Little Monster Fantasy 作:こんがり肉
旅商人が使う馬車や村人たちによって踏み固められた道をひたすら歩く。
村から出て9時間ほど。畑仕事などで鍛えられた足腰はまだまだ余裕をもっているが、太陽が山の向こうに沈んでいきそうな時間になってきた。
夜になると夜行性の肉食動物や魔物が活動を活発化させる時間なので、いつも通りに火を焚いて野宿をすることにした。
踏み固められた道のすぐ横で、集めた木の枝に木屑を置いて発火石で火をつけた。火の勢いを強めるために追加で枝を投入する。少し離してもう一つ焚き火を作るとそっちには発火石を投げ込んでおく。
先を尖らせた木の枝に干し肉を刺して軽く火で炙ると良い匂いが鼻を刺激した。ナルもコソコソと近づいてきて横に居座るとジッと干し肉を見つめてくる。
「ほれ、大丈夫だとは思うけど」
軽く炙った肉を目の前にもっていくと、枝ごと噛み砕いてゴクリと飲み込んだ。枝ごと食べたナルに苦笑しつつオレも軽く炙った肉を口に入れた。美味くもなく不味くもなく、まぁ、干し肉なんてこんなものだ。
ナルに何枚かあげながら、食べ終えると森の近くに獣除けの臭い袋を適当に投げておく。ナルも鼻が利くのか嫌そうに唸って鼻先をオレのお腹に押し付けてきた。
内心で軽く謝りながらも目の前の焚き火に発火石を放り込んで火を強めつつ毛布をオレとナルに被せた。
寝静まった夜。何かが動いた刺激で目を覚ました。発火石は問題なく効果を発揮しており、周囲を火で明るく照らしてくれていた。
ふと、横を見るとナルの姿がなく、慌てて辺りを見回すと道と森の境目近くにいた。
森のほうを向いており、背を低くして尻尾を地面にビシッビシッと叩き付けている。
――――ゴルルァ!
鳴き声も普段出すものとは違い、凄みを感じる。その小さい体からには不釣り合いな大きな存在感を感じた。何に威嚇をしているのかは分からないが何かがいるに違いない。懐から護身用の短剣を取り出して構えた。
森からは何も聞こえない。聞こえるのはナルが唸る声と尻尾が地面を叩く音のみだ。
そんな状態が続いていたが、ガサガサっという音とともに森から3頭の狼が現れることで状況が動いた。
現れた狼は、ナルよりも少し小さく、体毛は白っぽく、頭には角のような突起が生えていた。間違いなく魔物である。
跳びかかってきた狼を撓らせた尻尾で叩き落すが、左右からくる二頭が翼のようになっている前足に噛りついた。鋭い牙が翼に食らいつき、翼に食い込んでいるのが薄暗い中で微かに見えた。
「ナル!」
枕元に用意しておいた手頃な石を投擲して体に当てるが、狼たちは完全にこちらを無視してナルの前足を噛み千切ろうとブンブンと首を左右に振った。
短剣を構えて突っ込もうとした瞬間、ナルが噛まれている前足をブンブンと振ると、噛みついていたはずの狼たちが突然真っ二つになって森のほうへと飛んでいった。
「???」
混乱するオレを他所に、最初に尻尾で叩き落された狼に尻尾を叩き付け絶命させる。あれほど騒がしかったこの場に静寂が訪れた。
終わったと一息吐いたオレにグァウ!と一鳴きして、ナルが森のほうへと突っ込んでいった。
ナルが消えていった方向からは、ヒュンッと何かが振られる音やバキバキと木が倒れていく音、そして犬の悲鳴のような鳴き声が響き渡って静かになった。
構えた短剣を森に向けていると、ナルが先ほどの狼よりも一回り大きい狼を咥えて戻ってきた。オレの目の前までやってくるとペッと狼を捨てて、こちらを見上げてくる。
先ほどまであった大きな存在感が消えて、想像でしかないがドヤッとした顔を向けていた。
「ナル…お前、小さいのにそんな強いんだな」
よくやったと頭や背中を撫でていると、ペロペロと手や顔を舐めてきた。
鉄のような臭い、血の臭いがしたので、手で拭うと赤くなっている。
「ナル!ちょ、ちょっと待って!血が、血がついてるから待って!」
ぺろぺろと舐められた後にはしっかりと血がついていた。
ちなみに、ナルが持ってきた狼は、朝食として(ナルが)美味しくいただきました。
狼の魔物
フォレストウルフと呼ばれる魔物。雌一頭に雄が2~10頭ほど集まって群れを作っている。雌は群れのリーダーとして雄を使って狩りをする。雄が雌に攻撃をすることはなく、雌が他の群れの雌を殺すことで群れを大きくしていく。
ナルの前足
刃翼と呼ばれる折り畳み式の堅い翼を持ち、その切れ味は竜をも真っ二つにできる。
幼体では竜を真っ二つにはできないが、狼程度ならば問題なく両断できるようだ。