善逸が目覚めたのは朝日がのぼり1時間ほどたった後だった。
体の上には毛布がかけられており、近くには炭治郎達が同じ様に寝かされていた。
その体には文字どうり傷の一つもありはしなかった。
その光景だけを見れば昨日の水色の魚のような鬼も、その攻撃を受け止めた爺さんも全ては夢だったのではと思ってしまうところだ。
だが、そうは決っして思う事は出来なかった。
何故なら・・・
「ようやく、起きたか?金髪少年。ところで名を教えてもらえぬかのう。いつまでも金髪少年でいいのならいいがのう。ちなみにワシの名はハクロウじゃ。」
と、その爺さんが俺が起きた途端に声をかけてきたからだ。
色々と聞きたいことがあったが、それに対し
「あっはい・・・俺は我妻善逸です。そっちの猪頭が伊之助。髪が赤みがかっているほうが炭治郎です。助けてくれてありがとうございました。」
ということしかいう事しか返せなかった。
そしてその時、初めてはきっりとその老人をみた。
その老人の年は50~60代というところだが、眼光は鋭く、いかにも達人という雰囲気を纏っていた。
服装は白い着物のような服を着て額にハチマキのような物を巻いていた。
そしてすこしその姿を見た後、起きた時からずっと気になっていた事を聞いた。
「ところでなんでこの二人の怪我がこんなに綺麗になくなっているんですか?」
そう、これが一番の疑問だった。
鬼の攻撃をこの老人が受け止めたということも勿論驚きだが、今の自分より何倍も強いであろう老人(鱗滝・
あの時の炭治郎達の怪我は一目見ただけでもとんでもない重傷だった。
下手すれば十数分も持たなかったであろう。
それが前にも述べたとうり傷一つなかったのだ。
これはどう考えてもおかしい。
それにかえってきた言葉は
「それはな、この、どんな怪我もたちどころに治す、海外の奇跡の薬
という言葉だった。
どうしてこんな事になっているのかというと・・・
ヴェルドラ達は善逸が再び気絶してからすぐにこれからの日程やこの場をどうするかを話し合ったのだ。
ヴェルドラとラミリスはともかくハクロウは自分達が異世界の住人だということをかくすべきだと考えたからだ。
まず最初に出た案はこのままこの少年達から離れてしまう、という案だった。
実際にこれが一番いい案だったのだが、この案はヴェルドラとラミリスによって拒否された。
いわく「そんなことをしたら面白くない」とのことだった。
そうしていくつかの案を出していく中で先ほどの「行商作戦」が出たのだ。
もちろんこの案を出したのはハクロウだったのは言うまでもない。
この案の内容としては
自分達が海外から来た商人、という役につくというものだった。
この案の利点としてはまず、かなり苦しいが
二つ目は自身の剣の腕前を多少言い逃れできる、ということだ。
死んでいなければ大抵の傷は完治させることができる薬を持っているのならある程度の実力をもつ護衛がいなくては逆におかしいということだ。
三つ目はヴェルドラの見た目を自然にすることができる、ということ。
ヴェルドラは、どっからどう見ても日本人という見た目ではない。
なにせ体色は黒褐色で髪は金髪なのだから。
だが外人ということならば服装は兎も角、容姿はごまかせるためだ。
更におかしな行動をとっても外人というのである程度だが、言い逃れ出来る。
この様な利点があったため結局この案が採用になったのだ。
その後少しばかり、
*
「・・・つまり商人ってことですか?」
先ほどの発言に対してかえってきたのがその反応だった・・・
しばらくの間ラミリスの出番は無いと思います。
また、日本についての常識を何故ハクロウが知っているかというとヴェルドラが、読んでいた漫画の知識を少し話してもらったからです。