テンペストの鬼殺業   作:とあるスライム好き

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久しぶり投稿しました。

追記 リメイク版を投稿しました。是非ご閲覧ください。


第二十六話 決着

一瞬、何が起きたのか全く理解できなかった。

だってそうだろ。

 たった一つの瞬きの後、今の今まで炭治郎のやつと戦っていた上弦の陸の首が落ちていたんだから。

いや、これがただの雑魚鬼だったらよくある話だ。

だが今回は訳が違う。相手は上弦の陸だぞ。

つまりは鬼共の親玉の無惨も含めれば鬼の中でも七番手ってことだ。

そんなやつの首が、瞬きの間に切られてるって事に理解が追い付かなかったんだ。

いや。それだけじゃないな。

可能性は低いと思うが、もしかしたら岩柱の行冥さんならそれもできたかもしれない。

 しかし、その鬼の首を切ったのはいつの間にか隣にいた、白髪を後ろで束ね、正夫(しょうぶ)と呼ばれる種類の包丁を片手に持っていた老人だった。

 そのこと自体も驚きだったが何より驚きなのはその老人から伝わってくる恐ろしいまでの怒りの気配(オーラ)だ。

その気配(オーラ)にあてられたこともパニクった理由の一つだろうな。

 

だが、それでも俺が動き出せた理由は、理解が進み老人の使った武器がその包丁であるということを俺の脳が認識したからだ。

それを知って俺の身体は反射的にトドメをさそうと動いた、がそれを老人は片手を上げ静止した。

そして俺の今の行動に対して返答を言った。

 

「安心せい。再生はかなわん」

 

それはいったいどういうことだ⁉と俺が聞き返す前にその答えを上弦の陸が教えてくれた。

 

「クソッ・・・何で再生できねえんだよ」

 

そう叫び歯をきしらせる蟷螂野郎(牛太郎)だったが身体は既に上半身が消え、頭も崩壊が進んでいた。

そして、そのまま身体を再生することもなく

 

「なんでッ・・・こんな奴が・・・」

 

という言葉を残しこの世を去ったのだ。

そして、その事を確認した老人はギロリと視線を移した。

その視線のさきにいたのは・・・

 

上弦の陸、堕姫だった。

 

 

 

 

 

 

なんなのよ!なんなのよ、あのジジイ⁉

あのジジイの眼が私を映した時、私の心に襲ってきた感情はただただ「恐怖」だけだった。

 そこからどうやって逃げたのか正直、私にも分からない・・・。一心不乱に足を動かして全力を尽くして逃げたということ以外は・・・

 振り返る余裕なんてなかった。そんなこと、もしも後ろにいたら・・・と、思うと恐ろしくてできるはずもない。

そんな満身創痍の私に、ある音が響いた。

そして私は気がついたら、無惨様の根城である、無限城にいた。

そこで初めて先程の音が琵琶によるものだという事を私の脳が理解した。

 

「堕姫」

 

何が起きたのか分からない私の耳に届いたのは無惨様のお声だった。

顔を上げてみれば女体へと変化した、無惨様がいた。

だがしかし、私をお救いに?と思った心はその直後の言葉で打ち砕かれた。

 

「逃げたな」

 

一瞬心が休まる様な気持ちだったが、そんな私にかけられた声はひどく冷たく私の思っていたものとは、遠くかけ離れたものだった。

 

「そッそれは!」

 

私の顔に汗がふきでる。

そしてそれと同時に無惨様により殺された下弦の鬼の面々が脳裏にうかぶ。

食い殺された者、頸を引きちぎられた者、それらの景色が今この瞬間目の前にある。

 

「貴様には自らが上弦の陸であるという自覚がないようだな」

 

「いっいいえ!あります!」

 

この流れを何とか変えなくては・・・

その事に気がいっていた私はこの時過ちを犯したのだ。

そこまで言った私は咄嗟に自らの口を手で押さえた。

 

「貴様は私に反論するのか?」

 

その場の空気が変わった。

おろかながらにも私は下弦の鬼と同じ過ちを犯してしまったのだ。

 

「貴様には失望した。もう二度と私の前に立つな」

 

この言葉を最後に私の視界には暗幕がおりた・・・

 

 

 

堕姫の命の灯が消えた無限城にて・・・

 

「まさか妓夫太郎が反応すらできず頸を落とされるとはな」

 

最早ただの肉塊へと堕ちた堕姫の遺体を粗食しながら、女体へと変化した無惨は呟く。

上弦の陸が戦闘していることを感じ鳴女の能力にて、戦いを観察していたのだ。

無惨からすれば弱い鬼などに興味はない。鬼とは強くあってこその鬼なのだから。

故に加勢することもなく、ただただ傍観するだけにしたのだ。

しかし、期待外れも腹は出しいと無惨は考える。まさか、尻尾をまいて逃げ出すとはな。

どっちにしろ敗北者に命など要らないのだから、どうでもいいがとも考えたのだが。

だが、あの者達の存在は危険だ。

 

「鳴女。あの老人と男は危険だ、監視をはなて」

 

「承知いたしました。無惨様」

 

冷徹にそう言い放つ無惨。

そしてそれに応え、自身の分裂体を造り吉原へと送る鳴女。

 

こうしてハクロウやヴェルドラの存在が無惨に知られることとなったのだった。

 

 

 

そしてもう一人ヴェルドラ達の存在を知った者がいた。

 

 

 

どこかの山奥にひっそりと佇むその屋敷。

質素だが手入れの行き届いた庭や畳。

そんな場所に、一羽のカラスが入っていく。

一体どれ程急いできたのか?

そのカラスの姿を見ればたとえ人間でも、疲労困憊であることがわかるだろう。

そしてそのカラスが向かった先には床に臥せた一人の男がいた。

どうやら病人のようで、顔には薄紫がかった痣が広がっており、その眼は光を失っているようだ。

足腰も弱り妻と思われる白髪の女性がその体を支えてようやく立っている。

 

「勝ったのか!上弦の陸に!」

 

しかしその容態とは裏腹にその声には喜色が見えた。

妻が止めるのも聞かずに床から立ち上がる。そして次の報告を聞いて更に声を喜色で彩る。

 

「ただの包丁で、上弦の陸を殺したのか⁉それに地面を素手で砕く男?是非とも話を聞きたい!ここに呼んでくれないか?」

 

この男こそ鬼殺隊のお館様 産屋敷輝夜 その人である。

 

 

こうしてハクロウ達は二つの勢力から目を付けられることとなったのだった。

 

 

 

 


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