Little Monster Fantasy 作:こんがり肉
ナルの意外な強さが分かってから3日ほど。目的地の街―ルビナスが見えてきた。これまでは誰にも会わなかったが、街に近づいたからか旅商人や冒険者らしき人の姿がチラホラと見え始めた。
周りを歩く人は、物珍しさからか一度はナルの方へと目を向ける。それに不快さを感じているらしくナルの機嫌はあんまり良くない。温存する必要もないキュピックを取りだして機嫌を取りながら門を目指した。
「通行証かギルドカード、身分証と銅貨50枚を通行料でいただきます」
目の前では、旅商人らしき男が懐からカードを取りだして街の中へと入っていった。オレの番が来たので身分証と銀貨を取りだしておく。
「通行証かギルドカード、身分証と銅貨50枚と合わせて眷属証を提示してください」
「すみません、眷属獣の登録をしに来たので、まだ眷属証は持ってないんですが」
「なるほど…ちょっとこちらの別室に来てもらっても?」
門の隣にある待合室のような場所に入る。その部屋には机とソファーが置いてある以外には特徴もない普通の部屋だ。
「少し待っててください。すぐ戻りますので」
そう言うと門衛は部屋から出ていった。旅の疲れが足に出ていたので、ソファーに腰を下ろした。家にある椅子よりも座り心地がいい。ナルもソファーに上がってきてオレの腿に頭をのせて丸くなった。
「すいません、お待たせしました。彼は鑑定魔術が使える魔術師です。安全性などの確認のために今から鑑定魔術を使います」
戻ってきた門衛の隣には、杖を持った男性が立っており、よろしくな、と対面のソファーに座り込む。ブツブツと呪文を唱えた彼の杖から、淡い光が立ちあがりナルの方へと飛んできた。
それに目を向けるナルだが暴れ出す様子はない。そのことにホッと安心していると、杖を持った男性が驚いたように立ち上がった。
「貴方…。それがどんな生物が知っていましたか…?」
その言葉は僅かながら震えており、目は信じられないと見開かれていた。首を横に振ると、深呼吸をして落ち着きを取り戻した魔術師の男性がいいですか、と口を開いた。
「その魔物は飛竜種に分類される竜種ですね…。大きさを見る限り生まれてからそんなに時間が経っていないように見えますが…」
「へぁ?」
それを聞いて鳥とか猫とか犬とか思っていただけに驚きの声が出た。竜種―――生態系でも上位に位置する種族であり、その中でも飛竜種は空を飛ぶ災害と言われている。農民だったオレでも竜種の凄まじさは知っているし、ナルがその竜だということに驚きが隠せなかった。
「生まれて間もなく貴方に出会ったお蔭か凶暴性は見られなさそうですが…この魔物が竜種だということはなるべく秘密にしておいた方がいいかと」
手をゆっくりとナルに近づけて左右に動かしながら魔術師は言った。ナルも脅威を感じていないからか左右に振られる手を見るだけで何もしない。
「特に悪意ある人に知られてしまったら、お金欲しさに襲ってくるかもしれません」
言わなければ竜種と分かる特徴は今はありませんしね、と付け加えてから男性は部屋から出ていった。
「驚きましたよ、幼竜なんて初めて見ました。さて、特に問題がないと分かりましたのでこちら、仮眷属証になります。街の中では必ず付けておいてください。あとは通行料として貴方と眷属獣合わせて銀貨1枚になります」
オレは銀貨を支払ってから、ナルの首元に渡されたスカーフっぽい布を結んでから部屋を出た。冒険者ギルドは、この表通りを真っ直ぐ行った先らしい。
街中を歩いているとオレと同じように魔物を連れて歩いている冒険者らしき人たちがチラホラと見えた。狼っぽいモノもいれば、鷹のような鳥を肩に乗せて歩いている人もいる。
ナルもそういった魔物に目を向けてはグルルと威嚇っぽいような声を出すので、その度に頭を撫でてやった。冒険者たちも見慣れない魔物だからか此方に目を向ける人も少なくない。
もし、この黒い猫っぽい鳥っぽいやつが竜と分かる外見をしていたらもっと凄いんだろうなと思った。
表通りを歩いていると色々な屋台が見えてきた。パンに焼き菓子にフルーツに串焼き。ナルの視線が匂いに釣られて右左に動く。しょうがないと串焼きを二本買ってナルの口元に持っていくと木の串とそれについていた肉を噛み砕いて飲み込んだ。
干し肉よりも美味かったんだろう。オレの手にあるもう一本の串焼きを物欲しそうに見てくるがこれはオレの分だ。手早く食べてまた今度な、と頭を撫でた。
金貨1枚 = 100,000円
銀貨1枚 = 1,000円
銅貨1枚 = 10円
日本円にするとこんな感じにイメージしてもらえれば。細かい計算やお金の管理は…しません…。