追記 リメイク版を投稿しました。是非ご閲覧ください。
宇髄天元とヴェルドラがこの地下空間に入って帯が刻まれずにいた時間は五秒もなかっただろう。
なにせ宇髄天元が、落ちると同時に帯を目にも止まらぬ速さで切り刻んだからだ。
この時人知れずヴェルドラが
(あれ?我の出番は?まさか、もう終了?)
と嘆いたという事は秘密だ。
「天元様!」
と「まきを」が叫んだのと
「ヴェルドラさん!」
と善逸が叫んだのはほぼ同時だった。
しかし喜んだのも束の間
すッ
と静かに宇髄天元がヴェルドラに刃を向けたのだ。
「むッ⁉何をするか!」
「それはこっちのセリフだな。一体何をどうやったら地上からここまで素手の殴りで貫通させれるんだよ⁉」
驚くヴェルドラに対し天元は更に驚いた様子だった。
当然だ拳で地面を割れるような人間がいるなんておかしいのだ。
天元が知っている中でも「岩柱」悲鳴興 行冥がもしかしたらできるかもしれないという位だ。
「お前まさか、お・・・いや、それはないか?」
お前まさか、鬼じゃないだろうな⁉
そう言おうとした天元だったが
むしろこの男の気配は若干の違和感があるものの、人間のそれに近かった。
これらのことから
(若干の違和感の正体はラミリスの施した幻覚魔法によるもので、ヴェルドラは実際、鬼ではないが人間でもない【竜種】なのだが魔法がないこの世界ではそれを見抜くのは酷というものだろう)
「とりあえず俺達は竃門を助けにいくが
いや普段だったらもっとこの
こうして鬼殺隊の面々が地下空間から出ていく中で一人ポツン…と、取り残されたヴェルドラからは何とも言えない悲壮感が漂っていた。
そんなヴェルドラを見かねたのか異空間に入っていたラミリスがひょこっと出てきて
「まっまあまあ。みっ皆、師匠があの・・・戦っちゃうとさ、全部手柄を師匠が持ってちゃうからね。大人しくしているように言ってんだよ。うんうん」
言葉を詰まらせながらヴェルドラの
「うッうむ!そッそうよな!我が行くと手柄が全て我の物になってしまうからな!クアーハッハッハ!」
自らの哀しみを隠すようにヴェルドラの笑いが地下空間に響き渡った。
数分後
この俺、宇髄天元は蟷螂野郎と死闘を演じていた。
さっき、自分の事を上弦の陸ってほざいてる
と、ここまでは良かったんだ。
だがしかしその
そのことに気づいた時、そいつ、蟷螂野郎は現れた。
いや現れた、というより分離したと言った方がいいか。
その蟷螂野郎の反応速度は悔しいが、俺を超えるものだ。
その証拠に俺は奴の攻撃をさばききれず負傷してしまったのだから。
「そんだけか?だったら俺の敵じゃねえな!今からお前の命は派手に散るんだよ‼」
「面白れぇこと言うじゃねえか。堕姫!お前はそっちの猪頭と金髪を相手しろ!」
そう強気の姿勢の言葉を発したが内心では焦っていた。
(まずい・・・こいつの武器、毒かなんかが塗られてやがる!俺は、毒の回りが遅いとはいえ、早くカタをつけねえと全滅だぞ!)
蟷螂野郎の武器には常人ならばかすっただけで即死するレベルの猛毒が塗られていたのだ。
この鬼の相手をしたのが俺で良かったと思った。
俺以外でこの毒に耐えられるのは胡蝶ぐらいだったからだ。
(クソが!このままじゃジリ貧だぞ!)
既に俺は竃門と共に戦っている、が攻めきれていない。
善逸や伊之助達も
(これ以上の援軍は望めない・・・俺達で何とかこいつを倒さねえと!)
そう俺が考えた時、視界の端に白髪の老人が写った。
そして気持ちを整えるため瞬きをした後、蟷螂野郎の首がゴトリという音を立てて地面に落ちた。