転移で戻ってきたヴェルドラに向かってラミリスは真っ先に文句を言いつつヴェルドラの頭をポカポカと殴った。
「師匠---!なんでアタシだけこんな森においてったのさ!」
ラミリスが使用する魔法は、主に「精霊魔法」。「精霊魔法」というのは魔素に作用されない、自然エネルギーを使用する魔法なので発動自体はできるのだが、夜闇が恐ろしかったのだろう。ヴェルドラを罵倒する声には安堵がにじみ出ている。
だが、それも仕方のないことなのかもしれない。何万という気の遠くなるような歳月を生きたとは言え今のラミリスの精神年齢は肉体に引きずられて幼くなっているのだから。
それに対しヴェルドラは軽い感じで返す。
「すまんすまん」
「しっかしあの魔人もバカよね。師匠にあんななめたくちきくだなんて。消滅しても文句言えないよね。ねっ、師匠」
ところがヴェルドラは首を横に振る。
「いいや、あの者は殺してはおらぬぞ」
普通に考えれば首から下を消滅させといて何が『殺してない』なのか?と思うかもしれない、がしかし
ヴェルドラは自身の【
だから首よりしたを消滅させたとしてと生きていると分かっていたのだ。
それはそうと、これに驚いたのはラミリスだ。
「えっ⁉なんでなんで⁉」
「簡単なことだ。我がしたかったのは制裁であり、殺しではないからだ。まあこれがお主やリムルに対しての言葉だったのなら奴は魂ごと消滅していただろうがな。我は大人になったのだよ。大人に!」
これは日頃のリムルによる説教のおかげであった。
どんな罪人にもその罪にあう罰を与えるべきである、という言葉だ。
首から下の消滅が先ほどの言葉に対して相応の罪なのかはおいといてヴェルドラも成長したのである。
以前のヴェルドラならばこの日本を滅ぼさんとしただろうが・・・
「ふ~ん。師匠も成長したんだね。ところでなんだけどさっき結構、魔素流していたし「カリュブディス」みたいなのが自然発生したりすることはないのかな?」
そう、この魔素の流出による「精神生命体」の発生こそがリムルの恐れていたことだった。
何せ精神生命体は「受肉」をしなければ魔素をまとった攻撃しかきかないうえに死んでも蘇る性質を持つため下手すればこの世界を破壊できてしまうのだ。
ラミリスもそれを危惧したからこその発言だった。
それに対してヴェルドラの返事は・・・
「大丈夫であろう。奴が生まれる程の魔素は放出しておらんし、そもそもこんな森の中では受肉できる肉体を探すのも困難であろう。先ほどの奴も死んではおらんし依代にするのは難しいであろうしな。それに発生したとしても受肉しなければ大した時間存在することもできんしな」
ラミリスもヴェルドラの言ったことがこの状況に当てはまるのを確認し安心して魔物の発生の可能性を頭から無くしてハクロウの話をし始めた。
「まあそうだよね。にしてもハクロウ遅いね。さっさと帰ってきてくんないかな~」
この時彼らはまだ知らなかったのだ。
実は先ほどヴェルドラの言った条件がほぼクリアされていようとは。
そんな時だった。
炭治郎に首を切られ、消えかけていた鬼の憎悪にヴェルドラの魔素が反応し「カリュブディス」に類似した魔物が生まれようとしていたのは・・・
ヴェルドラのガマン強さはオリジナル設定です。原作でなら怒り狂うと思います。
またいくつか文字が抜けていたこと、本当に申し訳ございませんでした。
次からはこの様なミスがないように注意します。
一話目の一部を修正しました。