やはり俺の実力至上の青春ラブコメはまちがっていない。   作:ゆっくりblue1

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更新遅れて申し訳ありませんでした。今回は閑話です。今回もお楽しみ頂けたら幸いです。


閑話 小さき頃の思い出 坂柳編②

これは或る日の夢である。少年は夢を見た。記憶を失ってから決して想い出されなかった出来事。幼い頃の記憶、当時の自分には心に留めておこうと思う程には大切だと思った回想。それが今、紐解かれる。

 

 

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小学生で友達100人出来るかな。と思った奴はどのくらいいるのだろうか。実際、作れる奴は本当に尊敬する。だが、現実は甘くない。俺は小学4年だが、現時点で友達は0だ。本当に最初の頃は友達作りに励んだ。元々俺は内向的な性格で、他人とも積極的には話さないのだ。それでも友達が欲しいからと勇気を振り絞って行動した。

 

 

しかし、内向的な性格が裏目に出てしまい、俺をいじると反応が面白いからと、悪ふざけで絡んでくる奴が続出した。そしてそれがどんどんエスカレートして行き、『いじり』ではなく『虐め』になっていった。その所為で自分の眼が濁ってしまった。それが気持ち悪いと言われ、更に虐めは酷くなった。

 

 

そこから他人というものを信用しなくなった。家族にも相談しようとしたが、妹に悪影響を及ぼしてしまうと思い、相談せずにいた。そしてそんな俺にとって嫌な毎日を過ごして小学4年に進級した時、俺は虐められないために全力で存在感を消していた。もし標的になったら、と思って万が一に備えて独学で武道を身に付けておいたが、素人に毛が生えた付け焼き刃程度なので何処まで通用するか分からない。なので武道だけでなく知識も身に付けておこうと毎日本を読んで、知識を溜め込んで、身体を鍛える毎日を過ごしていた。俺にとって平和な毎日にするために。

 

 

そして目立たない毎日を送っていると、ある少女にいたずらしている生徒達がいた。とは言ってもその少女の持ち物を本人がいない内に持ち去ったり、教科書に汚い落書きをしたりと、少女に直接嫌がらせをしていた訳ではない。時たまに給食を少女に配膳しなかったりもしていたが、少女は平然としていた。給食については俺がバレないように少女が席を立つ瞬間を見計らい、給食をこっそりと配膳している。俺のスキル『ステルスヒッキー』に掛かれば簡単だった。

 

 

幸い周りの奴には先生以外ーーー先生も怪しいがーーー俺の存在は見つかってないのだ。あれ?自分で言ってたら虚しくなって来たぞ?目から塩っぱい水が・・・・・

 

 

その虐められているであろう少女は虐めてくる連中に対して何もしようとしていなかった。少女は何かしらの持病を患っていて杖を付かなければ歩くことが出来ない程、身体が弱い為に抵抗出来ないのかと思っていた。しかし、少女を観察するに連れて、それは間違っていると思うようになっていった。

 

 

少女はこの小学校の生徒の中では随一の頭脳を持っていると噂される人物で、大人である先生も知識面では負けると言われている。テストも5分で全て解き、100点以外を1度も見たことないらしい。そんな少女が、虐められている中で何もしない筈は無かった。宝石のような綺麗な瞳の奥に寒気がする程の冷たさがあったからだ。何かを企むような冷笑を浮かべていたのが分かった。

 

 

少女ーーー坂柳有栖は、確実な報復を企んでいる。何を実行するかは知らないが少なくとも今虐めている連中は無事では済まなそうだ。

 

 

坂柳は虐めを受け続けた。しかし、毅然とした態度は変わらない。そしてそのまま冬休みが間近に迫ってきた頃、何時ものように目立たず過ごして放課後になった。帰りの準備を纏めていると尿意を感じたのでトイレに行く。そしてトイレを済まして教室へ戻っている途中、坂柳とその数メートル程離れた位置から尾行のようなことをしている男子生徒達がいた。て、何時も坂柳にちょっかい出してる奴等じゃねえか。

 

 

嫌な予感がしたのでバレないように気配を消して様子を窺う。すると案の定、坂柳が後ろから男子生徒に押されて転けてしまった。すると男子生徒達は慌てた様子で離れていく。俺は丁度曲がり角の死角となっている場所に隠れて、男子生徒達が去っていくのをやり過ごした。今まで坂柳に直接手を出す奴はいなかった。手を出してしまい、目立つ所に怪我を負わせてしまえば嫌でも教師は対応しなければならない。教師に調べられたら直ぐに犯人が特定される。それを危惧して虐めている連中は直接手を出さなかった。

 

 

しかし、半ば悪ふざけで遂に手を出してしまった。本当に胸糞悪い。俺は関係無いがこんな場面に出くわして、見捨てるクソ野郎になりたくなかったので倒れている坂柳に近寄って隣に一緒に倒れている杖を坂柳に掴ませて、坂柳を起こして立たせた。

 

 

「誰でしょうか?貴方は」

 

 

「たく、あいつらもやりすぎじゃねえのか・・・?」

 

 

「・・・・名前を聞いているのですが」

 

 

無視された事が気に障ったのか、こちらを鋭く睨みつけてくる坂柳。怖っ!女子小学生の出せる眼力じゃねえだろ。八幡ちびっちゃいそう・・・

 

 

「おぉぅ・・・・そんな睨み付けんなよ。・・・・比企谷八幡だ、気づいていないかもしれないが一応お前と同じクラスだ」

 

 

そうビビりながら自己紹介すると、坂柳はほんの僅かに目を見開いた。え、何その反応、そこまで存在感なかった?何それ悲しい。

 

 

「そうですか。ではこちらも、私は坂柳有栖といいます。以後お見知りおきを。失礼ですが影が薄いのですね」

 

 

やっぱり知られていなかった。もう俺って隠れんぼしたら一生見つかることなく終わるんじゃね?いや、そもそも隠れんぼに付き合ってくれる友達もいなかったわ・・・そんな心の中で大泣きしつつ、言った。

 

 

「本当に失礼だな・・・とりあえず一応、怪我してるかもしれんから保健室に行くぞ。歩けるか?」

 

 

歩けるか確認するが、足を見てみると転けてしまった事で痙攣してしまっている。俺は動けない事を察して坂柳に後ろを向いて屈んで言った。

 

 

「おぶるから乗れ。足が動かないんだろ?」

 

 

そう言うと坂柳はゆっくり俺の背におぶられる。その時、女の子特有の良い匂いと柔らかな白魚のような繊細な手が首に回される。何で女子ってこんなに良い匂いすんの?男子は大概、汗臭いのに。マジで不公平だ。俺は理性で慌てないように努めながら坂柳から杖を回収して、移動を開始しようとしたが、背負った時に思ったことを思わず聞いてしまった。

 

 

「滅茶苦茶軽いなお前・・・・・ちゃんと飯食ってんのか?」

 

 

「三食毎日食べてますよ」

 

 

そう返してきたが、それにしても軽過ぎる。給食を食べる様子は見ていないので分からないが少食なのかもな。

 

 

そして俺は怪我をしていないかを診る為に保健室に向かって歩いていく。なるべく坂柳に負担にならないように注意しながら。しかし、他人をおぶるなんて妹の小町以外で初めてだな。

 

 

そして保健室に着き、保健室のベッドに坂柳を降ろして怪我がないか診る。何処にも傷はない、痙攣も治ってるし大丈夫だな。俺はヤケに緊張していた肩の力を抜いて息を吐いた。そして、今までクラスでの此奴の立場を見て見ぬふりをしていた俺は申し訳なくなったので坂柳に頭を下げて言った。

 

 

「あー、今までお前のクラスでの立場を無視していて悪かったな」

 

 

「謝らなくてもいいですよ。特に私があなたに助けを求めたわけでもありませんし。それに助ける必要はないですよ?今までいじめてきた人たちの証拠は全部取ってありますから。後はタイミングを見計らってインターネットにたれ流せばいいだけなので」

 

 

うわぁ・・・思った以上にやる事がエゲツないな。もう虐めてきた連中、絶対に敵に回したらいけない奴を敵に回したな。思わず俺は顔を引攣らせながら言う。

 

 

「おぉう・・・・逞しすぎんだろ坂柳さん」

 

 

本当に逞しい奴だ。虐められていて味方もいないのに堂々として報復すると言う坂柳。俺も虐められてきたが真正面から立ち向かうことは出来なかった。しかし、その瞳は何処か寂しげにも見えた。

 

 

それでも此奴は強い。そして俺はいつの間にかそんな生き方、立ち振る舞いが出来る此奴にーーーー憧れたんだ。俺は心内で笑った後に坂柳に何時それを実行するか聞いた。

 

 

「なあ、いつそれを実行するんだ?」

 

 

「何のために聞くんですか?・・・・まあ、実行するなら今度の冬休みに入った後でしょうね。邪魔は入らないですから」

 

 

「いや、俺もいじめられる側の立場だったからどうやり返すのか気になっただけだ。んじゃまあ、怪我も特にないみたいだし、俺は帰るわ」

 

 

そして帰ろうとして、坂柳に引き止められて、送れ。と言われてしまった。そして渋々従った俺は坂柳と昇降口に向かって歩き始めた。その間ある程度会話をしつつ、昇降口に送って坂柳が正門に向かうその後ろから俺は言った。

 

 

「坂柳・・・明日からの学校、楽しめるといいな」

 

 

その言葉を聞いて坂柳は怪訝そうな表情で口を開きかけるが、俺は坂柳を追い越して正門を出た。

 

 

別に助けて欲しいと言われた訳ではない。憧れたからこそ、その生き方、立ち振る舞いでいて欲しい。そんな俺の理想を俺は押し付ける。だから坂柳の為じゃない、俺の為に坂柳を助ける。

 

 

Q、敵が多く味方がいない奴がいます。世界は残酷で助けてくれる人は誰1人としていない、そいつが今おかれている世界を壊すにはどうしたら良いでしょう。

 

 

A、そいつよりも目立つ共通の嫌われ者を作ること。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして俺はこの小学校で1番の嫌われ者になった。クラスの奴が俺の噂を広めたらしい。噂とは『比企谷八幡が、クラスの女子を泣かせた』と言う噂だ。それにより坂柳がされていた虐めは俺に移った。幸い妹は俺の学校にはいない為、妹が被害を被る事はない。

 

 

親父は一緒に同じ学校に居て、小町が親父以上に俺に懐くことを恐れたから俺の通う学校から少し離れた家に近い学校に通わせている。しかしそんなことをしても小町は俺に懐いちゃってるんだけどな。この前なんて親父が仕事から帰ってきた時に小町にハグしようとしたら小町が嫌がって、俺に泣きながら抱きついた事で親父がガチ泣きしたのは記憶に新しい。その後、母ちゃんに小町を泣かせた事で説教されていた。マジでドンマイ親父。しかし、腹いせに小遣いを減らしたのは許さん。まぁ、母ちゃんからはその分多めに貰ったので変わらなかったが。

 

 

俺は虐められていたが、冬休みに今まで虐められていた坂柳が録っていた全ての証拠をインターネットに拡散した事で虐めに関与した連中の全員が転校や引き篭もりになった。抵抗しようとした虐めに関与した連中の親は、坂柳の父親に直談判したが、坂柳の父親が国でもそれなりに有名な権力者なのを知ると顔を真っ青にしながら家族全員で引っ越したと坂柳が教えてくれた。ついでに俺に対しての虐めの証拠も坂柳は録って流していたので俺が虐められることもなくなった。噂も噓と言って広めてくれたので完全に疑いの目は晴れた。

 

 

そして虐めに対応しなかった担任や他の何人かの教師も懲戒免職で教師免許を剥奪されて、校長先生と教頭先生も半年の減給になった。しかし、校長先生と教頭先生は誠意を見せた対応をしたので良い人なのだろう。坂柳と坂柳の父親と俺の両親と俺に土下座して謝ってたし。

 

 

それから坂柳の父親に感謝されて、困った時は是非とも力になる。と言ってメールアドレスを交換した。ついでに坂柳ともーーー強制的にーーー交換した。そしてその日は俺の両親が珍しく高級な店で俺も含めて外食させてくれた。

 

 

そして坂柳と一緒に行動する事が増えて、5年生になった年の夏休み。俺は坂柳が身体の調子を診る為に夏休みに入って定期的に2週間程入院している病院に面会しに行った。面倒臭いと最初は渋ったが、坂柳の泣き真似に騙されて行くことを了承してしまった。マジで坂柳の泣き真似上手い、子役になれんじゃねえの?

 

 

病院に面会しに来た事を受け付けの人に告げ、坂柳のいる病室に行く。病室を知っている理由は此処の訪問が実は2回目だからだ。扉越しにコンコンコンとノックする。

 

 

「どうぞ」

 

 

短い了承の返事が聞こえたので病室に入ると、透明なカーテンが風になびいて揺れ、窓から見える澄み渡る青空をベッドに座って眺める坂柳がいた。

 

 

風によって坂柳の銀髪がふわりと揺れ、シャンプーの香りが入り口に立っている俺にも匂ってきた。思わずその幻想的な光景に見惚れる。坂柳はこちらを向いて、俺を見ると微笑んで挨拶した。

 

 

「こんにちは、比企谷君。約束通りに来て頂いてありがとうございます」

 

 

「おう。と言ってもお前が毎日来いって強制的にさせられたんだけどな」

 

 

「酷いです比企谷君。女の子にそんなことを言ったら嫌われますよ?」

 

 

「泣き真似で俺の事を騙してきた坂柳さんの方が酷いんじゃないんですかねぇ・・・・」

 

 

そんな会話をしつつ、俺は坂柳のベッドの近くに椅子を置いて座ってコンビニで買ったお菓子を袋から出して言った。

 

 

「ポッキーを持って来たけど、食べるか?」

 

 

「そうですね、頂きます」

 

 

俺はお菓子のカバーを開けて、坂柳に渡そうとする。そこで坂柳が言った。それはそれは何かを企んでいる良い笑みを浮かべて。嫌な予感が・・・・

 

 

「じゃあ比企谷君が食べさせて下さい」

 

 

此奴は・・・・今年、また坂柳と同じクラスになって、更に隣の席になったのだ。しかも何度か席替えしても坂柳が隣の席ーーー絶対何か根回しされてるーーーになるのだ。そして給食の時には何を思いやがったのか知らないが、食べさせ合いをしようとしてくる。虐められていたが、此奴は容姿が抜群なので少なからずファンみたいな奴等もいる。食べさせ合いの時にそいつ等は睨んでくるが、断って坂柳に噓泣きをされたらもっと睨まれる。流石に虐めの件もあるので直接絡んではこないが、流石に居心地が悪い。そして坂柳も当然その事を分かっていてやるので尚、タチが悪い。

 

 

「いやだよ。自分で食えるだろうが、出来ることは自分でやりなさい」

 

 

「良いではないですか。減るもんじゃないでしょう?」

 

 

「現在進行形で俺の精神はすり減っていってるんだけど・・・・」

 

 

マジで揶揄い倒してくるの好きすぎんだろ。坂柳程、ドSな奴はいないんじゃねえの。

 

 

「比企谷君、何か失礼な事を考えましたか?」

 

 

「い、いや?特に考えてないぞ?」

 

 

坂柳の鋭い視線から逃げる様に視線を逸らして言う。怖い、怖いよ。何で俺の考えてることが分かんの?エスパー?家族でさえ俺の考えてること分からないって言ってんのに。あれ?俺って身内に理解者がいないって事?何それ泣ける。

 

 

「・・・・しょうがないですね。じゃあ私が比企谷君に食べさせてあげましょう」

 

 

俺が脳内でふざけた事をやっていると、坂柳はポッキーを1本取って俺の口に向ける。俺は首を振って逃げる為に首を横に向けようとするが、その前にポッキーが入れ込まれる。本来のほんのり甘いチョコレートの味と香りが良く分からない。それ以上に坂柳に受けた行動で顔が熱い。

 

 

「お、おおおまっ、何やってくれてんの!?」

 

 

「ふふっ、顔が真っ赤ですよ?比企谷君。それよりもポッキーまだ途中ですから食べて下さい」

 

 

そんなやり取りをして、ポッキーを何とかーーー多大なる羞恥に精神を蝕まれることになったがーーー食べ終え、俺は坂柳の話し相手となっていた。何か病院は同世代が少ない為に会話が弾みにくいらしい。その上、坂柳が話す相手で1番なのは俺と言われてしまったので渋々了承した。

 

 

かと言ってもボッチの俺と元ボッチの坂柳、話せる話題が殆どない。唯一の共通の話題である読書について話す。坂柳は大人顔負けの知識と推察力と洞察力があるので俺が知らない本を教えてくれた。俺は逆に坂柳が手を付けなさそうな漫画やライトノベルを教える。すると坂柳は興味深そうに話しを聞いていた。

 

 

話しをしていると、ふと、坂柳が聞いてくる。

 

 

「・・・比企谷君。あの時、貴方はどうして私を助けてくれたんですか?」

 

 

あの時、というニュアンスは虐めのことしかないだろう。誤魔化そうとするも、坂柳は本当のことを教えろ。と有無を言わせない眼差しを俺に眼を逸らすこと無く聞いてきたので、その様子に半ば諦める様に俺は溜め息を吐いて言った。

 

 

「・・・これは知り合いの知り合いの話しだ」

 

 

その話しの入り方に坂柳はクスッと笑った。俺は話しを止めること無く続ける。

 

 

 

 

 

 

「ある1人の少年がいた。その少年も俺達と同じような虐めにあっていて、味方もいなかった。家族に相談しようにも下の子がいるので心配をかけさせたくなかったから黙っていたらしい」

 

 

 

 

 

 

「そしてそんな日常を送っていて少年はある奴が目に留まっていたんだ。ある1人の少女、そいつも少年と同じように回りから虐めを受けていたんだ。少年は同じような境遇の奴がいると知って密かに同族意識を持っていた。そして同時に自分と同じように味方がいないから、怯えながら過ごしていると思っていた」

 

 

 

 

 

 

普通、味方がいない状況をたった1人で虐めに耐えきれる奴は殆どいない。仮に耐えきれたとして報復を考えて実行しようにもかなりの勇気と知恵が必要だ。

 

 

 

 

 

 

「ーーーーーだけど違った。少女は周囲からの虐めを物ともせず、逆に虐めてきた連中の虐めの証拠を録っていたらしい」

 

 

 

 

 

 

でも、強かった。たった1人で弱音も吐かず、身内にも頼る事無く虐めてきた連中に立ち向かい、最終的にそいつ等全員を叩き潰した。

 

 

 

 

 

 

「そんな凛とした立ち振る舞い、自分の意志を貫くことが出来る強さに少年は憧れたんだ。少年には決して出来ないものだったから」

 

 

 

 

 

 

「だからその憧れた立ち振る舞いを、強さを少年は真似た・・・と言うより俺も出来ると思ったんだ。つまり思い上がりだ。少女に助けは求められてなかったから余計なお世話だったけどな」

 

 

 

 

 

 

そう言い終えると坂柳は黙って聞き続けた後に静かに口を開いた。

 

 

 

 

 

 

「・・・・途中から3人称から1人称になってましたよ?比企谷君」

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

「此処からは私が自己解釈をして言います。この話に出てくる少年は比企谷君、少女はーーーーー私、ですね?」

 

 

 

 

 

 

その言葉を聞いても俺は反応しなかったが、坂柳は構うこと無く続けた。

 

 

 

 

 

 

「・・・私はずっと差別の様なものを受け続けていました。自慢に聞こえるかもしれませんが、私には才能があります。その才能に身内以外の他人からは畏怖と嫉妬の反応しか返されませんでした。誰1人、私の個性として受け入れてもらえなかったんです」

 

 

 

 

 

 

人は集団で行動していると、必ず集団の中で『常識』と言う縛りを作る。その『常識』と言うものは、多くの人が同じ行動を起こして多くが賛同する考え方をして、共通の身体的特徴があること。大半はそれに無意識に従い行動をしていると思う。しかし、『常識』の許容範囲外である『異質』な存在は従来の『常識』では測れない為に多くの人に受け入れられず、理解もされない。そして集団から弾き出される。

 

 

 

 

 

 

「私には心底理解出来ませんでした。何故、畏怖の様な反応をされないといけないのか。そして失望したんです。ーーーーーこのような人達ばかりなのか、と」

 

 

 

 

 

『異質』の差は集団には関係無い。目の腐りだけで気味悪がられたりするのだから。才能で畏怖と嫉妬を抱かれた坂柳もしかり。

 

 

 

 

 

「それを理解した時、私は周りを気にせずに過ごそうと思ったんです。誰にも理解されずとも自分やお父様は理解してくれている、それで充分と思ったんです。・・・・・・・でも」

 

 

 

 

 

それでも坂柳は求めたのかもしれない。意識的ではなく無意識に。

 

 

 

 

 

 

「貴方は、比企谷君だけは違ったんです。貴方は私の才能を知っても、態度も、様子も、視線の奥にある感情も何も変わらずに私の個性の存在が当たり前という様に只々受け入れてくれた。私は・・・・それが嬉しかった」

 

 

 

 

 

互いに探し求めたんだ。俺は憧れと言うものを、坂柳は安らぎを。差別と言うものを受け続けた者同士。

 

 

 

 

 

 

「側から見れば傷の舐め合い。嘲笑われたりするでしょう。何故ならこれは・・・・ただの依存に過ぎないんですから」

 

 

 

 

 

 

 

そう、坂柳の言う通りだ。俺達は互いに抱いた感情を理由に心を余裕を持たせているに過ぎない。散々な目に遭った俺の嫌いな上辺だけの欺瞞。

 

 

 

 

 

 

 

・・・・それでも。

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・それでもっ。

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・それでも、どんなに嘲笑われ、罵られて、間違いだと周りに言われても、理解がされずともっ・・・・私は、私は・・・・この感情が依存だと言いたくないっ、だって、私達を結び付けてくれた大切なモノだから・・・」

 

 

 

 

 

 

決して周りには良いモノだとは思われないだろう。自分もそう思わない。粘着質で、汚れていて、到底美しいとは言えない。だけど、間違いだとは思わない。だって俺達は・・・・救われたのだから。

 

 

 

 

 

 

「だから、私は言います。ありがとうございます、比企谷君。例え、助けてくれたつもりがなくて私の思い上がりだとしても、私は貴方に・・・・・救われました」

 

 

 

 

 

 

そう言って今までで1番の微笑みを浮かべて言ってくれた坂柳。その微笑みを見て俺の目頭が熱くなる。しかし、そんな状態でもこれだけは絶対に言わなければならない。俺は自然と口角が上がった状態で言った。

 

 

 

 

 

 

「俺も・・・・・ありがとう。坂柳に憧れて、本当に良かった」

 

 

 

 

 

 

そう言うと、坂柳の眼から1滴の雫が流れる。しかし、それは悲しさからきている訳じゃないと、俺は思ったのだった。

 

 

 

 

 

 

そしてそこで目の前が暗転しーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

微睡む意識がはっきりしてきて、瞼越しに光が差し込み、眩しく感じる。そしてゆっくりと瞼を開けた。真っ先に目に飛び込んできたのは白い天井だった。

 

 

そして手に温もりを感じたので視線を移すと、銀髪のサイドテールの少女が俺のすぐ隣で俺の手を両手で握って穏やかな寝息を立てて寝ていた。そこで俺は自分が熱で倒れ込んだ事を思い出した。そしてその反対側を向くと青がかった銀髪の少女とストロベリーブロンド色の髪の少女が隣で寝ていた。もう片方の手に2人の手が重ねられていた。

 

 

「・・・心配かけたな」

 

 

「・・・ええ、本当に心配しましたよ。八幡君」

 

 

俺の呟きに返答が来たので声の主のいる方向を見ると、穏やかな笑みを浮かべた有栖が俺を見ていた。

 

 

「・・・・調子は如何ですか?」

 

 

「・・・・しんどい」

 

 

「そうですか・・・・では先生に『特別試験』には不参加と言うことを伝えても良いですか?」

 

 

特別試験・・・?やっぱりまだ何かあったのか。俺は有栖に聞こうとするが、その前に俺は別の事を言った。

 

 

 

 

 

 

()()

 

 

 

 

 

 

「・・・・・何故、苗字で呼んでーーーーー」

 

 

 

 

 

 

「・・・・・お前は変わらないな。俺が()()()()()()()だ」

 

 

 

 

 

 

その言葉を聞いて有栖は驚きに目を見開いて、そして夢の最後に見たように1滴の雫を眼から流し、同じように万感の想いを込めた微笑みを見せてくれた。

 

 

 

 

 

 

「・・・・・おかえりなさい。()()()()っ」

 

 

 

 

 

 

「ああ・・・ただいま」

 

 

 

 

 

 

そんなやり取りに窓に映る夕焼けが俺達を淡く照らしていた。




この作品の八幡は告白をしていないので、折本とは面識はありません。そして何故、八幡がこの記憶を忘れていたのかはもうちょっと先の話で・・・・・
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