やはり俺の実力至上の青春ラブコメはまちがっていない。   作:ゆっくりblue1

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投稿が遅れて申し訳ありません。今回もそこまで進みませんが、遂にあのキャラが八幡と絡み始めます。今回もお楽しみ頂けたら幸いです。


水面下の計略と疑い

高円寺の謎のレクチャーが終わった後、俺は有栖と一緒にスパへと出向いていた。時間は2時を回り掛けている。高円寺の話は30分ぐらい聞かされていたのでぐったりしている。

 

 

「彼奴、話が長え・・・何であんなに内容が尽きないんだよ」

 

 

普通に教師の授業くらいでしかあんな長時間話すことねえよ。有栖も少し疲れが見えていて、俺の言葉に同意した。

 

 

「あそこまで休みを入れずに話し続けられるのは、教師でも少ないでしょうね」

 

 

俺と有栖は同時に溜息を吐いた。何度か口を挟んだのだが、話しは止まらず数分後には黙って聞いていた。そのお陰と言ったらあれだが女性のリード方法が身に付いた。今、有栖と腕を組んで歩いているが心臓バックバク程ではなく少し緊張するぐらいで済んでいる。主に教えられたのは意識の切り替え、後は疲れにくい歩き方だ。女性と触れ合っても緊張しない意識の持ち方を教えてもらった。御曹司ってこんな廃スペックなんだなぁ。

 

 

「まあ、こうやって八幡君と腕を組んで歩けているので良かったですが」

 

 

「・・・・照れるからそう言うのやめてね。まだ慣れてないから思わず心臓バックバクになるだろ」

 

 

俺はクスクスと楽しそうに微笑む有栖から眼を逸らす。生徒達ともすれ違ったが、男子は嫉妬の殺意、女子からは好奇や驚きと言った視線を向けられていて最早俺のライフは0だ!と思うくらいには悶えていた。そしてスパの施設へと足を進めている途中で、色々な意味で今会いたくない人物と鉢合わせした。

 

 

「腐り目・・・と女王様じゃねえか?ククッ、随分と熱いなあ。ええっ?」

 

 

龍園だった。しかも伊吹や石崎、山田と言った部下を連れていた。こんな偶然だったとしても今会いたくなかった。絶対面倒くさいやつだから。俺は内心、溜め息を吐きながら言った。

 

 

「・・・・で、お前は部下をぞろぞろ従えて何してんの?」

 

 

俺が聞くと、龍園の左斜め後ろにいる伊吹が不満タラタラの様子で俺に突っかかってきた。

 

 

「ちょっと、此奴の部下っていう枠組みで言うのやめてくれる?私は此奴に従っているのは自分にとって得の部分があるから従っているだけだ」

 

 

・・・・一体どうしろと。俺からしたら伊吹や石崎は完全に部下にしか見えないんだが。山田はSPか、ヤクザの用心棒くらいにしか思えない。すると有栖が笑いながら言った。

 

 

「ふふ、随分とアクティブな人がいるようですが、手綱はしっかりと持ってた方が良いですよ」

 

 

有栖の物言いに龍園は受けて立つように獰猛に笑い、伊吹が睨みつけるように有栖に視線を送る。その状況に割って入る様に聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

 

「あれ、八幡君と坂柳さん・・・・それに龍園君に伊吹ちゃんたちだ。こんな所でどうしたの?」

 

 

声をかけてきたのは先程別れた細川だった。そして細川を見た伊吹が驚きに目を見開いた後、僅かに睨む様に見つめて言った。

 

 

「細川・・・アンタも此処に入学してたの」

 

 

「うん、してるよ。久しぶりだねー、背は高くなったんじゃない?」

 

 

何やら2人は知り合いの様子だった。一見関わり合いそうにないタイプの様に思える。俺は意外に思いながら細川に聞く。

 

 

「知り合いなんだな」

 

 

「うん。伊吹ちゃんとは昔道場の親善試合があったの。それで勝負したんだよね」

 

 

道場、色々な種類があるが2人共に何か武術の経験があるのは動きや体軸のブレの無さで分かる。堀北生徒会長に鍛えられたからそこらへんは見抜ける。有栖もやはりといった様子だった。細川の言葉に龍園が反応した。

 

 

「ほぉ、親善試合ね・・・どっちが負けたんだよ伊吹?」

 

 

普通、勝ったのはどっちって聞きそうなものだが、外道の龍園は聞き方も癪に触る。聞かれた伊吹は龍園を睨みつつもやがて苦虫を噛み潰したように言った。

 

 

「ッ・・・・・・私が負けたんだよ」

 

 

「付け足すとしたら完封負けだったよねー。伊吹ちゃんは正直過ぎるから勝ちやすいんだよ」

 

 

どうやら細川も大概外道のようで伊吹の苦い思い出に塩を塗るといった追い打ちをかける。やめて、伊吹のライフはもう0よ!伊吹は更に眉間を険しくさせて細川を睨むが、張本人はニコニコと微笑みながら何処吹く風だ。怖っ、女怖っ。龍園は伊吹の様子をニヤニヤ見ながら、次は細川に視線を移す。そして笑いながら言った。

 

 

「Bクラスにもこんな奴が居たとはなぁ。なあお前、俺の部下にならねえか?働きによっては良い待遇をしてやっても良いぜ?」

 

 

その問いに石崎は驚き、山田も関心を寄せた様に龍園を見る。伊吹は龍園を凄まじい形相で睨み付ける。有栖は面白いといった様子で笑みを深める。俺も細川に注目する。正直乗り換えられるとヤバい。Bクラスにスパイとして動かれたらBクラスはCクラスに抜かれる可能性が上がる。そして団結しているクラスも崩壊する。帆波や神崎などの尽力を無駄にはしたくない。そう考えている中、細川は笑いを洩らして言った。

 

 

「・・・ふふっ、悪い話じゃなさそうだけど。頷く程ではないかなぁ、それに先約の人よりも満足させて貰えるとは思えないし、私を頷かせたいなら屈服させてみなよ。私、強い人が好きだからね」

 

 

こっちにウインクを飛ばす細川。こっちを巻き込むなよ。と内心溜息を吐いていると龍園は獰猛な笑みを浮かべて更に言った。

 

 

「面白えじゃねえか。お前が望むならこっちで満足させてやる事も出来るぜ?」

 

 

下半身の部分を指し示す。伊吹は軽蔑の睨みを向け、有栖は冷たい笑みを浮かべた。まあ、女子はあんまり聞かない方が良いだろうな。細川は楽しそうに笑うと言った。

 

 

「うーん、龍園君は私の事は好きじゃないでしょ?私も君は好きじゃないって言うか興味ないし、龍園君がそう望むなら他の人に当たれば良いんじゃない?龍園君って意外とモテそうだし、ちょい悪っぽい利口なヤンキー猿って」

 

 

そう言った瞬間、龍園は間合いを詰めて細川に左中段蹴りを繰り出そうとする。細川は受け流そうと右手で叩こうとするが、龍園のそれはフェイントで直前で引っ込め、右拳を鳩尾に繰り出す。

 

 

当たると思われた寸前で左手で受け止めると、細川は右手で手刀を龍園の首に当てようとする。その直前に龍園は左手で迫る手刀を掴む。そして2人共距離を取るように後ろに飛ぶと龍園は関心したように笑いながら言った。

 

 

「悪い、脚と手が滑っちまった。しかし女にしては中々どうしてやるじゃねえか」

 

 

「女の子も強いんだよ。手が滑ったなら仕方ないけど今度は無いよ?」

 

 

そんな会話をしている中で俺は周りに人がいないのを見て安堵した。最初は龍園から仕掛けたが細川も迎撃していたので喧嘩両成敗になってしまうからだ。迎撃しなければ証言してBクラスに有利なカードが出来たのに。

 

 

「クク、面白え奴がいたもんだ。比企谷がたらし込んだのか?」

 

 

「人聞きの悪い事を言ってんじゃねーよ。此奴とは利害が一致しているだけだ、それ以上でもそれ以下でもない」

 

 

そう細川とは唯の利害関係が一致しているだけの協力者だ。だからそんなに睨まないでください有栖さん。貴女の絶対零度の微笑みは怖過ぎるんですよ。龍園は軽く笑って石崎達を連れて去って行った。伊吹はその場に残って細川を睨む。細川は楽しそうに聞く。

 

 

「何かな?伊吹ちゃん。リーダーの龍園君は行っちゃったけど」

 

 

「・・・・アンタが何を企んでんのかはどうでも良い。ただ、敵になるんだったら容赦しないから」

 

 

そう言い残してその場を去った伊吹。俺は細川に気になることがあったので聞いた。

 

 

「お前、何の武術習ってんの?相当戦い慣れてる様子だったが」

 

 

俺の近くで武術を習ってる女子は雪ノ下や陽乃さんぐらいしか知り合いにいないが、見た感じではその雪ノ下や陽乃さんよりも戦い慣れている。龍園は武術ではなく、独特の喧嘩術だった。動きも相当だったから龍園もかなりの場数をこなしているのだろう。なのに細川は余裕そうな表情を浮かべている。そしてその様子を崩さずに言った。

 

 

「ちょいと事情があって詳しくは話せないんだけどね。武術はジークンドーと古武術を習ってるの。まあ、殴られて、弱味握っても良かったんだけど、つまらないから敢えて迎撃したけどねー」

 

 

笑いながら軽い説明を入れる細川に対して、警戒を数段階上げる。此奴もそういう考え方をするらしい。龍園も本気ではなかったので分からないが、恐らく俺の勘が正しいなら細川は・・・・・そう考えていると、有栖が考えている様子だったので聞いた。

 

 

「どうした・・・?」

 

 

「・・・・いえ、何でもありません。それよりスパに行きましょう」

 

 

有栖がそう言ったのを聞いた細川は私もついて行くよ。と言った。俺は女子が増えた事に更に目立つことが頭に浮かんで、溜息を吐いてゆっくりと歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・ンンッ・・・ぁ」

 

 

「はぁっ・・・・んぁあ・・・・」

 

 

「んんぅ・・・・ひゃ・・・・んあ・・・」

 

 

「んぁ・・・・はふぅ・・・・」

 

 

・・・・・誰か助けて、理性がヤバイ。スパにきてマッサージを受けに来ただけなのに嬌声が聞こえてくるんですけど。側から見たら全年齢対象から外れる様な声がするってスパなのか如何か疑うんですが。

 

 

幸いにもアイマスクをしているので視界は隠れているが、目に毒ならぬ耳に毒な声がしてスパの気持ち良さの恩恵が全くわからない。マッサージしているのは女性なのでまだ良いが男性だったら此奴等は危ないことになっているだろう。

 

 

此処にいるのは俺と有栖と細川、それと試験が一時的に終わって合流した帆波とひよりだ。途中で合流した2人は細川がいることに疑問符を浮かべていたが、俺は特別試験の説明の後に喋って仲良くなったと言っておいた。グループディスカッションの時は即悪斬と言っても過言じゃない程早く終わらせたので話す機会がないからだ。

 

 

そしてスパを受けた後、廊下を歩いている俺はげんなりとした表情を自覚しながら隣を歩いている有栖達に言った。

 

 

「おい、お前ら・・・・スパのマッサージが気持ち良いのはそうだろうけどな。喘ぎ声を出すのは勘弁してくれよマジで」

 

 

俺の言葉に全員が僅かに赤くなった。男の身としてはあの空間にいるのはある種の地獄だ。息子が何度か勃ちあがりかけたのを必死に理性と葉山の顔を思い出し、萎えさせるのは大変苦痛だった。

 

 

「すみません・・・・思った以上に気持ち良かったもので」

 

 

普段なら揶揄ってくるであろう有栖も思った以上に羞恥心を募らせたのか、素直に謝ってくれる。帆波も苦笑しながら言った。

 

 

「にゃはは・・・思い切り出しちゃってたもんね」

 

 

うん、その言い方は今言われると卑猥に聞こえるのは俺だけじゃないよね?もうちょい言い方考えてくれると八幡的にポイント高いかな。俺は溜息をついて逸らしていた現状について言った。

 

 

「それと・・・・流石に他の奴に見られるとヤバいから腕を組むのは止めて欲しいんだけど」

 

 

今、俺は有栖と帆波に腕を組まれてる状態である。スパの施設を出た時に有栖が腕を組んで歩こうとしていたので、帆波が不機嫌になって、私も組む!と言って腕を強制的に組まされたのだ。帆波の何時もと違う様子に驚きつつ、両腕に感じる違いつつも柔らかい感触に耐えて歩いてきたが、他クラスの女子と一緒な時点でかなりアレなのに、同じクラスの帆波とも腕を組んでいるところを見られたら流石に不味いので言った。

 

 

「ふむ、こういう時にはこの言葉が適切ですかね。『だが断る』」

 

 

良い笑顔でジョ◯ョネタをぶっ込んできた有栖。誰だ此奴にそのネタ提供している奴は!あ、昔漫画で俺が教えたんだった。ノゲ◯ラでも1回使われたネタである。あの時は腹痛くなって筋肉痛になる程笑った。急に彫りの深い顔になるんだからな。1番好きなキャラは東方◯助である。

 

 

「本当に八幡君は好かれてるねぇ。もしやギャルゲーの主人公が現実に飛び出してきたって思うくらいには」

 

 

細川の揶揄いに俺は突っ込む。

 

 

「俺が攻略する前にフラグ折って終わりだろ。それどころか一生会わないまである」

 

 

「ふーん、好かれてるって言うのは否定しないんだねー?」

 

 

ニヤニヤと聞いてきた細川に有栖達もハッと俺を見てくる。俺は静かに視線を逸らす。そんな時、ズボンのポケットが振動した。俺は組まれてる腕を放してもらい、誰からの着信なのか確認する。そして有栖達に言った。

 

 

「悪いが用が出来たから、此処で別れるぞ」

 

 

「誰からなの?」

 

 

帆波の問いに俺は静かに返す。

 

 

「・・・・・すまん。教えられない」

 

 

その言葉に少しだけ残念そうな表情を浮かべたが、一瞬で元の明るい笑顔を見せて言った。

 

 

「・・・・そっか。じゃあ何かあったら直ぐに連絡してね?」

 

 

帆波の言葉に俺は頷き、有栖とひよりも頷き返してくれた。細川は変わらない楽しそうな表情を向けてきた。俺は歩いて呼び出してきた人物のいる『最下層フロア』へと足を運んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最下層フロアの奥にある空きスペースに俺は呼び出された。普段なら無視しても良いのだが、と言うか無視するのだが呼び出しの用件と呼び出してきた人物によっては無視出来ない。

 

 

『由比ヶ浜結衣と葉山隼人についての話がしたいから最下層フロアの空きスペースがある場所に来て欲しい』

 

 

俺はもう一度、メールの確認をして見間違いがないかどうか見る。そして目的地の空きスペースの金属製の扉を開けて中に入る。中は薄気味悪く、海に最も近い位置にあるので結構涼しい。ホラーにも使われたそうだな。と思いながら扉を閉めて呼び出した相手に向けて言った。

 

 

「・・・・・由比ヶ浜や葉山についての話って一体何だ?ーーーーーーーーーーー櫛田」

 

 

そう言うとゆっくりと足音が近づいて来た後、何時もその仮面をはめながら人と接しているであろうDクラスの人気者、櫛田桔梗が姿を見せた。誰もが好きになるであろう最高で偽物の笑顔を向けて。

 

 

「話をする前に・・・・・久しぶりだね、()()()

 

 

そう言った瞬間、櫛田は仮面を外した。眼には恐ろしいほど黒くドロドロしたような『闇』があった。俺は驚きつつも警戒を崩さずに言った。

 

 

「何で今外した?バレてもいいのか?」

 

 

その言葉の意味を理解しているのであろう。櫛田は薄く微笑んだ。その笑みは一見普段の笑みと変わらないように見えるが、纏う雰囲気は全く別のものだ。

 

 

「ふふふっ・・・・やっぱり分かってたんだね。流石だよ」

 

 

何だ・・・?此奴は俺を知っているような反応を見せてくる。そして俺も何処か既視感があった。前にもあったが俺は櫛田と会っている?俺が思考していると櫛田はそれを読んだかのように話し始める。

 

 

「何処で会ったか思いだせないみたいだから、昔話をしてあげるね」

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

あれは小学校6年生の頃だったかな?私は小学校の中では最上位カーストだったんだ。明るい振る舞いに容姿も相まって私は学校中の人気者だった。他の子は何をするのにも私を入れてきた。

 

 

最初は楽しかった。皆と遊ぶのは面白いし、何より退屈しないからね。私は入れ替わり立ち代わりで色々なグループの人達と遊んだ。勉強でも皆、私を勉強会に誘った。

 

 

でもそんなある日、何時も通り私はグループの誘いに乗って遊ぼうとした時、別のグループも私を誘おうとして取り合いになったんだ。皆で一緒に遊ぼうと言ってもそのグループのメンバーは互いに嫌い合ってたから如何しても頷いてはくれなかったんだ。だからその場では最初に誘いにきたグループを優先した。でも、後になったグループの子は不満を持ってしまった。

 

 

そこから私に不満をぶつける機会が急激に増え始めたんだ。私を責める意見もあったけど人付き合いの良さが活きたのか少なかったよ。でも他人の愚痴を私にぶつけられることが増えた。それでかなりのストレスを溜めてたんだ。

 

 

『彼奴マジ意味不明!』

 

 

『本当感じ悪いよな彼奴』

 

 

そんなことばっかりだった。私はその愚痴を聞いた後に抑えきれないものは何処かにぶつけてた。その時は誰も居ない公園でストレスをぶつけてた時だった。

 

 

「あー、ムカつくムカつくムカつくムカつく!!何で彼奴等、全部私にぶつけてくるんだよ!私は打たれるだけのサンドバックじゃないんだよ、巫山戯んな!」

 

 

私は苛ついて近くの自販機に蹴りを入れた時、蹴りの音と共に足音が聞こえてきた。焦って振り向いたら驚いた顔の濁った眼と主張気味のアホ毛の男の子が缶コーヒーを持っていた。恐らく飲んでいた缶コーヒーを自販機の隣にあるゴミ箱に捨てるつもりだったのだろう。そして振り向いた私の顔を見てハッとしてゆっくり言った。

 

 

「・・・・あー、もしも壊れていたら弁償しなきゃいけないから止めといた方が良いぞ」

 

 

そしてそのまま何事も無くゴミ箱に缶コーヒーを捨ててその場を離れようとしていたので、私は慌てていつも通りの顔に戻して声を掛けた。

 

 

「・・・ちょっと待ってっ」

 

 

声を掛けても止まることがなかったので私は近くに寄って肩に触れる。

 

 

「ちょっと良いかな。さっきの見た?」

 

 

そう言った時にこっちに振り向いて自然に言った。しかし眼は更に泥々に濁らせていた。そして静かに言った。

 

 

「・・・・・何の事だ?それより早く帰って妹の面倒を見なきゃいけないから。じゃあな」

 

 

そして肩に触れていた手はいつの間にか放されていて、彼は公園の出口に行く。その途中でこっちに振り向いた後、さっきと変わらない様子で言った。

 

 

「・・・・・無理して取り繕った顔をしない方が良いぞ。バレたら多分面倒なことになると思うから」

 

 

「・・・・・」

 

 

私は答えに窮している間にも彼は私の視界から消えた。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーーーこれが私達の出会い。思い出した?」

 

 

櫛田が話した回想は俺と櫛田の初対面だ。前に『皆の櫛田桔梗の仮面』を見た時の既視感はこれか。あの出来事があり、俺は奇妙にも櫛田と関わることになっていくのだが、今は用件を聞き出す方が優先なので俺は早々に切り上げる。

 

 

「ああ、思い出したが。それで?由比ヶ浜と葉山についての話しって何だよ」

 

 

「もうちょっと想い出話しに花を咲かせたいけど、あんまり時間は掛けられないもんね」

 

 

そうして一度話しを区切った後、仮面を外した状態のままで櫛田は言った。

 

 

「ーーーーーーーーーー2人を退学させるのを手伝ってあげる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡君と別れた後、私は一之瀬さん達と少し雑談した後に解散した。私は細川さんの事を考えていた。龍園君と対峙した時に見せた動きは私の勘が正しければだが、ーーーーーーーーーーー()()()()()()()()()()()()()

 

 

「・・・・・『彼』の右斜め後ろに彼女に似た人が座っていたかも」

 

 

いや、しかしそんな事が可能なのだろうか?【彼処】から出たとなれば大騒ぎになるし、簡単に出られるようなところではない。『彼』でさえ出るのは1人では厳しかったのに。

 

 

「・・・・・細川舞美さん・・・・・彼女が()()1()()()()()()()()()()()()()()()()であるとするなら、何故八幡君と組む必要があったのかしら?」

 

 

そう私は誰にも聞こえない程の声音で呟いたのであった。

 

 




オリキャラのイラストが欲しい。

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