やはり俺の実力至上の青春ラブコメはまちがっていない。   作:ゆっくりblue1

27 / 34
今回は坂柳の規格外な実力の一端と一之瀬の恋慕からの変化です。今回もお楽しみ頂けたら幸いです。


混沌とする思惑と想い

帆波達と合流した後、俺達『未』グループに分けられたメンバー表を帆波達に見せて、俺は帆波が分けられた『卯』グループのメンバー表と神崎の分けられた『辰』グループのメンバー表を見ていた。

 

 

【卯】

 

 

Aクラス 竹本茂 町田浩二 森重卓郎

 

 

Bクラス 一之瀬帆波 浜口哲也 別府亮太

 

 

Cクラス 伊吹澪 真鍋志保 藪奈々美 山下沙希

 

 

Dクラス 綾小路清隆 軽井沢惠 外村秀雄 幸村輝彦

 

 

兎グループには綾小路が居るようだ。そして下着泥の被害を受けた軽井沢も。このグループで1番警戒すべきなのは綾小路だ。正直彼奴は有栖や龍園より読み切れないからな。暴力事件の策と無人島試験の結果は彼奴がやったはずだし、帆波も警戒しているだろう。まぁ、此処は良い。問題は神崎達の辰グループのメンバーだ。

 

 

【辰】

 

 

Aクラス 葛城康平 坂柳有栖 西川亮子 的場信二

 

 

Bクラス 安藤紗代 神崎隆二 津辺仁美

 

 

Cクラス 小田拓海 鈴木英俊 園田正志 龍園翔

 

 

Dクラス 櫛田桔梗 平田洋介 堀北鈴音 雪ノ下雪乃

 

 

な に こ の じ ご く。メンバーがヤバ過ぎる、多分全クラスの主力が全員集まってる。Aクラスなんか2トップの葛城と有栖がいるし、Cクラスは龍園が入っている。ただ、ここで気になるのは帆波がいない事だ。ここから考えられることは1つ・・・・十中八九、星之宮先生が外したのだろう。多分このグループは学力の高い生徒が集まっている。龍園は多分、坂上先生が入れたな。このことから絶対にランダムでは選ばれていない。つまり『優待者の法則』があるという事だ。

 

 

俺は神崎に同情しながら言った。

 

 

「・・・頑張れよ。大変だろうけど」

 

 

「・・・ああ、何とかするよ」

 

 

神崎は俺たちが来た時から遠い目をしていた。このメンバーで話し合いとか軽く言って胃が爆発しそうだもんな。龍園が煽って煽って煽りまくって、有栖も面白げに受けて立つのが目に浮かぶ。そしてそれに巻き添えをくらう他のメンバーが。最大で4日はこのメンバーと話し合いの場で会わないといけないとは本当に気の毒だ。

 

 

そんなことを考えていると帆波は俺のグループのメンバー表を見て心配そうに俺に言った。

 

 

「八幡君こそ大丈夫?このメンバーで・・・・私、心配だよ」

 

 

このメンバーというのは、Cクラスの葉山とDクラスの由比ヶ浜の事だろう。未グループのメンバーについては完全にランダムな選び方をしたのだろう。由比ヶ浜は成績最下位クラスで、葉山の成績は恐らくだが上位の筈だ。俺も平均よりは上だからな。ただ、星之宮先生が俺を何らかの意図があってこの中に入れた可能性は少し、いやかなり高い。先生は無人島での事を知っているからな。

 

 

流石にこの試験中に目立つ行動は取れないだろう、龍園にも処罰を頼んだしな。と思い、俺は帆波の心配に苦笑して言った。

 

 

「・・・流石にちょっかいは掛けてこない・・・筈だ」

 

 

「そこは言い切って欲しいよぅ・・・・うう〜八幡君、何かされたら先生か私やクラスの誰かに言ってね?もちろん坂柳さんにも頼るんだよ?」

 

 

まるで母親が言うような事を言ってくる帆波。その様子に神崎達は苦笑して、俺は気恥ずかしくなりながら頷く。何か誕生日以降、帆波の包容力が増した気がしなくもない。そして俺は、帆波と神崎達のグループのメンバー表のプリントを持参していたメモ帳に書き写す。優待者の法則を見つける手掛かりになるだろうしな。

 

 

ふと、急に俺の携帯が鳴る。学校専用の音では無く、普通のメールの受信音だった。俺は表示された名前を見る。そこには『網倉』と表示されていた。誕生日の時に交換して置いたのだ。それにしてもあんな大勢の前で泣いた日には悶え続けたせいで本当に寝れなかった。忘却の彼方に消しさろうとしても、全く頭の中から離れなかった。逆に鮮明に思い出してしまうからマジでタチが悪い。幸いこの事をネタにしそうな奴はあの中には居なかったので良かったが。龍園とかに知られた日には・・・・考えたくないな。

 

 

そんな事を考えながら送られたメールの内容を確認する。そこには特別試験のグループのメンバー表の事が書かれていた。

 

 

From 網倉麻子

 

 

To 比企谷八幡

 

 

Subject 私の【子】グループのメンバーはこういう感じだったけど、比企谷君のグループは?

 

 

【子】

 

 

Aクラス 神室真澄 沢村智史 袴田創一

 

 

Bクラス 網倉麻子 島田誠 本田慎太郎 渡辺忠

 

 

Cクラス 鮎川美香 咲本友希 安田勝 吉村真希

 

 

Dクラス 佐藤麻耶 津川草太 松下千秋

 

 

俺は、自分のグループのメンバー表の内容を送って、このメールは見たらすぐに削除して、内容は見て覚えるかメモか何かに書き写して、他のクラスの奴に見せないようにしておいてくれ。と送る。俺はメモ帳に網倉のグループのメンバー表をメモっておいて、そしてメールを削除する。

 

 

その後も特別試験の事を話していると、声が掛けられる。

 

 

「おいおい、早速揃ってんじゃねえか。なぁ、一之瀬?」

 

 

声を掛けてきたのは龍園だった。相変わらず獰猛な笑みを浮かべていて、石崎や伊吹、山田も連れている。もう完全にヤクザか極道に見えてきたんだが。Bクラスのクラスメイトは警戒するように睨み、帆波は変わらない笑みを浮かべて返事する。

 

 

「特別試験の事でねー。龍園君はどうして此処に?」

 

 

「この試験でBクラスを潰しにかかるから、わざわざ言いに来てやったんだよ。無人島試験では予想外に一杯食わされたからなぁ」

 

 

そう言って俺に視線を向けてくる龍園。うっわー、めんどくせぇ・・・・完全に目をつけられたようだ。龍園の言い草に更に両クラスの空気が緊張して、重くなる。暫く睨み合いの状態になっていると、更に空気を緊張させる人物達が来た。

 

 

「おやおや、BクラスとCクラスの皆さんがお揃いで」

 

 

不敵な笑みを讃えた有栖達が来た。神室や橋本、高校生の風貌には思えない鬼頭を連れている。

 

 

「ククッ、随分と楽しそうだな坂柳。俺の財布となったのに余裕そうじゃねえか、おい」

 

 

無人島試験でAクラスとpptの契約をした龍園がその事で煽る。有栖はその煽りに乗る事無く、笑みを濃くして涼しげと言わんばかりに返す。

 

 

「いえいえ、逆にこちら側がやり易くなったので感謝してますよ。少しは張り合いが無いとつまらないですから」

 

 

逆に煽り返して石崎が拳を握るのが見え、それに鬼頭も反応する。正に一触即発の空気に龍園は愉しそうに笑う。

 

 

「ククッ、葛城がヘマしたのにその余裕、何か秘策でもあるのか?」

 

 

そう聞くと、有栖は声を出して小さく笑った後に言った。

 

 

 

 

「・・・フフフ、秘策と言うほどのものではありませんが、この試験の攻略法・・・優待者の法則は解りましたから」

 

 

 

 

その発言にBクラスとCクラスの奴等は騒めき出し、帆波と神崎は身を強張らせる。俺は驚きつつ、有栖の言ったことが本当だと判断する。目には余裕が映っていて、自信があると物語っている。おいおい、もう分かったのかよ。相変わらずの天才ぶりだな。つまり有栖は、この試験を終わらせる鍵を手にしたということだ。

 

 

そんな声も出ない驚愕に空気が包まれる中、唯一龍園だけが愉しそうに笑う。此奴も此奴で予想外だろうに。本当こう言うスリルというか、逆境に立たされることを楽しむよなぁ。

 

 

「ク、ククッ、ハハッ!・・・・これは流石に予想外だったぜ。やはりお前は俺が最後に潰すのに相応しい価値がある相手だ。Bクラスの一之瀬やDクラスにいるであろうキレ者よりも愉しめそうだぜ。それで、お前はこの試験を終わらせるのか?」

 

 

その問いに有栖は首を横に振って言う。

 

 

「いえいえ、直ぐに決着を着けるのは流石に興が冷めてしまいますし。貴方達の相手よりも先に邪魔な相手がいるので・・・・」

 

 

邪魔な相手というのは葛城派の事だろう。行きの船の戸塚が起こした騒動と、無人島試験の龍園と契約を結んだ上に惨敗した事で派閥の人間は減った筈だが、まだ根強い支持を受けているのだろう。

 

 

「俺達は眼中にねえってことか?なら精々余裕ぶってるんだな。油断してるとその喉笛掻っ切られるぜ?」

 

 

もう話はする気は無いのか、そう最後に言い残して俺達の横を通る。そして俺と龍園がすれ違う瞬間。

 

 

「葉山は処分したが、お前の事に未だにご執心みたいだぜ?」

 

 

そう囁かれ、俺は悟る。これは思った以上に面倒くさくなりそうだな。そして龍園達の背中を見送っている後、有栖達と対峙した。Bクラスは警戒をしているようだが、変わらず有栖達は涼しげな様子を崩さない。帆波は有栖にさっきの発言の事を問いかける。

 

 

「優待者の法則を見つけたのは・・・・ハッタリじゃないんだよね?坂柳さん」

 

 

「ええ、ここでハッタリを言うようでは負けを認めるようなものですから」

 

 

不敵な笑みを崩さないまま、帆波を見つめる有栖。俺は気になることがあるので聞いた。

 

 

「有栖、すぐに勝ちにいかないのは葛城派を潰す為だよな?」

 

 

俺の問いに有栖は微笑みながら答える。

 

 

「その通りです。まぁ、Aクラスの7割は私の派閥に入っているので、この試験を最後に葛城君にはリーダー争いから完全に降りてもらう為に敢えて今回も私達は葛城君を龍園君に叩き潰してもらおうとしているのですよ」

 

 

どんだけ追い込むの好きなのん?少しドS過ぎない?八幡引いちゃうよ。帆波は苦笑いしているし、神崎達は凄え引いてるし。・・・・ん、待てよ?何かおかしい。言い回しに違和感がある。()()()()()()って事は・・・・!

 

 

「おいまさか、有栖・・・・今回、葛城と別々の方針で動く気だろ。()()()()()()()()

 

 

俺の言葉に有栖は目を見開くと、更に笑みを濃くする。目には妖しげな光が灯っていて妖艶にすら見える。そして何か小声で呟いた。

 

 

何を言ったのかは聞き取れなかったが、視界の端に帆波が何やら反応したように見えた。そして有栖は何時もの表情に戻って言った。

 

 

「・・・流石ですね、八幡君。ですが、少し違いますよ。葛城君の行動はこの試験では結果Ⅰを狙うでしょうから私達は結果Ⅲを狙って、葛城派の人がいるグループの所は龍園君に優待者の法則を見抜いてもらって潰してもらい、私の派閥の人には優待者を伝えて裏切らせるのですよ」

 

 

葛城の取る作戦より有栖が取る作戦の方がAクラスに取って良いと思わせる為か。これが成功すれば葛城派は完全に失墜するが、龍園が乗ってくるとも限らない。しかし、有栖にはそこも計算に入れているだろう。

 

 

「龍園がその優待者の法則に気付くまでには裏切らせないのか?」

 

 

「ええ、1〜2日で龍園君なら気付くでしょう。1日置いたら私は動きますので」

 

 

有栖は手を組むというよりは、利用する選択を取ったようだ。つまり有栖が動くまでには俺達も優待者の法則を見つけなければと負けるという事。そして有栖は俺と帆波に言った。

 

 

「八幡君の所のメンバーは葛城派のメンバー達で固められているようですし、一之瀬さんの所には私の派閥の人が1人いますが、葛城派の人が多いので葛城君の作戦に乗るように言ってあるのでチャンスはありますよ」

 

 

つまり葛城派のメンバーが多いグループは葛城の取った作戦で行動させているので邪魔はしない、と言う事のようだ。それなら龍園が気付くまでがタイムリミットになる。

 

 

そして有栖達は俺達から通り過ぎていき、廊下の奥へと歩いて行った。チャンスは多く見積もっても2日。それまでに気付かないと負ける。

 

 

「これは厳しい戦いになるね・・・・」

 

 

帆波のその呟きに俺達は頷くしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は部屋に戻って早速、有栖が見抜いた優待者の法則を推理していた。幸い誰もいなかった為、集中し易い。自分のグループのメンバー表を見る。

 

 

【未】

 

 

Aクラス 秋本浩司 木崎優太郎 辻良子 山岡麗華

 

 

Bクラス 柴田颯 比企谷八幡 細川舞美

 

 

Cクラス 近藤修介 田辺黎人 葉山隼人

 

 

Dクラス 佐川裕也 日向誠子 前原圭人 由比ヶ浜結衣

 

 

此処から重要になる『クラスとの関係を無視する』と『本質』と『干支』だ。先ずクラスとの関係を無視する。これをこの紙で表してみる。

 

 

【未】

 

 

秋本浩司 木崎優太郎 辻良子 山岡麗華

 

 

柴田颯 比企谷八幡 細川舞美

 

 

近藤修介 田辺黎人 葉山隼人

 

 

佐川裕也 日向誠子 前原圭人 由比ヶ浜結衣

 

 

となる。続けて本質、これは紙に示してある事に目を向けろということか?名前順で並んでいる以外は思い浮かばない。

 

 

まだ絞れないので保留にしよう。続けて干支、干支は十二支で表記されている。未は8番目だ。そしてここで俺は行き詰まった。

 

 

「後、何か・・・・もうちょっとの気がする。もうちょっとで掴めそうな気がするんだが・・・・」

 

 

メモっておいた他のメンバー表を見比べてみるが、同じところで止まってしまった。

 

 

「法則を1発で見抜く有栖は規格外だなぁ・・・・マジで敵に回したくねえ・・・」

 

 

記憶を思い出した事で分かったが有栖は天才だ。記憶が無い状態でも油断すれば瞬殺されると警戒していた彼女。Bクラスではやはり有栖率いるAクラスには勝つ事は難しいだろう。しかし、不可能だとは思わない。Aクラスに『絶対的頭脳』があるとするなら、Bクラスには『絶対的統率力』がある。

 

 

「俺がこんな前向きに考えるなんてな・・・学校に染まってきたのかねぇ・・・」

 

 

俺はそう独り言で呟き、優待者の法則を見抜きに掛かるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は八幡君達と別れた後、同部屋の子達とも別れて船のデッキで坂柳さんが呟いたことを考えていた。時刻は8時で、空は暗くなっていて星が瞬いていた。

 

 

『ああ、やはり八幡君はBクラスに埋もれさせておくのは惜しい・・・・Aクラスに来てもらいたいものです』

 

 

私は思わず拳を強く握った。私達では八幡君の力は引き出せていないと言われているように思えたからだ。眼が語っていた。

 

 

『貴女程度では八幡君は不釣り合いだ』と。

 

 

冗談じゃない!と思いたいが、それ以上に私の中で不安があったからだ。

 

 

『私は八幡君に依存しているのではないのか?』

 

 

今まで、Bクラスが此処までAクラスに詰められたのはクラス皆が団結してくれた事もあるが、それ以上に八幡君の策が上手くいっていたのもある。入学時のポイント格付けの時、中間テストの時、暴力事件の時も。何時も八幡君が助けてくれた。

 

 

弱い、私は弱い。だから依存してしまう。そして依存した状態を良しとしてしまった。こんな状態をいつまでも良しとしたら、八幡君が弱っていった時、私はまともに助けることも出来ない。1番助けたい、支えたい人を私は見捨てる事になってしまう。

 

 

これまでに想った八幡君への気持ちは、否定したくないし、否定だって誰にもさせない。だってこの気持ちは『本物』だから。だから、私は、私だけが出来る方法で八幡君を助けよう。八幡君とは対等でありたいから。

 

 

『偽物』にはなりたくない。仮初めの、依存からくる気持ちじゃなくて私だけの『本物』を・・・・・彼に伝えたい。彼が助けてくれたからじゃない。

 

 

彼を見て、話して、考えて、彼の考え方を知って・・・・・そんな時間があったから。

 

 

好きなんて、軽い気持ちじゃない。私は彼を、比企谷八幡君を・・・・・

 

 

「ーーーー愛してるの」

 

 

そう呟いた時、頭が熱に浮かされるように熱くなって身体がふわふわした不思議な感覚になった。しかし、決して不快ではない。寧ろ気持ち良い感覚だった。

 

 

キュンッ・・・・

 

 

下腹部が熱くなった。身体が疼き、細胞に至るまで沸騰しているのではと思う程。まるで私の身体が彼を、彼の細胞に至るまでの全てを欲しがっているかのように。

 

 

私は、この熱が冷めるまで船のデッキに居たのは考えるまでもないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




コメントください。モチベーションが上がるので。なるべく優しいコメントをお願いします(mーーm)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。