やはり俺の実力至上の青春ラブコメはまちがっていない。 作:ゆっくりblue1
2020/11/16 再編集しました。
蒸し暑い気温とぎらりとした太陽に照らされる。天気は快晴でお出かけ日和だろう。一般的には。俺は冷房の効いた寮でアイスを食いながらだらだら過ごす予定だった。
そう、予定だったのだ。が、今現在俺はお外のお日様の姿を拝む羽目になっています。えっ、何故かって?その理由は・・・・・・
「八幡君、一緒に泳ごうよ!」
惚けっと空を眺めていると、俺の目の前に立ち、遊ぼうと誘ってきた人物がいた。その人物は我がBリーダー的存在、一之瀬帆波であった。最近になって俺を遊びに誘う姿も慣れてきたのだが、いつもと違うポイントが1つある。
一之瀬の格好はいつもの制服や私服ではなく、青色の結構際どめの男子が思わず前屈みになってしまうビキニの水着姿である。俺は目の前に広がる光景に思わず目を逸らしながら一之瀬に言った。
「嫌だよ。疲れるし」
俺の即答に一之瀬は苦笑しながらこう言い返した。
「じっと座り続けてたらもったいないよ?だってここはーーーーーーーーー」
一之瀬は後ろを振り返りながら指し示す様に言った。太陽の眩しさに一瞬目を細める。
「ーーーーーーーここは豪華客船のプールなんだから」
今、俺達高度育成高等学校の1年生は豪華客船の船内にいる。何故こうなったのかは3日前に遡るーーーーーーー
暴力事件と佐倉のストーカー事件から1週間が経って1学期も終わりに近づいてきた。クラスメイトも他クラスの奴も夏休みの予定について話している。何をするやら、何処に行くやら、彼氏彼女を作りたいやらとリア充同士の会話が繰り広げられていた。俺はそんな相手すらいないので寮に引きこもって粛々とだらだらする予定だ。べ、別に話し相手がいないからって理由じゃないんだからねっ!・・・・止めよう、きめぇわ。
授業も何も滞りなく終わりに近づき、そしてSHRで星之宮先生にバカンスが夏休み中に実施されることが知らされた。うわー、絶対唯のバカンスじゃねえ・・・・部屋でごろごろする計画があると言うのに。
帰る準備をしていると視界の端で一之瀬とBクラスの参謀的な存在の神崎がこっちに近づいてくるのが見えた。一之瀬は俺に声をかけてくる。
「ちょっといいかな、八幡君」
「・・・何だ?一之瀬」
俺は荷物をまとめながら一之瀬に聞く。あの事件から一之瀬は俺を名字でなく名前で呼んでくるようになった。何でかと聞いてみたところ、『・・・内緒』と頬を赤く染め上げながら誤魔化されてしまった。そして俺もそれ以上踏み込むことはしなかった。だって地雷がありそうでやばそうだからな。
一之瀬は少し恥ずかしげにしながら要件を話し始める。
「その、夏休みって暇かな・・・?」
俺の予定について聞いてくる。何故、俺の予定を知りたいのかは分からないがあまり気にせずに言う。
「悪いが、忙しいから無理だ」
そう言うと一之瀬はシュンと落ち込んだ表情を見せてくる。あまりに悲しそうだったので罪悪感が湧いてきた。それに待ったをかけるように神崎がすかさず聞いてきた。
「待ってくれ。忙しいってどんな予定か教えてくれないか?」
「・・・・それはな」
俺が溜めるように言葉を区切る。一之瀬と神崎は何故か緊張したような面持ちで俺の言葉を待っている。そして俺は口を開いた。
「寮でダラダラ過ごしながらゲームとか本とかを読みまくるっていう予定なんだよ!」
そう答えた瞬間2人の顔がポカンとなる。理解が追い付いたのか、神崎は呆れた顔で溜息を吐いて、一之瀬は苦笑しながら言った。
「そ、それは忙しいのかな・・・・?」
忙しいっていう定義は人それぞれだしな。図書館で椎名と一緒に本を読んではいるがまだまだ読み切れていないものだらけで気になるのだ。
「何で予定を聞いたんだ?何かあるのか?」
そう聞くと、一之瀬は意を決したように言った。
「予定がないんだったら、その・・・私と一緒に出掛けて欲しいなって」
その答えに俺は断ろうとするが、神崎が頼む。と言うような懇願の眼差しを向けてくる。
「俺なんかと一緒に行ったら変な噂が立っちまうだろうし、止めといた方がいいと思うぞ?」
俺は小学校や中学校で悪意ある噂を立てられるのは慣れているから大丈夫だが、一之瀬は慣れていないはずだ。葉山の上位互換だしな。陰湿ないじめに在ってはいないだろうからダメージは大きいと思う。それに・・・そんなことに巻き込ませたくない。
俺の言い分に一之瀬は少し怒るようなそれでいて悲しそうな眼差しを向けてきて言い返した。
「・・・八幡君。私と2人で出かけた程度で噂が飛び交うならそんなものは無視すればいいし、言わせておけばいいの。私はそんなことは気にしないよ?だからそんな『俺なんか』って自分を卑下にしないで欲しいな」
一之瀬の言葉に思わず黙り込む。中学の時の俺なら『自分を卑下になんてしてない』って言い張って屁理屈を並べ立てて誤魔化したんだと思う。しかし一之瀬には自分の過去を話した。そして否定でも肯定でもなく、ただただ受け入れてくれた。俺の欲しくてたまらない”何か”になってくれるかもしれない奴だ。そんなこの少女に下らない誤魔化しで逃げるのは俺が1番嫌う『欺瞞』だ。
俺は自己嫌悪した。これでは葉山グループとまるで同じだ。薄氷のようなあの薄っぺらい関係性を誤魔化しながら続け、何かの拍子で崩壊してしまうようなあの関係に。そして何より失礼だった。この真っ直ぐな少女に。
「・・・・済まん」
「・・・良いよ、許してあげる。その代わりに私と一緒に出掛けてくれる?」
その問いかけに俺はほんの少し救われた気がした。この暖かく優しい少女に。
「・・・・分かった、いつに出掛けるかは夏休みに入った時に教えてくれ」
俺が了承すると一之瀬は微笑んで頷いた。神崎は俺達の事を静かに見ていたので、用件は?と聞くがいや、特にない。と答えてきた。じゃあ何で一之瀬と一緒にこっちに来たんだ?と疑問に思ったが気にしないでおいた。
そして一之瀬達と別れ、帰る準備を終えて教室を出ようとするとスマホに着信が入った。帰れると思ったのに誰だよ、と内心悪態をつきながらメールをチェックする。着信元は・・・・・・
『From 堀北学
To 比企谷八幡
Subject 南雲の件について』
どうやらまだ帰れなさそうだ。俺は盛大に溜め息を吐き、密会の場に向かった。
生徒会室について中に入ると、そこには堀北生徒会長と、何故いるのかは分からないが陽乃さんがいた。名前呼びについては強制されました。俺が来たことに気付くと、陽乃さんが話しかけてくる。
「お、やっと来たんだ比企谷君」
「やっとって・・・・今さっきメールが来てすぐにこっちに来たんですが」
扱い酷くない?それに南雲の件とか本当はどうでもいいし、帰りたいんだが。内心げんなりしていると堀北会長は俺のそんな様子を見かねたのか溜息を吐いて目線で椅子に座れと促してきた。俺はそれに従って椅子に掛けるとすぐに本題に入り始めた。
「今回、比企谷を呼び出した理由だが南雲の調査を中断して、もう片方の勢力にメスを入れてもらいたい」
もう片方の勢力・・・?そんなもんがあんのか?
「比企谷君は知らないのは無理はないよ。正直に言うとね、今までの調査はそこまでの重要性はなかったの」
陽乃さんから意外な言葉が出てきた。俺は疑問に思ったので聞き返す。
「では何で・・・?」
「実はその勢力のリーダーの子が本当は厄介でね。その勢力の反対の南雲派から調べていって徐々にその子の情報を洗い流したかったんだけど・・・・南雲君の狙いが分かったからそんな悠長なことを言ってられなくなったんだ」
南雲の狙いって確か堀北会長と陽乃さんがいる3-Aを下のクラスに引きずり下ろすことだったよな。でも学年が違うんだから大丈夫なはずではないのか?
「学年が違うんですし、大丈夫なのでは?」
「南雲君だけだったら全然余裕なんだけどねえ。件のリ-ダーの子が絡んでくると厄介なんだよね」
俺が魔王と恐れるあの陽乃さんが厄介とはっきり言うなんて相当な奴なんだな。この人がここまで言うとは思わなかった。
「そこまでなんですか?」
「ぶっちゃけて言っちゃうと基本的なポテンシャルは私と同等かもしかしたらそれ以上かもしれないんだよ。このことは真正面からぶつかるのは私としても避けたいくらい」
陽乃さんと同等か、それ以上って・・・・やばくね?3-Aのトップクラスの実力を持ってるはずだからな、陽乃さんは。
俺がその言葉に戦慄していると堀北会長が言葉を継ぐように続ける。
「しかもそいつは、pポイントは3000万以上は所持している。しかも何の不正もない」
おいおい・・・2000万を集められている生徒は現時点で学校にはいないって聞いたぞ?ということは・・・・・
「学校側が知らないってことですか?それにそんな金額が動いているなら・・・・」
「ああ、おそらく生徒間の中で箝口令が敷かれているのだろう。教師にばれないレベルのな。生徒会も相当な根回しをしてやっと手に入れられた情報だ。しかし、これはプライベートな情報だ。だから生徒会の一部の生徒しか公開はできない。教師も知っているのはそいつのいるクラスの教師のみだろう」
一体どんな方法でそこまで稼いだんだ?しかも教師にもばれないほどの絶対的な箝口令を敷けるなんて、相当なカリスマ性だな。頭脳は下手をすれば坂柳以上と考えたほうがいいな。
「俺には荷が重いと思うんですけど。何で新参者の俺に?」
正直、もっとベテランで信頼の置ける人物の方が良いんじゃないか?俺より能力が高い奴は生徒会には沢山いる筈だ。
「だからこそだ。お前は生徒会に入って日が浅い、逆に言い換えればそこまで情報が得られていない筈だ。警戒は段違いに低いと俺は考えている」
成る程な・・・・それは一理あるな。でも情報の全くない新人だからこそ警戒される可能性があるんだが。断りたいが、強制なんだろうなぁ。やだなぁ、憂鬱だなぁ。俺は座右の銘『押してダメなら諦めろ』に従うように溜め息を吐いて了承する。
「はぁ・・・・とりあえず了解しました」
俺が了承すると陽乃さんが意外な物を見るような目で見て言った。
「およ?意外だね。てっきり断るのかと思ったよ。比企谷君のことだから」
「断ってもどうせまた頼みにくるんでしょう?なら、抵抗するだけ無駄ですよ」
「あはは、比企谷君らしいね。その潔いところ、お姉さんは好きだよ?」
やめて欲しい。簡単に好きだって言うのは、いくらエリートボッチの俺でもドキっとするから!話がまとまったところを見計らって堀北会長が言う。
「・・・・では頼む、比企谷」
「・・・・・うっす。では失礼しました」
そうして俺は生徒会室を出て、寮への帰り道に歩みを進める。
「堀北君、本当にあれで良かったの?比企谷君のことを侮ってる訳じゃないけど流石にあの子を相手させるのは早いと思うんだけど」
陽乃は若干堀北を諌める様に言う。しかし、堀北は表情を一切変えずに言い返した。
「どの道遅かれ早かれぶつかることになる。それに南雲の計画の思う通りにさせれば少なくとも1年からは大量の退学者がでる。それは俺がこの学校にいる間は避けたい」
堀北の言葉を聞いて陽乃はニヤリと揶揄うような表情になり、言った。
「妹ちゃんのためなんでしょ?携帯の待ち受け画面を妹ちゃんの写真に設定してるくらいだもんねえ」
その言葉に堀北はフッと笑い、言い返した。
「その言葉そっくりそのまま返す」
陽乃は苦笑すると会話はそこで途切れ、堀北は呟くように言った。
「彼奴は本当に手強いぞ。ーーーーーー白鷲千聖は」
昇降口に向かって歩いていると、まだ校内に生徒が残っていたようで前から生徒が歩いてきた。しかし俺が気にすることではないためすれ違おうとしたとき、その生徒に呼び止められる。
「ちょっといいかしら?そこの眼が独特でアホ毛が目立つ人」
俺ではないかもしれないと思ったので無視しよう・・・・ん?『眼が独特でアホ毛が目立つ人』って、まさか・・・・いやいやいや、他にもそんな人がいるかもしれないし、やっぱり素通りで行こう。そして俺は反応を返さず通り過ぎようとしたとき、肩を叩かれた。
「流石に無視はないんじゃないかしら?それとも聞こえなかった?」
「・・・・・自分のことを呼ばれているとは思わなかったんですよ」
そして相手の姿を見据える。身長は俺とそこまで変わらない少し長身の女子だった。見た目は白に近い金髪でセミロングより少し長め
で肌は雪のように白い。瞳は宝石のルビーのような紅色で顔立ちは恐ろしい程に端正でスタイルも出るところは出て、引っ込んでいるところは引っ込んでいるというまさに男の理想の体型だった。思わず息を止めてしまう程、見惚れてしまった。
そんな俺の様子を訝しげに見ながら聞いてきた。
「・・・どうしたのかしら?」
「・・・・いえ、何でもないですよ。で、何の用ですか?」
何とか誤魔化して用件を聞く。すると相手の纏う雰囲気が変わり、まるで心臓を鷲掴みにされたような感覚に陥る。そして妖艶な微笑みを浮かべて言った。
「貴方が最近、南雲君の周りをコソコソ嗅ぎまわってる生徒会の子の比企谷八幡君かしら?」
ッ!?何でそれを・・・・いや、動揺するな。カマをかけているかもしれない。可能性は低いが・・・・。何とか平静を装って言った。
「いや、違いますけど・・・俺は
咄嗟に偽名を使ったが・・・。聞いた相手は一瞬だけ目を細めたが、すぐ笑顔に戻って、そう。と言った。ここで気付いたが、この人陽乃さん以上の強化外骨格持ちじゃないですかやだー!俺が内心絶望していると、その人は言った。
「君が名乗ったからこっちも名乗りましょうか。私の名前は白鷲千聖よ。よろしくね?
よろしくしたくないなぁ・・・・そんな憂鬱感など出せるわけもなく、はい。と返事する俺氏。早くこの場から立ち去りたいので早々に会話を切り上げ、では失礼します。と言って立ち去ろうと歩き出したその時、白鷲さんが耳元で囁いた。近い近い良い匂い!!
「ーーーーーー堀北先輩に言っておいてちょうだい。私は南雲君と組むつもりはないって」
!!・・・・堀北生徒会長から名前を聞くのを忘れていたが、まさかこの人が・・・・・白鷲さんは耳から顔を離して俺から離れていく。俺は言われたその言葉に立ち止まっていたとき、白鷲さんは踵を返してこっちに戻ってきた。
「忘れてたわ。携帯貸してちょうだい、メールアドレスを交換しましょう」
有無を言わせない様子で言われたので思わず貸してしまった。そして一瞬で登録されて返された。アドレス帳に『白鷲千聖』の名前が増えていた。そしてまた耳元で囁かれた。
「今度、時間があるときお茶しましょう。貴方と話してみたいわ。ーーーーー後、偽名を使うならもうちょっと考えた方が良いわよ。
そして頰に柔らかいものが当てられ、リップ音が響いた。そして白鷲さんが微笑んで去って行くのを俺は茫然と見送るしかなかった。空はもう既に茜色に染まりかかっていて俺は独りごちた。
「俺の周りの人、強化外骨格の人多くないか・・・・?」
その言葉はカラスの鳴き声にかき消されたのであった。