変えて、場所を特定されないようにする必要がある。

 二つ目は狩人の夢に禰豆子を送っていること。その所有者であった月の魔物を狩り、現在は彼自身が所有しているが……何せ上位者が作った代物である。日本と違い夢は神秘に溢れ、それが禰豆子に悪影響を与えないかが心配だ。神秘が色濃く残った悪夢では自分が正常を保っていた事と、他の鬼である程度実験したから大丈夫だと思うが……まあ影響を受けた所で大した事にはならないから別にいいが。それよりも秘文字の工房道具や聖杯、その他異常物体の数々に触れないかが一番心配だ。だからといってそろそろ危険が多くなってきた気がする、鬼が出るし鬼殺隊は来るしで。ならば家で寝かせるより夢に送ったほうが安全だ。それに今は眠ってる上にそれらは厳重に保管されているから問題ない。しかしそれでもなにかの弾みで触れないか心配な為、夢での世話等々は人形ちゃんに任せている。本当に頭が上がらない……

 

 とまあ色々悩み事や心配事は尽きないが、それらは……特に後者は禰豆子が起きてから対策する方が良いだろう。それまではいきあたりばったりで放浪しつつ、鬼を狩ればいい。そうすれば何れ鬼舞辻無惨を見つけ出す事が出来るだろうから。導きを見逃してしまったのは痛いが、それもまあ仕方がない。誤って人殺しをするほうが方が問題だろう。

 

 

 

 

 "水の呼吸 流々舞い"

 

 流れる水の如く移動をしながら触手を切り落とす。

 彼は現在、エーブリエタース相手に呼吸の修練を行っている。呼吸自体扱えないわけではないが、如何せん素の身体能力に頼り切りなのである。全集中の呼吸による身体能力向上がまだまだ不十分だ。以前羽織を纏った二人組を視て、それに気付く事が出来た。それを改善するために水の呼吸や蟲の呼吸を見様見真似で扱い、あの二人組の呼吸の熟練度に近づけて行く。とは言えちゃんとした教えを受けたわけでもなく、全ての型を見たわけでもなく、その上適性がないのか才能がないのか、行くところまでは行けるがあの二人ほどに扱うのは到底無理でヒノカミ神楽ほど十全に使いこなせるわけでもない。だからといってヒノカミ神楽も足りないものが多くなかなか体に馴染まないのも事実。ならば今は呼吸の技術を磨くことに重きを置く。幸いなのは水の呼吸と蟲の呼吸は似通った部分があり、適時切り替えても二つの差異に悩まされないことだろう。

 

 才能の無さに嘆くのは慣れている、あの悪夢で散々味わったことだ。

 ……何度渇望したことだろう。才能があればあの子やあの人を救えたかもしれない。才能があればもっと早く悪夢を終えることが出来たかもしれない。才能があれば禰豆子を守れたかもしれない。

 幾度となく嘆き、悔やみ、絶望を味わい続けた。だがそれらは全て終わったことだ。悪夢を終わらせ、救うことは出来なかったが死後の休息を齎す事が出来た。鬼になってしまった禰豆子はこれからは必ず守り抜いてみせよう。大丈夫だ、力はある。技もある。手段も今こうして増やしている。必ずだ、必ず……

 

 こうした固い決意の下、彼は呼吸を用いて上位者や別次元の狩人と渡り合っていく。

 何故いきあたりばったりで放浪すると言いつつ聖杯に籠もっているかと言うと、単に暇なだけである。夜間はともかく、昼間は一切鬼を見つけることが出来ない。最初の頃は昼間も鬼を陽光の下に引き摺り出していたが、まず見つけるのに時間がかかり、そして引きずり出すのはひどく手間がかかる。ならば夜間に出没する鬼を日輪刀で頸を切って狩ったほうが楽で効率がいい。

 その結論に至った現在、昼間は意識を薄れさせて夢に帰っては禰豆子の世話や聖杯に籠もり呼吸の修練を。夜になれば地上に戻り鬼を狩る。一応懐中時計を持っているので時間は正確にわかる。悪夢で拾ったものではあるが、悪夢においてそれは意味をなさない。だがそれが夜明け、希望であると信じた人が居るのも事実。時間が解決するという言葉があるように時間が経てば夜明けを迎えることが出来ると信じて疑わなかったのだろう。実際は酷くなる一方であったが。

 

 

 

 とまあそんな生活を続けて一年が経った。

 禰豆子は未だ目覚めず、ある日突然死んでしまいそうな恐怖に苛まれるが、禰豆子を信じ続けて己は己の出来ることを熟していく。

 呼吸は狩人相手に徐々に戦えるほどにはなった。というより狩人相手に銃器を一切使えないのが非常に厳しい。特別禁止しているわけでもないが飽くまで呼吸の修練が最優先である。銃器を使えばそれだけで型に嵌ることが出来ず、呼吸を修練するには邪魔になる。それでもなんとか動きを読み取り隙の糸を嗅ぎ取っては技を打ち込むが、それでも勝率は一割程度とあまり芳しくない。銃を余り使う必要がない巨獣や上位者相手ならよく刺さるのだが……狩人相手となると時間が経てば経つほど徐々に型を見切られてそのまま敗北を喫する事が多い。短期決戦を仕掛けるほうがいいのだろうか……

 と、今も色々悩みは絶えないが、今日も今日とて鬼舞辻を探しながら鬼を狩る。

 

 夜、浅草にて。

 人々に紛れるため、装束を着込まず異邦の服を着込むことで目立たないよう鬼を探る。幸い今は和洋折衷が始まった大正時代で、都心に近い。異邦の服はあまり目立たずに行動ができる。

 自慢の嗅覚を用いて鬼を探っている最中、彼の鼻がとある匂いを嗅ぎ取る。

 これは……家族が亡くなり、妹が鬼になったとわかった日に嗅いだ匂いだ。鬼舞辻だ、鬼の首魁である鬼舞辻無惨の匂いだ。その匂いによって彼は家族の死に顔、血に染まった家内の惨状を鮮明に思い出し、脳内は一瞬で憎悪と憤怒の激情に駆られた。

 彼は人気の少ない路地裏に潜み、ひと悶着を起こしても後に尾を引かないよう顔を覆い隠せる烏羽装束を身に着け、青の秘薬と加速を併用することで視認性を下げ装束を着ても目立たなく為るようにする。

 屋根に登り、シモンの弓剣を構える。青の秘薬の影響で一般人には見向きもされないようだ。

 匂いで大まかな位置を探り、脳の瞳で個々人を鬼か人かを暴く。

 

 見つけた。

 

 彼は躊躇いなく変形を行い弓を引く。子供を抱えているようだが関係ない。狙いは頭だ、貫通して他者に被害が出ないよう頭に矢が残る調整をする。威力は要らない。一瞬でも矢に意識を持っていき尚且他の人々が自ら離れてくれれば万々歳だ。

 嘴に仕込んだ香草と薬草により精神安定を図り、感情によるブレを無くしていく。

 そして射る。

 即座に屋根から降りて加速で近付く。周囲は悲鳴を上げ我先にと逃げようとする、阿鼻叫喚だ。その中に紛れ、精霊の眼球を取り出し、足を狙って夜空の瞳を発動させる。

 

 鬼舞辻は動揺した、まさかこんな町中で仕掛けてくるとは思わなかったろう。だがそれでも鬼舞辻は邪魔な重りである子供を殺しその場から離れようとするが、子供に意識を取られた所為か、上からの第二射に気を取られたか。人の間を縫い、地を這う隕石によって膝下を砕かれ、衝撃によって子供を手放した。

 彼はその子供を奪い取り、近くにいた母親であろう人に投げ渡す。

 

「逃げてくれ、あの男から出来る限り離れて」

 

「な、何を言って……貴方が、月彦さんを……?」

 

「あれを見てまだわからないのか? あれは人間じゃない。理解できなくとも直ぐにこの場から離れるんだ!」

 

 語気を強め無理やりこの場から離れさせる。

 彼が指した先には足を再生させている鬼舞辻無惨が居る。その再生速度は常人から見てもおよそ人間とは思えないだろう。それを見た人々は更に悲鳴を上げ、その場から逃げ去っていく。どうやら野次馬も残らないようで彼は安堵した。

 人々で賑わっていた浅草は閑散としていき、今この場にいるのは彼こと竈門炭治郎と鬼舞辻無惨だけだった。




大正コソコソ噂話
竈門炭治郎は人の被害を気にしますが人の目は一切気にしません。騒ぎが起ころうとも建物に被害が起きようとも、死人や怪我人が出なければ何でもいいです。顔を隠したのは今後の活動に影響があっても困るので、無いと判断すればヤーナム装束に身を包みます。あとタイトルは適当です。

遅れたお詫びにもう一つおまけをば
炭治郎と柱が邂逅する時に、実は三つほどルート分岐がありました
一つはカナエ生存の和解ルート
彼の家に行ったのがカナエだった場合、和解して全面協力するルートです。でもなんか軽い気持ちでカナエ救済というのもなんだかなぁと思ってボツです。
もう一つは戦闘中に鬼が乱入して共闘ルート
こっちは和解ほどではないけどそれでもそこそこの協力関係にはあるルートです。こっちは純粋にあの話が先に思いついたためボツです。
あと何も考えてないけど鬼も鬼殺隊も皆殺しにする殺戮ルートもありますが、そっちはそっちで書くのが面倒そうなので内容考える前にボツです。
本編終わって余裕があったらこっち書きます。

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