やはり俺の実力至上の青春ラブコメはまちがっていない。   作:ゆっくりblue1

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第17話です。今回はヒロインが増える・・・・かもしれません。今回もお楽しみ頂けたら幸いです。


小屋の中、2人きりの状況で・・・

・・・・ん、何だ?身体が動いてる。意識がはっきりしてきたので、俺は身体が動いてる原因を知る為に閉じている瞼をゆっくりと開けた。目の前が霞んでいて良く分からないが人だろうという予測はついた。そして俺の前に映っている人物が気付いたように話しかけてきた。

 

 

「起きた・・・?」

 

 

その声を聞いてもまだ誰なのか判断がつかなかったが、此処でようやく霞んでいた光景が徐々に鮮明になり始めた。そしてその人物の正体が分かった為、俺は呟くように言った。

 

 

「神室か・・・・?」

 

 

「そうだよ。まだ、あんまり動かない方が良いよ?頭の手当て今済んだばっかりだから」

 

 

頭の手当て・・・?・・・・!そうだった。確かひよりに呼び出されて探したけどいなかったから、違う所を探そうとした時に後ろから葉山に殴られて気絶したんだったな。俺が確認する為に頭を触ろうとした時その途中で柔らかい物に触れた。その時、神室が擽ったそうな声を挙げる。

 

 

「んっ・・・ちょっと、擽ったいからあんまり動かないでよ」

 

 

此処で俺の身体が今、どういう状況に置かれているのか理解した。この後頭部に当たる柔らかい感触に神室の顔が目の前に映っているってことは・・・・置かれている状況を完全に理解した俺は慌てて身体を起こした。そして神室と少し距離をとろうとした時、頭に痛みが走った。

 

 

「痛ッ・・・」

 

 

「はぁー・・・だからあんまり動かない方が良いって言ったのに。ほら、もうちょっと膝を貸してあげるからちゃっちゃと横になりなさい」

 

 

そうして起き上がった俺の身体を引っ張って再び横にして、頭をゆっくりと膝に乗せる。俺は渋々受け入れて神室に言った。

 

 

「さっきの口振りだと神室が手当てしてくれたんだな。ありがとな」

 

 

俺が礼を言うと神室は少し照れ臭くなったのかそっぽを向いてぶっきらぼうに言った。

 

 

「・・・別に、倒れてるのをそのまま放っておくのはどうかと思っただけ。・・・・で、葉山の事はどうするの?」

 

 

「・・・見てたのか」

 

 

「殴る直前からだけどね」

 

 

そして神室が目撃する前まで何をしていたのか話しを聞いた。どうやら俺が通っていた森の少し先でAクラスの拠点があったらしく、神室はその時は非番だったようで散歩していた時に俺がひよりを探しに歩いている所を見たらしい。そして俺が葉山に殴られた所を目撃。そして俺は神室から話しを聞いてる途中で気付いたのだが、今の俺は小屋にいる。葉山が立ち去った後に気絶している俺にその場で所持していたptで購入した応急手当ての道具を使って手当てして、近くにあったこの小屋まで俺を何とか運んで俺が目を覚ますのを待っていたと言う。

 

 

「そうか・・・済まんな。もしもの時の応急手当ての道具を使わせちまって」

 

 

「別に良いよ。・・・どうせ使う様な状況なんてないだろうし。私は坂柳派だからptをなるべく消費させろって命令を受けてたからね。まあ、契約があるから大したこと出来ないけどね」

 

 

「契約・・・?」

 

 

「あんたは坂柳から依頼を受けてたから話しておくよ」

 

 

神室が言う契約はこんな内容だった。どうやら葛城と龍園が契約を結んだらしく、AクラスにCクラスの半分のptを使って、必要な物資を送るのと他のリーダーを探し当て、Aクラスに伝える見返りとしてAクラスの生徒は坂柳を除く全員、龍園に卒業するまで1万5千pptを1カ月に1回送るというものだった。俺は思わず溜め息を吐きたくなった。葛城は馬鹿だった。龍園がそんな馬鹿正直にクライアントの頼みを聞くような奴ではないと分かっている筈だ。坂柳派が優勢なのをどうにかしようと慌てて手柄を作ろうとした感じか。

 

 

そして、神室は話題を切り替えて俺に聞いてきた。

 

 

「そう言えば、比企谷。Aクラスのリーダーは分かった?」

 

 

「ああ、思った以上に簡単にな。戸塚弥彦だろ?」

 

 

俺がそう言うと神室は少しだけ目を見開いて、驚きを顕にした後に関心した様子で言った。

 

 

「正解・・・思った以上に遥かに早かったね。あんたが優秀なのか、戸塚がズボラなのか・・・まぁ、両方か」

 

 

「もっとダメージを与える為に龍園にも教えてやった。俺のクラスやDクラスの奴にも教える予定だ」

 

 

すると神室は俺に引いた様子で言った。止めて!引かないで!地味に俺ショックだから!!

 

 

「あんた、鬼だね。これでAクラスは-150ptで、Cクラスのptも底をついてるからこれだけでも120ptになる」

 

 

「で、葛城はリーダーを当てようとしてんのか?」

 

 

俺が聞くと、神室はどうだろうね・・・と呟いた後にこう言った。

 

 

「あんたのクラスとDクラスは分からないけど、Cクラスは狙ってると思う。契約の内容はAとCも互いにリーダーを当てに行ってはいけないとは書いてなかったから」

 

 

あー、じゃあ葛城は終わったかもしれんなこれは。

 

 

「じゃあ、-200ptになるかもな」

 

 

「?どういうこと、それ」

 

 

俺はこの試験の追加ルールに抜け道が存在すると分かったので、近くに人の気配はしないが、一応小声で話すことにした。

 

 

「この試験の追加ルールでリーダーを変えることは正当な理由が無い限り無理って言ってただろう?実は抜け道があるんだよ」

 

 

俺が言うと神室は驚いて、本当?と真偽を確認するように聞いたので俺は頷いて続ける。

 

 

「ああ、龍園が気付いてるかはわからんが、リーダーの奴が体調不良になっていなくなったら代わりの違う奴がリーダーになる。多分、仮病でも通じる。龍園がこの抜け道に気付く可能性は極めて高い。彼奴のクラスの連中は遊びまくった後に仮病で、船に戻ろうとしてたからな。聞いてみたらビンゴだった」

 

 

しかし、龍園と恐らくだが他の何人かは島に残る筈だ。ちらっと見たがビーチチェアは1個だけだった。そこに龍園が座ってただろう。その横のテーブルにトランシーバーがあったからな。悪ふざけでトランシーバーを購入する訳が無いし、龍園が残ることはもう確定だ。そして、龍園のやりそうな事は思い付いてる。まぁ、まだ行動に移してないから確証は無い。

 

 

「彼奴の本命は追加ルールだからptが0になっても気にしてない。だからリーダーのキーカードをワザと見せて信用させた後にリーダーを変える筈だ」

 

 

「ってことは十中八九、葛城は騙されてるわね。龍園がキーカードを見せてたし・・・」

 

 

あの真面目な奴がこんな方法を思い付く可能性は低い。これで葛城派の勢力は弱まるだろう。

 

 

「これでほぼ詰める手段は揃った。後は6日待つだけだ」

 

 

俺がそう言うと神室は俺を眩しいものでも見るかのように目を細めて聞いてきた。

 

 

「・・・ねえ、あんたは前に坂柳に世話になったって言ってたから依頼を受けてるのは知ってる。それでも普通はそこまでしないと思うんだけど、何で?」

 

 

そう聞いてくる神室に俺は過去の事を話すべきか考える。・・・・まぁ、此奴が手当てしてくれなかったら死んでたかもしれんし、答えるか。頭の痛みが引いたので身体を起こして、神室と向かいあう。

 

 

「頭、もう平気なの?」

 

 

「あぁ、平気だ。ありがとう・・・・・で、何でか、だったな。答えても良いが気持ちの良い話じゃないぞ。それでも聞くか?」

 

 

「・・・うん。あの坂柳と仲が良さそうなのも気になるし。私自身も興味ない訳ではないから」

 

 

そうして、俺は自分の過去を話す。葉山の関係性についても、そして嫌われて、誰も俺のことを話しすら聞かずに、受け入れてくれなかった中で有栖や帆波にひよりはちゃんと話しを聞いた上で、間違いじゃない。と受け入れてもらったことも。俺の話を静かに聞いていた神室が話を終えた後に聞いてきた。

 

 

「あんたは何でそこまで自分を押し殺して依頼を遂行出来るの?・・・別に由比ヶ浜や雪ノ下になんて言われても断れば良かったと思うんだけど、そんな正反対の依頼なんて。私ならそうするよ」

 

 

・・・・確かにそうだ。でも、あの時は守りたかったんだと思う。理屈じみた自分らしくない行動だったとしても、当時あの空間だけが俺が俺でいられた、受け入れてくれた。そんな空間を崩したくなかった。あの2人といる空間が。・・・・まぁ、俺の勘違いだったがな。元々の罵倒の量も異常だったし。今では何で怒らなかったのが自分でも不思議なくらいだ。

 

 

「そうだな。俺も少し甘かったのかもな」

 

 

「・・・それと、少し一之瀬と坂柳と椎名が羨ましいとも思った」

 

 

そう、神室の表情は少し寂しげで、瞳は儚さを帯びていた。そして続けて言った。

 

 

「私を受け入れてくれる友達はいなかったから。私はあんたのように優しい訳でも人の事に関心がある訳でもないから友達が特段欲しいと思うこともなかった。しかも、万引きしてたからどっちにしろ受け入れてくれる友達がいるわけないだろうし・・・・・でも、あんたが坂柳に出したあの条件と橋本からレストランの話しを聞いて何だか羨ましいと思ってた」

 

 

俺が優しいかどうかと橋本のことは置いておいて、神室は誰かに必要とされたことや大切に思われたことがないのかもしれない。その気持ちを万引きで満たしていたとすれば納得出来る。だから俺は言った。

 

 

「神室は充分優しいと俺は思うぞ?」

 

 

「・・・何でそう思うの?」

 

 

「だって俺が葉山に殴られて気絶してた時に無視せずに手当てして、俺が起きるのを待っていてくれただろ?普通は無視するか、手当てして放置でも構わないのに」

 

 

その言葉を聞いて神室はぶっきらぼうに顔を背けて言った。顔は少し照れているのか赤い。

 

 

「・・・見捨てたら、坂柳に何か言われると思ったからやっただけ」

 

 

「そうか・・・まぁ、有栖もお前の事を信頼してると思うぞ?それに、側に置いているのは万引きの監視もあるだろうが、お前と喋ってる時の彼奴は楽しそうだからな」

 

 

そうでなかったら側に置いたりはしないだろう。

 

 

「・・・そ、別にどっちでもいいけどね」

 

 

そう言いながらも顔は嬉しそうだぞ、ツンデレかな?神室さん。若干ゆる百合の空気がするんだが。話に区切りがついたので、そこで俺は今、何時なのか確認しようとする。だが、時計は壊されていた。葉山の奴・・・・他に盗られた物がないかの確認としてポケットに手を突っ込むが地図を書き写してあったメモ用紙もない。

 

 

そして神室が再び話しを戻して聞いてきた。

 

 

「話しが逸れたね。・・・・それで葉山の事はどうするの?」

 

 

俺はその言葉にしばらく悩む。そして長考の末に出した結論を口にする。

 

 

「・・・・・・・・試験結果次第だが、俺は葉山を訴えないつもりだ」

 

 

俺の出した答えに神室は不満そうに目を細めて俺を睨むように聞いた。

 

 

「どうして・・・別に証言しても良いんだけど?」

 

 

「・・・ぶっちゃけ今、龍園と対立したくないんだよ。それに訴えたら葉山という足手まといを消す事になる。訴えるならもう少し後だ」

 

 

今回のこの試験、龍園が取っている作戦は成功しないと俺は踏んでいる。成功したのであれば訴えるつもりだ。レストランの証拠もあるしな。

 

 

「・・・まぁ、万が一Cクラスが1位になった時に頼むわ」

 

 

「・・・分かった」

 

 

俺の狙いが分かったのか、渋々だが納得してくれた神室。そして俺は神室に聞きたいことがあったので聞く。

 

 

「神室、今何時だ?」

 

 

「2時30分だけど・・・・」

 

 

まだ割と時間に余裕があるな。地図は持ってないし、とりあえず来た道を何とか思い出して進むか。この島は整備されているから、絶対に遭難しないようになっている。

 

 

「そうか・・・じゃあ帰れるな」

 

 

「もう大丈夫なの?」

 

 

少し心配そうに聞いてくるので、安心させるように言う。

 

 

「ああ、大丈夫だ。心配してくれてありがとな」

 

 

「・・・ッ、急に何?」

 

 

神室は驚いた様子で聞いてくる。いつの間にか俺のお兄ちゃんオートスキルが発動したようで、俺の手が神室の頭を撫でるという凶行に走っていた。俺も気付いたので慌てて手を引っ込める。

 

 

「あっ・・・」

 

 

何故か神室が少し寂しげな声を出した。やめて!そんな残念そうな顔しないで!!勘違いして告白して振られちゃうからっ!!

 

 

「済まんな。妹を安心させる為にやってた癖が出ちまった」

 

 

すると神室は意外そうな顔を向けて言った。

 

 

「へぇ・・・あんたに妹がいるんだ。意外だよ」

 

 

「意外って何だよ、意外って。目に入れても痛くないくらい可愛いんだからな。俺と違って目が腐ってないし、コミュ力抜群の天使だ」

 

 

俺の熱いトークに神室は少し引いた様子で言った。

 

 

「・・・シスコン」

 

 

「違う、俺はシスコンじゃない。俺はただ妹を愛してるだけだ」

 

 

「それをシスコンって言うんだけど・・・・」

 

 

俺の様子に呆れた表情を浮かべる神室。別に千葉県民の兄弟ならこれくらい普通だと思うんだが。流石に兄弟エンドはないが。

 

 

「・・・・羨ましい」

 

 

「ん?何か言ったか?」

 

 

神室が何か言ったのは分かったが聞こえなかったので聞いてみる。しかし何故か睨まれながら言われた。

 

 

「・・・何でもない!・・・バカ」

 

 

えー、何で。・・・とりあえずそろそろ戻ろう。そうして俺は立ち上がって小屋を出ようとする。神室もそれに続く。そして扉を開け、外に出る。

 

 

「・・・色々と世話になった。今度、何か礼をするわ」

 

 

「・・・・その礼の内容って私が決めて良い?」

 

 

そう聞いてくるので頷く。しかし余り無茶なお願いを言われても困るので、断りを入れておく。

 

 

「出来るだけ要望には答えるつもりだが、あんまり無茶なお願いはやめてくれよ?」

 

 

「・・・大したことじゃないから安心して」

 

 

「なら良いんだが・・・じゃあな、神室」

 

 

別れの言葉を言って顔を前に向けてBクラスの拠点へと足を進める。

 

 

「うん・・・じゃあね、()()

 

 

俺は名前で呼ばれた事に驚いて動かしていた足を止めて、神室の方に振り向いたが神室はもう遠ざかっていた。俺は溜息をついて苦笑する。

 

 

「俺ってリア充になったのかねぇ・・・・」

 

 

そう言って俺は再び前を向いて止めていた足を進めるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『神室は充分優しいと俺は思うぞ?』

 

 

そんなことは言われた事はなかった。私に近づいてくる人は私のことを無愛想、冷たいと言うのがほとんどだったから。

 

 

私は拠点に戻りながら考える。今、私が抱いている感情は何なのか。こんな感覚、一度も感じた事はなかったが不快とは思わない。むしろ暖かくて心地よい。頭の撫でられた感触を思い出す。男の手なのでゴツゴツしていたが、優しい手つきだった。撫で方なんて初めて撫でられたので比較は出来ないが、上手いと思う。

 

 

「これじゃあまるで・・・・!」

 

 

いや、幾ら何でも早計だろう。この気持ちを断定するのは。そして私はAクラスの拠点に戻ると私を探していたのか橋本がこっちに来た。

 

 

「おーい、神室ー。どこ、言ってた・・・ん?んん?」

 

 

「・・・・何?」

 

 

橋本の様子がおかしかったので聞いてみる。すると橋本は怪訝そうに言った。

 

 

「いや、お前のそんな表情は今まで見た事なかったからな。だって今のお前ーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー凄い幸せそうな乙女の顔だぜ?」

 

 

そう言われ、思わず橋本を叩いてしまったのは揶揄った橋本の所為だろう。

 

 




タイトルでちょっと意味深なことを考えた人はーーーーーーー












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