「・・・商人ってことですか?」
ハクロウ達の言葉に対して善逸少年がかえしてきた反応には不信感がこもっていた。
当然だろう。
誰だって、いきなりあった者にこんな紹介をされたら警戒する。
むしろ警戒しなかったらそいつは馬鹿だろう。
しかし、ここで打ち合わせ通りにしておかなければならないのだ。
「ああ。そのとうりじゃ。」
ハクロウは大げさなまでにその言葉に頷いた。
すると
「なんでそんな人がこんな所にいるんですか?いや、そもそも何であの水色の鬼を殺せたんですか?」
という質問がとんできた。
ハクロウとしてはこの質問には少し引っかかるところがあった。
『なんであの水色の鬼を殺せた』
この言葉からはこの世界の事が色々とわかる。
まず、この金髪の少年が言っている「水色の鬼」とは十中八九、人型カリュブディスのことだろう。
それは間違いない。
問題はこの先だ。
先の発言からこの世界には「鬼」という存在がいるのだろう。
それだけならば良かった。
その様な存在がいるのなら人型カリュブディスについてもその「鬼」だと勘違いしてくれるだろう。
この世界にいない「魔物」ではなく、「鬼」と認識してくれる。
それはハクロウからしたら都合がいい。
だがしかし、その「鬼」は言葉から察するに倒すのに何か特殊な方法が必要なようなのだ。
ハクロウもこれには頭を悩ませる。
(まずいのう。うかつにものを言えばワシらがこの世界の住人でない事がばれてしまう)
だが、ハクロウが言葉を詰まらせた時に思わぬ助け舟がはいった。
『ハクロウよ。おまえのことだから何やら悩んでおるのだろう?そんな貴様に我からアドバイスをしてやろう。あの「鬼」とやらはどうやら日光が弱点のようだぞ』
この世界に来てから初めてハクロウがヴェルドラに対して感謝した瞬間であった。
ただ、そのことを知ったことがこの状況にも繋がっているわけなのだが・・・
「それはのう、ワシらは商人である故、商品を売る事が仕事なのじゃ。故にまだこの様な薬が造られてないこの国に売りに来たのじゃよ。そして殺し方については朝日が当たった事で死んだぞ」
「なるほど・・・?」
善逸少年は分かったような、分からないような感じで返事をした。
「まあ、要するにワシらは外国から来た商人、と考えておけばよい。それだけ知っておれば十分じゃ」
「クアーハッハッハ!貴様の連れを治したのも我らのフルポーションおかげなのである!」
ヴェルドラが出しゃばってきてそう言った。
先ほどはかなり気の利いた発言だったのだが今回はそうでもない。
ハクロウとしては、ヴェルドラの性格上、口を開けば何かいらん事を言い出す可能性が高いため黙ったままでいて欲しかった。
しかしそんなハクロウの気持ちとは裏腹に、あろうことか
「それはそうと、治療費の代わりとしてこの国を案内してはもらえぬか?あっ。そうそう言いそびれていたが我が名は「ヴェルドラ」だ」
などという発言をしたのだ。
この言葉に真っ先に反応したのは無論ハクロウだった。
瞬間的にヴェルドラに『思念伝達』を繋げ
『ヴェルドラ様‼打ち合わせと話が違いますぞ!!!打ち合わせでは、彼らが目覚めたらここを立ち去る予定のはずですぞ!』
と言ったその声は焦りに満ちていた。
だがそんなことをヴェルドラは気にしない。
『まあ、落ち着け。我がこの世界の解析が完了するまでまだ時間がかかる。そんなことならば現地の者に案内させた方がよかろう。この者達にもかなり関わってしまったのだからよいではないか?』
ハクロウからしたらこの世界の観光自体歓迎すべきことではない。
リムルがいるならば兎も角、現時点では本気で行動したヴェルドラを止めれる者などこの次元には存在しないだろう。
そのためハクロウは今も、ヴェルドラを何とか行動させないようにするために頭をひねっているのだ。
だが、ハクロウにとって最も幸運だったのはヴェルドラがとても扱いやすい性格であったということだろう。
しかし、それでも、もはや止められなくなるようなことは起きる。
それがまさにこの時だった。
ヴェルドラの話ではこの世界の解析にまだ暫くかかる、ということだった為それまでに何とかしてリムルに連絡をとる予定だったのだ。
それなのにもはや既にヴェルドラは行動を始めようとしている。
そんな中
「そっそれは・・・」
とハクロウが言葉をつまらせたときに
「うッ・・・」
と、今まで寝かせていた炭治郎、と呼ばれた少年が意識を取り戻した。
追記 この話はかなり強引に改変したため本編で何か矛盾があるかもしれません・・・