タイガ・ザ・ライブ!〜虹の向こう側〜   作:ブルー人

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来週のゼット予告でおったまげてる作者です。
ヘビクラさん……ミスリードじゃなかったのか……。

そしてタイガ劇場版がやっと……!


第2回 どういう関係?

「きりーつ!礼!」

 

春馬の発した号令と共に隣に座っていた歩夢とかすみも立ち上がり、彼とタイミングを合わせながら腰を曲げる。

 

着席した3人の視線の先に立っているのは…………赤いメガネをかけ教鞭を手にした教師然とした雰囲気のステラだ。

 

『今日も全員揃っているな』

 

ステラの隣でふわふわと漂っている蒼い霊体————ウルトラマンヒカリが出席簿らしきものを眺めながらそう口にする。本当に授業を受けているかのようだ。

 

「まだ2回目なのにすごく自然な形で始まりましたね」

 

「前回でもうすっかりこの空気に慣れちゃったかも……」

 

互いに顔を見合わせながら苦笑いする歩夢とかすみを横目に、春馬は相変わらず瞳を輝かせながら元気よく挙手をした。

 

「それで姐さん、今日はどんなことを教えてくれるんですか?」

 

「そうね、まずは前回話せなかった部分を片付けましょうか」

 

『それって……メビウスと一体化していた地球人の話か?』

 

「ええ」

 

タイガの質問に応答しつつ、ステラは背後にあったホワイトボードへ「第2回」と記していく。

 

 

以前も少しだけ聞いたことがある。

 

ウルトラマンメビウスと共にエンペラ星人と戦い、地球を救った英雄。

 

春馬にとっても目標のような人物である、彼の名前は——————

 

 

「じゃあ簡単に話していきましょうか。……“未来”について」

 

 

◉◉◉

 

 

春馬「未来さん…………俺達にとっては、メビウスさんと一緒に地球を救ってくれた恩人の1人ですね」

 

ステラ「ふふ、恩人ね…………本人が聞いたらどんな反応するかしら」

 

ヒカリ『どうだろうな』

 

ステラ「あいつのことだし調子に乗って先輩風吹かしまくるに決まってるわ。……いや、案外まじめな奴だし恐縮するかも?」

 

かすみ「ちょっとちょっと、1人で盛り上がらないでくださいよ」

 

ステラ「ああごめんなさい、ついね」

 

歩夢「ステラさんはその、未来さんって人ともお知り合いなんだね」

 

ヒカリ『知り合いという言葉で片付けるのは少々寂しいかもしれないな』

 

春馬「え?」

 

ステラ「やめてよ、人聞きの悪い」

 

かすみ「え〜〜〜〜?なんですかその反応〜!詳しく教えてください〜!」

 

ステラ「別になにもないわよ。少なくともあなたが期待しているようなことはね」

 

春馬「かすみちゃん、どういうこと?」

 

かすみ「ニブチンさんは黙っててください」

 

春馬「ええっ!?」

 

歩夢「ぷふっ」

 

ステラ「話を戻しましょうか」

 

ヒカリ『——俺達が彼らと出会ったのも同じく5年前。とある怪獣を追って地球へやってきた俺達は、まずあの2人と衝突することになってしまったんだ』

 

春馬「えっ!?衝突って……戦ったんですか!?」

 

かすみ「ウルトラマン同士でですか?」

 

ステラ「説明する前にわたし達のことも少しだけ話す必要があるわね。…………以前、“ボガール”っていう怪獣達がいた」

 

フーマ『ボガール……?』

 

タイタス『自分達の空腹を満たすために星から星へ移っては命を喰らい続けるような、貪欲な生命体だな』

 

ステラ「そう。……そして奴らの標的になった星々の中に、わたしの故郷やヒカリの大切な人達が住む惑星もあったの」

 

春馬「…………それって」

 

ステラ「互いに大切なものを奪われたヒカリとわたしは協力して、奴らを根絶やしにすることを強く誓った」

 

ヒカリ『自暴自棄になりながらボガールを追っていた俺達は、地球に住む人々を顧みないやり方で奴を倒そうとしたんだ。地球防衛のために滞在していたメビウス達からすれば、止めようと思うのは当然のことだ』

 

ステラ「でも未来がそんなわたし達を立ち直らせてくれた。……復讐だけじゃない、誰かを守る生き方に導いてくれたのよ」

 

タイガ『そんなことがあったのか……』

 

歩夢「壮絶すぎて言葉が出ないよ……」

 

かすみ「うぅ……ステラ先輩のこと苦手とか言っちゃってすみませんでした……」

 

春馬「俺も……姐さん達の過去を知らずに、前はひどいことを言ってしまってすみませんでした……」

 

かすみ「え?なんの話です?」

 

春馬「あっ、ううん。こっちのことだから」

 

 

ステラ「あいつがいなかったら……今でもわたし達は復讐に囚われていたのかも。————とまあ今の話からわかる通り、未来もメビウスと同じで真っ直ぐでお人好しな奴なわけよ。あと熱血バカ」

 

歩夢「……ふふっ」

 

ステラ「……?どうかした?」

 

歩夢「ああ、ごめんね。未来さんのことを話してる時のステラさん……なんだかとっても嬉しそうだから」

 

ステラ「なによそれ……」

 

かすみ「あっ!赤くなってます!ステラ先輩が赤くなってます!耳まで赤くなってますよ!」

 

フーマ『おっとぉ〜?』

 

ステラ「だからそういうのじゃないって言ってるでしょ。……いや、別に嫌ってるわけじゃないわよ?むしろその逆だけど……それはあくまで仲間としてのアレなわけで……その…………。————とにかく違うから」

 

春馬「……?どういうことです?」

 

タイガ『お口チャックだ春馬』

 

ヒカリ『ははは。それはさておき惹かれる部分があることは事実だ。メビウスが一体化する相手に未来を選んだことは……まさに英断と言えるだろう』

 

春馬「……すごい人だったんですね」

 

ステラ「別にすごくはないわよ。あいつは人より少し立ち直りやすいってだけで、他は何の変哲もない一般ヒューマン。弱音だって吐くし、強大な敵を前にして挫けそうになったことだってあるわ」

 

ヒカリ『けれども最後には必ず立ち上がることができる人間だった。彼とメビウスが結んだ絆の力はあらゆる脅威を葬り…………ついにはあのエンペラ星人をも倒すに至ったくらいだ』

 

ステラ「ま、それは彼らだけの力じゃないけどね」

 

 

◉◉◉

 

 

歩夢も言っていた通り……“未来”のことを話すステラの表情は、いつもより柔らかく見えた。

 

(素直じゃないから口には出さないんだろうけど…………ステラ姐さん、きっと未来さんのことを大切に思ってたんだろうな)

 

共に戦った仲間であるのなら当然か。

 

彼女やヒカリの話を聞けば聞くほど、未来という人間の人物像が頭の中で組み上げられていく。それはフォトンアースの力を手にした場所————あの校舎で感じた印象と何ら変わりないものだった。

 

どこにでもいる1人の少年。今でこそ一部では英雄と称されている彼だが、その人となりは年相応のものだったに違いない。

 

……会いたい。会って話してみたい。

 

5年前、地球人の身でありながら侵略者達と戦った彼がその時感じていたものを…………彼自身の口から聞きたい。

 

 

「あの、姐さん」

 

「どうしたの?」

 

「未来さんは……今どこで何をしてるんですか?」

 

何気ない春馬の質問を耳にしたステラの肩がぴくりと揺れる。

 

彼女は冷静な顔を崩さないまま、視線だけを逸らして返答した。

 

「さあね。最後に別れてからは連絡も取り合ってないし。……ま、どうせどこかでバカやってるわよ、元気に」

 

ため息交じりにそう口にしたステラがメガネを外し、握っていた教鞭をテーブルに放り投げる。

 

「少し休憩を挟みましょうか。わたしは少し外の空気を吸ってくるから、あなた達も楽にしてて」

 

不自然な笑顔でそう言い残した彼女が部室の扉を開け、去っていく。

 

ぽかんとした表情でその後ろ姿を眺めていた春馬達は、互いに顔を見合わせては怪訝そうに首を傾けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ」

 

そよ風が通り過ぎていく屋上。

 

ステラは柵に体重を預けながら、心の底にあるものが昇ってきたようなため息をついた。

 

「……ほんと、バカなんだから」

 

腕の中に顔を埋めると瞼の裏に浮き上がってくる少年の顔。

 

いつか見たものと変わらない無邪気な笑顔で彼は「大丈夫だ」と言ってくる。

 

……こっちの気持ちなんか知りもしないで。

 

 

 

 

 

 

「————嘘はよくないよ、ステラちゃん」

 

「へっ?」

 

不意に真横からかかった声に思わず間の抜けた声が漏れる。

 

いつの間にか音もなく佇んでいた黒髪の青年。

 

似合わないジャケットに身を包んだ彼に細めた目を向けながら、ステラは低い声で言った。

 

「なんでいるのよ」

 

「いやなに、たまたま通りかかったものだから少し様子を見てみようかなと思って覗いたら…………なんだか面白そうなことやってたから、声かけちゃった。ふふ、メガネ似合ってたよ」

 

「茶化しに来たんなら速攻で回れ右して帰りなさい。お呼びじゃないから」

 

「……ねえ、そろそろ機嫌を直してくれないかな?君が良く思ってないことは十分わかってるよ。……けど、これは彼の意思なんだ」

 

そっけない態度をとるステラに対して苦笑しながらそう言った青年に、彼女は一層鋭い目つきを突きつける。

 

「わかってるわよ。……でも……あいつがまた危険な目に合う必要は…………」

 

「仮にボクが止めていたとしよう。……それで彼が諦めると思うかい?ボクは思わないね。彼を制御しようなんて……エンペラ星人だって無理だったんだ」

 

「………………」

 

「大丈夫だよ、彼は1人じゃない。ボクがいるし、新しい仲間だってそばにいる」

 

青年の言葉を受けながら、ステラは悔しげに唇を噛む。

 

 

先ほど春馬から聞かれたことに対して返した答えは…………半分だけ嘘だ。()()()()()()()()()()ぐらいは把握している。

 

けれどそれは、ステラにとって望むものではなかった。

 

 

「わたしは……あいつがまた笑顔で生きることができるなら……それでよかった。あの時助けてもらった分、今度はわたしがあいつの居場所を守りたかったのに。……本当にそれだけなのに」

 

「彼が聞いたら怒るだろうね。彼はもう……自分達の平和は自分達で掴み取るものだと心に決めてしまってるから」

 

「……ほんと頑固。5年も経つのに」

 

「あははっ」

 

ひらひらと手を振りながら青年は踵を返し、不貞腐れているステラに背を向けたまま言った。

 

「じゃ、またね」

 

「いやもう来ないでよ」

 

「いやいや来ますよ。————あ、そうだ」

 

柵を飛び越えようとしていた足を止め、青年は振り返りつつおもむろに口を開く。

 

 

「ボクはいいと思うよ、制服。ここでは22歳かもしれないけど…………ステラちゃんは永遠のJKだかr」

 

「余計なお世話よッッ!!!!」

 

「さらばァ!!」

 

ロケットスタートと共にナイトブレードによる斬撃を放とうと振りかぶったステラからいち早く逃げるようにして青年が屋上から飛び降りる。

 

遠ざかっていく彼を視線で追い、ステラは真っ赤に染まった顔のまま憎たらしい影を睨んだ。

 

「ぐぅ……あいつ、なんて捨て台詞を……!!」

 

『相変わらず仲が良くて何よりだ』

 

「よくない!!」

 

不機嫌な面持ちのまま振り返り、大股で階段のある出口へと向かう。

 

ムカムカとした様子の表情とは裏腹に、ステラの胸の内はどこかさっぱりとしていた。

 

 




割とガッツリ登場するノワなんとかさん。
ステラの実年齢問題はまだ少し議論が必要ですね()

さて、次回は何を解説しましょうか…………。

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