ハクロウは心の中で深いため息をはいていた。
今までどうにかこうにか、そらしてきたヴェルドラの気持ちがついにそらせないようなところまで固まってしまったのだから。
先程のヴェルドラ様の発言の直後にあの額に痣のある炭治郎という少年が起きたため話題を一時的にそらせはしたが所詮は一時しのぎに過ぎなかった。
すぐまた善逸という金髪少年が話を戻してしまったのだ。
善逸少年はハクロウ達を怪しんでいたようだったため、もしかしたら善逸少年のほうから断ってくれるかも、などとも思っていたのだが炭治郎少年が無事に目覚めた事で警戒がとけてしまったのだろう。
(もはやヴェルドラ様は止めることができなんだ。リムル様。申し訳ございませぬ)
ハクロウはそうリムルへの謝罪を述べた後また、心の中でひっそりと決意する。
(まあワシはワシに出来る事をするだけよのう)
もはや旅をさせない事は若干諦めて、被害を自分の出来る範疇でカバーする方向に舵をきったのだ。
それでもあくまで若干であり、出来るならばトラブルを起こさせないようにするだろうが・・・
それを考えたのち現実に目を向けてみると、猪頭をかぶった少年が眼を覚ましたようだった。
そこからはまたもや説明タイムに突入し、途中で猪頭の少年、伊之助少年が
「
と言い放ちそれを炭治郎少年と善逸少年がとり押さえるという事もあった。
そんなこんなであらかたの
朝から事情を説明していたにも関わらずこんなにも時間が経ってしまったのだ。
「もう日が傾いてきておる・・・説明に随分と時間がかかったものよのう」
そうハクロウがぼやいてしまったのは不可抗力というものだろう。
その言葉に反応して炭治郎少年が申し訳なさそうに応える。
「すいません。伊之助が迷惑をおかけしてしまって・・・」
「いや。ワシらの方にも問題はあったからのう。気にすることはない」
そう。実は昼頃になった時、ヴェルドラが昼飯を作るために鉄板をだそうとしたのだ。
無論出来る範囲内だったので止めたのだが、そこでもひと悶着あったのだ。
少年達に見られる前に隠せたのは幸いだった、そう考えるとともにハクロウは胸をなでおろした。
しかし
(ベレッタ殿もワシと同じような心境だったのかの・・・)
と以前ヴェルドラ達が異世界に行った時のことを思い浮かべ、またもやため息をはきそうな表情になっていた。他人から見れば老体が静かなのは自然なことに思うかもしれないが、三百歳超えても軍事に着手するほど元気なハクロウがここまで気分が沈んでいるのはゴブタが見たら『だ、大丈夫っすか⁉今日はちょっと休んだが・・・』と言ってしまいそうな異常事態である。
そんな事態を簡単に発生させるあたりヴェルドラはやはり『
(トラブルを起こさせないのは諦めた、というふうに思ってはいたが実際にそのようにするのはやはりワシには厳しいか・・・お二方のように何も考えずに行動できたらどれだけいいことか)
などとヴェルドラとラミリスの顔を思い浮かべ自分がどうするべきかを考えていた。
そんな時・・・
「・・ロウ。・・クロウ。ハクロウ!」
ようやく呼ばれていた事に気が付いた。
それに対応し直ぐに意識を現実に戻し返事をする。
「! なっなんですかな?ヴェルドラ様」
「なんですかな?ではない!そろそろ行くぞ。さっさと準備をせよ」
と言って、もう行くぞ、すぐに行くぞ、今すぐ行くぞ!とでもいいたそうな顔でヴェルドラが怒鳴った。
「・・・分かりました・・・ヴェルドラ様・・・」
その声に対する返事をした時のハクロウの声は酷く疲れた様子だった。
本編に書いてなかったんですが人型カリュブディスの遺体は善逸が朝起きる間に土に埋めてあります。
あとこの作品の転スラキャラの姿は主にマンガもしくは小説版の姿をもとにしております。カリュブディスの姿はアニメとマンガで大きく異なっているためご注意ください。