やはり俺の実力至上の青春ラブコメはまちがっていない。 作:ゆっくりblue1
眩しい・・・・ん、んぅ、朝なのか・・・・?
目蓋越しに光を感じたので、ゆっくりと目を開く。視界がぼやけてはっきりせず、その他の感覚も曖昧でまるでふわふわしているような不思議な感覚だった。
しかし、段々と視界がはっきり見えてきて他の感覚も分かってきた。そして俺の視界が白い天井を映した。俺はゆっくりと頭を働かせ始めて此処が何処なのか考えて、答えに辿りついた。此処は豪華客船の医務室で、俺は昨日は此処のベッドで寝たんだったな。
そう考えていると、頰を誰かにゆっくりと撫でられた。そして声が掛けられる。
「起きましたか・・・?おはようございます八幡君」
その声のする方に目を向けて、俺はその人物に向かって言った。
「ん・・・ひよりか・・・おはよう」
そこに居たのはひよりだった。少し意外に思った。ひよりが居るとは思わなかった。時計の設置してある場所に視線を移す。時刻は朝の6時半だった。俺は寝起き直後特有の浮遊したようなはっきりしない頭で喋る。
「早いな・・・ひより、何でこんなに早く此処に来たんだ・・・?」
俺が聞くと、ひよりは少し微笑んで俺の頰を優しく、ゆっくりと撫でながら言った。ん、撫で方気持ちいいな。
「少し八幡君が心配だったので、何かあった時に対応する為に早起きしました」
「そうか・・・心配かけたな」
気を遣わせてしまった事が少し申し訳なかったので、そう言うとひよりは首を横に振って、優しい微笑みを浮かべたままで言った。今度は俺の頭を撫で始めた。少し擽ったい感覚に俺は目を細める。
「いえ、大丈夫ですよ。顔色と今の様子を見て、安心しました」
俺は、ありがとう。と言うと、そこで会話が途切れる。時計の秒針がなる音だけが聞こえる。ひよりは俺の頭を撫で続けているが俺は止めない。ベッドに横になったままゆっくりと頭を撫でられるのが凄く心地よいからだ。会話がない沈黙が気まずいなんて事は思わず、撫でられたことで再び生み出された微睡みと太陽の程よい光と暖かさに、また眠りそうになる。
暖かいな。いつ振りだったか、こうやって頭を撫でられたのは。親父や母ちゃんに撫でられたのは幼稚園の頃ぐらいだったか?小町も偶に撫でてくれたが、小町は俺が撫でる側だったからな。しかも、此処まで優しく撫でられた事は2、3回位しか覚えがない。
久しぶりの感覚に俺は身を委ねる。そしてひよりに言った。
「・・・・また少し、寝る」
「はい。病み上がりなので、ゆっくり休んでくださいね。良い時間になったら起こしますから・・・・」
俺はその返答に、まるで夫婦になったみたいだな。と途切れかけた意識の中で夢の様な事を考えて、その後に言った。
「・・・おや、すみ」
そして俺はひよりの太陽によって幻想的とまで思える微笑みを最後に見て意識を手放した。心地よい暖かさに包まれながら。
誰かに揺さ振られる。そして徐々に耳が周りの音を拾う。誰かに呼びかけられているようだ。
「ーーーーまん君、はちまーーーーーー八幡君、起きて下さい」
優しく呼びかけてくる声に従い、俺は再び目をゆっくり開いた。2度目なので1度目より早く意識がはっきりしてきた。声の主はひよりだった。そしてひよりの居る方を向くと、そこに有栖と帆波が加わっていた。俺が目覚めたのを見て全員が微笑んだ。
「おはようございます。八幡君、身体の調子は如何ですか?」
「・・・ん、もう怠くも無いし、身体も調子が戻った」
「良かった。これでまた何時もみたいに動けるね」
俺の言葉に有栖と帆波は穏やかな声で言った。時刻は9時で、日も更に暑さと眩しさが増した気がする。流石に2度寝したおかげで眠くもならないので俺はゆっくりと身体を起こして聞いた。
「それで、何か用があるのか?」
「私達は調子を見にきたのと、食事を運びに来たのですよ。ひよりさんは随分と早くて驚きましたが・・・・」
有栖がそう言って、帆波が車輪付きの机を俺のベッドに通してラップが掛かった状態のトレイに乗せてある朝食を置いて、朝食の内容を言ってくれた。
「病み上がりだから御飯少量にお浸し、後栄養が取れる様に少し野菜が多めの味噌汁に白身魚のソテーにしたよ。味付け海苔も付いてるから食欲は出ると思うよ」
昨日はそのまま何も食わずに寝てたから何時もより食欲はある。しかし、俺の事を考えてくれたようで病み上がりを考慮して量とメニューを調整してくれたようだ。何から何まで至れり尽くせりの対応に、俺は申し訳無いと思って言った。
「何から何まで済まないな。朝食まで用意してくれるとは思わんかった」
俺の言葉に有栖と帆波は首を横に振って言った。
「いいえ、元はと言えば私の依頼がきっかけなので謝らないで下さい。それにこれはお礼でもあるのですよ」
「待て、俺が倒れたのは自分がそうなるような行動を自分自身で取ったからーーー「だから謝らなくていい。と、やはりそう言うと思いましたよ」っ」
俺の言葉を遮って言葉を言う有栖。その目は真剣そのもので、俺は思わず言葉を詰まらせる。そして有栖は言った。
「貴方はそう思ってくれていたとしても私はそう思えないのです。責任を伴うことに人を巻き込んでしまったなら責任は負わなければなりません。責任から逃げるのは私が1番嫌いな事ですから。依頼の事は本当に申し訳ありませんでした。そしてありがとうございました」
有栖は頭を下げて謝罪とお礼を言った。俺はその様子に苦笑してしまった。
有栖はこういう奴だったな。他人に期待や理想を押し付けて勝手に失望してきた俺が憧れた、否、今も憧れている彼女は。だったら俺も難しく考えるのは止めよう。
難しく考え過ぎて、言葉を聞き、観察する毎に俺は裏が無いかと疑ってきた。この思考も、捻くれていると言われる言動も、他人が怖かったからだ。信頼すれば俺は勝手に失望して、裏切られたと思ってしまう。
その事が、その見えない醜い感情が怖かったから。文化祭も修学旅行も、その子供の癇癪の様なものから少し離れて視野を広げればあんなに拗れたりしなかったのかも知れない。
俺は1度失敗した。その思考を持って壁にぶち当たった。だからこそ失敗しない為に、いや、失敗を素直に受け入れて。『変わらない自分の肯定』から『変わった自分の否定』になることじゃない。
『変わったからこそ、今まで歩んできた道のりを肯定出来る』そんな人間に、俺はなろう。
素直に、受け入れて良いよな。そう思って俺は有栖に言った。
「ーーーーーああ、受け取るよ。ありがとう」
俺の言葉に有栖は頭を上げて、そしてひよりと帆波と共に驚いた様な表情になった。ん?何で驚いてんの?そんな意外だったのか。何それ酷い。
3人が驚いたのは反応の事ではないのを八幡は知らない。何故なら、その時の八幡の表情はーーーーーーーーー
ーーーーーーー純粋で何一つ屈託の無い、笑顔だったから。
そして俺は3人が通常の態度に戻った後、食事を摂ろうとしたのだが。今現在、ついさっきの矜持を撤回しそうになる出来事が起こっている。それは・・・・
「八幡君、あーん」
魚の解された身が掴まれた箸を帆波が俺の口に運んでくる。俺は顔を逸らして帆波に苦言を洩らす。ジト目で睨んでいる有栖とひよりに冷や汗を流す。
「いや、帆波さん?俺は自分で食えるってーーー」
「にゃあに〜?八幡君、もしかして口移しの方が良かったかにゃー?」
「滅相もございませんッ!」
そんなこの状況で最も恐ろしい事を言われたので即撤回する。だって帆波の言葉に有栖とひよりのジト目が絶対零度の視線になって身体から黒いオーラが洩れ始めたんだもん。怖え・・・・。それに帆波がキャラ崩壊を起こしたのか頰がゆるっゆるで、語尾に、にゃーって猫の語尾が付いてる。こんなんクラスの誰かに見られたら黒歴史確定だ。
「「何故さっき私はグーを・・・・」」
有栖とひよりは今まで見た中で一番悔しそうな顔で自分の右手を見つめながら呟いている。3人は俺に御飯を食べさせようとした。そして誰が俺に食べさせるかとじゃんけんをした。あそこまでシリアスな空気でじゃんけんしているのを見るのは初めてだったわ。この光景を材木座が見たら発狂すんだろうなー。と、現実逃避しながら俺は帆波から運ばれる朝食を食べていた。
そして、後から悶える様な食事を済ました後、俺は疑問に思った事を聞く。
「何でここまでしてくれるんだ?」
俺の質問に有栖とひよりは呆れ気味に溜息を吐いた。え、俺、何か溜息つかれる様なことした覚えないんだけど。俺は頭を捻って考える。ちなみに帆波は自分の言動を思い返して身悶えてる。
「はぁー、今日はーーー」
有栖が答えを言おうとした時、ノック音がなった。医師の人か?と思って、どうぞ。と言うと扉が開かれてそこから現れたのは。
「見舞いに来たぜ、比企谷」
「相変わらず揃ってるわね。4人共・・・・」
Aクラスの有栖の部下である神室と橋本に。
「倒れたって聞いたから来たけど、大丈夫かー?比企谷」
「ちょっと声がでかいから静かにしろ。柴田」
「一之瀬さんっ来ましたよ」
「千尋ちゃんは本当に帆波ちゃんが好きだね・・・・比企谷君、調子は大丈夫?」
Bクラスの戸部ポジの柴田、参謀の神崎、帆波大好きっ娘の白波、そして無人島試験でリーダーを勤めた網倉。
「・・・・大丈夫か、比企谷」
「無表情だと不審に思われるわよ。綾小路君」
「綾小路君、もうちょっと感情を込めようよ・・・比企谷君、お見舞いに来たよっ」
「比企谷君、貴方また無茶をしたようね」
Dクラスの、何故来たのか分からん相変わらず無表情の綾小路、生徒会長の妹の堀北、俺の苦手とする強化外骨格を着けた櫛田、ついこの間やり直した雪ノ下がいた。
俺は目を見開いてここにいるメンバーを見て驚いた。
「AクラスとBクラスは兎も角として、Dクラスのお前らはどうして来たんだ?」
俺が聞くと、代表として雪ノ下が言った。
「貴方達に下着窃盗事件の解決を手伝ってもらったお礼を代表として私達が言いに来たのよ。平田君は少し軽井沢さん達に付き添っているから来れなかったから伝言、ありがとう。だそうよ。・・・・・由比ヶ浜さんには伝えてないから大丈夫よ」
最後に俺だけに聞こえるような声で伝えられた事に俺は、そうか。と言って納得する。由比ヶ浜が此処に来たら命がヤバいからな、由比ヶ浜の。有栖とひよりは俺と雪ノ下のやり取りを見て驚いた様な表情を浮かべた。そう思えば雪ノ下とやり直した事を言ってなかったな。帆波は下着窃盗事件の時に察しがついてたのか驚きはなかった。
まぁ、それは後として、さっき有栖が言いかけた事が気になった俺は聞く。
「それで有栖、さっきは何て言いかけたのか教えてくれ」
「・・・・今日は、貴方の・・・比企谷八幡の誕生日ですよ」
・・・・・えっ、今日は何月何日だ。俺はスマホの電源を入れてホーム画面に表示されている日付けを確認する。『8月8日』と表示されていた。
「あ、マジだ」
俺の反応に皆呆れ気味だった。あの無表情の綾小路でさえ、視線に呆れの色が混じっている。それと俺の反応見て爆笑した柴田と橋本は後でしばこう。そして帆波が苦笑しつつ、言った。
「にゃはは・・・・八幡君って私の誕生日を祝ってくれた時も前日に神崎君に伝えられて気付いたって言ってたもんね」
「いや、休日だったし。特に誕生日とか聞く機会が訪れなかったしな」
聞く機会がなかっただけで、聞くことがあれば小町に躾けられた俺ならば祝った可能性もなきにしもあらず。きっと、多分、恐らく。だから白波さん睨んでこないでぇ!!怖すぎる上に黒いオーラがダダ漏れだからぁ!!本当に帆波大好きフリスキー(ガチ百合)だな。
ーーーー3週間前の7月19日の事ーーーー
俺が何時も通りに授業を受けて昼休みを過ごしていると、一之瀬がやって来て俺に話し掛けた。
「八幡君、今時間空いてるかな?」
「いや、今あれがあれであれだからーーー」
「八幡君がそう言うのって時間が空いている時の台詞だよね。もう誤魔化されないからね!」
俺はこの言葉で2度、一之瀬を騙した事があったのだが、基本的に他人の意見を最大限信用している一之瀬に使うと罪悪感が半端ない。じゃあ何で繰り返すのかって?まぁ、軽い冗談のつもりなんだが。これ以上は流石に申し訳ないのでこれ以降はやめる。
一之瀬は戸塚と一緒で純粋過ぎるために騙されやすい。まぁ、意外と鋭いところも多いのでオレオレ詐欺には引っかからんだろうが、訪問販売とかだったら買わされそうなんだよなぁ。と考えながら俺は言った。
「・・・・まぁ、暇だけど。で、何かあんのか?」
そう聞くと一之瀬は、若干緊張しているような面持ちだった。俺は怪訝に思いながら言葉を待つ。やがて言った。
「明日、2人で出掛けたいんだけど良いかな?」
その言葉を言った一之瀬は真剣な表情だが、瞳は不安が隠せてないのか揺れている。茶化せる雰囲気ではない為、こっちも真剣に考える。まぁ、世話になってるし・・・こっちも何かで返そうと思っていたから丁度良いか。
「・・・・良いぞ。あんまり人が多過ぎるとこは勘弁な」
「本当?ありがとう。八幡君!」
そう嬉しそうな表情でお礼を言ってチャイム5分前着席で一之瀬は自分の席に戻った。そんな嬉しそうな表情されたら勘違いしそうだからやめて欲しいものだ。
そしてその日の夜に待ち合わせの時間と何処に行くかを聞いた後に神崎からーーー一之瀬の計らいによってBクラスの何人かとメルアドを交換したのでその内の1人ーーーーメールが届いた。
〈明日は一之瀬の誕生日らしい〉
〈そうなのか〉
〈俺達も何かやってやりたいが、何をしてあげられるんだろうな〉
そんなやり取りをした俺は静かに1人寮の部屋で言った。
「誕生日ねぇ・・・」
そして2人で出掛けたのだが、その内容はまたの機会にする。
ーーーー現在ーーーー
「八幡君?」
思い返していると、有栖に呼び掛けられた為に意識を戻す。そして俺が意識を向けたのを確認して言った。
「まぁ、今は誕生日プレゼントが用意出来てないので祝いの言葉だけ先に。八幡君ーーー」
『誕生日おめでとう!(ございます)』
「ッ!!」
打ち合わせしていないだろうに、揃ったその言葉を聞いて俺は言い表せない暖かさに言葉を失う。そして有栖が一歩前に来て俺の頭をゆっくり撫で始めた。慈悲む様な手付きに何故か目の奥がじんとした。俺は今浮かべているであろう表情を見せない為に俯く。
「ーーー本当に大きくなりましたね。また貴方の歳を重ねた瞬間を見る事が出来て私はとても嬉しいですよ」
「・・・・ッ」
何時もなら、お前は俺の母ちゃんか。と突っ込んで誤魔化せるのに、場の空気に当てられたのか、言葉が出ない。目の前が滲んできた中、有栖は俺の頭から手を離し、後ろに下がった。そして今度は。
「八幡君、私からはね。ーーー何時も、助けてくれてありがとう。面倒臭いって言いながらも色々話しに付き合ってくれたり、やる事に最後まで手伝ってくれてありがとう。私の為に怒ってくれたり、私の弱さを受け止めてくれてありがとう。そんな私を見守ってくれてありがとう。生まれて来て、私達と出逢ってくれてありがとう。こんなに嬉しくさせて大切だと思える様々なモノをくれてーーーーーーーーーーーー本当にありがとう」
俺の両手を包み込む様に帆波の両手で持って、帆波はそう言った。何か暖かいモノが両頰を伝いポタポタと落ち始める。帆波も離れて後ろに戻る。そして近づいて来たのは。
「八幡君ーーー貴方には返しきれない恩を貰いました。龍園君との契約が無ければこうやって関わる機会もなくて、こんなに暖かい気持ちになれることも無かったでしょう。貴方と本を読む時、貴方と会話する時、貴方の笑える冗談を聞いた時、貴方の捻くれた、それでも誰よりも暖かい優しさに触れる時、貴方を知っていける事が今の私には何よりもーーーーーーーーーーーー幸せですよ。これからも、貴方の事を教えて下さい」
ひよりが俺を抱き締めてそう言った。頰から落ちて付いたモノを気にした様子はなかった。
思い出される日常の中で家族に祝ってもらった機会は殆ど無かった。あったとしても小町だけだし、小遣いだって貰うし、買いたい物だって買ってもらったので愛情を貰えてないと言う訳では無いが、両親から誕生日を祝ってもらった事は殆ど記憶にない。プレゼントは貰っているが、5千円札だけ。明確な祝いの言葉も殆ど小町からしか聞いた事がない。
中学だって、奉仕部という場所があって初めて祝って貰う位で、それが無ければ祝って貰うどころか、そこで出逢う雪ノ下や平塚先生、戸塚、材木座、川崎、城廻先輩に後輩の一色。その誰1人として深く関わる機会すらなかっただろう。
『ヒキタニの奴来やがったよ。もう消えれば良いのに』
『空気悪くなるし、学校の評価下がって、俺達の内申にも響くからひっそりとバレないように死ねよマジで』
『あんな屑、私達と同じ空気を吸って欲しくないよね。ほんと』
『ハハッ!お前はストレス解消のサンドバッグ兼財布なッ!!』
そんな侮蔑や嫌悪といった感情と傷が残る程では無いが、それなりの暴力を受け続けた中学3年の毎日。本当にキツ過ぎて自殺だって頭に浮かんだ。
それでも支えてくれる小町と家族の為に。
励まし続けてくれた平塚先生と戸塚達の恩を返す為に。
生き抜いて、生きる希望を棄てないで、学校に通い続けて。
卒業して、そしてこの学校に逃げて、誰も信頼しないよう最低限しか関わらない様に意識をしながら生活して。
それでも俺を追うように来た由比ヶ浜達の姿があった事に諦めだってした。どんなに上手く立ち回ろうとしても台無しになるんだと、俺はこうやって生きるのに苦しむ。運命論者じゃない俺でもこれが運命なんだと思ってしまう。
でも、それでもこうやって言ってくれる彼女達が居れば、それだけで良い。それだけで良かったんだ。俺が欲しかったものは、すぐそこにあったから。
何も言わずとも完全に理解出来るとか、悍ましくて、傲慢で、何処までも浅ましい利己的な願い、そんなモノは未だに見つからないけれど。
それでも俺が望んだモノは見つかった気がする。そんな形が無くてどう表現したら良いのか分からないモノ。だから名前をつけられないけれど。それもいつか分かる日が来る事を願ってこの想いと、彼女達が居れば分かる気がするから。
だから探し続けよう。願わくは彼女達と歩んでいけることを。俺はこの日を絶対に忘れない。何があろうと、絶対に。
俺は情け無い泣きっ面で、それでも晴れやかに、こう言った。
「ありがとうッ・・・」
祝ってくれて、他人との出逢いを尊いものだと自覚させてくれて、大切なモノを見つけさせてくれて、何とも思っていなかった日をこんなにも愛しいと想わせてくれて。
この日は誰もが幸せである日と願って。
〜HappyBirthday〜・・・・・
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
■■■は羨んだ。こんな表情が出来る目の前で泣いている少年に。どうしたらそんな表情が出来るのかが分からなかったから。
だから、この少年を見て学ぼう、学習しよう。そうすれば・・・・・
「
そう周りに聞こえない声で、小さな、されど消えることない願いを呟いた。