やはり俺の実力至上の青春ラブコメはまちがっていない。   作:ゆっくりblue1

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第20話です。今回は少し展開が改変されている下着泥の事件です。今回もお楽しみ頂けたら幸いです。


緊急事態の要請

あれから2日経った。他のクラスの拠点に行くこともなく、Cクラスを追放された金田も特に怪しい動きはない。が、金田の持ち物を神崎から聞いたところ、俺の予想通りに小型カメラがあったらしい。今は朝食の準備に取り掛かっている。

 

 

金田が動くとしたら明日か明後日だろう。そう考えながら俺は朝食を取っている。金田を見るとクラスメイトの人の良さもあって上手く馴染んでいる。まぁ、龍園の話を聞いて上手く同情を誘っているので疑う奴はそこまでいない。クラスを騙せていると考えているだろうが甘い。金田がいなくなったとき、リーダーを変更すればいいのだからな。

 

 

そして各々で朝食をとり終わり、点呼も無事に済んだところで事は起こった。他のクラスの奴が何やら急いだ様子でこのクラスのスポット拠点にやって来たからだ。クラスメイトはその生徒に注目する。帆波が用件を聞くために近寄る。

 

 

名も知らない生徒は女子のようで、とても焦った様子で近づいてきた帆波に此処に来た理由を話し始めた。

 

 

「あ、あのっ!誰でも良いので私達のクラスに来てくれませんか?大変な事があって・・・・」

 

 

「少し落ち着いて、貴女は確かDクラスの王さんだったよね?一体そんな慌てて何があったの?」

 

 

帆波はDクラスの王を落ち着かせて事情を聞き出す。王も帆波のおかげで少し落ち着けたのか一息置いて、ゆっくり事情を説明し始めた。俺も少し気になるので聞き耳を立てる。

 

 

王が言うにはDクラスで女子の下着が盗まれていたらしい。それも1人だけではなく、複数人の下着が。そして女子生徒達は男子達を疑うのだが、最初は否定していた男子の鞄から下着が出てきたために罵倒を女子達がぶつけ始めた。しかも、運の悪いことにクラスで強い影響力を持つ女子生徒の下着だったため、男子と女子の全面戦争の様な状態になってしまったらしい。

 

 

クラスの纏め役である平田が抑え込んでいたが、それもすぐに抑えられなくなる程状況が悪化してしまい、女子が男子を罵倒し続けていて、男子は男子で責任のなすりつけ合いになっている。Dクラスで状況を冷静に把握して纏められる生徒は片手で数えるほどしかいない上にクラスの暴走を止めるので手一杯らしく、堪らず違うクラスの助けを求めてBクラスに藁をもすがる思いでやってきたらしい。

 

 

しかし、俺達が介入したところで下着を盗んだ犯人が出てくるはずがない。俺は関わりたくないので端の方に歩いて行くが、神様は俺の事が嫌いなのか、王が俺の姿を捉える。そして頼み込んで来た。

 

 

「・・・・ぁあの、昨日、一之瀬さんとクラスに来ていた人ですよね・・・・?出来たら一之瀬さんと一緒に来てもらっても、い、良いですか?」

 

 

王の言葉にクラスメイトの視線が俺に集まってしまった。俺はその様子にげんなりしながら王に言った。

 

 

「・・・はぁー・・・・俺達が行っても何も根本的な解決にはならないだろ。寧ろクラスの違う部外者が口出ししてしまったら余計に悪化するぞ」

 

 

修学旅行の様な依頼と同じように、デリケートな問題で、しかも他人が直接的であれ間接的であれ、関わる問題は第3者が介入すれば悪化する可能性の方が遥かに高い。実際に修学旅行で最悪な状態に陥ったので間違いない。王も俺の言葉を理解したのか落ち込んだ様子を見せる。

 

 

「そ、そうですよね・・・・」

 

 

「八幡君・・・」

 

 

助けになるのなら行きたいが、俺の言ったリスクも分かっているからか、帆波は俺の名前を呼んだだけで何も言わない。勢いで決めないのはとてもありがたい。王は解決しなくても良いので、クラスを落ち着かせるのを手伝って欲しい。と頭を下げてくる。

 

 

「八幡君。犯人を捜すんじゃなくて、その場を落ち着かせる事は出来ると思うの。だからお願い、八幡君」

 

 

帆波も王の意見に納得がいったのか、俺に頼んでくる。俺は少し考える。・・・・まぁ、犯人捜しじゃないなら大丈夫か。それに、雪ノ下の顔もちらつく。俺は息を吐いて了承した。

 

 

「・・・・分かったよ。3日前の礼として状況を鎮静化させるだけなら手伝う。ただ、犯人捜しの手伝いはしないぞ。それでいいか?」

 

 

「あ、ありがとうございます!」

 

 

そう頭を下げてお礼言ってくる王。神崎に指示を任せ、そうして俺達はまたDクラスに訪れることになった。俺はDクラスへ向かいながら呟くように言った。

 

 

「それにしても、この無人島生活をしてる中で問題を増やすような馬鹿はいるか?」

 

 

「下着を盗んだ誰かが下着の持ち主を恨んでるとか?」

 

 

「そうだとしても、クラスの協力が必要不可欠なこの試験で盗まないだろ。cptがかかってるんだし、幾ら女子と寝食を共にするとはいえ」

 

 

俺の言葉に帆波と王が、確かに・・・。と納得がいったように呟く。ていうか俺は予想ついてるんだがな。絶対、伊吹の仕業だろう。それが1番可能性が高い。クラスを混乱させておいてリーダー情報の警戒網が緩んだ隙に証拠を掴むのが目的だろう。俺は思いっ切り溜め息を吐く。何で毎回面倒ごとに巻き込まれるんだよ・・・・

 

 

そしてDクラスのスポット拠点に着く。今回は断りをいれている暇もないので、そのまま入る。怒号が混じった声が聞こえてくる為、まだ揉め続けているのだろう。女子の罵倒が飛ぶ。

 

 

「良い加減に白状しなさいよ!!男子の誰かが盗んだんでしょッ!!」

 

 

「そうだしっ!さっさと認めてよ!!」

 

 

「だから、俺達男子は盗んでねえって!」

 

 

男子は言い返そうとするが、男子の鞄から下着が出てきたので言い返しても女子は聞く耳を持たない。予想以上にヤバい状況だな、これは。女子の怒りを鎮静化出来るか?取り敢えず、誰かから女子の誰の下着が盗まれているのか聞かないと策も思いつかないので、近くにいた綾小路から聞くことにした。あまり女子を刺激しない為に小声で。

 

 

「おい、綾小路」

 

 

「お前は確か・・・・比企谷だったか。どうして此処に?」

 

 

「お前らのクラスメイトからヘルプをもらったから、この状況を鎮静化しにきた。取り敢えず、女子の誰の下着が盗まれたか教えてくれ」

 

 

小声で頼むと綾小路は頷いて話し出す。それにしても綾小路の奴、こんな状況なのに無表情って、ある意味凄いな。普通は何らかの感情が見える筈だが。感情の起伏が小さいのか?

 

 

「平田の彼女の軽井沢とそのグループのメンバーの佐藤と松下、後は由比ヶ浜だな」

 

 

小さく指で指し示しながら名前を言う綾小路。指し示された奴は目元が赤いので、恐らく泣いたのだろう。1人は彼氏持ちで、彼氏持ちのグループのメンバーの2人、後はグループが関係ない由比ヶ浜か。俺は帆波に視線を送って頷くと、帆波は俺の首肯の意味を理解してくれたようで、手を叩いて大きめな音を出して全員の注目を集める。

 

 

「はい!皆、1回落ち着こうか。このまま冷静にならないままだったら何も解決にならないからね」

 

 

急に帆波が現れたことに驚くDクラス一同。混乱しているのか、声を荒げることなく聞いてきた。

 

 

「ちょっと、Bクラスの一之瀬さんがどうして今此処にいるの?」

 

 

「Dクラスの人が助っ人を求めてきたからだよ。それで、言い合いは一旦止めて状況の整理をしようか」

 

 

帆波の行動と言葉にある程度の怒りは削がれたのか、大半の生徒は落ち着きを取り戻す。しかし、下着を盗まれた女子達は怒りは収まっていないようで、急に割り込んだ帆波に吠えるように言った。

 

 

「状況の整理って、そんな事する必要はないと思うんだけど?明らかに男子しかやってないでしょ」

 

 

「私もそう思うんだけど」

 

 

「そうだよ!男子の誰かがやったに決まってるじゃん」

 

 

完全に男子の誰かが盗んだと思っているらしく、状況の整理より犯人を捜そうとするが、こんな状況で出てくる訳ねえだろ。帆波に代わって、俺が話し出す。

 

 

「割って入っていくようで悪いが、本当に男子だけが疑わしいのか?女子は男子の誰かが盗んだところをみたのか?」

 

 

俺が話すとやはりというか、由比ヶ浜が俺の言葉に憤慨した様子で反論した。

 

 

「何言ってんのさヒッキー!男子の他にやるような人なんている訳ないじゃん!それより何でヒッキーが此処にいるの!?」

 

 

俺は由比ヶ浜の言葉を無視して、俺が考えた理由について話し始める。もう一々反論するのもしんどいので無視することに決めた。どうせ、修学旅行の事を謝れ。って言ってくるだけだろうしな。

 

 

「下着を盗まれた奴の中には彼氏を持つ奴だっている。そして彼氏はこのクラスの人気者の平田だ。こんな事をすれば女子を全員敵に回して男子からの信頼もなくなると分かっているだろう。そんなリスクを負ってまで男子が下着を盗んだと思うか?」

 

 

俺の言葉にある程度納得がいったのか、女子は考え始める。しかし、納得のいっていない女子もいるようで直ぐに反論してくる。

 

 

「そんな事を考えずに盗んだんじゃないの?男子って直ぐにイヤらしい目で女子を見てくるし」

 

 

その言葉に大半の男子の顔に青筋が浮かび、再び女子と睨み合いになるが帆波と平田と冷静な生徒達が抑える。俺は内心溜め息を吐きながらこう言う。

 

 

「まぁ、その可能性も否定出来ないがな。でも男女の協力が必要不可欠なこの試験でわざわざ仲間割れを起こす男子はいるのか?しかもこの試験はcptを稼ぐチャンスがある試験だ。寝食を共にしているとはいえこの試験中に盗むのか?俺なら絶対にしないな。だってクラス全員から後ろ指を指されるから」

 

 

その言葉で俺に反論してきた女子は口を閉ざす。男子は俺の意見に、そうだそうだー!とか言って頷く。しかしそれを言ったチャラそうな男子2人は女子に睨まれ、直ぐに萎縮して黙る。あんまり女子を煽ることをすんなよ・・・・折角、落ち着く寸前なのに再熱しちゃうだろ。

 

 

まぁ、Dクラスの男子の誰かが他のクラスと契約して、クラスをかき乱す代わりに報酬を貰っているなら話しは別だが。そんな男子はいなさそうだしな。それを言えば女子の線も挙がってくることになる。その考えを松下だったか?が言った。

 

 

「Dクラスの男子の誰かが他のクラスと繋がっていることもあると思うんだけど・・・・」

 

 

「それを言えば女子だって可能だぞ?」

 

 

俺がすかさずそう答えを返すと、そうだね。と引き下がった。そして俺はこう続ける。

 

 

「下着を盗まれている女子の共通点もないからな。最初はグループのメンバーと思ったが、グループと関係ない奴だっている。見た目の特徴も別々だ。適当に盗んだなら話しは別だがな」

 

 

俺がそう言うと、女子も落ち着きを取り戻し始めた。しかし、まだ容疑は晴れ切れていないようで依然、男子を睨みつけている。まぁ、罵倒が消えただけマシだな。俺はその様子を見て言った。

 

 

「取り敢えず少しは落ち着いたようだし俺達は戻るが、後は自分達で解決してくれ」

 

 

俺は帆波に、帰るぞ。と視線を送る。帆波は頷くと最後にDクラスに言った。

 

 

「皆も落ち着いてくれたみたいだから私達は戻るけど、くれぐれも言い合いをしない事と女子も余り男子を疑いすぎて酷く言い過ぎない事、それだけはお互いに注意してね」

 

 

人気者の帆波の言う事はやはり影響が強いようで男子も女子も頷いた。平田や王、堀北や雪ノ下、男子の何人かが帆波と俺に礼を言うので、気にするな。と言ってDクラスのスポット拠点から出ようとしたその時。

 

 

「待ってよヒッキー!」

 

 

・・・はぁー、何で追いかけてくるんだよ。俺はそのまま無視を貫いて歩くが、肩を掴まれ引き止められる。俺は振り払おうと肩を動かすが、その前に由比ヶ浜が言った。

 

 

「あのさヒッキー、ヒッキーにも犯人を捜すの手伝って欲しいんだけど・・・」

 

 

「嫌だよ」

 

 

「何で!?ヒッキーならーーーー」

 

 

「・・・あのさ、お前のクラスで起こった事を俺に解決させようとするの、止めて欲しいんだが。お前そうやって直ぐに人に頼りすぎなんじゃねえの?」

 

 

しかも一方的に突き放した相手に頼むようなことじゃないだろ。俺は掴まれた肩を動かして由比ヶ浜の手を振り払う。そしてそのまま帆波と一緒に自分達の拠点に戻り始める。その背中に視線がずっと感じられたが、再び引き止められることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺達は拠点に戻る途中で帆波に礼を言った。最初に注意を逸らしていなければ、もっと時間がかかったはずだからな。

 

 

「Dクラスの注意を逸らしてくれて助かった。・・・・・ありがとな」

 

 

お礼を言い慣れていないせいか、照れ臭くて頬を掻きながら目を泳がせてしまう俺。そんな俺の様子に帆波は首を横に振ってこう答えた。

 

 

「ううん、八幡君が上手く話してくれたから皆も落ち着いたんだと思うよ。私はそこまで大したことはしてないよ」

 

 

その大したことない行動を俺は取れないんだがなぁ。しかし、このままでは帆波の性格的に押し問答になると思うのでこう言った。

 

 

「・・・・じゃあ、どっちも頑張ったということにしておくか」

 

 

実際に注目を浴びながら話すのを頑張ったからな。悪意の視線による注目以外は慣れてなかったし。俺がそう言うと帆波は嬉しそうに頷いた。その後も上機嫌な様子だったので、それを不思議に思った俺は聞いてみた。

 

 

「・・・・何で嬉しそうなんだ?」

 

 

「うん?・・・〜ん、八幡君が素直に自分を褒めてたからかな?八幡君、謙虚な部分があるから。八幡君の新しいところに気付けて嬉しいのもあるけどね」

 

 

・・・・此奴の恐ろしいところって有栖や陽乃さんと違って、ひよりみたいに恥ずかしい事を躊躇なく言えるところなんだよなぁ。そして告白したりなんかしたら振られちゃうんだろうなぁ・・・・悲しいことに。と、そんな事を思っていないと恥ずかし過ぎて反応もまともに取れない程に俺は帆波の言葉に顔が熱くなって動揺する。やだ、俺ってば単純過ぎ?・・・ふぅ〜、これで少しは落ち着いたな。そしてクールになった俺は平然と答える。

 

 

「しょ、しょうか・・・」

 

 

全然クールじゃなかったわ。噛み噛みだわ。思わず、恥ずかし過ぎて死にたくなっちゃったぜ。俺の様子に帆波はクスッと微笑んだ。黒歴史が増えちまったよ・・・・と内心悶えながら拠点に戻った。

 

 

拠点に帰ると神崎が慌てた様子でこっちに駆け寄ってきた。

 

 

「一之瀬、ウォーターシャワーが一台故障してしまった」

 

 

「ええっ!どうして故障したの?」

 

 

「分からない。食糧調達にいった男子が一回戻ってきてシャワーを使おうとしたら壊れていたらしいんだが・・・・」

 

 

神崎の言葉を聞いて俺は少し考えた後、聞いた。

 

 

「・・・・神崎、その前にシャワーを使っていた奴はいなかったか?」

 

 

「いや、今日はその食糧調達班の男子が最初に使っていた。その前にシャワーに入った人はいないし、昨日の1番最後は女子だった」

 

 

考え過ぎか・・・?もし壊されたなら昨日の夜中頃だろうな。女子が壊すとは考えずらい。俺は、そうか。と答えると話しを聞いていた帆波が言った。

 

 

「もう一台あるから、回しながら使う・・・・うーん、それだと時間かかっちゃうなぁ。・・・・・ptがまだ半分残ってるから購入するべきか」

 

 

「買っておいた方が良いんじゃねえか?後に不満が出る事になりかねないと思うが」

 

 

俺がそう口を挟むと、帆波は少しだけ悩んだ後に頷いて言った。

 

 

「・・・そうだね。皆の精神衛生面が不安だし、回しながら使うって言うのも余り現実的じゃないからね。購入しよっか」

 

 

そうして、替えのウォーターシャワーを購入してBクラスのptは160-15=145となった。シャワーの替えを直ぐに頼んだ事と帆波のケアによってBクラスは落ち着きを取り戻した。喧嘩も起きなかったのが不幸中の幸いだった。犯人は分からないままとなったが、疑心暗鬼になって団結しているBクラスをバラバラにするのは良くないと帆波は判断した。この試験中は特に。まあ、大体目星はついてるしな。

 

 

そして俺は落ち着きを取り戻したクラスを見つつ、ある人物の事を観察していた。此処からが本当の正念場だと、俺は予感するのだった。

 

 




後書きという名の作者の願望です。(無視して下さっても構いません)


最近物凄い速度で低評価をもらうので、出来れば高評価を押してもらえると嬉しいです。

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