Little Monster Fantasy 作:こんがり肉
お腹が重い…。
お腹が暖かい…。
少し寝苦しい…!
息苦しさを感じて目が覚める。お腹から感じる重さと温かさを確かめるために布団を捲ってみると、黒い魔物が抱き着くようにして眠っていた。布団が捲られたことで目を覚ましたらしく、閉じた目を開いて大きく欠伸をした。
「おはようさん、起きるからごめんな」
横っ腹を掴んで隣へ降ろすとググッと背筋を伸ばして尻尾を上下左右に振った。
――――クルルゥ
黒い魔物が一鳴きして部屋の隅の籠に頭を突っ込んでムシャムシャと食べ始める。4本、5本と食べて満足した魔物が部屋をうろつき始めた。
「あー、そういや名前。決めてなかったよな。なんていうんだ?お前」
昨日はそれどころではなくて考えもしなかったが、オレはまだこいつの名前を知らないし、つけてもいなかった。
この魔物の知性は高いらしく、オレの言っていることが理解できているような気もするが、あいつが何を言っているのかオレには全く分からないため、コミュニケーションは取れていない。仕草やニュアンスで何を伝えようとしているのかを感じるので精一杯だ。
「うーん、名前、名前かぁ…。鳥っぽいけど、猫っぽい気もするし、犬っぽいこともする…タマとか―――」
ぺチっとオレの手が尻尾で叩かれた。これは嫌らしい。
「じゃぁ……ポチ―――『ペシっ』。ダメか。んーじゃぁタロ―――『ベチっ』ッ痛っ!」
一際強く叩かれて、さらにグルルルと低い唸り声が聞こえる。慌ててごめんごめんと背中を撫でると若干機嫌を良くしてくれたのか唸り声が収まった。
「名前なんて付けたことがないからな…」
体が黒いからクロか?これは駄目っぽい気がするな…。鳥…トリッピー?これはもっとやばい気がする。猫…タマ、いやこれは叩かれた。ニャル?これは安直過ぎるか…?ニル?ちょっと言い辛いか。…ナル…。
「ならナルはどうだ?」
今度は尻尾は大人しかった。
「よし、オレはアッシュ。これからよろしくな、ナル」
―――クルルゥ
よろしく、といったのだろうか。そんな鳴き声を返してくれた。
「……すまぬが、魔物を村に置いておくことはできん」
名前が決まってから数時間後。留守番をするように言い聞かせたオレは村長の家へとやってきていた。
オレの家に魔物っぽい生き物が来ていたこと。身の安全のためにキュピックを与えたら懐かれてしまったこと。今も家に居着いており、危険性はないことを伝えてみたが、少し悩んだあと、村長は首を横に振った。
「今は危険でなくとも、この先何もないとは言い切れん…。眷属獣であればまだいいんじゃがな」
「眷属獣??」
「そうじゃ。人が使役する獣や魔物を登録できるものでな。冒険者ギルドで登録できるんじゃ。それがあれば町や村に魔物を入れることができるんじゃよ」
冒険者になったことがないから、聞いた話によるとじゃがな、と笑いながら言った。
「この近くになるとのう…ここから3日くらい行ったところのルビナスの街にギルドがあったはずじゃ。うちの村のやつが良く行っとる街だから知っとるじゃろ?」
良く食料や衣類などの商品を売ってくれる商人がくる街だ。この村で取れる野菜などもこの街に持っていって売っている。オレも何回か村の男と一緒に売りに行った覚えがあった。
「まぁ、お前もいい歳になったからの。ちょっとばかり旅に出てみるのも良い経験になろうて。ほれ、お前の夢を叶える良い機会じゃろ?」
「う…冒険者には憧れてたけど、畑もあるしなぁ」
いない間の畑の世話は子供たちに練習がてらにやらせておくと村長は笑いながら言って、銀貨を二枚渡してくれた。
「街に入るお金は出してやる。色々冒険が出来るのは若いうちだけじゃぞ?」
こんな爺になったらもう家から出れん!と笑う村長にお礼を言いながら銀貨を硬貨入れに仕舞った。畑のことをお願いしてから家に戻ると、玄関でナルが待っていた。
頭を撫でながら旅に出ることを伝えるとクルルっと鳴いて部屋へと戻っていった。
とりあえず、旅に必要な物を準備する。食べ物、発火石、毛布、敷き布、財布等々を遠出用のリュックに入れた。出発は明日の朝でいいだろう。どんな旅になるか分からないが暫くは戻ってこないかもしれない。食べ物の類は腐っても困るので周囲の家に渡して部屋の中をすっきりさせた。
一人で行くのは少し不安だが、今なら旅の道連れにナルもついてくる。冒険者になったらどんなことをしようか。布団に寝転がりながら隣で丸くなるナルの暖かさを感じながらそんなことを考えた。
村長
両親を亡くした主人公に色々良くしてくれる気の良いおじいちゃん。
主人公が子供の頃に言っていた冒険者になりたい!という言葉を覚えており、これを機に冒険者してこいと尻を蹴っ飛ばした。
発火石
火打ち石のようなもの。火山で良く採れる。
火の中に放り込むと長時間燃え続けるため、野宿をして眠るときはこれを火にいれてから眠るのが旅の基本。